5 / 6
高級な酒場
しおりを挟む
「あたしにゃ、あんたが無理しているように見えるね」
あたしがそういうと目の前の軽薄そうにしている男が驚いた表情のまま固まった。
魔王討伐の祭り気分を一日味わって、噂のバカ様がいるという街へと向かい、半日もせずにたどりついた。
朝早くに出て何事もないなんて、本当に運がいい。
キャラバンの集会場に集まって、あたしがついていっていた商隊から金をもらう。
銀貨六枚。六日分の生活費になる。ここまではどちらかというと、旅のためと食費を浮かせるためにしてきたことだ。一週間分以上も飯を食えたのを考えたら、多めにくれた方だね。
「ありがとうね…助かるよ」
「食事を作ってもらったお礼も入ってます…やはりダメですかね?」
獣人の彼女は商隊のリーダーらしく、しきりにあたしをこのまま商隊の一員にならないかと誘ってくれた。
とても嬉しい誘いなんだが…あたしはこの辺りを拠点にしていたわけじゃない。元々の拠点には知り合いが何人かいるし、必ず帰ると約束していた。
それに…ありえない話だけど顔を合わせたくやつもいる。
「すまないね…あたしは旅を続けるよ」
最後の断りを聞くと、彼女はあきらめてくれた。
「そうですか…わかっていました…いえね、姉さん。私らも…男でもめた行き場のない連中なんですよ」
「あたしは」
「いや、姉さん。詳しくいわなくてもわかります!私は商人ですよ?…浮気されたって一目でわかりました」
なんってこったい。あたしゃそんな風に見られていたのかい。
「姉さんみたいないい女をほって浮気するなんざ、魔王みたいな男です!勇者様に斬られちまえばいいんだ」
「いや、そりゃあね」
そもそも誘ったのはあたしなんだろうし、その勇者が…あたしは斬られないといいなぁ。
ちょっとは男として見直したんだ。そこをくんでくれないかね。
力が抜けて訂正する気力もなくなってしまった。
その足でギルドの酒場にむかう。次の商隊がいなくて、共同クエストでも受けようと思ったのだ。一つの依頼を複数でやっているものがあれば参加させてもらおう。
酒場は…酒場なんだよな?あたしの知っている酒場は酒とゲロの臭いが充満していて、若いのから年寄りまで目がぎらついているのしか知らないんだけど。
これはどういうことだい。
「いらっしゃいませ。麗しき冒険者様。お席へ案内いたします」
どこの貴族向けの食事場だい。
席に案内されつつ、店内を確認する。座っている人間は女がほとんどだ。それも剣や弓を携えている女たちだから、間違ってはいったわけではなさそうだ。
数少ない男たちは居心地悪そうで、連れの女が呆れている。男だけの入店はないようだね。
「こちら当店からのサービスでございます」
グラスにやたらと綺麗なピンク色の酒を持ってきた給仕係は男だが…酒場の店員という風にはみえないね。ひ弱そうで、荒くれもの相手にする酒場の者には見えないよ。
「すまないけど、あたしは依頼を探してるんだよ」
「失礼ですが、文字は読めますか?」
「ああ。読み書きはできるよ。補助員はいらないよ」
読み書きができない者のためにギルドが用意してくれている補助員は、あたしには必要ない。婆さんがみっちり教えてくれたからね。
「でしたら、まずはこちらのメニューからお食事をお選びください。すぐにお持ちしますから。その後に依頼書をもってまいります」
「はぁ…」
メニューに書かれている金額は軒並み高い。どれも銀貨一枚だ。あたしら冒険者ならあまり気にならないが、一日の食費が飛ぶなんて…銅貨の値段のものを探すが…ないね。甘味なんざ、一個で銀貨二枚…フルーツ盛りなんざ五枚だ!
「酒は…高いね…悪いんだけど、腹に入るもんで、一番安いのを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
そうして去っていった店員は、ギルドの職員だったのだろうね。
ギルドじゃどこでも手付金がいる。酒場で一杯も飲めないようなやつは保証しないと、まずは酒場で一杯飲んでから依頼を受ける。
ここのギルドはかなり高いが…その分依頼料も高いのだろう。
町の裕福さは砂漠が近くにありながらも水が無料で配られていることでわかる。他じゃ水を買いに行くから税金をあげていたりするが、水に困っていない分、住民たちの懐が潤っているんだろう。
どうみたって新人の若い子たちがフルーツを山盛りにしたものを平然と食ってるんだ。こりゃ、稼げそうだね。
「麗しいお嬢さん…お暇なら私とお喋りしませんか?」
真っ白い服に首飾りをじゃらじゃらつけた軽薄そうにしている男が隣に座って話しかけてきた。
暇だし情報はほしいからお喋りの相手とやらになってもいい。
「いいよ…ただし、普通に話しておくれ」
「私はこれが普通なんですよ」
そううそぶく姿が滑稽だったからついいっちまった。
「あたしにゃ、あんたが無理しているように見えるね」
またお節介を焼いちまったかもしれないね。
あたしがそういうと目の前の軽薄そうにしている男が驚いた表情のまま固まった。
魔王討伐の祭り気分を一日味わって、噂のバカ様がいるという街へと向かい、半日もせずにたどりついた。
朝早くに出て何事もないなんて、本当に運がいい。
キャラバンの集会場に集まって、あたしがついていっていた商隊から金をもらう。
銀貨六枚。六日分の生活費になる。ここまではどちらかというと、旅のためと食費を浮かせるためにしてきたことだ。一週間分以上も飯を食えたのを考えたら、多めにくれた方だね。
「ありがとうね…助かるよ」
「食事を作ってもらったお礼も入ってます…やはりダメですかね?」
獣人の彼女は商隊のリーダーらしく、しきりにあたしをこのまま商隊の一員にならないかと誘ってくれた。
とても嬉しい誘いなんだが…あたしはこの辺りを拠点にしていたわけじゃない。元々の拠点には知り合いが何人かいるし、必ず帰ると約束していた。
それに…ありえない話だけど顔を合わせたくやつもいる。
「すまないね…あたしは旅を続けるよ」
最後の断りを聞くと、彼女はあきらめてくれた。
「そうですか…わかっていました…いえね、姉さん。私らも…男でもめた行き場のない連中なんですよ」
「あたしは」
「いや、姉さん。詳しくいわなくてもわかります!私は商人ですよ?…浮気されたって一目でわかりました」
なんってこったい。あたしゃそんな風に見られていたのかい。
「姉さんみたいないい女をほって浮気するなんざ、魔王みたいな男です!勇者様に斬られちまえばいいんだ」
「いや、そりゃあね」
そもそも誘ったのはあたしなんだろうし、その勇者が…あたしは斬られないといいなぁ。
ちょっとは男として見直したんだ。そこをくんでくれないかね。
力が抜けて訂正する気力もなくなってしまった。
その足でギルドの酒場にむかう。次の商隊がいなくて、共同クエストでも受けようと思ったのだ。一つの依頼を複数でやっているものがあれば参加させてもらおう。
酒場は…酒場なんだよな?あたしの知っている酒場は酒とゲロの臭いが充満していて、若いのから年寄りまで目がぎらついているのしか知らないんだけど。
これはどういうことだい。
「いらっしゃいませ。麗しき冒険者様。お席へ案内いたします」
どこの貴族向けの食事場だい。
席に案内されつつ、店内を確認する。座っている人間は女がほとんどだ。それも剣や弓を携えている女たちだから、間違ってはいったわけではなさそうだ。
数少ない男たちは居心地悪そうで、連れの女が呆れている。男だけの入店はないようだね。
「こちら当店からのサービスでございます」
グラスにやたらと綺麗なピンク色の酒を持ってきた給仕係は男だが…酒場の店員という風にはみえないね。ひ弱そうで、荒くれもの相手にする酒場の者には見えないよ。
「すまないけど、あたしは依頼を探してるんだよ」
「失礼ですが、文字は読めますか?」
「ああ。読み書きはできるよ。補助員はいらないよ」
読み書きができない者のためにギルドが用意してくれている補助員は、あたしには必要ない。婆さんがみっちり教えてくれたからね。
「でしたら、まずはこちらのメニューからお食事をお選びください。すぐにお持ちしますから。その後に依頼書をもってまいります」
「はぁ…」
メニューに書かれている金額は軒並み高い。どれも銀貨一枚だ。あたしら冒険者ならあまり気にならないが、一日の食費が飛ぶなんて…銅貨の値段のものを探すが…ないね。甘味なんざ、一個で銀貨二枚…フルーツ盛りなんざ五枚だ!
「酒は…高いね…悪いんだけど、腹に入るもんで、一番安いのを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
そうして去っていった店員は、ギルドの職員だったのだろうね。
ギルドじゃどこでも手付金がいる。酒場で一杯も飲めないようなやつは保証しないと、まずは酒場で一杯飲んでから依頼を受ける。
ここのギルドはかなり高いが…その分依頼料も高いのだろう。
町の裕福さは砂漠が近くにありながらも水が無料で配られていることでわかる。他じゃ水を買いに行くから税金をあげていたりするが、水に困っていない分、住民たちの懐が潤っているんだろう。
どうみたって新人の若い子たちがフルーツを山盛りにしたものを平然と食ってるんだ。こりゃ、稼げそうだね。
「麗しいお嬢さん…お暇なら私とお喋りしませんか?」
真っ白い服に首飾りをじゃらじゃらつけた軽薄そうにしている男が隣に座って話しかけてきた。
暇だし情報はほしいからお喋りの相手とやらになってもいい。
「いいよ…ただし、普通に話しておくれ」
「私はこれが普通なんですよ」
そううそぶく姿が滑稽だったからついいっちまった。
「あたしにゃ、あんたが無理しているように見えるね」
またお節介を焼いちまったかもしれないね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる