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第十四章 公国

第二百八十六話 尋問という名の運動

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「お茶にしましょうか」

 王妃様の一言で休憩となった。
 フローレンスが呼ばれて、お茶の準備が始まった。
 その間に、陛下や閣僚を王城へ送っていった。
 公国の動向を調べたり巡回の強化をするとはいえ、ほぼ俺が担当になったので気が楽になったようだ。
 ミケ達も巡回に戻るとの事なので、エステルも一緒についていった。
 なので、残ったのは俺とレイアとビアンカ殿下。
 それに王妃様達に、ドラコとルシアの母親。
 王妃様達とドラコとルシアの母親は、さっき何やら話をしていた。
 いい笑顔をしているあたり、ろくでもない事を考えていそうだ。
 フローレンスに聞いたら、四人のメイドさんも侍従用の部屋で休んで貰っているという。
 皆さん遠くからお疲れ様です、ゆっくりと休んで下さい。

「ふう。すみません、少し落ち着きました」

 紅茶を一口飲んで、ジュリエット様はようやく落ち着いた様だ。
 フローレンスが、紅茶のおかわりを注いでいる。
 フローレンスには、先程の話をしてある。
 女装の件は、しょうがないといった感じで軽く流されてしまった。

「サトー達が動くにしても、リディアの調子が良くなってからですわね」
「それで問題ない」
「今のうちに、情報を集めるのと再度王国に入ってきた人神教国のネズミを駆除せぬと」

 毒の治療は成功したとはいえ、直ぐにリディア様が完治はしない。
 なので、先ずはできることから始める。
 しかし、またもや人神教国かよ。
 もう国を叩き潰したい気持ちで一杯だ。

「う、うーん」

 ここで、寝込んでいたリディア様が目を覚ました様だ。
 俺は診察を行い、体の様子をみる。
 毒は綺麗に無くなった様なので一安心だ。

「お姉様、何だか調子が良いです」
「そう、良かった。もう大丈夫よ」
「それに、見えてなかった右目でもはっきりとお姉様が見えます」
「え! そうなの! 良かったわね。聖女様が治してくれたんだよ」

 リディア様は、右目が見えてなかったのか。
 毒で全身が淀んでいたから、個別の悪い所は考えずに全力で聖魔法を使ったからな。

「今日は消化の良い物で我慢ですけど、明日からは少しずつ固形物を食べられると思いますよ。特製ポーションを飲まれたので、思ったよりも回復は早そうです」
「そうですか、重ね重ね有難う御座います」

 これで治療も一息ついた。
 後は体力が回復すれば大丈夫。
 聞けば、リディア様は六歳でミケと同じ歳だという。
 後で、ミケにも教えておこう。
 ジュリエット様は、エステル達より一つ上の十五歳。
 道理で、エステルよりもしっかりとしていると思ったよ。

「王妃様、確かオリエント公国は島国でしたよね?」
「そうよ。ノースランド公爵領からも船が出ているわよ」
「有難う御座います。となると、相手がよくわからないので、また夜中の水中ジェットコースターで行くしかないのか」
「ハハハ、前回はかなり怖がっていたな。今回は距離もあるから、更に楽しめるぞ」
「うう、二度とあんな思いはしたくなかったのに……」

 水中ジェットコースター確定かよ。
 あれは本当に怖いんだよな。
 何か怖くない方法、無理だ思いつかない。

「そしてまた潜入捜査になるから、サトーは女装じゃ」
「あ、それもあったのか。もうこのままでいいんじゃないですか?」
「ダメ、聖女で活躍する事で人神教国にもプレッシャーになる」

 そして今回も女装する羽目になった。
 男物のカツラをかぶるのでは駄目なのかと思ってしまう。
 前回の事があったので、公国の王城に乗り込む前にフルメンバーを呼ぶ事にする。
 でも、うちのメンバーは戦闘狂が多いからな。
 やりすぎないかが心配だ。
 
「さて、これで一段落ね」
「夜にまた様子を見に来るわ」
「それまで、ゆっくり休むのよ」

 王妃様がまた来ると言ったが、絶対に鍋目当てだな。
 王妃様達は、ワイワイ楽しめる鍋が好物だしな。

「さて、私達も王城に連れて行ってくれ」
「なに、ちょっとふざけた奴らとお話するだけだ」

 そして、ドラコの母親とルシアの母親も王城に行くという。
 これはもしかしなくても、王妃様達と話をしていた件だな。
 王妃達と一緒に、お話の名の下で尋問するつもりだ。
 フローレンスに後は任せて、仕事の続きがあるレイアとビアンカ殿下と共に王城に戻った。

「サトー、戻ってきたか」
「はい。王妃様達とドラコとルシアの母親が、笑顔で先程の暗殺者とお話したいと言ったので」
「かなり怖かった」
「そ、そうか。有益な情報が出てくればいいがな」

 宰相に王妃様達の事を話すと、引きつった顔になっていた。
 後で軍務卿が言うには、暗殺者は自白剤などいらない位にぺらぺらと色々な事を喋ったという。
 何があったかは、一切言わなかった。

「いい運動になったな」
「暴れて感謝されるって、いいもんだな」

 帰宅時に現れたドラコとルシアの母親は、とてもいい笑顔になっていた。
 相当暴れたのは、聞かなくても分かった。
 王妃様達は、後から来るという。
 きっと王妃様達も、いい笑顔になっているはずだ。

 人数が少し増えたので、鍋はパーティールームで行うことに。
 スラタロウはリディア様の事を知って、消化の良いお一人様鍋を作っていた。
 一人鍋に、子ども達が食いついていた。
 ちなみにジュリエット様もリディア様も、うちの子ども達に囲まれて笑顔になっている。
 そして始まったどんちゃん騒ぎ。
 
「お、美味しい」
「凄く美味しいよ、お姉様!」
「これをスライムが作ったなんて」
「あんなスライムなら、うちにも欲しいね!」

 ジュリエット様もリディア様も、スラタロウが作った料理にビックリしている。
 勿論侍従もその味に驚いていた。
 思わずリディア様がスラタロウが欲しいと言っていたが、スラタロウは絶対にあげません。

 そして、尋問という名の運動で楽しんだのか、王妃様達とドラコとルシアの母親は鍋とともに米酒が進んでいた。
 とても楽しそうに話をしているけど、話している内容が物騒なので近寄らない様にしよう。
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