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思春期のテロリスト
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第九章 憎しみを断ち切る。~最後の決着~
エミたちテロリストは全国の裁判所が見守る中、首相官邸を襲撃した。
そこには首相をはじめとする政府組織の重要人物が多くいる。
もちろん、その分襲撃を想定して多くの特殊部隊が配置されている。
「私が道を空けるから、全員進んで!!」
エミが指示を出し、両手を動かす。
テロリストたちは、首相の元を目指した。・・・そこには青い悪魔がいることを知らずに。
エミは、心でみんなに謝った。自分たちが実践訓練をした後輩たち。しかし、エミですらかなうか分からない青い悪魔に、あの子たちがかなうわけがない。
青い悪魔のメールが本当かは分からないが、どちらにせよみんな死ぬ。
エミはそう思いながらも、特殊部隊を始末していった。
そしてついに、エミ以外の全員が政府組織の要人が集まる首相の部屋に飛び込んだ。
足を止めるエミ。
部屋の中から、銃声と叫び声が聞こえる。
・・・・どうして、こんなに酷いことになったんだろう・・・。
エミがそう思っていると、銃声が止んだ。
エミは青い悪魔のメールの通り、一分間待つと、武器をかまえてゆっくりと部屋に入っていった。
「ようこそ、地獄の墓場へ。緑の復讐者さん。」
テレビでしか見たことのない首相が、何事もなかったかのようにゆったりとした椅子に座ったまま、エミに銃口を向けていた。その少し前で、青い悪魔が両手でエミに銃口を向けている。
部屋の中には、二人しかいなかった。
床には、政府組織の要人、特殊部隊、テロリストの死体が転がっている。
「よくここまで辿り着いたね。誉めてあげよう。しかし、残念だけれど君の命もここで終わりだ。君には、ずいぶんこちらの人間を殺されたからね。だが、私が作り上げたこの完璧なる美しい殺人兵器にはかなうまい。さぁ、美しき青い悪魔よ、あいつを殺すんだ。そうすれば、テロリストのことを表舞台に公表し、邪魔者を一斉に裁くことができるであろう。」
首相が笑って言った。
エミと、青い悪魔の目が合った。
軽くうなずく青い悪魔。黙って見つめるエミ。
【バン!!】
銃声が部屋に響いた。
青い悪魔は、一瞬で振り向くと、首相の・・・自分の実の父親の手を打っていた。
首相の持っていた銃が床に落ちる。
「・・・お前・・・!!どういうことだ・・・!!私の命令に背くというのか・・・!!」
首相が驚きと恐怖の入り混じった表情で言った。
「命令には従います。」
青い悪魔が言った。そしてエミを見ると、首相の方へ軽く首を振った。
それを見て、エミは軽く頷き返すと、首相の元へゆっくりと歩いていった。
「おい!!こいつを殺せ!!なぜ命令に従わない!!」
首相には、もう恐怖の表情しかなかった。
「命令には従います・・・あなたが死んだ後で。」
青い悪魔が、先ほどの言葉に付け加えて言った。
首相は逃げようとしたが、その瞬間エミは左手のトパースで首相を机に叩き付けた。そのまま、鋭い箇所を首に当てる。
「ま・・・・待て。こうしよう。君は有能な人材だ・・・!!政府軍で、特別に受け入れよう・・・」
首相が、恐怖に脅えながら必死で命乞いをした。エミの目が鋭くなる。そして、じりじりと手に力を入れていく。
「お前が・・・戦争なんて考えなかったら・・・戦争なんて始めなかったら・・・・テロリストなんてうまれなかった・・・・!!お前が・・・・・!!」
「や・・・やめ・・・・くるし・・・・・」
「テロリストなんてうまれなかったら・・・シゲルが死ぬこともなかった・・・!!リョウも、ユメカも・・・!!大量の心の復讐者もうまれなかった!!お前がぁ!!」
エミが叫び終わった時、首相の首は切断されていた。
エミは黙って振り向いた。青い悪魔が、銃をおろしている。
「これ、政府軍の今までのデータが全て入っている。そこのパソコンで送るといいわ。」
青い悪魔が、メモリーチップを投げた。キャッチするエミ。
エミは無言で、パソコンにセットすると、最高裁判所へ向けて全てのデータを送った。
その瞬間、エミのピアスから歓声が聞こえ、最高裁判所からすぐに撤退するよう指示があった。しかしエミはマイクに向かって、
「黙れ。」
とだけ言った。突然のエミの言葉に歓声が止む。
最高裁判所の人間が何か言っているのが聞こえたが、エミは無視した。
こんなにも酷い状況の中にいるのに、歓声を上げている人間に腹が立った。
「メールの内容、本当だったのね。」
マイクをとって投げ捨てると、エミが青い悪魔に言った。
「・・・嘘をついて騙すほど弱くないもの。それより、決着をつける前にこんな所出ない?こんな死体だらけの中にいたくないから。」
青い悪魔が言った。
エミは無言で頷くと、二人は外の庭へと出た。
その瞬間、二人の手が動いた。
エミの両手のワイヤーは確実に青い悪魔の首に巻き付き、黄色と赤の宝石が交差する。
青い悪魔の持つ銃口も、確実にエミの急所を狙っていた。
「なぜ打たないの?」
「なぜ殺さないの?」
二人が同時に言った。しばらく沈黙が続いたが、先に口を開いたのは青い悪魔だった。
「この前、わざわざ挑発しに行った事、謝るわ。あなたの友達を殺したのは、こっちも命令だったからしかたなかった。でも、そのことであなたの強い復讐心が折れてしまうのが嫌だったから・・・。」
「・・・私も、あなたに本物の悪魔の血が流れているって言ったこと、謝る。実の親に殺人兵器なんて言われていること知らなかったから。それに、元々この復讐の連鎖は、シゲルがあなたの姉を殺したことがはじまりみたいだし。」
エミの言葉に、青い悪魔がフッと笑った。
「あなたの彼氏が私の姉を殺したときのこと、今でも鮮明に覚えているわ。死ぬ前に教えてあげる。あなたの彼氏ね、任務に背いて私たちを逃がそうとしたのよ。」
「えっ・・・?」
「私たち姉妹は、あなたの彼氏に追い込まれた。姉の銃は撃たれてもう使えなかったし、私も死ぬかと思った。けれど、あなたの彼氏は銃を下げたのよ。そして言ったわ。『俺は誰も殺したくない。娘の言うことなら、首相も聞くかもしれない。だから、戦争を止めさせてくれ・・・。』ってね。」
エミは黙って話を聞いた。
「でも、あいつがそんなことで戦争を止める人間じゃないことくらい分かったでしょ?姉はそのことを一番理解していた。そして、姉も誰も殺したくなかった。だからあなたの彼氏に、そのことを説明すると、自分を殺すように言ったのよ。」
青い悪魔が、悲しそうに言った。
「そしたら、あなたの彼氏も悲しそうにしてね・・・。少し考えた後こう言った。『俺は今から賭けをする。君の急所をはずして弾を撃つ。君が生き残ったら、俺の勝ち。・・・他人に嫌な役をさせるのは卑怯だけれど、自分には人は殺せないからとでも理由をつけて、暗殺部から離れる。でも、もし君が死んだら俺の負け。・・・俺は命令だとしても人殺しの罪を背負って、暗殺部の人間として生きる。』そう言って、姉と頷き合うと弾を撃った。後はご存知の通りよ。あなたの彼氏を殺したとき、本当は私は手を下すつもりはなかった。ただ、わざわざあなたに会ってから死のうとするのはどうしてか興味本位で見に行っただけだった。けれど、愛されているあなたを見たら、悲しくなってね。・・・あの時、私はもう青い悪魔って呼ばれていた。それでも感情くらいあったわ。悲しみと苦しみ。気がついたら、私が殺していた。」
「やっぱり、シゲルはわざと急所をはずしてたんだ。・・・わざわざ教えてくれてありがとう。でも、どういう風の吹き回し?私たちは憎みあっているはずなのに。」
「あなたを憎いって言ったの、嘘よ。本当は、うらやましかった。復讐者となったあなたを見て、私は、自分と対等に戦えるのはあなたしかいないと思った。あなたと決着をつけたかった。でも・・・私たち、同じ気持ちのはずなのに・・・立場が違うだけで、私は誰からも私自身を愛されず、あなたはあなた自身を愛してくれる人が何人もいた。・・・それがうらやましかった。」
「・・・・今なら、あなたの言っていることが素直に分かる。私はいつも守られていた。だからここまでこれた。・・・どうしてだろう。私は、あなたが一番憎いはずなのに。やっと、最後の復讐を終えて、復讐の連鎖まで断ち切れるかもしれないのに・・・。それなのに、どうしてあなたに対して今,怒りも憎しみも湧き起こらないんだろう・・・。」
エミが言った。
「私も、自分の親を目の前で殺されたのに、今どこかほっとしてる。・・・あなたの彼氏を殺したときから思っていたけれど、その髪飾り、あなたに本当に似合っているわね。」
青い悪魔が笑って言った。その笑顔は,いつもの冷たい笑顔と全く違った。
「ありがとう。シゲルがくれたのよ。・・・ねぇ、子供向けのアニメだから知らないと思うけれど、ピンクと青ってね、いつもすごく相性の良い友達なのよ。」
エミも同じように笑って言った。
「そのアニメ、私も知っているわ。・・・結構趣味が合うわね。・・・そんな話ができる友達、私もほしかった。」
青い悪魔が言った。笑っているが、頬に涙がつたった。
「・・・あなたとは、きっと地獄で良い友達になれると思う。・・・どうして一番憎い敵に、そんなこと言っているんだろう・・・。・・・でも、敵が味方になる展開なんてしょっちゅうあるしね。私たち、一体誰を憎みながら死ねばいいだろうね。」
エミも笑いながら泣いていた。
「ゆっくり椅子に座って、自分の手は汚さずにのうのうと戦争の指示や暗殺の指示をしている大人達じゃない?」
青い悪魔が泣き笑いの顔で言った。
今の二人は、ただの中学生の女の子二人だった。
「・・・ありがとう。一緒に死ねる相手があなたでよかった。じゃあ、また後で地獄で会いましょう・・・エミちゃん。」
青い悪魔と呼ばれていたエミが言った。
「・・・地獄では、エミって呼んでいいよ。・・・また後でね、エミ。」
緑の復讐者と呼ばれていたエミが言った。
そして二人は目を合わせると、一瞬笑い、同時に手を動かした。
【シュッ!!】
【ドン!!】
風の音と銃声が同時に鳴った。
エミたちテロリストは全国の裁判所が見守る中、首相官邸を襲撃した。
そこには首相をはじめとする政府組織の重要人物が多くいる。
もちろん、その分襲撃を想定して多くの特殊部隊が配置されている。
「私が道を空けるから、全員進んで!!」
エミが指示を出し、両手を動かす。
テロリストたちは、首相の元を目指した。・・・そこには青い悪魔がいることを知らずに。
エミは、心でみんなに謝った。自分たちが実践訓練をした後輩たち。しかし、エミですらかなうか分からない青い悪魔に、あの子たちがかなうわけがない。
青い悪魔のメールが本当かは分からないが、どちらにせよみんな死ぬ。
エミはそう思いながらも、特殊部隊を始末していった。
そしてついに、エミ以外の全員が政府組織の要人が集まる首相の部屋に飛び込んだ。
足を止めるエミ。
部屋の中から、銃声と叫び声が聞こえる。
・・・・どうして、こんなに酷いことになったんだろう・・・。
エミがそう思っていると、銃声が止んだ。
エミは青い悪魔のメールの通り、一分間待つと、武器をかまえてゆっくりと部屋に入っていった。
「ようこそ、地獄の墓場へ。緑の復讐者さん。」
テレビでしか見たことのない首相が、何事もなかったかのようにゆったりとした椅子に座ったまま、エミに銃口を向けていた。その少し前で、青い悪魔が両手でエミに銃口を向けている。
部屋の中には、二人しかいなかった。
床には、政府組織の要人、特殊部隊、テロリストの死体が転がっている。
「よくここまで辿り着いたね。誉めてあげよう。しかし、残念だけれど君の命もここで終わりだ。君には、ずいぶんこちらの人間を殺されたからね。だが、私が作り上げたこの完璧なる美しい殺人兵器にはかなうまい。さぁ、美しき青い悪魔よ、あいつを殺すんだ。そうすれば、テロリストのことを表舞台に公表し、邪魔者を一斉に裁くことができるであろう。」
首相が笑って言った。
エミと、青い悪魔の目が合った。
軽くうなずく青い悪魔。黙って見つめるエミ。
【バン!!】
銃声が部屋に響いた。
青い悪魔は、一瞬で振り向くと、首相の・・・自分の実の父親の手を打っていた。
首相の持っていた銃が床に落ちる。
「・・・お前・・・!!どういうことだ・・・!!私の命令に背くというのか・・・!!」
首相が驚きと恐怖の入り混じった表情で言った。
「命令には従います。」
青い悪魔が言った。そしてエミを見ると、首相の方へ軽く首を振った。
それを見て、エミは軽く頷き返すと、首相の元へゆっくりと歩いていった。
「おい!!こいつを殺せ!!なぜ命令に従わない!!」
首相には、もう恐怖の表情しかなかった。
「命令には従います・・・あなたが死んだ後で。」
青い悪魔が、先ほどの言葉に付け加えて言った。
首相は逃げようとしたが、その瞬間エミは左手のトパースで首相を机に叩き付けた。そのまま、鋭い箇所を首に当てる。
「ま・・・・待て。こうしよう。君は有能な人材だ・・・!!政府軍で、特別に受け入れよう・・・」
首相が、恐怖に脅えながら必死で命乞いをした。エミの目が鋭くなる。そして、じりじりと手に力を入れていく。
「お前が・・・戦争なんて考えなかったら・・・戦争なんて始めなかったら・・・・テロリストなんてうまれなかった・・・・!!お前が・・・・・!!」
「や・・・やめ・・・・くるし・・・・・」
「テロリストなんてうまれなかったら・・・シゲルが死ぬこともなかった・・・!!リョウも、ユメカも・・・!!大量の心の復讐者もうまれなかった!!お前がぁ!!」
エミが叫び終わった時、首相の首は切断されていた。
エミは黙って振り向いた。青い悪魔が、銃をおろしている。
「これ、政府軍の今までのデータが全て入っている。そこのパソコンで送るといいわ。」
青い悪魔が、メモリーチップを投げた。キャッチするエミ。
エミは無言で、パソコンにセットすると、最高裁判所へ向けて全てのデータを送った。
その瞬間、エミのピアスから歓声が聞こえ、最高裁判所からすぐに撤退するよう指示があった。しかしエミはマイクに向かって、
「黙れ。」
とだけ言った。突然のエミの言葉に歓声が止む。
最高裁判所の人間が何か言っているのが聞こえたが、エミは無視した。
こんなにも酷い状況の中にいるのに、歓声を上げている人間に腹が立った。
「メールの内容、本当だったのね。」
マイクをとって投げ捨てると、エミが青い悪魔に言った。
「・・・嘘をついて騙すほど弱くないもの。それより、決着をつける前にこんな所出ない?こんな死体だらけの中にいたくないから。」
青い悪魔が言った。
エミは無言で頷くと、二人は外の庭へと出た。
その瞬間、二人の手が動いた。
エミの両手のワイヤーは確実に青い悪魔の首に巻き付き、黄色と赤の宝石が交差する。
青い悪魔の持つ銃口も、確実にエミの急所を狙っていた。
「なぜ打たないの?」
「なぜ殺さないの?」
二人が同時に言った。しばらく沈黙が続いたが、先に口を開いたのは青い悪魔だった。
「この前、わざわざ挑発しに行った事、謝るわ。あなたの友達を殺したのは、こっちも命令だったからしかたなかった。でも、そのことであなたの強い復讐心が折れてしまうのが嫌だったから・・・。」
「・・・私も、あなたに本物の悪魔の血が流れているって言ったこと、謝る。実の親に殺人兵器なんて言われていること知らなかったから。それに、元々この復讐の連鎖は、シゲルがあなたの姉を殺したことがはじまりみたいだし。」
エミの言葉に、青い悪魔がフッと笑った。
「あなたの彼氏が私の姉を殺したときのこと、今でも鮮明に覚えているわ。死ぬ前に教えてあげる。あなたの彼氏ね、任務に背いて私たちを逃がそうとしたのよ。」
「えっ・・・?」
「私たち姉妹は、あなたの彼氏に追い込まれた。姉の銃は撃たれてもう使えなかったし、私も死ぬかと思った。けれど、あなたの彼氏は銃を下げたのよ。そして言ったわ。『俺は誰も殺したくない。娘の言うことなら、首相も聞くかもしれない。だから、戦争を止めさせてくれ・・・。』ってね。」
エミは黙って話を聞いた。
「でも、あいつがそんなことで戦争を止める人間じゃないことくらい分かったでしょ?姉はそのことを一番理解していた。そして、姉も誰も殺したくなかった。だからあなたの彼氏に、そのことを説明すると、自分を殺すように言ったのよ。」
青い悪魔が、悲しそうに言った。
「そしたら、あなたの彼氏も悲しそうにしてね・・・。少し考えた後こう言った。『俺は今から賭けをする。君の急所をはずして弾を撃つ。君が生き残ったら、俺の勝ち。・・・他人に嫌な役をさせるのは卑怯だけれど、自分には人は殺せないからとでも理由をつけて、暗殺部から離れる。でも、もし君が死んだら俺の負け。・・・俺は命令だとしても人殺しの罪を背負って、暗殺部の人間として生きる。』そう言って、姉と頷き合うと弾を撃った。後はご存知の通りよ。あなたの彼氏を殺したとき、本当は私は手を下すつもりはなかった。ただ、わざわざあなたに会ってから死のうとするのはどうしてか興味本位で見に行っただけだった。けれど、愛されているあなたを見たら、悲しくなってね。・・・あの時、私はもう青い悪魔って呼ばれていた。それでも感情くらいあったわ。悲しみと苦しみ。気がついたら、私が殺していた。」
「やっぱり、シゲルはわざと急所をはずしてたんだ。・・・わざわざ教えてくれてありがとう。でも、どういう風の吹き回し?私たちは憎みあっているはずなのに。」
「あなたを憎いって言ったの、嘘よ。本当は、うらやましかった。復讐者となったあなたを見て、私は、自分と対等に戦えるのはあなたしかいないと思った。あなたと決着をつけたかった。でも・・・私たち、同じ気持ちのはずなのに・・・立場が違うだけで、私は誰からも私自身を愛されず、あなたはあなた自身を愛してくれる人が何人もいた。・・・それがうらやましかった。」
「・・・・今なら、あなたの言っていることが素直に分かる。私はいつも守られていた。だからここまでこれた。・・・どうしてだろう。私は、あなたが一番憎いはずなのに。やっと、最後の復讐を終えて、復讐の連鎖まで断ち切れるかもしれないのに・・・。それなのに、どうしてあなたに対して今,怒りも憎しみも湧き起こらないんだろう・・・。」
エミが言った。
「私も、自分の親を目の前で殺されたのに、今どこかほっとしてる。・・・あなたの彼氏を殺したときから思っていたけれど、その髪飾り、あなたに本当に似合っているわね。」
青い悪魔が笑って言った。その笑顔は,いつもの冷たい笑顔と全く違った。
「ありがとう。シゲルがくれたのよ。・・・ねぇ、子供向けのアニメだから知らないと思うけれど、ピンクと青ってね、いつもすごく相性の良い友達なのよ。」
エミも同じように笑って言った。
「そのアニメ、私も知っているわ。・・・結構趣味が合うわね。・・・そんな話ができる友達、私もほしかった。」
青い悪魔が言った。笑っているが、頬に涙がつたった。
「・・・あなたとは、きっと地獄で良い友達になれると思う。・・・どうして一番憎い敵に、そんなこと言っているんだろう・・・。・・・でも、敵が味方になる展開なんてしょっちゅうあるしね。私たち、一体誰を憎みながら死ねばいいだろうね。」
エミも笑いながら泣いていた。
「ゆっくり椅子に座って、自分の手は汚さずにのうのうと戦争の指示や暗殺の指示をしている大人達じゃない?」
青い悪魔が泣き笑いの顔で言った。
今の二人は、ただの中学生の女の子二人だった。
「・・・ありがとう。一緒に死ねる相手があなたでよかった。じゃあ、また後で地獄で会いましょう・・・エミちゃん。」
青い悪魔と呼ばれていたエミが言った。
「・・・地獄では、エミって呼んでいいよ。・・・また後でね、エミ。」
緑の復讐者と呼ばれていたエミが言った。
そして二人は目を合わせると、一瞬笑い、同時に手を動かした。
【シュッ!!】
【ドン!!】
風の音と銃声が同時に鳴った。
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