僕と君の図書室で。

彩芭つづり

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第2章 保健室での秘事

第9話 彼女の存在

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「ほら」

 すっと、人差し指を目の前に差し出される。嫌な予感が胸を刺す。
 こうされることに憶えがあった。昨日も、同じようなことをされた。
 こくりと息を飲む。

「な、なに……?」

 指を見ないように顔を背ける。彼はその人差し指でわたしの頬をぐっと押し、強引に正面を向かせた。
 強い熱情を含んだ瞳が、わたしを射貫く。

「昨日もしたんだから、わかってるでしょ? ほら早く」
「……そんなの、わからないよ……」

 わからなくなんかなかった。本当は、すべてわかっていた。
 彼がわたしに、なにをさせようとしているかということくらい、容易に想像できてしまう。だから抗いたかった。言いなりになどなりたくなかった。せめてもの反抗に、そうやってなにもわからないふりをした。

「本当にわからないの? 物覚えが悪いんだね」

 彼の細い指先が、わたしのくちびるをそっとなぞる。
 恐ろしくて、無意識に体を強張らせた。

「それじゃあ、何度もして無理矢理体に憶えさせるしかないよね」

 藍達くんがくすりと笑いながら言う。
 やめて、と言おうとした瞬間、喉奥を突く苦しさに目を見張った。

「わあ、羽村さんの口の中、あったかい」
「ンンッ……! ……ぐ……、げ……ぇっ」

 苦しむ声が漏れる。
 やっぱり想像したとおりだった。彼の長い指は、勢いよくわたしの喉を突き、口腔内を犯しはじめた。

「ねえ、羽村さん。僕のためにもっといてほしいな」

 さらに奥へと押し入れられる指先に、嘔吐えずきながら涙を堪える。舌の上を指の腹で刺激されれば、唾液が溢れてくちびるの端から伝い落ちた。

「んんゥ……ッ! お……ぇっ、む、ぐ……」
「羽村さん、苦しい?」

 瞳に涙を浮かべ、こくこくと何度も頷く。
 こんなの苦しいに決まっている。早くやめてほしかった。
 懇願する瞳を見せるわたしを一瞥した彼は、「ふうん」と小さく鼻を鳴らした。それから、口もとに薄く笑みを浮かべる。
 やめてくれるのかと思ったのに、指の動きはまるで止まる気配がない。わたしがちゃんと苦しんでいるかどうかを確認しただけで……彼は、はなから口腔内を犯すのをやめる気などなかったのだ。

「んくっ……ふ、ぅ……げ……っ」

 堪えていた涙が溢れ出し、頬をつうっと伝っていく。
 藍達くんは情感のこもった吐息を漏らした。
 熱を持った視線で、じいっとわたしを見つめてくる。きっとわたしの涙に欲情しているのだ。
 
 彼はちろりと舌なめずりをした。
 抵抗しようと腕を揺すると、ベルトの革がギチギチと音を立てる。手首が擦れて痛みに表情が歪む。

「……本当にかわいいよね、羽村さんは。僕の言葉、全部本気にしちゃってさ」

 満足したのか、藍達くんは突然わたしの口から指をすっと引き抜いた。
 瞬間、おびただしい量の酸素を吸い込み、胸を上下させながらむせる。苦しかった。吐いてしまうかと思った。
 ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返す。わたしの目尻に溜まった涙を、藍達くんは指で優しく拭い、そして呟く。

「羽村さん、舌出して」
「……な、んで……」
「ん? なんでって、そりゃあ」

 彼が突然、わたしに覆い被さった。
 びくりと体を引き攣らせ、目を見張って藍達くんのことを見る。近すぎる瞳の距離に息を飲んだ。
 すると、藍達くんは優しげな声で言う。

「キスしたい」

 胸の奥が、ぎゅう、と締めつけられる。
 今までキスがしたいなんて一度も言わなかったくせに。わたしがどんなに嫌がったって、無理矢理くちびるを奪ってきたくせに。
 どうして今さらそんなことを言うのだろう。
 わたしはくちびるを噛みしめた。

「……嫌だ」
「キスしたくない?」
「……したく、ない」
「なんで? 好きなんでしょ。僕にされるが」

 なんでって、そんなの決まっているじゃない。
 わたしは少し間を置いてから、ぼそりと呟くように言う。

「……風邪、うつるから」

 言ってから後悔した。
 風邪がうつるだなんて、どうしてそんなわかりやすい嘘をついてしまったのだろう。本音を隠すなら、もっとましな言い訳があったはずなのに。
 ……でも、とっさになんて答えればいいのかわからなかった。本当の自分の気持ちなんて言えるわけがない。

 ――キスしてほしい。
 それが本音だ。
 藍達くんからされるキスは気持ちよくて癖になる。
 また触れてほしいと願ってしまう。奪ってほしいと願ってしまう。
 嫌なはずなのに、そう思わせて、いつもわたしを惑わせるから――もう藍達くんとはキスしたくない。
 ……なんて、そんなこと。

 彼は、目を伏せるわたしの顔を覗き込む。

「今さらでしょ。すでにさっきあれだけキスしたんだよ」
「んぅ……やだ、だめだよ……うつっちゃう……」
「君が気にすることじゃない。ほら、こっちを向いて。僕が羽村さんの風邪もらってあげる」
「そ、そんなこと――んむっ」

 舌を強く吸い上げられる。
 じゅぷ、じゅぷと淫猥な水音が耳につく。
 体がじわりと熱くなって、脳をくらくらと揺さぶらせた。

「は、ん、んむぅっ……やめ……は、ぁ……っ、やだぁ……」
「……嫌? 本当に?」

 彼の腕に抱きすくめられる。髪を撫でられ、首筋に冷たい指先が触れるたびに、胎の奥がどうしようもなく疼いてしまう。
 嫌なのかなんて聞かないでほしかった。正直、自分でもわからなくなっている。痛かったり怖かったりするのは本当なのに、藍達くんから与えられるキスはどこまでも甘くて、優しくて……。
 抱かれて肌と肌が触れ合って、彼のぬくもりを感じてしまえば、藍達くんが言う冷たい言葉はすべて嘘のように思えてしまう。……痛い言葉も、傷つける言葉も、全部本心ではないように感じてしまう。
 これだけのことをされているのに、なんて自分は愚かなのだろうと思う。

 藍達くんが、わたしの手首を拘束するベルトに手を伸ばした。くちびるを合わせながら器用にそれを外していく。
 少しして、かちゃりと小さな音がした。

「拘束、外したよ」

 自由になった、わたしの両手。
 今なら彼を殴ることができる。押し飛ばすこともできる。ここから逃げることだって……もう、なんでもできるのだ。

 離してほしいと、わたしは確かにそう思っていた。やめてほしくて仕方がなかった。涙も枯れるほどに泣いた。
 ……それなのに、自由になった手でわたしが初めにしたことは。

「――なん、で」

 呟かれたその声は、微かに困惑の色を含んで震えていた。
 わたしはくちびるを引き結ぶ。なにを言われてもやめる気などなかった。両腕に、ぐっと力を込めた。

「……なんで羽村さんっていつもそうなの……?」

 聞かれて囁く。
 そんなの自分でもわからないよ、と。
 彼が狼狽えるのも仕方がない。拘束を解かれ自由になったわたしの手は、藍達くんを力強くのだから。
 
 彼はなんの抵抗もせず、されるがままにわたしに抱かれていた。そしてそのまま、静かに口を開く。

「……あのさ、さっきも言ったと思うけれど、僕の言葉は全部嘘で、全部演技だよ」
「……うん。わかってる」
「わかってないよ。わかってたら、真っ先に逃げるなり殴るなり、なにかするはずでしょ」
「そう……だよね」
「じゃあ、なんで僕を抱きしめたりするの。羽村さんって、そんなにばかな子だったの?」
「……そうだと思う」
「やっぱり僕に愛されてる気にでもなってるんでしょ。あれだけ言ったのにわからないなんて、勘違いも甚だしいね。いい加減に目を覚ましなよ」

 藍達くんはわたしに冷たい言葉を浴びせ続ける。
 だけど全然説得力がなかった。
 わたしが煩わしいのなら、さっさと腕を振り払えばいい。力ずくで虐げてきたのだから、今だって同じようにすればいい。
 ……それなのに、藍達くんはやらない。わたしの体を引き離そうとせず、されるがままになっている。

「……僕には、君がわからない……」
「……わたしも、自分がわかんないよ」
「そう。……ごめん」

 消えてしまいそうな声。
 抱き合っていなければきっと聞こえなかった。
 また謝られた。昨日もそうだった。

 ふいに授業終了を告げる鐘の音が校内に響き渡る。
 はっとし、藍達くんから慌てて体を離した。
 お互いに目も合わさず、なにも言わない時間が続く。……気まずい。
 そのままずっと黙っていると、彼は小さく溜め息をついてから口を開いた。

「……もういいや。授業も終わっちゃったし、この続きはまた今度」
「え、あ、藍達くん……っ」

 彼はベッドから降り、さっさと扉の前まで足を運ぶと、最後にわたしを肩越しに振り返って言った。

「体調、早くよくなるといいね」
「ま、待って……!」

 藍達くんは眼鏡の奥の瞳を一度ゆっくりとまたたかせる。

「――また、図書室で」

 それだけを言い残して、藍達くんはこの場から去っていった。
 扉が閉まる音が聞こえる。
 再び視線を上げたときには、さっきまでのわたしたちの行為を見て見ぬふりをするような、澄ました顔の保健室の姿しかなかった。

 ――また、図書室で。
 彼の言葉が、わたしの気持ちをぐしゃぐしゃにして掻き回す。気持ちが全然読めなくて、妙な苦しさだけが心に残る。制服の上から胸を押さえ、くちびるを噛みしめた。
 彼が去ったあとの保健室はやけに静かに感じた。自分の呼吸音と、時計の秒針の音。それだけが虚しく室内に響く。

「……わたし、なにやってるんだろ」

 ふと、ひとりごちる。
 自分でも理解できない行動と気持ちの変化に、うまく頭がついていかなかった。
 なぜ逃げなかったのだろう。なぜ抱きしめたのだろう。思い返せばわからないことばかりだ。
 深い溜め息をつき、なにげなく床へと視線を落とす。

「……あれ?」

 思わず目を見張る。そこにあったものを、腕を伸ばしてそっと拾い上げる。

「……藍達くんのスマホだ」

 忘れていってしまったらしい。藍達くんにしては珍しい。大事なものを置き忘れるほどに、わたしの行動は彼を動揺させたのだろうか。そんなことを思いつつ、ぼうっとそれを眺めていた。
 ふと、あることを思い出した。

「……あっ。図書室のときの動画!」

 昨日録画していた例のもの。
 あの忌々しいデータはまだここに残っている。消去するなら今しかない。なんなら一生こんなことができないようスマホごと叩き割ってやりたいくらいだ。
 誰かに見られたり、ばら撒かれたりする前で本当によかった。安堵しながらスマホの画面をタップする。
 ……しかし、手を止めた。

「……もしデータを消したことがばれたらどうしよう……」

 それの仕返しで、もっとひどいことをされるかもしれない。そうしたら、きっとまた新しい動画を撮られるに違いないのだ。もしかしたら、次こそ本当にデータをばら撒かれてしまうかもしれない。そんなことになったら元も子もない。とはいえ、彼の手もとにずっとこのデータが残っているのも嫌だ。
 ……一体どうするのが最善の方法なのだろう。

「とりあえず……失礼します」

 誰が見ているわけでもないのに、スマホに向かい頭を下げる。それから画面を指でなぞり開いた。
 ホーム画面には、電話やSNS、カメラ、ブラウザなど必要最低限のアプリのみが並んでいる。シンプルでとても藍達くんらしい。
 いちばん端にデータフォルダがあった。一瞬躊躇ったけれど、意を決して開く。中にあるカメラギャラリーのフォルダを開けた。
 いちばん最初に出てきたのは、さっき撮られた動画だった。

「ひっ……!」

 思わず声をあげてしまう。
 両手をベルトで拘束され、服装は乱されて、頬を紅潮させながら瞳には涙を浮かべ……。こんなの、アダルトビデオそのものだ。
 すぐに削除してやろうとゴミ箱のアイコンをタップしようとした。そのとき、動画は真っ暗になり音声のみが聞こえてくる。
 このときに藍達くんはスマホをベッドの下へと落としたらしかった。それに気がつかないほど、お互い貪るようなキスに夢中になっていた。

 暗い画面から、遠くのほうでわたしたち二人の会話が聞こえてくる。
 ……驚いた。今まで気がつかなかったけれど、行為の最中に出しているわたしの声は、こんなにも甘く、ねだるようなものだったのかと思った。まるで子猫が甘え鳴きしているようだった。そこに吐息も混じり、なんとも悩ましげに聞こえる。
 こんな声をずっと彼に聞かせていたと思うと、いたたまれなくなる。聞いていられなくなり、動画を停めて次へスワイプした。
 次の動画の冒頭に映し出されたのは、見覚えがある場所だった。薄暗く、いくつもの本棚が並んでいる。これは図書室だ。それも北校舎の。
 表示されている日付は昨日。時刻は、ちょうどわたしが朋哉に呼び出された頃。藍達くんはきっと、わたしたちの声が聞こえてから動画を回し始めたのだ。
 間もなくして、ふらふらした足取りで扉からわたしが入ってきた。何度も袖で涙を拭っている。そしてだんだんと近づいてくると、崩れるようにその場に座り込んだ。
 ……あまりに悲惨な自分の姿に目も当てられない。
 そしてこのあと、彼からひどいをされる。きっとそれもしっかり撮られているのだろう。
 続きを見る気にはなれず、次へスワイプする。
 表示された写真を見て、わたしは目を見張った。

「……え? なに、これ……」

 見慣れたいつもの教室。
 そして授業を受けるわたしの姿。
 まっすぐに黒板を見て、写真を撮られていることにまったく気づいていない。

「いつの間に撮ったの……?」

 どうしてこんなものが……と思いながらも、次の写真を見る。
 今度は体育の授業中だった。体操服に身を包みバスケットボールの試合を楽しんでいるわたしがいる。やっぱり写真を撮られていることにはまったく気づいていない。

「これって、先週の……だよね」

 次のデータへスワイプする。
 次も。次も。次も。
 カメラフォルダを見ていくと、何枚ものわたしの写真があった。
 朋哉と一緒に下校している写真。休み時間に友達と談笑している写真。電車に揺られる写真。授業中にうたた寝している写真。
 いくら遡っても、そこにはわたしの姿があった。

「どういうこと? どうしてこんなにわたしが……」

 あの藍達くんのことだから、変な写真があったらどうしようと思ったけれど……フォルダ内はなんの変哲もない日常のわたしばかりで埋め尽くされている。
 なぜ藍達くんはわたしを隠し撮りしていたのだろう。なにがしたいのだろう。……わからない。

 次々と写真を見ているうちに、とある一枚で手が止まった。

「これは……」

 思わず目を見張る。
 こくりと唾を飲み込んだ。

「……女の子……?」

 信じられなかった。
 そこには、藍達くんとおとなしそうな雰囲気の女の子が、二人仲よく寄り添っている姿があった。
 お互い制服を着て、駅前のジェラート専門店でアイスを食べている。藍達くんのスマホで女の子のほうが自撮りをしたようだった。
 藍達くんはいつも通りのポーカーフェイスだけど、女の子は幸せそうに頬を染めている。
 どう見てもカップルでデートをしているようにしか見えない。

「こ、これって彼女? ……ううん、まさかね。……でも……」

 ぶつぶつとひとりごとを言いながらスマホの画面を食い入るように見つめる。
 そこで、わたしはふと気づく。
 この子をどこかで見たことがあるような――そんな気がしたのだ。だけど、誰なのかは思い出せない。なんとなく、初めて見る顔ではないような気がする。最近見たような気さえする。誰だっけ……。
 思考回路を巡らせ、必死に思い出す。

「……あっ」

 頭の中に、くっきりと浮かび上がるひとつの影。
 それは、この画面の中で微笑んでいる少女と同じもの。
 もう一度スマホに目をやった。
 ……間違いない。わたしはこの子を知っている。この少女は……。

如月きさらぎさん……?」

 下の名前は、申し訳ないけどわからない。だけど苗字はたしか如月……だったと思う。たぶん。
 彼女は、わたしの隣のクラスにいる女子生徒だった。地味で、おとなしくて、まったく目立たないようなタイプだ。隣のクラスに何度かお邪魔したときにちらりと見たことがあるくらいで、話をしたことは一度もない。彼女と同じクラスの子も、会話したことはおろか、声を聞いたことだってほとんどないと言っていた。
 そんな子が、どうして藍達くんと一緒に写真を撮っているのだろう。こんなふうに、デートのようなことをして。
 ……二人はどんな関係なのだろう。

「藍達くん……こうして一緒に写真を撮るような女の子がいたんだ……」

 じっと画面を見つめた。
 動揺からか、ふるふるとスマホを持つ手が小さく震える。
 なぜか心がちくりと痛んだ。胸の奥になにかがつっかえたような、そんな気持ちになった。
 スマホをベッドの上に置く。
 自分がわからなくなる。藍達くんの友人関係なんて、べつにどうだっていいはずだ。こんな気持ちになることも、こうして気になってしまうことも、そもそもおかしい。藍達くんとわたしは、ただのクラスメイトだ。……それ以上でも以下でもなく。

「……そろそろ行こう」

 ひとつ小さく息を吐き、藍達くんのスマホをポケットに入れる。
 わたしは保健室をあとにした。
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