乙女ゲーの専属執事に転生した俺は未熟な令嬢を破滅フラグから救う

神崎夜一

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第四話 リアーナ学院

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 馬車を走らせること20分ほど、グリザリカ帝国の最北端に存在するリアーナ学院に到着した。私はエリザ様の手を取りながら馬車から降りる。目の前の門を潜るとその奥には大きな学院があった。

「ルシア、学院って大きいわね」
「エリザ様のお屋敷三つ分くらいはありそうですね」

 学院は中世ヨーロッパ風な茶色いレンガと白い石で構築されており、広さはドーム会場ほどである。私たちが学院を見て立ち止まっている間にも、生徒たちが横を通り過ぎていく。

「私たちも行くわよ」
「はい」

 生徒たちに促されてエリザ様も学院までの広い大通りを進んでいく。すると、周りからひそひそ声で微かに聞こえてくる。

「なんてお綺麗なの」
「お美しいわ」
「王子様とお姫様みたい」
「ずっと見てられるわ」
「歩くたびに絵になるわ」
「お二人の姿に見惚れるわ」
「ぐぬぬ……」

 エリザ様はとても美しく、歩くたびに密かに歓声が上がる。私も何かと視線を感じるような気がする。

「お二人は恋人なのかしら」
「噂で公爵家の令嬢にはお美しい方がいると聞いていたのだけど、あの方だったのね」
「素敵だわ」
「わ、私の方が可愛いわよ……」

 少し周りが騒がしくなったのか、エリザ様は痺れを切らしたかのように口を開いた。

「私、周りから視線を感じるのだけど」

 エリザ様も通り過ぎる生徒からの視線や歓声が違和感に思ったのだろう。実際、同年代の生徒たちと交流する場は少なかった。あったとしても社交の場で、それも年配の方が殆どだった。そのため、今の状況に戸惑いを隠せない様子だ。
 
「それはエリザ様がお美しいから見てしまうのです」

 学院までの大通りを歩くエリザ様は艶やかな銀色の髪を靡かせる。その横顔は何よりも美しい。
 
「ルシアが私を褒めてくれるから多少はそうなのかもって思っていたけど、こんなにもだったなんて」
「誰よりも美しいから仕方がありません」
「そ、それに外交の場とかでも何かと褒めてもらえていたのが不思議でならなかったのよ。私がまだ子供だから褒められてたんだと思っていたわ」
「今まで自覚がなかったことに驚きです。エリザ様はお美しいです。それに時には凛々しく、時にはダメな一面があるのが可愛げがあって私は好きですよ」
「ル、ルシア!?ここは公の場です……。屋敷に戻ってから聞かせてください……」

 耳と頬を赤くするエリザ様。その様子を見たら恥かしくなってしまう。
 
「これからは少し控えます……」
「ルシアは公の場では褒めないで、恥ずかしいから……」
 
 周りの視線はあれど、二人の恋人のような空間に誰も話しかけようと思わなかった。

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