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決めるのは、あなた方ではない
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「ということで、こちらにサインを」
「ちょっと待ってくれ、カメリア」
「待ちません。待てません」
白い結婚から2年後。貞操を守り通したわたくしは、離婚届を手にサインを迫っていた。
「まあまあ、セダン夫人。落ち着いて」
何故ここにいるのか知りたくもないけれど、口を挟まないでください、王太子殿下。
ついでに、セダン夫人というのもやめてもらいたい。不快なので。
…と言えば、不敬罪確定になるから言えない。
「経緯は聞いているよ。学生時代からずっと、このままじゃ嫌われるぞと言い聞かせてきたんだけどねえ」
効果、まったくありませんでしたわね。殿下の言葉でも。
「こいつ、ずっと夫人に惚れてて、何で自分はこうなんだ!っていっつも後悔してて」
「殿下、その話は…!」
「何だよ、お前が悪いんだろ。子供の頃に一目惚れしたくせに、開口一番吐いたのが」
「殿下!!」
何か寸劇が始まったわね。早く終わらないかしら。離婚届さっさと出して一刻も早くこの男と他人になって、出て行きたいのに。
思わず欠伸が出てしまうわ。
「こいつも反省してるし、夫人も折れて、許してやったらどうかな?」
「…………………………………………は?」
今、何と言われました?
「殿下、もう一度お願いできますか? 理解したくもないお言葉が聞こえた気がして」
「カメリア、不敬だぞ!」
「いいよ、アルベール。もとはと言えば、お前のせいだろ」
「…っ申し訳ありません」
他の人には謝れるのねー。ふーん。
「いや、見て分かると思うけど、反省して、夫人と向き合おうとしてるんだ。許してやってもいいと思うんだよ」
聞き間違いではありませんでしたのね。残念ながら耳は正常でしたわ。
「──何故、許すかどうかを、あなた方が決めるのですか?」
わたくしは今、どんな表情を浮かべてるのだろうか。冷え切った怒りだけが支配しているような感覚で、喋っている。
「何故、加害者に、許すことを強要されなければならないのですか? 許さないわたくしが悪いのですか?」
「加害者って…」
「傷ついたのも苦しんだのも、わたくしです。許す許さないは、わたくしの領分ですわ」
──決めるのは、あなた方ではない。
「王太子殿下には、婚約者がいらっしゃいますね」
「…ああ。それとこれと何の関係がある?」
「では、殿下。婚約者の方から、顔を合わせるたびに、無能、クズ、役立たず、など暴言を吐かれたらどう思いますか?」
「…それは」
殿下は気まずそうに、隣の男を見る。
「反省しているのが見て分かると? では、わたくしが受けた傷も見えますか? 10年分、傷だらけで元の形など分からなくなってるはずですわ」
淡々と言葉を発すると、殿下は深くため息をついた。
「──お前の負けだ、アルベール。それにサインしてやれ」
「…殿下っ!」
悲痛な声を出すが、聞き苦しいったらないわ。
早くサインしろと無言の圧を出すが、なかなか手は動かない。
「…早くしろ! 往生際の悪い」
とうとう殿下から叱責され、泣きながら震える手で男は署名した。
ああ、こんなに晴れ晴れした気持ちになったのは、10年ぶり。
荷物は少ないし、キアラもついてきてくれるというし、やっと自由になれたわ!
背後で後悔に泣き崩れる男のことなど、カメリアには既に視界にも入っていなかった。
了
「ちょっと待ってくれ、カメリア」
「待ちません。待てません」
白い結婚から2年後。貞操を守り通したわたくしは、離婚届を手にサインを迫っていた。
「まあまあ、セダン夫人。落ち着いて」
何故ここにいるのか知りたくもないけれど、口を挟まないでください、王太子殿下。
ついでに、セダン夫人というのもやめてもらいたい。不快なので。
…と言えば、不敬罪確定になるから言えない。
「経緯は聞いているよ。学生時代からずっと、このままじゃ嫌われるぞと言い聞かせてきたんだけどねえ」
効果、まったくありませんでしたわね。殿下の言葉でも。
「こいつ、ずっと夫人に惚れてて、何で自分はこうなんだ!っていっつも後悔してて」
「殿下、その話は…!」
「何だよ、お前が悪いんだろ。子供の頃に一目惚れしたくせに、開口一番吐いたのが」
「殿下!!」
何か寸劇が始まったわね。早く終わらないかしら。離婚届さっさと出して一刻も早くこの男と他人になって、出て行きたいのに。
思わず欠伸が出てしまうわ。
「こいつも反省してるし、夫人も折れて、許してやったらどうかな?」
「…………………………………………は?」
今、何と言われました?
「殿下、もう一度お願いできますか? 理解したくもないお言葉が聞こえた気がして」
「カメリア、不敬だぞ!」
「いいよ、アルベール。もとはと言えば、お前のせいだろ」
「…っ申し訳ありません」
他の人には謝れるのねー。ふーん。
「いや、見て分かると思うけど、反省して、夫人と向き合おうとしてるんだ。許してやってもいいと思うんだよ」
聞き間違いではありませんでしたのね。残念ながら耳は正常でしたわ。
「──何故、許すかどうかを、あなた方が決めるのですか?」
わたくしは今、どんな表情を浮かべてるのだろうか。冷え切った怒りだけが支配しているような感覚で、喋っている。
「何故、加害者に、許すことを強要されなければならないのですか? 許さないわたくしが悪いのですか?」
「加害者って…」
「傷ついたのも苦しんだのも、わたくしです。許す許さないは、わたくしの領分ですわ」
──決めるのは、あなた方ではない。
「王太子殿下には、婚約者がいらっしゃいますね」
「…ああ。それとこれと何の関係がある?」
「では、殿下。婚約者の方から、顔を合わせるたびに、無能、クズ、役立たず、など暴言を吐かれたらどう思いますか?」
「…それは」
殿下は気まずそうに、隣の男を見る。
「反省しているのが見て分かると? では、わたくしが受けた傷も見えますか? 10年分、傷だらけで元の形など分からなくなってるはずですわ」
淡々と言葉を発すると、殿下は深くため息をついた。
「──お前の負けだ、アルベール。それにサインしてやれ」
「…殿下っ!」
悲痛な声を出すが、聞き苦しいったらないわ。
早くサインしろと無言の圧を出すが、なかなか手は動かない。
「…早くしろ! 往生際の悪い」
とうとう殿下から叱責され、泣きながら震える手で男は署名した。
ああ、こんなに晴れ晴れした気持ちになったのは、10年ぶり。
荷物は少ないし、キアラもついてきてくれるというし、やっと自由になれたわ!
背後で後悔に泣き崩れる男のことなど、カメリアには既に視界にも入っていなかった。
了
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