共に生きるため

Emi 松原

文字の大きさ
9 / 26

共に生きるため

しおりを挟む
有水率いる突入部隊は、神秘の泉を過ぎたところまで来ていた。
「ここからは、いつジェネレーションのメンバーが襲ってきてもおかしくない。全員、覚悟しとくんだ。」
先頭を歩く有水が振り返って言った。
「蒲公英と海起は俺のすぐ後ろ。その後ろに夢華。秋美、夏美は夢華の両側だ。夢華の後ろに春美。栄枝、草多はその後ろを頼むぞ。」
「了解。」
栄枝が言った。
突入部隊は、月の村へと続く道を進んでいく。
もうすぐ、冬美が消えた地点に到着する。

その時、有水達先頭立ち止まり、全員に止まるように合図した。
「妖精の気配がする・・・。」
蒲公英がメンバーにだけ聞こえるような小さい声でささやいた。
「ほかに、気配を感じる奴は居るか?」
有水も同じようにささやいた。
全員が首を横に振る。
「俺達にも分からないほど気配を消すなんて・・・。蒲公英が分かったと言うことは・・・。」
栄枝が蒲公英に向けてささやく。
「えぇ、たぶん、私の部下・・・鈴蘭ね。」
蒲公英が落ち着き払った様子で言った。                
「鈴蘭の攻撃は?」
有水が蒲公英に訪ねた。
「あの子は、花の中でも名前の通り主に鈴蘭に宿っているわ。鈴蘭の花言葉は、意識しない美しさ・・・。しかし、はかなげな見た目と裏腹に有毒植物でもある・・・。あの子は毒を使うのが得意よ。しかも使える毒の種類は様々。かなりのやり手ね。」
蒲公英の目が少し鋭くなった。
「俺達全員で攻撃に回って捕獲するか・・・。」
有水がつぶやいた。
「しかし、相手も相当な力の持ち主。精霊が三人も居るとは言え・・・。土地上、向こうの方が有利でもある。」
栄枝が有水に言った。
「もし、何人もが負傷したら・・・。」
最悪の事態を想定した栄枝が冷静に続けた。
「そうだな・・・蒲公英、どう思う?」
有水が蒲公英に向き直った。
「そうね、力だけ見たらこちら側が圧倒的に有利よ。けどあの子は頭もまぁまぁ冴える。栄枝の言うとおり、何人かの負傷は考えられるわ。それに、まだ一人目。こんな言い方はなんだけど,待ちかまえている見張りで一人目が一番強いなんて考えられないでしょ?この先、もっと強い見張りが待ってるわ。」
蒲公英が言った。
「そうか・・・。後々の事を考えたら・・・一対一の一騎打ちにするしかないのかな・・・。その間に残りは先を進める。なにより時間制限があるんだ。」
有水が暗い顔をした。
「じゃあ、あたいが・・・。」     
秋美が進み出た。
「いいえ、あなたは冬美の所まで行かなくては。それに夢ちゃんを守らないとね。」
蒲公英が言った。
「私なら・・・。鈴蘭はほぼ春に開花をする。春の妖精の私なら・・・。それに力だって弱い方ではないわ。」
春美が有水に向けて言った。
「一番勝つ可能性が高いのは私のはずよ。あの子は私の部下なんだから。」
蒲公英も有水に向けて言った。
「そうだな・・・。だが蒲公英。お前がさっき言ったように、まだ一人目・・。精霊は三人なんだぞ。それに、春美の言うとおり鈴蘭は春の花だ。」
有水が蒲公英に言った。
「春美に任せることで問題ないな?」
そして全員に向けて有水が言った。
全員,暗い顔で頷いた。

「春美・・・気を付けて。あなたが追いついて来るの、待ってるわ。」
夏美が春美に言った。
「えぇ。任せておいて!」
春美が笑顔で言った。
「必ず勝って、あたいらの所まで来るんだぞ。」
秋美も笑顔で言った。
草多と海起も、心配そうだが誰かがやらないといけないことはわかっていた。
何より、妖精達は信頼関係で結ばれている。全員が春美を信じていた。
「増援部隊には桜も居る。なんとか捕獲できるように頑張るんだ。」
有水が春美の目を見て言った。
「わかってます。」
春美は相変わらず微笑んで居た。

出発してから早二時間が経過していた。残り四十四時間・・・。

「鈴蘭、近くに居るのは分かっているわ。出てきなさい。」
蒲公英が大きな声をだした。
すると突入部隊の目の前に、女の子の妖精が舞い降りた。
「なぁんだ。ばれてたんだ。完璧に気配は断ったつもりだったのに。さすがは蒲公英さん。」
鈴蘭と思われる女の子が言った。
白く長い髪の毛に真白いワンピースのような服。とても今から戦おうという子には見えない。
「鈴蘭・・・・・・今こちら側に戻ってくれば、あなたは罪に問われないわ。ジェネレーションなんか抜けて戻ってきなさい。」
蒲公英が鈴蘭に向けて言った。
「蒲公英さん・・・人間達を助けたいなんて、本気で思っているんですか?貴方の恋人だって、人間に殺されたはずじゃないですか・・・。」
「えっ・・・?」
夢華達は蒲公英を見つめた。
「そうね・・・。けど、無意味な武力で事を解決することがどれだけ醜いか・・・。人間を見ているからこそ、その醜さがわかるんじゃないの?」
蒲公英は落ち着き払って答えている。
「・・・人間がこのまま居たら、わたくしたちも殺されかねない。だから、人間を消すチームに入ったんです。」
鈴蘭の目に殺意が浮かんだ。
「蒲公英さん、貴方には心から感謝しています。愛する人を失ったわたくしに、同じ痛みを持つ者として支えてくれました。貴方の部下をやってきて、本当に幸せだったと思って居ます。しかし・・・邪魔をするのなら、容赦しません。」
蒲公英を睨み付けたまま、冷たい声で言った。
「貴方の相手は、私よ。」
その時、蒲公英の前に春美が進み出た。
「・・・ふふふ・・ずいぶんとなめられたものね。貴方ごときに、わたくしの相手ができると思って?わたくしは貴方達全員をここで仕留めるわ。」
不気味な笑いを浮かべた鈴蘭はそう言うと呪文を唱え始めた。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を聞きたまえ。我が敵の、行く手を遮る毒の霧。毒使わし我の名は、はかなき花びら鈴蘭なる!!」
突入部隊の周りに、淡い霧が立ち始めた。鈴蘭の姿がかすむ。
「霧の毒よ!!息を止めて!!!」
蒲公英が手で口を覆いながら叫んだ。
「くっ・・・」
夢華達は慌てて息を止めた。
「鈴蘭、貴方の相手は私よ。」
そう言って春美が呪文を唱え始めた。相変わらす、呪文を唱えるスピードが速い。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を聞きたまえ。春風で、濃き霧さえも吹き飛ばす。春使わし我の名は、桜の花びら春美なる!」
暖かく、激しい風が吹いてきて、目の前の霧が薄くなり始めた。かすんでいた鈴蘭の姿も、はっきりと見える。
「ふぅん。やるじゃない。」
鈴蘭が余裕の笑みを浮かべて言った。
「・・・私がなんとかくい止めるから、その間に走って先に行って。勝負が付いたら・・・鈴蘭を増援部隊に明け渡し,私も冬美の元に行くわ。」
春美がみんなに言った。
「・・・わかった。みんな、走る準備を。」
有水が言った。その言葉を聞くと同時に、また春美が素早く呪文を唱え始めた。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を聞きたまえ。ジャスミンの、香りで敵を惑わせろ。春使わし我の名は、桜の花びら春美なる!!」
「うっ・・・??」
鈴蘭がよろけた。
「走れ!」
有水の声と共に夢華達は春美を残して走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...