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鬼の仲間として
60 逃亡未遂のニンゲン
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言っていることの意味がナオに知られるのを避けるため、キズミさんが妖語で教えてくれました。それによると、どうやって知ったのかは分かりませんが、集落の皆に「殺される!すぐ逃げろ!」と告げて回り、脱走を図ったようです。
…但し、他の皆は信じなかったようで、誰も続かなかったとか。
「困りましたね。あなたは知ってはいけない秘密を知ってしまいました。そして、そのことを集落の皆に、言ってしまいました。秘密漏洩を避けるため、あなたの集落全員、即刻皆殺しにしなければならなくなってしまいました」
「う、ウソだろ…。そ、そんなヒドイことを!」
「仕方ありません。これ以上の混乱を避けるためには止むを得ない処置です。
では、早速に開始しましょうか」
「ま、待ってくれ! 私の言ったことなんて、誰も信じていない!
みんな、寝ぼけたんだと、鼻で笑っていたんだ。だから、私は独りで逃げ出して……」
「ふ~ん。それで?」
「そ、それでって……。ホントにみんなは関係ないんだ。お願いだ、殺さないで!」
「でも、あなたはどうやって、この秘密を知ったの?
それが分からないと、やっぱり危険だから、一人残らず殺さなくっちゃいけないんだけど…」
うわ~、自分で自分が嫌になりますよ。仲間たちの命を質に取る、最低な脅しです。
「そ、それは…。頭の中にハッキリその場面が浮かんできたんだ。
ミナがお腹を裂かれて、中から変なグチャグチャッとしたモノを出されている場面。
刀で首をザックリ切られる場面。そして、ミクの首に件な器具がつけられて、ミクの『みんな。逃げて!こんな風に殺され食べられちゃうのよ。その前に逃げて!今すぐ、逃げて!!』って言う声と、刃が下りてきて首がザックリ斬れるところ……」
「スデウヨノシャクリョウノ
…(能力者のようです)」
キズミさんが、私の耳元でボソッと囁きました。
能力者…。ナユさんたちと同じ、特種能力ってことみたいです。
この子がっていうよりも、昨日屠殺した、私と同じ名前のミクって子の方なんでしょうかね。
いや、この子もかな?
ミクが発信したテレパシーみたいなのを、この子が受信したのですね。二人そろっての力なんでしょう。
それにしても、厄介ですよ。
知ってしまった以上、この子、生かしておくわけには行きません。
「さてさて、どうしたものですかね。あなたは既に、集落内に触れ回ってしまったのですね。ホントに皆、信じていないのか…。中には不審に思っているニンゲンもいるでしょうね。
誰がどう思ったのか、分からない以上、やっぱり、全員殺すしかないんだけどね……」
嫌らしくニヤッと笑ってみます。リューサ様のマネってことでもないですけどね。あの鬼さんなら、こんな風にしますよね。
「いやだ~!お願いだ。そんなことは止めて!
私の話をまともに聞いてくれた者なんてホントに居ない。全員殺すなんて、酷過ぎる!
お願いだ、止めて! 止めてください! お願いします!」
「ホントにホント? 後で少しでも聞いてるのと違って来れば、即刻全員殺害ってことになっちゃうのよ。
正直に言って欲しいな~。同調者や信じた風だった子は、ホントに一人もいなかったの~?」
「う……。い、イヤ……。ふ、二人だけ……」
二人か…。
おっと、タイミングよく、鬼さんが丁度二人連行してきましたよ。彼女が特殊能力を持つ鬼さんですかね。
「そうですか、二人ですか。で、その二人って、この二人よね」
「あああ~!な、なんで?何で二人が…」
「なんでって、私たちを甘く見ないことね。この他にも、少しでも不審な動きがあれば即刻連行。すぐに殺します。場合によっては、集落ごとって選択肢もあるのです。あなたは、そんなトンデモナイコトをしてしまったのですよ」
…なんて、ひっどいこと言いますが、この子は全く悪くありません。知りたくて知ったんじゃないですし…。
ナオは絶望の表情。可哀想な子です。
そして、巻き添え食った子たちは、さらに哀れですよ。特に、赤首輪の子…。
そう、一人は赤首輪だったのです!
本来なら殺されずに子供を産む役目を果たすはずだった子。とんだことで、赤首輪剥奪です。
このまま事情も知らずに殺されるというのも惨いですよね。ここまで知った以上、全てを教えてあげましょう。もちろん、痛めつけて殺す理由に関しても…。
その上で、屠殺しなければなりません。さあどんなふうに逝ってもらおうかと考えたところで、私の頭にあることが浮かびました。
実は昨夜、リューサ様に呼ばれて、例のキモイ食肉卸会社社長からの要望を聞かされていたのです。
それは、ニンゲンを切腹させられないだろうかだなんていう、訳の分かんない要望でした。
なんでも、ニンゲンが自ら己の肉体を差し出すっていうのが非常にソソルとか。…その文言、前にも聞きましたけどね。
で、その究極のシュチュエーションが切腹だなんて…。頭おかしいんじゃないですか?
リューサ様も、その話を私に伝えながら呆れてはいました。
それなら、やっと二人屠殺した晩にそんな話してこなくても良いんじゃないかと思いますけどね。でも、一応、顧客からの要望だからって…。
切腹だなんて、私、イマさんを思い出しちゃいます。辛いんですよ。そんな要望、絶対無視だって思っていたんです。そもそも、不可能ですしね……。
だけど、もしかして、可能になるかもしれないな…。
私はナオに、取引を持ち掛けたのでした。
…但し、他の皆は信じなかったようで、誰も続かなかったとか。
「困りましたね。あなたは知ってはいけない秘密を知ってしまいました。そして、そのことを集落の皆に、言ってしまいました。秘密漏洩を避けるため、あなたの集落全員、即刻皆殺しにしなければならなくなってしまいました」
「う、ウソだろ…。そ、そんなヒドイことを!」
「仕方ありません。これ以上の混乱を避けるためには止むを得ない処置です。
では、早速に開始しましょうか」
「ま、待ってくれ! 私の言ったことなんて、誰も信じていない!
みんな、寝ぼけたんだと、鼻で笑っていたんだ。だから、私は独りで逃げ出して……」
「ふ~ん。それで?」
「そ、それでって……。ホントにみんなは関係ないんだ。お願いだ、殺さないで!」
「でも、あなたはどうやって、この秘密を知ったの?
それが分からないと、やっぱり危険だから、一人残らず殺さなくっちゃいけないんだけど…」
うわ~、自分で自分が嫌になりますよ。仲間たちの命を質に取る、最低な脅しです。
「そ、それは…。頭の中にハッキリその場面が浮かんできたんだ。
ミナがお腹を裂かれて、中から変なグチャグチャッとしたモノを出されている場面。
刀で首をザックリ切られる場面。そして、ミクの首に件な器具がつけられて、ミクの『みんな。逃げて!こんな風に殺され食べられちゃうのよ。その前に逃げて!今すぐ、逃げて!!』って言う声と、刃が下りてきて首がザックリ斬れるところ……」
「スデウヨノシャクリョウノ
…(能力者のようです)」
キズミさんが、私の耳元でボソッと囁きました。
能力者…。ナユさんたちと同じ、特種能力ってことみたいです。
この子がっていうよりも、昨日屠殺した、私と同じ名前のミクって子の方なんでしょうかね。
いや、この子もかな?
ミクが発信したテレパシーみたいなのを、この子が受信したのですね。二人そろっての力なんでしょう。
それにしても、厄介ですよ。
知ってしまった以上、この子、生かしておくわけには行きません。
「さてさて、どうしたものですかね。あなたは既に、集落内に触れ回ってしまったのですね。ホントに皆、信じていないのか…。中には不審に思っているニンゲンもいるでしょうね。
誰がどう思ったのか、分からない以上、やっぱり、全員殺すしかないんだけどね……」
嫌らしくニヤッと笑ってみます。リューサ様のマネってことでもないですけどね。あの鬼さんなら、こんな風にしますよね。
「いやだ~!お願いだ。そんなことは止めて!
私の話をまともに聞いてくれた者なんてホントに居ない。全員殺すなんて、酷過ぎる!
お願いだ、止めて! 止めてください! お願いします!」
「ホントにホント? 後で少しでも聞いてるのと違って来れば、即刻全員殺害ってことになっちゃうのよ。
正直に言って欲しいな~。同調者や信じた風だった子は、ホントに一人もいなかったの~?」
「う……。い、イヤ……。ふ、二人だけ……」
二人か…。
おっと、タイミングよく、鬼さんが丁度二人連行してきましたよ。彼女が特殊能力を持つ鬼さんですかね。
「そうですか、二人ですか。で、その二人って、この二人よね」
「あああ~!な、なんで?何で二人が…」
「なんでって、私たちを甘く見ないことね。この他にも、少しでも不審な動きがあれば即刻連行。すぐに殺します。場合によっては、集落ごとって選択肢もあるのです。あなたは、そんなトンデモナイコトをしてしまったのですよ」
…なんて、ひっどいこと言いますが、この子は全く悪くありません。知りたくて知ったんじゃないですし…。
ナオは絶望の表情。可哀想な子です。
そして、巻き添え食った子たちは、さらに哀れですよ。特に、赤首輪の子…。
そう、一人は赤首輪だったのです!
本来なら殺されずに子供を産む役目を果たすはずだった子。とんだことで、赤首輪剥奪です。
このまま事情も知らずに殺されるというのも惨いですよね。ここまで知った以上、全てを教えてあげましょう。もちろん、痛めつけて殺す理由に関しても…。
その上で、屠殺しなければなりません。さあどんなふうに逝ってもらおうかと考えたところで、私の頭にあることが浮かびました。
実は昨夜、リューサ様に呼ばれて、例のキモイ食肉卸会社社長からの要望を聞かされていたのです。
それは、ニンゲンを切腹させられないだろうかだなんていう、訳の分かんない要望でした。
なんでも、ニンゲンが自ら己の肉体を差し出すっていうのが非常にソソルとか。…その文言、前にも聞きましたけどね。
で、その究極のシュチュエーションが切腹だなんて…。頭おかしいんじゃないですか?
リューサ様も、その話を私に伝えながら呆れてはいました。
それなら、やっと二人屠殺した晩にそんな話してこなくても良いんじゃないかと思いますけどね。でも、一応、顧客からの要望だからって…。
切腹だなんて、私、イマさんを思い出しちゃいます。辛いんですよ。そんな要望、絶対無視だって思っていたんです。そもそも、不可能ですしね……。
だけど、もしかして、可能になるかもしれないな…。
私はナオに、取引を持ち掛けたのでした。
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