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第17話
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今日のさっくんは、どこか元気がない。
それはたぶん、今日まだこの店に姿を見せていないあの人に関係あるんじゃないかと、俺は思ってる。
昨日、さっくんの家に泊ったあの人は、当然今日もここに来るものだと思っていたけれど・・・・・
「・・・・今日は、真田さんまだ来てないね」
さっくんが休憩時間に俺のテーブルに来てパスタを食べてるときに、俺はさりげなく聞いてみた。
「・・・・今日はたぶん、来ないと思うよ」
パスタを食べながら、さっくんが答える。
その表情はやっぱりうかなくて。
「なんで?何か用事でもあるの?昨日、さっくんちに泊ったんだよね?」
「うん・・・・・」
さっくんは頷いて・・・・・持っていたフォークを、皿に置いた。
「俺・・・・・柊真を怒らせちゃったみたい」
そう言ったさっくんの顔はかなり落ち込んでいて、見ていて切なくなるほどだった。
「怒ったの?あの人が?」
それは、意外な言葉だった。
まだ出会って間もないし、あの人のことはよく知らないけれど。
のほほんとしたその風貌からは、怒っている顔など想像もできなかった。
「・・・・俺のせいだよ。俺が、無神経なこと言ったから・・・・・」
「さっくん・・・・・何があったか、話してみてよ。さっくんの思い過ごしって事もあるし・・・・・」
だけど、さっくんは寂しそうな笑みを浮かべて、首を横に振った。
「いいんだ。俺が、悪いのはわかってるから・・・・・。もう、きっとここには来ないよ」
そう言って、残ってるパスタを口に運ぶさっくんは。
なんだか痛々しくて、それ以上俺は何も聞くことができなかった・・・・・。
「送ってくれてありがと。またね、タク」
家まで送ってくれたタクに礼を言って手を振ると、タクが何か言いたげに俺を見つめる。
「さっくん、大丈夫?顔色、よくないよ」
「大丈夫だよ。明日はバイト休みだし・・・・・1日寝てれば、疲れも取れるから、心配しないで」
「・・・・わかった。じゃ、ちゃんと休んでね」
「ありがと。バイバイ」
家に入り、俺はそのまま洗面所へ向かった。
鏡の前にしゃがみこむと、顔だけをそこに映し、自分の顔をじっと見つめた。
「―――なっちゃん、ごめん・・・・・。俺、柊真、怒らせちゃった」
その瞬間、鏡の中の俺の顔がゆらりと揺れる。
『咲也・・・・』
なっちゃんが、俺を気遣うように見つめる。
「ごめん・・・・俺が、あんなこと言わなければ・・・・・」
なっちゃんが、首を振る。
『咲也のせいじゃないわ。もとはと言えば、わたしがいつまでも咲也の中にいるからいけないの。咲也にまで、そんな気を使わせて・・・・・柊真のことも、混乱させちゃってる』
「混乱・・・・そうだよな。なっちゃんと話してるのに、姿は俺なんだもんな」
『うん。でもね、咲也。柊真は優しい人だから、もうきっとそんなに怒ってないわよ。落ち着けば、きっとまたお店にだって来てくれるようになるわ』
「・・・・・そうかな・・・・・。もう、俺になんて会いたくないんじゃないかな・・・・」
『咲也、そんなこと―――』
「だって、そうだろ?俺、男なんだぜ?なのに―――なっちゃんの代わりに抱かれてもいいなんて、そんなの気持ち悪いって思うに決まってるよ。そんなやつに、会いたくなんてないよ。それが、普通のやつの反応だよ、俺は―――」
俺は、両手で顔を覆った。
目の前が真っ暗になる。
暗闇の中、うごめく影が俺に迫ってくる気がする。
『咲也!咲也、落ち着いて!大丈夫だから!咲也!』
「なっちゃん・・・・・俺・・・・・」
『咲也・・・・ごめんね・・・・あなたの頭を、撫でてあげたいのに・・・・・こんなに近くにいるのに・・・・・手が届かないなんて・・・・』
顔を覆っていた手から顔を上げると、鏡の中の俺が泣いていた。
「いいんだ・・・・ちゃんと、なっちゃんの顔が、見えるから。なっちゃん・・・・ごめん、もう少し・・・・・俺の傍にいて・・・・・」
俺は弱い人間だから。
誰かに、寄りかかりたくなるんだ。
だから、柊真にそばにいて欲しいと、そう思ってしまっただけ。
だけど、俺はなっちゃんにはなれないから・・・・・・。
だから・・・・・
俺の中のなっちゃんを、感じて欲しいと思った。
俺の中になっちゃんがいれば、柊真もそばにいてくれるって、そう思ったから・・・・・。
でもそれは、ただ俺自身の気持ちをごまかしているだけだったんだ・・・・・。
それから。
俺は、毎日なっちゃんと鏡越しに話をした。
時間が許す限りずっと。
そのまま、鏡の前で突っ伏して寝てしまうまで、ずっと。
でも、俺は気付いてなかったんだ。
そのことが――――なっちゃんとの会話が、俺の命を少しずつ削っていたなんて・・・・・・
それはたぶん、今日まだこの店に姿を見せていないあの人に関係あるんじゃないかと、俺は思ってる。
昨日、さっくんの家に泊ったあの人は、当然今日もここに来るものだと思っていたけれど・・・・・
「・・・・今日は、真田さんまだ来てないね」
さっくんが休憩時間に俺のテーブルに来てパスタを食べてるときに、俺はさりげなく聞いてみた。
「・・・・今日はたぶん、来ないと思うよ」
パスタを食べながら、さっくんが答える。
その表情はやっぱりうかなくて。
「なんで?何か用事でもあるの?昨日、さっくんちに泊ったんだよね?」
「うん・・・・・」
さっくんは頷いて・・・・・持っていたフォークを、皿に置いた。
「俺・・・・・柊真を怒らせちゃったみたい」
そう言ったさっくんの顔はかなり落ち込んでいて、見ていて切なくなるほどだった。
「怒ったの?あの人が?」
それは、意外な言葉だった。
まだ出会って間もないし、あの人のことはよく知らないけれど。
のほほんとしたその風貌からは、怒っている顔など想像もできなかった。
「・・・・俺のせいだよ。俺が、無神経なこと言ったから・・・・・」
「さっくん・・・・・何があったか、話してみてよ。さっくんの思い過ごしって事もあるし・・・・・」
だけど、さっくんは寂しそうな笑みを浮かべて、首を横に振った。
「いいんだ。俺が、悪いのはわかってるから・・・・・。もう、きっとここには来ないよ」
そう言って、残ってるパスタを口に運ぶさっくんは。
なんだか痛々しくて、それ以上俺は何も聞くことができなかった・・・・・。
「送ってくれてありがと。またね、タク」
家まで送ってくれたタクに礼を言って手を振ると、タクが何か言いたげに俺を見つめる。
「さっくん、大丈夫?顔色、よくないよ」
「大丈夫だよ。明日はバイト休みだし・・・・・1日寝てれば、疲れも取れるから、心配しないで」
「・・・・わかった。じゃ、ちゃんと休んでね」
「ありがと。バイバイ」
家に入り、俺はそのまま洗面所へ向かった。
鏡の前にしゃがみこむと、顔だけをそこに映し、自分の顔をじっと見つめた。
「―――なっちゃん、ごめん・・・・・。俺、柊真、怒らせちゃった」
その瞬間、鏡の中の俺の顔がゆらりと揺れる。
『咲也・・・・』
なっちゃんが、俺を気遣うように見つめる。
「ごめん・・・・俺が、あんなこと言わなければ・・・・・」
なっちゃんが、首を振る。
『咲也のせいじゃないわ。もとはと言えば、わたしがいつまでも咲也の中にいるからいけないの。咲也にまで、そんな気を使わせて・・・・・柊真のことも、混乱させちゃってる』
「混乱・・・・そうだよな。なっちゃんと話してるのに、姿は俺なんだもんな」
『うん。でもね、咲也。柊真は優しい人だから、もうきっとそんなに怒ってないわよ。落ち着けば、きっとまたお店にだって来てくれるようになるわ』
「・・・・・そうかな・・・・・。もう、俺になんて会いたくないんじゃないかな・・・・」
『咲也、そんなこと―――』
「だって、そうだろ?俺、男なんだぜ?なのに―――なっちゃんの代わりに抱かれてもいいなんて、そんなの気持ち悪いって思うに決まってるよ。そんなやつに、会いたくなんてないよ。それが、普通のやつの反応だよ、俺は―――」
俺は、両手で顔を覆った。
目の前が真っ暗になる。
暗闇の中、うごめく影が俺に迫ってくる気がする。
『咲也!咲也、落ち着いて!大丈夫だから!咲也!』
「なっちゃん・・・・・俺・・・・・」
『咲也・・・・ごめんね・・・・あなたの頭を、撫でてあげたいのに・・・・・こんなに近くにいるのに・・・・・手が届かないなんて・・・・』
顔を覆っていた手から顔を上げると、鏡の中の俺が泣いていた。
「いいんだ・・・・ちゃんと、なっちゃんの顔が、見えるから。なっちゃん・・・・ごめん、もう少し・・・・・俺の傍にいて・・・・・」
俺は弱い人間だから。
誰かに、寄りかかりたくなるんだ。
だから、柊真にそばにいて欲しいと、そう思ってしまっただけ。
だけど、俺はなっちゃんにはなれないから・・・・・・。
だから・・・・・
俺の中のなっちゃんを、感じて欲しいと思った。
俺の中になっちゃんがいれば、柊真もそばにいてくれるって、そう思ったから・・・・・。
でもそれは、ただ俺自身の気持ちをごまかしているだけだったんだ・・・・・。
それから。
俺は、毎日なっちゃんと鏡越しに話をした。
時間が許す限りずっと。
そのまま、鏡の前で突っ伏して寝てしまうまで、ずっと。
でも、俺は気付いてなかったんだ。
そのことが――――なっちゃんとの会話が、俺の命を少しずつ削っていたなんて・・・・・・
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