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第13話
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「柊真ぁ、今日家来る?」
翌日も咲也のバイト先であるカフェへ行くと、すでにタクがきていたので同じテーブルにつく。
するとすぐにそこへ咲也が水を持って来て、オーダーを取る前にまずそう聞いてきたのだ。
「へ・・・・?」
思わず呆けた声を出してしまうと、タクがむっとした表情で俺を睨みつける。
「・・・・・何で真田さんにそんなこと聞くの?」
「柊真と、ちょっと話したいことがあるから。今日もラストまでだし、遅くなると電車もなくなるし、無理だったらいいんだけど」
「話って・・・・・?」
俺の言葉に、咲也はちらりとタクを見てから肩をすくめた。
「・・・なっちゃんのことだよ。でも、別に今日じゃなくてもいいよ。時間があるときでいい」
「いや、俺はいいんだけど・・・・でも、電車がなくなるのは困っちゃうな。昨日も終電ぎりぎりだったし。まあ、昨日は俺が勝手に最後までいたからいいんだけど」
結局昨日は3人で咲也を家まで送っていったのだ。
終電の時間は午前1時で、昨日はぎりぎりで飛び乗ることができたけれど、本当に1分遅かったらアウトだった。
「なら、家に泊ってく?」
咲也の言葉に、俺は思わず口に含んだ水を吹き出しそうになる。
そして、それを聞いたタクの顔が引きつる。
「さっくん?それは―――」
「うち、俺1人だから部屋なら余ってるし。いつでもいいよ?」
―――別に、特に意味はないんだろう。
そりゃそうだ。
俺も咲也も男なんだから。
深い意味なんてあるわけがない。
なのに、何で俺はこんなに動揺してるんだろう・・・・・。
「それ、俺も一緒じゃだめなの?」
タクの言葉に、咲也はちょっと困ったように笑った。
「ごめん、ちょっと他の人がいるとこじゃ話せないことなんだ」
その言葉に、俺は思い当たった。
もしかして、夏美・・・・・?
タクは、夏美が咲也の中にいることを知らない。
もちろん、こんな人のいる店で夏美が出てくるわけにもいかないだろう。
完全に、咲也がただのおかまになったようにしか見えないはずだから。
咲也が離れると、タクが俺を睨みながら言った。
「どういうこと?」
「え?」
「・・・・・真田さん、さっくんに手ぇ出さないでくださいね?」
「だ、出さないよ。何言ってんの」
「・・・そうですよね。あなたは夏美さんが好きだったんですもんね。その弟に、なんて、ねぇ?」
「そう・・・・だよ・・・・・」
そうだよ。
俺は、夏美と結婚するはずだったんだ。
そうなってたら、咲也は俺の義弟になってたはずで・・・・・
その咲也を好きになるなんて、あり得ないことだ・・・・・・
「俺さ、着替えとか持って来てないけど」
咲也の家へと向かう道を2人で歩きながら、俺は言った。
タクは咲也の家まで一緒に来ると言っていたけれど、咲也に『毎日2人も3人も送ってくれなくて大丈夫だよ。今日は柊真がいるから、タクは帰っていいよ』と言われ、仕方なく帰ったのだった。
「着替えくらい、俺の貸すよ。コンビニ寄って、歯ブラシだけ買って行こう」
と言われ、2人でコンビニに入る。
「あ、そういや下着も買った方がいいよね。あとは、靴下と・・・・・何が必要?」
なんか、恋人同士の会話みたいだよな・・・・・。
俺は気恥ずかしくなって、咲也と目を合わせないようにわざと店内をきょろきょろと見回していた。
「いや、そんくらい?―――あ、あれうまそう」
ふとレジの横を見ると、フランクフルトや唐揚げ、コロッケなどがショーケースの中に並んでいた。
「食べる?そういや、タクも柊真もあの店にいるときあんまり食わないよね?お腹すいてんじゃない?」
そう。俺もタクも、あの店にいる間はコーヒーばかり飲んでいるためかお腹がたぽたぽしてしまってあまり食欲もわかず、サラダくらいしか食べないのだ。
で、今頃になって腹が減ってくる。
結局そこでコロッケなどの惣菜をたくさん買って、咲也の家へ向かった。
家につくと、咲也は惣菜を皿に並べ、ビールを出してくれた。
「え、ビール、飲むの?」
咲也は確かまだ19だったはず。
まあ、あと1ヶ月ちょっとで20歳になるけれど。
「俺は飲まないよ。柊真はビール飲むって聞いたから、買っといたの」
「あ、そうなんだ・・・・。聞いたって、夏美に?」
「他にいないじゃん。・・・・・なっちゃんが、柊真と話したいって」
「夏美が・・・・・」
「とりあえず、食べてよ。俺も一緒に食べたいし。それで風呂入ってから、なっちゃんと代わるから」
「あ・・・・・うん」
2人で、他愛のない話をしながら、遅い夕飯を食べる。
咲也は、笑う時にそのきれいな顔をくしゃっとさせて思いきり笑う。
無邪気で、子供のような笑顔はまるでひまわりみたいだった。
―――『咲也は、自分のことをわかってないから・・・・・』
夏美の言葉が頭をかすめる。
なんとなく、その意味がわかる。
その笑顔にどれだけの威力があるか、咲也はたぶん全くわかってないんだと思う。
タクや、幹雄くん、それから圭くんの想いにも、本当には気付いていなんだろうな・・・・・。
「―――柊真、絵は昼間に描いてるの?」
「うん。今は、そうだね。特に時間を決めてるわけじゃないけど」
「へえ。今度、見にいってもいい?」
「え、俺の絵を?咲也、絵に興味あるの?」
「あるよー。美術館とか行くの好きだもん。スペインでも時々行ってたよ」
「マジで?じゃあ、今度個展やれたら見に来てよ」
「行く行く。んふふ、超楽しみ。―――あ、いいよ、俺片付けるから」
食べ終わった皿を持った俺に、咲也が声をかける。
「いいよ、皿洗いくらい俺にもできるから。咲也、風呂入ってくれば」
「そう?じゃあ・・・・・ごめん、ありがとう」
咲也が部屋から出ていくと、俺は軽く息を吐き出した。
皿を流しに運び、洗いものをしながら心を落ち着かせる。
別に、緊張する必要なんかない。
ただ、夏美の家に泊るだけだ。
そう。
俺は、夏美と話をするために呼ばれたんだから。
そう自分でもわかっているはずなのに―――
俺の脳裏には、咲也の無邪気な笑顔がこびりついて離れなかった・・・・・。
翌日も咲也のバイト先であるカフェへ行くと、すでにタクがきていたので同じテーブルにつく。
するとすぐにそこへ咲也が水を持って来て、オーダーを取る前にまずそう聞いてきたのだ。
「へ・・・・?」
思わず呆けた声を出してしまうと、タクがむっとした表情で俺を睨みつける。
「・・・・・何で真田さんにそんなこと聞くの?」
「柊真と、ちょっと話したいことがあるから。今日もラストまでだし、遅くなると電車もなくなるし、無理だったらいいんだけど」
「話って・・・・・?」
俺の言葉に、咲也はちらりとタクを見てから肩をすくめた。
「・・・なっちゃんのことだよ。でも、別に今日じゃなくてもいいよ。時間があるときでいい」
「いや、俺はいいんだけど・・・・でも、電車がなくなるのは困っちゃうな。昨日も終電ぎりぎりだったし。まあ、昨日は俺が勝手に最後までいたからいいんだけど」
結局昨日は3人で咲也を家まで送っていったのだ。
終電の時間は午前1時で、昨日はぎりぎりで飛び乗ることができたけれど、本当に1分遅かったらアウトだった。
「なら、家に泊ってく?」
咲也の言葉に、俺は思わず口に含んだ水を吹き出しそうになる。
そして、それを聞いたタクの顔が引きつる。
「さっくん?それは―――」
「うち、俺1人だから部屋なら余ってるし。いつでもいいよ?」
―――別に、特に意味はないんだろう。
そりゃそうだ。
俺も咲也も男なんだから。
深い意味なんてあるわけがない。
なのに、何で俺はこんなに動揺してるんだろう・・・・・。
「それ、俺も一緒じゃだめなの?」
タクの言葉に、咲也はちょっと困ったように笑った。
「ごめん、ちょっと他の人がいるとこじゃ話せないことなんだ」
その言葉に、俺は思い当たった。
もしかして、夏美・・・・・?
タクは、夏美が咲也の中にいることを知らない。
もちろん、こんな人のいる店で夏美が出てくるわけにもいかないだろう。
完全に、咲也がただのおかまになったようにしか見えないはずだから。
咲也が離れると、タクが俺を睨みながら言った。
「どういうこと?」
「え?」
「・・・・・真田さん、さっくんに手ぇ出さないでくださいね?」
「だ、出さないよ。何言ってんの」
「・・・そうですよね。あなたは夏美さんが好きだったんですもんね。その弟に、なんて、ねぇ?」
「そう・・・・だよ・・・・・」
そうだよ。
俺は、夏美と結婚するはずだったんだ。
そうなってたら、咲也は俺の義弟になってたはずで・・・・・
その咲也を好きになるなんて、あり得ないことだ・・・・・・
「俺さ、着替えとか持って来てないけど」
咲也の家へと向かう道を2人で歩きながら、俺は言った。
タクは咲也の家まで一緒に来ると言っていたけれど、咲也に『毎日2人も3人も送ってくれなくて大丈夫だよ。今日は柊真がいるから、タクは帰っていいよ』と言われ、仕方なく帰ったのだった。
「着替えくらい、俺の貸すよ。コンビニ寄って、歯ブラシだけ買って行こう」
と言われ、2人でコンビニに入る。
「あ、そういや下着も買った方がいいよね。あとは、靴下と・・・・・何が必要?」
なんか、恋人同士の会話みたいだよな・・・・・。
俺は気恥ずかしくなって、咲也と目を合わせないようにわざと店内をきょろきょろと見回していた。
「いや、そんくらい?―――あ、あれうまそう」
ふとレジの横を見ると、フランクフルトや唐揚げ、コロッケなどがショーケースの中に並んでいた。
「食べる?そういや、タクも柊真もあの店にいるときあんまり食わないよね?お腹すいてんじゃない?」
そう。俺もタクも、あの店にいる間はコーヒーばかり飲んでいるためかお腹がたぽたぽしてしまってあまり食欲もわかず、サラダくらいしか食べないのだ。
で、今頃になって腹が減ってくる。
結局そこでコロッケなどの惣菜をたくさん買って、咲也の家へ向かった。
家につくと、咲也は惣菜を皿に並べ、ビールを出してくれた。
「え、ビール、飲むの?」
咲也は確かまだ19だったはず。
まあ、あと1ヶ月ちょっとで20歳になるけれど。
「俺は飲まないよ。柊真はビール飲むって聞いたから、買っといたの」
「あ、そうなんだ・・・・。聞いたって、夏美に?」
「他にいないじゃん。・・・・・なっちゃんが、柊真と話したいって」
「夏美が・・・・・」
「とりあえず、食べてよ。俺も一緒に食べたいし。それで風呂入ってから、なっちゃんと代わるから」
「あ・・・・・うん」
2人で、他愛のない話をしながら、遅い夕飯を食べる。
咲也は、笑う時にそのきれいな顔をくしゃっとさせて思いきり笑う。
無邪気で、子供のような笑顔はまるでひまわりみたいだった。
―――『咲也は、自分のことをわかってないから・・・・・』
夏美の言葉が頭をかすめる。
なんとなく、その意味がわかる。
その笑顔にどれだけの威力があるか、咲也はたぶん全くわかってないんだと思う。
タクや、幹雄くん、それから圭くんの想いにも、本当には気付いていなんだろうな・・・・・。
「―――柊真、絵は昼間に描いてるの?」
「うん。今は、そうだね。特に時間を決めてるわけじゃないけど」
「へえ。今度、見にいってもいい?」
「え、俺の絵を?咲也、絵に興味あるの?」
「あるよー。美術館とか行くの好きだもん。スペインでも時々行ってたよ」
「マジで?じゃあ、今度個展やれたら見に来てよ」
「行く行く。んふふ、超楽しみ。―――あ、いいよ、俺片付けるから」
食べ終わった皿を持った俺に、咲也が声をかける。
「いいよ、皿洗いくらい俺にもできるから。咲也、風呂入ってくれば」
「そう?じゃあ・・・・・ごめん、ありがとう」
咲也が部屋から出ていくと、俺は軽く息を吐き出した。
皿を流しに運び、洗いものをしながら心を落ち着かせる。
別に、緊張する必要なんかない。
ただ、夏美の家に泊るだけだ。
そう。
俺は、夏美と話をするために呼ばれたんだから。
そう自分でもわかっているはずなのに―――
俺の脳裏には、咲也の無邪気な笑顔がこびりついて離れなかった・・・・・。
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