真実を求めて

Emi 松原

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真実を求めて

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旅立ち
 
出発は次の日の朝になった。ヒロトはジュライの家に泊まらせてもらい,各自準備をして,喜光王国の門の前に集まってくる。
 ヒロトは他の四人の武器を見た。ジュライは両手剣と同じくらいの大きさのハンマーを背負っている。エイキは短刀を何本か腰につけていて,ケントは木の杖を持っている。エリヤは昨日のハープを持っていたので,武器になるのか不思議に思ったがジュライが改造していて弓矢にもなることをジュライがこっそりおしえてくれた。
「じゃっ,行きますか?」
 ケントが明るい声で言った。
 その時。
「全員,行くことを覚悟したようじゃな。」
 キシン様の声に,五人は同時に振り返った。エリヤとヒロト以外の三人が膝をついて頭を下げた。ヒロトも慌ててまねをする。エリヤは少し頭を下げただけだった。
「さて,そんなに堅苦しくしなくてよいぞ。全員立つのじゃ。」
 キシン様の言葉にヒロト達は立ち上がった。
「さて,今から道なき道を進むものたちよ。最初の行き場は決まっておるのかの?」
「いえ,まだ決まっていません。」
 ケントが真面目な声で言った。
「そうか・・・わしの考えでは,ここから南にある『荒れた高原』へ行ってみるのがよいと思うのじゃがどうかな?もちろん,君たちが進む道は幾多もあるがの。」
 キシン様がケントを見ながら言った。
 『荒れた高原』と聞いて少しだけケントの顔が曇る。
「大切なのは,どんな道でもしっかりと道と向き合うこと。そうすれば進むべき道は,進むにつれ見えてくるじゃろう。」
 キシン様が微笑んだ。
「さぁ,行っておいで。君たち五人には,なにがあろうとここに帰る場所がある。それを忘れるでないぞ。」
 キシン様の言葉を聞いて,ヒロトは自分も入っていることが少し嬉しかった。
 五人は『荒れた高原』に向けて歩き始めた。
 歩き始めてからずっとケントの顔色が悪い。
「ねぇ,ケントはどうしちゃったの?」
 ヒロトは小声でジュライに聞いた。
「今から行く荒れた高原は・・・・ケントのふるさと。・・・・正確には,元ふるさと・・・。」
(元・・・?)
 ヒロトは気になったが,それ以上は聞かなかった。
「なぁ,ヒロト。」
ケントが言った。
「これから行く場所で,酷いことを言われても気にしないでな。」
 ヒロトは意味がよく分からなかったが,黙ってうなずいた。
 しばらく歩くと,木々に囲まれていた道が開けてきた。それまでの緑と違って,茶色の草に覆われた道が続いている。
「今から行くところは,魔術師が一人住んでいるだけなんだ。」
 エイキがヒロトに言った。
 ケントが黙ってうなずく。
 歩いていると段々と家が一軒見えてきた。
 家の側には小さな畑のようなものがあるが,そこ以外はまさに『荒れた高原』であった。
 茶色の草に覆われて,そこらへんに木のかけらが落ちている。
「ここに来るのは,迫害戦争以来だな・・・・。」
 ケントが明るい声だがわざとらしく言った。
「ここには・・・ケントの友人の魔術師が住んでる・・・。俺達もよく知らない・・・。」
 家の前に立ったとき,ジュライがヒロトに言った。
 ケントがドアをノックしようとしたとき,いきなりドアが開いた。
 そこにはケントより背が高く少し怒った様子の男の魔術師が立っていた。
 魔術師は五人を眺めた。
「歓迎できない客がきたようだな。ケント・・・お前,なぜ人間族なんかと居るんだ?俺は人間族を家に入れる気はないぞ。」
 魔術師はヒロトに冷たい視線をなげかけた。
 ヒロトはなにも言えず黙りこんだ。
「そう堅いこと言うなよ。ライト。この子は迫害戦争とはなんの関係もない。今は一緒に旅をする仲間だ。」
「関係があろうとなかろうと,俺は人間族を許さない。」
 ライトと呼ばれた魔術師が言いかえした。
「俺からお前に会いに来るなんて初めてのことだろ?門前払いなんかお断りだぞ。」
 ケントがライトを見つめた。
 ライトは納得できていない様子だが,五人を中に招き入れた。
「それで,なんの旅をしているっていうんだ?」
 ライトがケントに聞いた。ケントが説明をして,ヒロトが持っていた本を見せた。
「これは・・・・。魔族の文字だ。」
「魔族?」
 ケントが言った。
「人間族のせいで絶滅した種族。唯一魔物と話せて,操ることもできる力を持っていた力の強い種族だ。」
 ライトの言葉にヒロトは驚いた。ヒロトのノートには,魔族のことなどなにも書いてなかったからだ。人間族のせいで滅びた?なぜ?疑問は山ほどあったがヒロトはライトが少し怖くてなにも言えず,黙っていた。
「で,この本は俺には読めないぞ。旅に一緒に行く気もない。俺ができることと言ったら,この家に泊めることと占いくらいだ。」
 ライトが素っ気なく言った。
「それだけで十分よ。」
 エリヤが少し笑って言った。
「ケント。お前も分かってるんだろ?何かとてつもない事が起ころうとしているのを。」
 ライトがケントに向けて言った。
「暗雲の雲が近づいてくるとは占いに出た。」
 ケントが答える。
「そう。ただそれがなんなのか俺にもわからないんだ。ただ,今この時キシン様がお前達を旅に出させたのは,何か意味があると思う。」
ライトはそう言いながら,ヒロトを冷たい目線で見た。
「君は,迫害戦争について何か知っているのか?」
 ライトの突然のことばに,ヒロトは慌てて首を横に振った。
「そう。この子はなにも知らないんだ。だからこの子を迫害戦争と結びつけたらいけないんじゃないかな。」
 エイキが優しくライトに言った。
 ライトは黙ってうつむいた。
 その日の夜,ヒロトは人の話し声で目が覚めた。
 隣の部屋で誰かが話している。盗み聞いてはいけないと思いつつ,ヒロトは壁に耳をあてた。
「それで,ケント,過去と向き合うことはできたのか?」
 ライトの声がした。
「それは・・・わからない。この荒れ果てた場所を見るのは,耐えられない。俺はあの時逃げたんだ。機械帝国の奴らが襲ってきたとき,俺は怖くて何もできず,ただただ怯えて泣いていたんだよ!!そして逃げたんだ!!」
 ケントの声がする。
「キシン様は,『今』とも向き合うって言ったんだよな。お前は確かに逃げた。でも,逃げたことで生き延びてエリヤ姫達と出会うことが出来た。だろ?」
 ライトの言葉で,無言になるケント。
「俺は,お前が生きていてくれてよかったと思っている。お前はここの景色を見るのが嫌で,旅がなかったら来ることはなかっただろう。」
 ライトが続ける。
「俺は人間族を許すことはできない。でも,お前は,ヒロトを信用して仲間になってこの危険な旅に挑んでいるんだ。生き延びたことで,新しい仲間ができたんだ。だから・・・。お前,もう過去を悔やむなよ。俺が喜光王国に移り住まないのは,ここで自由気ままに生きたいから。ただそれだけだ。・・・お前なら,いつだって大歓迎なんだぞ。」
 ケントは無言だ。泣いているのか,時々鼻をすする音が聞こえてくる。
「ライト・・・お前は・・・俺を,許してくれるのか・・・?真っ先に逃げたこの俺を。この場所から逃げ続けてきたこの俺を・・・?」
「当たり前だろ。あの時はしょうがなかったんだ。ただ,過去と向き合って自分を許すことが出来たなら・・・旅が終わった後,またこの場所へ来てくれよ。どんなに荒れ果てても,ここは俺達の故郷なんだから。」
 ふとヒロトが気が付くと,エリヤ,エイキ,ジュライの目も開いていた。
 でも誰も何も言わず,黙っていた。
 次の日の朝が来た。
「ケント,ライト,占いはどう出ているの?」
 エリヤが二人に聞いた。
「暗黒の雲が少しずつ近づいている。感じられるのは強い憎しみ。」
 ライトが言った。
「強い憎しみ・・・・・・。」
 ヒロトが言った。
「さて,考えなければいけないのはどのルートを通って暗黒の森に近づくかだな。」
 エイキが考え込みながら言った。
「一番安全なのは,妖精の森を通ることよ。」
 エリヤが今までにみせたことのない暗い顔で言った。
「でも・・・。」
 エイキが何か言おうとしたがエリヤはそれを遮った。
「私たちも,過去と向き合わないといけないのよ。きっと。」
 エリヤが下を向いた。
「妖精の森?」
 ヒロトが聞いた。
「エルフとノームが暮らす森。一つの小さな王国だ。迫害戦争で,一気に規模は小さくなったけどな。」
 ケントが言った。
「そうだ。迫害戦争とはなんなんですか?」 
 ヒロトが全員に聞いた。
「25年前に起きた戦争。人間族が,他の種族を絶滅させようと機械に乗って武装して,機械帝国以外の種族達を殺していったんだ。たぶん国民には何もしらされてないと思うけど。」
 ライトが言った。
「この荒れた高原は,昔は魔術師達が暮らす小さな村だった。でも迫害戦争のせいで今はこうなってる。」
 ライトが続ける。
 ヒロトは絶句した。人間族がそんなことをしていたなんて・・・。
「迫害戦争は,キシン様と他の種族が協力してなんとか集結を迎えた。そしてできたのが喜光王国なんだ。」
 エイキがヒロトを気遣うような目で見ながら言った。
 ヒロトは何も言えなかった。
「ま,ヒロトとは何も関係ないことさ。気にすることないって。」
 ケントが明るくヒロトの背中を叩いた。

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