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襲撃
123 クイの復讐1
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クイが人界に来た翌日、七月二十八日。
当然、鬼が近くに潜んでいるなどということは、慎也たち誰も、思ってもいなかった…。
この日、慎也と舞衣は、子供=娘たちをつれて、運転手付きのマイクロバスに乗り込んだ。亜希子のところへ検診に行くのだ。
亜希子は、勤めていた名古屋の研究機関を辞めて、独立していた。夫の徹も一緒である。岐阜市内(といっても、外れの田舎で、慎也宅に近い所)に小さな研究所件診療所を開設した。
診療所としては主に土曜と日曜に開けていて、メインは研究所である。研究だけでは収入が無いので、需要のある休日の診療で収入を得ているのだ。
開設にあたり、沙織・杏奈・環奈の実家、山本家から多額の資金援助を受けた。今年、医大に入った杏奈と環奈は、将来は、この研究所へ就職することになっている。その事が前提での山本家の援助だ。
また、国からの補助金もあり、神子の研究を一手に負っている。但し、この研究については極秘事項となっていた。
今日は、この極秘事項の為の検診である。
娘たちは、見た目、十二歳くらいの美少女に成長していた。
検診では全裸にされて体を詳しく調べられるし、血液検査もある。羞恥もある上、針を刺されれば当り前だが痛い。当然、嫌がる…。慎也と舞衣の二人掛かりで、宥め賺しての、二カ月に一度の大仕事だ。
優しい父親、慎也の言うことには、娘たちも素直に従う。また、愛(舞衣の子)はもちろん他の子も、実母たちが正妻様と仰ぐ舞衣には、よく従う。よって、こういう引率は慎也と舞衣の担当になっていて、この間の神社社務所は、貼り紙をしての臨時休業である。
一方、祥子と杏奈・環奈は、長良川河川敷の畑で薬草の世話。神社に隣接する堤防を越えたところで、家から歩いて行ける場所である。
慎也と、徹、巫女バイト早紀の三人が薬草に詳しい。それに触発されたのか、杏奈・環奈も興味を持ち、空いていたこの畑で、栽培を始めた。
亜希子の研究所の研究でも、ここの薬草を使うことになっている。ただ、薬草の研究に関しては、主に徹の担当だ。
沙織と恵美の方は、その河川敷畑から少し上流の河原へ、白百合摘みに行っていた。
神社境内の山百合が咲き終わると、河原に白百合が咲く。
娘たちは、百合の花が好きだ。我慢して検診を受けている娘たちへのご褒美ということだった。
クイは、前日に人界へ来てねぐら造りを終え、夜になったら行動を開始しようと、そのねぐらで寝そべっていた。が、人の気配に気が付いて、静かに起き上がった。
外の様子を覗き見ると…。
なんと、目当ての者が、すぐ近くに居るではないか。
不気味な笑みを浮かべ、行動を開始した。
白百合を摘んでいた沙織…。
自然に生えている百合の為、草に分け入っての作業である。綺麗に咲いているのを選び採り、十本程手に抱えていた。
顔に花を近づけると、素晴らしい芳香…。娘たちも喜ぶであろう。
その、沙織の正面二十メートルほど。竹薮の中から、急に大柄な男が出てきた。
まさか、そんな所から人が出てくると思っていなかった沙織…。釣り人か、自分たちと同じ白百合摘みの人かと、出てきた人に視線を向けた。
…着物姿。二本の角。
…鬼!
心臓が大きく脈打つのを感じ、手に抱えていた白百合を取り落としてしまった。
沙織から少し離れたところにいた恵美は、白百合を沙織に任せ、他に面白そうな物が無いかとブラブラしていた。
不意に沙織が百合を落としたのに気が付いて、何事かと注視する。
(鬼! あ、あいつは…)
美月が殺されたときの、千里眼の能力で見た記憶が蘇る。
(間違いない! 美月さんを殺した鬼…)
明らかな殺意を感じ、恵美は焦った。
今にも跳びかかってきそうな鬼。
防御力を持たない沙織の方が、鬼に近い。
(マズイ!沙織が危ない!)
護身用に懐中している、女鬼からもらい受けた短刀を抜く。そして、猛然と走り出し、沙織の前へ出ようとした…。
恵美は親友の危機に焦っていた。
亜希子から聞き、気を付けなければと思っていたことを忘れていた…。
見てはいけないものを見てしまったのだ。
赤く光る鬼の目を…。
突然、体の自由が利かなくなった…。
当然、鬼が近くに潜んでいるなどということは、慎也たち誰も、思ってもいなかった…。
この日、慎也と舞衣は、子供=娘たちをつれて、運転手付きのマイクロバスに乗り込んだ。亜希子のところへ検診に行くのだ。
亜希子は、勤めていた名古屋の研究機関を辞めて、独立していた。夫の徹も一緒である。岐阜市内(といっても、外れの田舎で、慎也宅に近い所)に小さな研究所件診療所を開設した。
診療所としては主に土曜と日曜に開けていて、メインは研究所である。研究だけでは収入が無いので、需要のある休日の診療で収入を得ているのだ。
開設にあたり、沙織・杏奈・環奈の実家、山本家から多額の資金援助を受けた。今年、医大に入った杏奈と環奈は、将来は、この研究所へ就職することになっている。その事が前提での山本家の援助だ。
また、国からの補助金もあり、神子の研究を一手に負っている。但し、この研究については極秘事項となっていた。
今日は、この極秘事項の為の検診である。
娘たちは、見た目、十二歳くらいの美少女に成長していた。
検診では全裸にされて体を詳しく調べられるし、血液検査もある。羞恥もある上、針を刺されれば当り前だが痛い。当然、嫌がる…。慎也と舞衣の二人掛かりで、宥め賺しての、二カ月に一度の大仕事だ。
優しい父親、慎也の言うことには、娘たちも素直に従う。また、愛(舞衣の子)はもちろん他の子も、実母たちが正妻様と仰ぐ舞衣には、よく従う。よって、こういう引率は慎也と舞衣の担当になっていて、この間の神社社務所は、貼り紙をしての臨時休業である。
一方、祥子と杏奈・環奈は、長良川河川敷の畑で薬草の世話。神社に隣接する堤防を越えたところで、家から歩いて行ける場所である。
慎也と、徹、巫女バイト早紀の三人が薬草に詳しい。それに触発されたのか、杏奈・環奈も興味を持ち、空いていたこの畑で、栽培を始めた。
亜希子の研究所の研究でも、ここの薬草を使うことになっている。ただ、薬草の研究に関しては、主に徹の担当だ。
沙織と恵美の方は、その河川敷畑から少し上流の河原へ、白百合摘みに行っていた。
神社境内の山百合が咲き終わると、河原に白百合が咲く。
娘たちは、百合の花が好きだ。我慢して検診を受けている娘たちへのご褒美ということだった。
クイは、前日に人界へ来てねぐら造りを終え、夜になったら行動を開始しようと、そのねぐらで寝そべっていた。が、人の気配に気が付いて、静かに起き上がった。
外の様子を覗き見ると…。
なんと、目当ての者が、すぐ近くに居るではないか。
不気味な笑みを浮かべ、行動を開始した。
白百合を摘んでいた沙織…。
自然に生えている百合の為、草に分け入っての作業である。綺麗に咲いているのを選び採り、十本程手に抱えていた。
顔に花を近づけると、素晴らしい芳香…。娘たちも喜ぶであろう。
その、沙織の正面二十メートルほど。竹薮の中から、急に大柄な男が出てきた。
まさか、そんな所から人が出てくると思っていなかった沙織…。釣り人か、自分たちと同じ白百合摘みの人かと、出てきた人に視線を向けた。
…着物姿。二本の角。
…鬼!
心臓が大きく脈打つのを感じ、手に抱えていた白百合を取り落としてしまった。
沙織から少し離れたところにいた恵美は、白百合を沙織に任せ、他に面白そうな物が無いかとブラブラしていた。
不意に沙織が百合を落としたのに気が付いて、何事かと注視する。
(鬼! あ、あいつは…)
美月が殺されたときの、千里眼の能力で見た記憶が蘇る。
(間違いない! 美月さんを殺した鬼…)
明らかな殺意を感じ、恵美は焦った。
今にも跳びかかってきそうな鬼。
防御力を持たない沙織の方が、鬼に近い。
(マズイ!沙織が危ない!)
護身用に懐中している、女鬼からもらい受けた短刀を抜く。そして、猛然と走り出し、沙織の前へ出ようとした…。
恵美は親友の危機に焦っていた。
亜希子から聞き、気を付けなければと思っていたことを忘れていた…。
見てはいけないものを見てしまったのだ。
赤く光る鬼の目を…。
突然、体の自由が利かなくなった…。
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