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堕ちた瞬間

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「すっげえきれいな子がいた」

たくみくんの言葉に、みんなが顔を上げる。

「また女の子の話?あんた好きだね」

ナリがあきれ顔で、手元のゲームに視線を戻す。

「違う!男の子!」

「え?たくちゃん、そっちの趣味あったの?」

田部たべが楽しそうに笑う。もちろん本気にしていない。

「すげえ可愛かったんだって!」

「匠くん、興奮してるね。で、どこにいたの?」

俺はなだめるつもりでそう言った。

と、匠くんが急に窓際へ歩き出した。

「あそこ!」

窓の外を指さし、なぜかドヤ顔で俺たちを見渡す。

なんとなくそれにつられ、俺たちは窓際へと向かった。

そして匠くんが指さす方を見た。

そこには校門へ歩く1人の男子生徒の後ろ姿。

まっすぐに伸びた背筋。ウエストは細くくびれ、長い首の上に小さな頭。

少しくせのある黒髪はふわふわと風になびいていた。

後ろ姿だから顔はわからない・・・・と思ったら

「おーい!」

突然叫んだ匠くんに、ぎょっとする。

「ちょ、匠くん!」

「あ、こっち向いた」

田部の言葉に、俺たちは一斉にそちらを見て・・・・・かたまった。

透き通るような白い肌。

綺麗に整った眉。

大きな瞳。

すっと通った鼻筋に、ぷっくりとした赤い唇。

―――綺麗だ―――

そっちの趣味はみんなないはずなんだけど。

この瞬間、俺たちはみんな恋に落ちていた。

志筑貴良しづきたから』という1人の男に―――
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