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鬼の世界へ
37 ゴールド首輪
しおりを挟む「さあ、真面目な話をしますよ。美玖。
このゴールドは、通常は愛玩用という意味です。しかし、私はあなたを単なる可愛がるだけの存在として扱うつもりはありません」
え、え~と、単なる愛玩用じゃなければ、いったいどんな……。
「仕事や生活の上での有意義な情報をもたらす存在だと思っております。それをこれからも大いに期待します。そういう意味では仲間とか相棒とかいった存在でしょうか」
ええ~と、仲間…相棒……?
ペットじゃなくて、盲導犬とか警察犬とかみたいな感じかな?
でも、そんなこと言われましてもね、私に何が出来るの?
「いやだ、そんな難しい顔しないでよ。具体的には、あなたの知っている人間界の知識を披露してくれれば良いのよ。既にしてるでしょ。ラクッサに料理のコト教えたり…」
なるほど、そんなことでよいのですか。
そうですね。単に可愛がられるだけじゃなく、何か役に立てる方が私も嬉しいです。了解であります。
「あなたには、この敷地内での自由を保障します。飼ってるニンゲンたちを逃がしたりだとか、反乱起こさせるだなんてことだとかしなければ、後は自由です。ここまで、理解してもらえた?」
「は、はい。分かりました。リューサさんに御迷惑かけるようなことは決してしませんし、出来る限り、皆さんのお力になれるように努力します」
「良かった。良い子ね。
あ、あと、これは命令じゃないんだけど、出来れば美玖にしてもらいたいなってことが二つ……」
「え?何ですか?」
「一つは、子どものコトなんだけど、今すぐでなくて良いの。相手もあなたが自由に選んで良いから、産んでもらえないかな? あ、あなたの産んだ子は食べたりしませんよ。同じゴールド首輪にするから」
「えっ、良いんですか?ゴールド……」
「勿論よ。但し、男の子が産まれたら、種付けには協力して欲しいけどね。それくらいは良いでしょ?」
種付け…。つまり、私の孫の一部は食用になっていく可能性があるということです。
ですが……、それくらいは仕方ありません。牧場のニンゲンに外部の遺伝子を入れるということなんですよね。
「分かりました。それなら安心して産めます」
「良かった。でね、あと一つなんだけど……」
リューサさんは私に近寄り、耳元へ。イマさんカリさんには内緒の話の様です。
「あのねえ~。私の発情期の時には~、慰めて欲しいのよお~。お願いできないかなあ~?」
「へえっ!? そ、それって、どんな事すれば……」
「大丈夫~。難しいことは無いからあ~。美玖にも~気持ち良~いこと、タップリしてあげるしい~。互いに~、とお~っても、良いと思うんだけどお~。ダメ…かな?」
小声での会話。少し離れた位置で、イマさんカリさんが怪訝な顔してます。
リューサさんのこと大好きなあの二人に内緒で、夜の秘密のお仕事の依頼。それも、オトナ♡の……。
も、もしかして、これがリューサさんの主目的だったりしない??
じゃ、じゃあ、断るのは拙いよね…。
「わ、分かりました。私に務まるか、全く自信ないですけど…」
「ありがとうお~。全然オッケーよお~。……でね。早速、今晩ね!」
「へっ!?」
ウインクされてしまいました。
さっきの怪しい赤い目。発情期の目なんですね…。
出来る限り……、努力させて頂きます……。
・・・・。
部屋に一旦戻りますと、ついてきたイマさんカリさん大はしゃぎ。
いや、喜んでもらえて、私もとっても嬉しいです。ありがとうございます。これからも、宜しくお願いします。
あ、当然ながら、「小声で何話してた?」とは訊かれました。でも、これに関しては内緒です。
別に、内緒にするようにとは言われてませんが、小声で話したってことは、そういうことですもんね。まあ、すぐに知られてしまうことかもしれませんけど。
知られると、嫉妬されるかな……。
そして夜。タイミングを見計らってリューサさんの寝室へ。
何をされたかと言いますと……。
うううううう~っ。
こ、これは話せません。絶対ダメ!
ま、まあ、とっても、と~っても、と~~っても、オトナ♡…な体験でした。
明日は初めてのセックスになるはずでしたからね。それよりは、同性ですけど良く知っていて美人のリューサさん相手で、良かったのかも……?
い、イヤ~ン♡♡
そんなこんなで、私は晴れて鬼さんたちの仲間入りを果たしたのです。
ニンゲンで有りながら毎日ニンゲンの肉を食べ、ニンゲンを食用として飼っている鬼さんたちと、仲良く(約一名を除外して)楽しく暮らしています。
この時の私は、まさか、この後にあんな大事件が起き、自分も、そしてある鬼さんまでもが痛ましいことになるなんて、想像もしていませんでした……。
あ、いや、これは少し後のことですが。
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