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第九章 王都生活編

第二百話 たまには平和な日も

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 暫く貴族主義の連中の対応の為に、週六で王都を巡回していた通称聖女部隊。
 最近は連中の活動も控えめなので王都巡回の回数を週四に減らし、その分を色々な事に当てている。
 学園に入園予定の子ども達は勉強もしているが、暫くお休みしていた冒険者稼業も復活している。
 ちなみに俺とレイアは普通に内政の仕事があるので、休みの日にしか冒険者活動はできていない。

「「「行ってきまーす!」」」

 今日は、とあるお宅のお片付けの依頼を受けに行くという。
 何でもお年寄りで腰が悪いので、ギルドに依頼したという。
 依頼金額は安いが、ミケ達はお金があるので依頼金額は気にしていない。
 たまに薬草取りでがっぽり儲けて、普段はあまり人がやらない低金額の依頼をこなしている。

「そして、俺は普通の仕事なのに何故か女装をしている」
「お屋敷の浄化は、聖女でやった方が効果的」

 俺はというと、レイアと一緒に呪われている貴族屋敷の浄化作業。
 何でも、聖女様が浄化した屋敷は入居率も良いという。
 それならわざわざ女装しなくても良い気がするが、レイア曰く周りの目があるから女装したほうが良いという。

「実際に購入に効果が出ている。ママは我慢する」
「はいはい、もう諦めたよ」

 レイアが力強く断言するので、俺は諦めて聖女の格好で作業をこなしていく。
 誰かいるか探索で念の為確認して、聖魔法で浄化アンド生活魔法で綺麗にする。
 殺虫効果のある薬草で屋敷をバルサンみたいにするのは、新しい住人がやることになる。
 特に幽霊みたいなものもいないので、普通は探索をしても何も引っかからない。
 それでも探索をするのには訳がある。

「お、誰かいた。馬小屋だ」
「レイアが見てくる」

 レイアが馬小屋を見てくると、直ぐに小さなトラ獣人の男の子を連れてきた。
 俺は直ぐに生活魔法で男の子を綺麗にして、食事と水を出す。
 実は誰も住んでいないので、スラムの子どものねぐらになっている時があるのだ。
 こうした子どもは保護されて、教会が運営する孤児院に送られる。
 ただ、中には街中から逃げてきた子どももいることがあるので、念の為街の騎士に引き渡されて身元の確認をする。
 今回も食事と飲み物を取らせたら、騎士の人が連れて行った。
 今までの経験上、三回に一回の割合で子どもを見つけている。
 それでも少しずつスラムの環境が良くなってきたので、昔よりは割合が減っているそうだ。
 そして殆どの場合、屋敷に入らずに周辺の施設の中にいる。
 やはり浄化されていない屋敷の中には、スラムの子どもといえども入れない様だ。

「今日はこれで終わり」
「全部で五軒か。毎回このくらいが丁度いいな」

 午前中をかけて、今回対象の屋敷の浄化は完了。
 午後は王城で執務に戻る。
 その前に、うちのお屋敷にレイアと帰って昼食にする。

「「ただいま」」
「「「おかえり!」」」

 どうもミケたちも午前中で帰ってきた様だ。
 だけど一緒に迎えてくれたフローレンスのそばに、さっき保護された男の子がいる。
 確か騎士に預けたはずだけど。

「その子ね、どうもうちの子になりたいみたい」
「冒険者活動の終わりにたまたま騎士の詰め所の近くにいたら、騎士から声をかけられまして」
「教会からも、無理矢理連れていくのは忍びないから預かってくれないかと言われました」

 エステルとリンとフローレンスから言われたけど、これは初めてのケースだぞ。
 既に子ども達は歓迎ムードだから、ここで孤児院送りとは言えない。
 まだ少し受け入れる余地はあるので、午後王城に行ったら手続きしていこう。
 名前はコタローって言っていたな。
 騎士の確認済みなら、孤児で間違いないだろう。

「そうか、それはすまんな。手続きを進めておくから、その子を宜しく頼む」
「いえ、まだ我が家にも若干余裕がありますから。これ以上はちょっとキツイですけど」

 宰相からも頼むと言われたので、コタローはこのままうちの子になることが確定となった。
 三歳だから、ちょうどマシュー君達と一緒になる。
 良い遊び相手がいるから、仲良くなって欲しい。

 そんなことを思いつつ、王城でガリガリと業務をこなす。
 今日はレイアと一緒に、宰相と防壁工事の進捗管理。
 
「防壁は一ヶ月もあれば完成だな。門とかはドワーフの親方にも意見をきかんとならないがな」
「既存城壁と防壁の間の基礎工事も、同じ位に終わりそうです。そのまま計画通りに都市計画を実行ですね」
「軍施設の拡張とスラムの解体。これらが先決じゃな。これが進むだけでも大きい」
「仕事はいくらでもある。これからは街道整備も始まる」

 ビアンカ殿下も加わって話を進めているが、当分は仕事が無くならない。
 スラムや職の無い人の救済にもなるし、経済も循環する。

「街道整備と併せて、主要都市の防衛力のアップも開始じゃな」
「その工事も人を使うし、市街地の拡張をする所もある」
「その後は、ノースランド公爵領に接する未開地の開発か。やることが一杯ですね」
「なに、順にやるだけじゃ。数年単位の事業で、そう簡単には終わらない」

 前に陛下が行いたいと言ったことが、実際にスケジュールに載ってきた。
 これからは、確実に工事を進めて行きたい。
 不安定要素はあるけど。

「貴族主義の連中は、最近静かですね」
「人神教国が大人しいのもあるだろう。どうも戦費を使い過ぎたようだ」
「となると、今後は人神教国の金稼ぎにも注意ですね」
「貴族主義の連中と併せて、監視継続じゃな」

 このまま大人しくなってくれる事を祈りつつ、夕方になったのでお 屋敷に帰宅。
 帰る際にコタローに関する書類ができたので、受け取っていく。
 これで正式にうちの子になった訳だ。

「コタローがうちに来たことを歓迎して」
「「「「「乾杯!」」」」」

 うちに着くと、パーティールームでコタローの歓迎会が始まっていた。
 エステルが音頭を取って、仲良く食べている。
 コタローもマシュー君達と一緒に、仲良くご飯を食べている。
 うん、ここまではとてもいい光景だ。

「おお、サトーか。遅かったのう」
「先に頂いていますわよ」

 何故に家主よりも先に、陛下と王妃様達が夕食を食べているのですか。
 しかも何故か王太子様に、王太子妃様とウィリアム様もいる。
 各閣僚にサザンレイク侯爵とルーナ様もいるし、ノースランド公爵もいるぞ。
 他にもアルス王子やルキアさんとヘレーネ様達もいる。
 バルガス公爵やサリー様にバスク子爵もいるから、知っている人が勢ぞろいしている。

「サトーの書類を見たら、これは間違いなく歓迎会は開くと思ってな」
「サトーの所なら、大人も子どもも気兼ねなく皆でパーティーを楽しめますわ」
「ここの所ギスギスしていた事が多かったので、ちょっとした息抜きです」
「もうそろそろ、息子とビアンカに宰相もきますわ。流石はスラタロウの料理といった所ですね」

 既に酔っ払いモードになっている陛下と王妃様達。
 そこにビアンカ殿下に宰相もやってきて、ショコラがドラコとシラユキの母親も連れてきた。
 子ども達のところには、ウィリアム様にルーナ様も混じっている。

「あの、王太子様に王太子妃様? さっきまでスラムの孤児だったコタローとウィリアム様がおしゃべりしてますが」
「何も問題ないだろう。サトーの所に拾われたとなれば、それなりの能力が期待できる」
「そうですわ。聞けばウィリアムと同じ歳というので、良い友達になれますわよ」

 既にコタローに対する期待が大きいぞ。
 でも、今は子ども同士仲良くしていればいいかな。
 大人と子どもに分かれて無礼講になっているけど、たまにはこんな日も良いな。
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