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第十一章 帝国編

第二百三十六話 白龍王の山への道のり二日目

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 翌日も朝早くから出発。
 ねぼすけのエステルとミケもそうだが、他の人もまだ眠そうだ。
 なので、朝食までは再び馬車の中で寝ている。
 俺も眠いけど、御者だから我慢しないと。
 うちの馬は文字が分かるので馬任せでも本当は大丈夫だけど、流石に御者が乗っていない馬車は不審に思われるだろう。

「はあ!」
「せい!」

 暫く街道を進むと、森に入っていった。
 昨日は畑が多い所を通ったので大丈夫だったが、今日は魔物がある程度出てくる。
 とはいってもそんなに強い魔物ではなかったので、皆で連携してあっという間に倒していく。
 新しいメンバーの戦闘スタイルは、シラユキが魔法使いメインでレイピアとかも使用する。
 水や氷魔法の威力は中々だ。
 ルシアは、でっかいバトルアックスを使った戦士系。
 水魔法も使えるが、自ら戦うのも好きなようだ。
 ソフィー皇女も最初は血や血の匂いにビビっていたけど、段々と戦いに慣れてきた。
 オリガの戦闘スタイルを少し軽くした感じだ。
 うーん、前衛が多いからリンが前衛の指揮をしている。
 後衛が、俺とポチにシラユキしかいない。
 ベリルも特攻型だしな。

 そんなこんなで戦闘を続けていると、目の前にゴブリンの集団が現れた。
 倒した獲物の血の匂いのにおびき寄せられたらしいが、上位種もいないし数が多くても雑魚だ。

「あれがゴブリンですか。初めて見ましたが気味が悪いですね」
「そう、そしてオークと並ぶ女性の敵よ」
「弱いんだけどね!」
「見つけたら殲滅しないと」
「被害が出る前に潰さないとね」

 あ、女性がいわゆる女性の敵を見つけたので本気になっている。
 目つきも変わっているぞ。
 シラユキでさえレイピアを取り出して、ゴブリンを次々に串刺しにしていく。
 勿論ソフィー皇女もゴブリンを倒していった。

「ベリル、女性って怖いね」
「クゥーン」

 思わずベリルもビビる女性陣の戦いっぷりだった。
 ゴブリンは全く使うところがないので、ポチに魔法で大きな穴を掘ってもらい次々にゴブリンを燃やして埋めていった。
 しかしエステルにドラコよ、盛大に炎魔法でゴブリンを燃やすなあ。
 火事にならないように周りの木々に水魔法をかけて貰ったけど、皆エステルとドラコを止めないし。
 ある意味、ゴブリンが可哀想に思えてきた。

「サトー様、この子がくっついてきたのですが」

 ゴブリンの後始末も終わったので出発しようとした所、ソフィー皇女が手に何かを持ってこちらに来た。
 よく見ると、手の平サイズの小さなサルだった。
 前世では、このくらいのサイズでも成体のサルがいたはず。
 冒険者ハンドブックで調べてみると、フォレストマーモセットと言う名前だった。

「ソフィー皇女。フォレストマーモセットというサルで、これでも大人みたいですよ」
「へー、そうなんですね」
「ソフィー皇女に懐いていますから、従魔として連れて行っても良さそうですね。食事も果物等で大丈夫みたいですし」
「わあ、それは嬉しいですね。早速名前を付けてみます」

 ソフィー皇女は、早速フォレストマーモセットに名前を考えている。
 ミケやリンみたいに、問題のある名前はつけないでください。

「そのままマーモちゃんにしますわ」
「キキ!」
「喜んているみたいですね。後で冒険者ギルドに寄って、従魔登録をしましょう」
「はい!」

 良かった。無難な名前をつけてくれて。
 ミケがこっそりと「モン○ッチが良かった」と言っていたが、それはつけちゃ駄目なやつです。
 早速ポチがマーモに色々教えている。
 この間のホワイトがニー達に教えたような、主人を襲う奴は問答無用で吹き飛ばすという過激な事は教えないで貰いたい。
 
 暫く森の中での戦闘が続いたが、ようやく森を抜けて畑が広がるエリアに入った。
 馬車の中のメンバーもほっとしている。
 やはり、常に戦闘があると警戒するのは大変だよな。
 街道の休める箇所があったので、お昼休憩にする。
 周りには同じく森を抜けてきた人やこれから森を抜ける人がいたので、有名な休憩スポットなのだろう。
 ついでだから、休憩している人に色々聞いてみよう。

「これから森を抜けるのですか?」
「ああ、そうだよ。最近は魔物が多くて、抜けるのも大変なんだよ」
「そうなんですか。魔物は定期的に退治されないのですか?」
「少し前までは冒険者をしている獣人がよく森に入っていたけど、内務大臣ってのが獣人の活動を制限してしまったんだよ」
「ええ、そうなんですか」
「ああ。今じゃ王都は獣人の浮浪者も多くなり、治安が悪くなってね」

 わお、まさに人神教国が色々悪さしている時の内容だ。
 獣人差別が酷いあたり、俺達が入る前のブルーノ侯爵領に状況が似ているな。
 ソフィー皇女も話を聞いて、思わず俯いている。
 ここまで異変が起きていると思わなかったのだろう。
 とにかく、内務大臣をどうにかしないと。

「早めに内務大臣を、どうにかしないといけませんね」
「ええ、獣人差別があることは全く知りませんでした。勉強不足でお恥ずかしい限りです」
「いや、これが人神教国の手口ですよ。今ならまだ間に合いますから」

 馬車を走らせていても、ソフィー皇女は色々考えていた。
 民の暮らしを知らなすぎるのもあっただろうが、それでもショックだったのだろう。
 ただ、皇族としての今までの生活もあったのだから、ソフィー皇女の責任ではない。
 元凶と言われる、内務大臣を止めないといけない。
 とはいえ初めての道でもあるのだから、気をつけながら飛ばしていく。

「「わあ、おさるさん!」」
「新しい家族だから、仲良くするのよ」
「「うん!」」

 夕方になったのでお屋敷に戻ったら、オーウェン皇子とベラ皇女がソフィー皇女の方にとまっていたマーモを見つけて喜んでいた。
 二人の間を、ぴょんぴょんと跳ねながら移動するマーモ。
 オーウェン皇子とベラ皇女は、とってもいい笑顔でマーモを撫でている。
 
「「「良かったね!」」」
「「うん!」」

 そこにマシュー君達がニーを連れてきた。
 どうもオーウェン皇子とベラ皇女は、マシュー君達がニーを連れているのが羨ましかったみたいで、二人を囲んで一緒になってはしゃいでいた。
 
 さて、明日は順調に行けば王都に着く。
 そこから白龍王の山へ明日中につくかな。
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