はじまりと終わりの間婚

便葉

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クリスマス

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私がコスプレのイベントに参加すると決めた日、その事をミチャに報告した。
私の初動が遅かったため、かなりのストイックな毎日を送る事になると。
私と先輩は、衣裳は手作りにこだわっている。
そのこだわりとプライドのせいで、イベントの前日は、死ぬ間際のような状態になる。
でも、それが、ある意味、究極のエクスタシーで、私達は絶頂の気分を持続したまま本番へ突入することだができた。
その快感は、他の人は上手く説明ができない。
その場所で、一緒に取り組んでいる仲間内でのご褒美のようなものだから。
 
「明日から二十四日の早朝まで、とにかく忙しくなるから。
衣裳作りには何があっても妥協はしたくない。
だから、自分の部屋はもちろんだけど、その隣にあるテラスの部屋も使わせてほしいんだけど…」
 
ミチャはつまんなさそうにため息をついて、頷いた。
 
「それは全然構わないけど、でも、じゃ、イブの夜はまひるは予定が入っちゃってるんだ…」
 
何だか寂しそうなミチャの顔が、私の心を責め立てる。
でも、これでいい。
ミチャにどっぷりの今の生活を変えるって決めたんだから。
 
「うん、ごめんね…
それと、風磨もその日は一緒なんだ。
実は、風磨ね、先輩のパートナーになってて、風磨もその日はコスプレで忙しいの」
 
そう、先輩は風磨をパートナーに抜擢した。
何にでも興味津々の風磨は、即、快諾して、今は先輩の指示通りダイエットに励んでいる。
でも、ミチャはやっぱり可哀そう。
この状況では、本当に一人ぼっちだから。

「コスプレのイベントにパートナーっていうのが必要なんだ…
え、じゃ、まひるにもいるの?
そのパートナーって人が」
 
ミチャって人は、たくさんの顔を持っている。
きっと、それがミチャの魅力でもあって、私達を惑わす二面性でもある。
そして、最近の私は、その温かいミチャと冷めたミチャのギャップの虜になっていた。
笑っちゃうのが、それは、どうやら風磨も同じらしいという事。
今のミチャは駄々をこねる前の子どもみたいな顔をしている。
僕も行きたいのに…みたいな。
 
「私にもパートナーはいる。
近々、ミチャにちゃんと紹介するね。
多分、その人、この家に入り浸りになると思うから。
あ、衣裳作りを手伝ってもらうだけだよ。
何もやましい事なんてないから…」
 
最後が余計だったかもしれない。
ミチャは眉をしかめて考え込む。
 
「もちろん、そのパートナーって男の人なんだよね?」
 
「う、うん。
去年も一昨年も一緒にやってるの。
その時は、うちの実家にずっと入り浸り。
お母さんや弟もすごく仲がいいんだ。
あ、でも、ミチャは無理に仲良くならなくていいからね」
 
森魚は変人だから…
なんて口が裂けても言えない。
 
「また、改めて紹介します。
そんな遠くない未来に」



そんな遠くない未来は、あっという間にやってきた。
まずは森魚にパートナーになってほしいとメッセージを送った。
十秒後には返信がくる。
“もっちろん、でも、遅かったね”
 
私は数か月前に結婚した事をメッセージにしてすぐに送る。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
こんな顔文字が何列にも連なって送ってきた。
 
“衣裳作りやら手伝ってもらいたいけど、そこには旦那様もいるけどいい?”
おとなしくできる?までは、さすがに言えない。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
この文字がしつこく何個も送られてくる。
 
でも、私への愛情が強過ぎる森魚からしてみれば、この反応はまだいい方なのかもしれない。
私は家の住所をメッセージに貼って送信し、忙しそうに絵文字でバイバイと送った。
今は一人であれこれ考えて下さいと、そんな意味合いも込めて。

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