恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第11話

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今日からあのカフェでアルバイトをすると言っていた咲也。

帰国して間もなく、しかも姉である夏美が亡くなったばかりで、お通夜、お葬式と終わったばかりだ。

もう少し休んでからでもいいんじゃないかと思ったのだけれど・・・・・

「落ち着かないんだ。大学も、もう夏休みになるし、家に1人でいてもやることないから」

そう言って、ふと寂しげな笑みを浮かべる咲也。

それ以上俺は何も言えなくて・・・・・

せめて、夏美との約束を守ろうと、カフェへ様子を見に行ってみることにした。

で、店に入り―――

―――あれ、昨日よりもお客さん、増えてない?

昨日は確か、若い女の客が多かったと思ったけど、今日は大学生らしい若い男が増えてる気が・・・・

その時、突然後からばしっと背中を叩かれよろける。

「そんなとこに突っ立ってたら邪魔ですよ。さっさと座ったら?」

そう言ってすたすたと店の奧に進むのは小川だった。

俺は慌てて小川の後を追い、席に着くと、小川に疑問をぶつけようと口を開く。

「なあ、昨日より客が―――」

そこまで言うと、小川が顎で俺の後を指し示した。

「さっくんのせいだよ」

「え・・・・・」

振り向くと、そこには2人の男が座る席にコーヒーを出すさっがいた。

「―――お待たせしました」

「ありがとう、如月」

「なぁ如月、バイト終わったら飲みに行かない?」

「俺、まだ未成年だよ」

「あ、そうか。じゃ、ジュースでもいいよ。奢るからさ」

「ごめん、今日は用事あるから、また今度ね」

そう言って笑う咲也の表情は、なんとも言えず妖艶で―――

2人の男が見惚れて、何も言えなくなっていた・・・・・。



「―――あんたまで見惚れてんなよ」

「あ―――」

小川の言葉に、思わず顔を手で押さえる。

「―――今日、さっくん午前中に大学に行ったんだよ。復学届け出しにね」

「そうなんだ」

「そこで、何人か知り合いに会って・・・・・今日からここでバイトするってちらっと言ったら、この有り様ですよ」

―――マジか。

「で、あんたは、まさかさっくんがバイトの日にずっと通い続けるつもり?」

「え・・・・いや、そこまでは・・・・・」

考えてなかった。

だって、こんな状況、想像してなかったし。

「さっくんには、俺がついてるから大丈夫ですよ。あんた、一応画家なんでしょう?こんなとこに来てないで仕事してればいいじゃないですか」

どことなく挑戦的な言い方に、俺は小川の顔をまじまじと見た。

「―――何ですか?」

「いや・・・・・小川くん、俺のこと嫌いだよなあと思って」

「・・・・・別に嫌いじゃないですよ」

「ほんとに?じゃあ、俺もタクって呼んでいい?」

「なんでそうなるんすか」

「咲也がそう呼んでるから。だめ?」

「別に・・・いいですけど」

言いながら、溜息をつくタク。

「なんかイラついてるね」

「・・・ちょっと、気が立ってるだけです」

「気が立ってる?なんで?」

俺、なんかしたっけ?

そう思ってると、タクはまた俺の後ろに視線を移した。

「―――あいつ」

―――あいつ?

俺は、そっと後ろを振り返った。

店のカウンター席に、何人かの客が座っていた。

若い客が多い中で、その客は明らかに異色だった。

派手なアロハシャツに色あせたジーンズ。

濃い色のサングラスをかけた大柄な男が、目の前のコーヒーには手をつけずに、口元に笑みを浮かべながらじっと咲也のことを目で追っていた。

「・・・・・中崎って男で、この店の常連ですよ。ずっとさっくんのことをつけ狙ってる変態です」

「変態・・・・・あ、もしかして、咲也をモデルにって誘ってたやつ?」

俺の言葉に、小川が目を見開いた。

「え・・・・何でそれを?」

「夏美が言ってた」

「夏美さん・・・・・?じゃ、夏美さん、亡くなる前にそんな話あんたにしてたの?」

「え?あ・・・・・・」

やべ、思わず。

タクには、咲也の中に夏美がいること、言ってないんだよな。

咲也も何も言ってないみたいだし。

「―――なっちゃんは、心配し過ぎなんだよ」

「さっくん」

いつの間にか咲也が水を持ってテーブルの横に来ていた。

「コーヒーでいい?2人とも」

「あ、うん。咲也、あの人―――」

俺が中崎を見ると、咲也もちらりと振り返り、またすぐに向き直った。

「大丈夫だよ。確かにしつこく声かけてきたりするけど、何かされたりしたことはないし。からかっておもしろがってるだけだと思うよ」

そう言って笑うと、またカウンターの中へ入っていった。

「―――やっぱり、顔色悪いな」

ぼそりと、タクが言った。

「もともと色白なんだけど・・・・・」

心配そうに咲也を見つめるタク。

そんなタクを見て、俺もまた咲也を見る。

楽しそうに幹雄くんと話してはいるけれど、確かに顔色は良くない。

ふと、あることが俺の頭に浮かんだ。

―――俺の言うことなんて、聞かないだろうけど・・・・・

もしかしたら、夏美の言うことになら、耳を貸すかもしれない。

どうやって夏美を呼んだらいいのかわからないけれど、俺の気持ちが通じれば、出て来てくれるんじゃないか。

そんなことを考えながら、俺はコーヒーをゆっくりと味わった。
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