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共に生きるため
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この時、残り四十三時間三十分・・・・。
「貴方・・・何をしたの?」
鈴蘭が春美を睨み付けながら言った。
「ジャスミンの花言葉・・・」
春美が微笑みながら言った。
はっとした鈴蘭が答える。
「優美・・・それに官能的・・・。」
「よくわかったわね。私が操るジャスミンの香りは、相手を惑わす・・・。幻術の一種よ。」
「・・・ふふふ・・・こんなちっぽけな幻術でわたくしが倒せるとでも?」
鈴蘭の目が光ったように見えた。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を聞きたまえ。鈴蘭の、花粉に乗って飛ぶ毒牙。毒使わし我の名は、はかなき花びら鈴蘭なる!」
春美はとっさに息を止めた。花粉が春美を襲う。
(息さえしなければ・・・)
反撃しようとしたその時、春美の視界がぼやけた。地面を膝に付けるように倒れ掛ける。
「なぜ・・・?息はしなかったはず。」
そう言った瞬間、花粉を吸い込みよけいに毒が体に回った。体全体にしびれが回る。・・・動けない。
「馬鹿ねぇ・・。花粉よ?口から吸わなくても、目があるじゃない。目に花粉が付いたらこっちのものよ。そろそろ見えなくなるわ。その後は・・・確実に死ぬわね。」
鈴蘭が勝利の笑みを浮かべた。
「くっ・・・見えなくたって・・・呪文は唱えられる・・・。」
春美の目はすでに閉じていた。喋っている間も、毒は体をむしばんでいる。
「悪あがきを・・・。」
鈴蘭は苦しむ春美をじっと見つめていた。
「・・・大地の神・・・太陽の神よ・・・我の声を・・聞きたまえ・・・・我が敵の、背後を狙え、熊ん蜂・・・春使わし我の名は・・・桜の花びら春美なる・・・!!」
春美が口の中でつぶやくように必死で呪文をとなえた。勝利に浸っている鈴蘭に、その声は聞こえていなかった。
【ドスッ・・!!】
「うっ・・・・・・!!!」
鈴蘭が突然前に倒れ込んだ。背中に、何本もの太い針が刺さっている。熊ん蜂の大群が、一斉に鈴蘭を攻撃したのだ。
「・・・私の・・・勝ちよ・・。」
春美は確かに鈴蘭が倒れる音を聞いた。だが春美自身今にも意識を失い掛けている。
「こんな所で、倒れるわけには・・・・。」
春美は手探りで、瓶を探した。神秘の泉の水が入った大事な瓶を。
やっとのことで瓶をつかみ、蓋をとって一気に飲み込んだ。体のしびれがとれていく・・・。目も自然と開いてきた。
瓶の中には、もう水は残っていない。
(使えるのは一回かぎりか・・・。けど、私は勝ったわ。すぐにみんなを追わないと。)
瓶をしまうと、春美は立ち上がった。
「鈴蘭・・・その毒の量は妖精にとって致死量ではない。しばらくしたら増援部隊が来るわ・・・いくら貴方が敵でも、殺すなんて、私にはできないから・・・。」
そう言いながら鈴蘭の横を通り過ぎたその時、後ろから笑いの混じった声が聞こえてきた。
「これが大精霊様直属の部隊、種子蕾隊の力・・・?甘い・・・・甘すぎるわ・・・・」
春美は慌てて振り返った。春美の目の前には、しっかりと立って笑っている鈴蘭の姿があった。
「・・・どういうこと・・・?致死量ではないとはいえ、その量の毒をくらって立ち上がれるわけないわ・・・」
春美が震えながら言った。
「毒を以て、毒を制す・・・。」
鈴蘭は春美が震える姿を見て、相変わらず楽しみながら言った。
「貴方の鈴蘭の毒で・・・?そんな馬鹿なこと・・・。」
震えを止めようと、足を踏ん張りながら鈴蘭を睨み付けた春美が言った。
「そうね、確かにありえないと思うでしょう。けど、わたくしは鈴蘭に宿る妖精。・・・毒が体に入った瞬間、わたくしの体の中に持つ毒を最大限に高めた。その結果、わたくしの毒が勝ったわ。もし致死量の毒をくらわせていたなら、貴方の勝ちだったでしょうね・・・・。覚えておきなさい。貴方のその優しさが、戦いの場では身を滅ぼすことになるのよ。」
鈴蘭は春美に近づきながら言った。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を・・・・・・・」
鈴蘭が呪文を唱え始めたのを聞き、春美も慌てて呪文を唱えた。
「大地の神・・・・・・・・」
「鈴蘭なる!」「春美なる!」
二人は同時に唱え終わった。
鈴蘭と春美の間で、力がぶつかり合う。今やお互いの姿が見えぬほど、力はぶつかり合っていた。
【バーン!!!】
音と共にぶつかり合っていた力は消えた。
「貴方を甘く見過ぎていたわ。」
と言いながら鈴蘭の余裕の笑みは消えない。
「なぜ・・・こうまでして人間を・・・?」
少し息を切らしながら,春美が聞いた。
「・・・・・・・いいわ。どちらかが死ぬ前に教えてあげましょう。いえ、わたくしが誰かに知っていてほしいのかもね・・・。
・・・秋馬山〈あきばざん〉の英雄と言われた妖精をご存じかしら?」
鈴蘭の目から、殺意が消えた。思い出しながら語りだしたようだ。
「・・・火事になった秋馬山を救おうとして、その命を失ったという妖精達・・・。」
春美が答えた。
「えぇ・・・秋馬山は、その時まで人間のキャンプ場として人気があり、子供の笑い声が響き、妖精達にとっても心地の良い場所だった。しかし段々と心ない人間により、ゴミが捨てられ、川に油を流され、妖精達は弱っていくようになった。」
鈴蘭の目に涙がにじむ。過去を思い出して居るようだ。鈴蘭は話を続けた。
「それでも陰と陽の妖精で交代していたし、なんとか持ちこたえていた。それに悪い人間ばかりでもなかったから。そのキャンプ場には一人の管理人のお爺さんが居たわ。毎日ゴミを拾い、草木に水をやり、話しかけていた。・・・大人で妖精が見えるほんのわずかな人の一人だったの。妖精達は、お爺さんに助けられ、仲良く共存していた。周りの人間から見たら、呆けたじいさんに見えたみたいだけどね・・・。」
春美は黙って話を聞いている。
「ある日、そんな幸せな日々は終わりを迎えた。その日も、いつものようにキャンプ客で賑わっていた・・・その夜、その中の何人かがタバコを吸い、そのまま捨てた。それで起きたのが、あの山火事よ。」
鈴蘭の目に、怒りの感情がわき上がってきた。
「逃げ遅れた陰の妖精は死んだ。管理人のお爺さんは、まだ焼けてない草木に宿る妖精に、逃げるように言ったわ。けれど、妖精が居なくなったら、草木は死んでしまう。妖精達は逃げなかった。・・・焼けたら同じなのにね・・・。お爺さんと妖精達は必死で火を消そうとしたわ。何百年・何千年と生きてきた草木を守ろうと。」
怒りの目から涙がこぼれ落ちてきた。
「結局、何人かを残してみんな死んだわ。お爺さんも・・・わたくしの想い人も・・・。その時、まだ妖精だった蒲公英さんの恋人も死んだ。秋馬山は、今や住宅地・・昔の面影なんて、一切ない。」
鈴蘭は崩れ落ちるように座り込んだ。涙が地面に打ち付けられる。
「わたくしはまだ学生だった。その想い人は・・・わたくしの気持ちなんて知らなかったでしょうね。一度、その人がわたくしの呪文を誉めてくれたの。校外練習の時、たまたま通りかかったらしくてね・・・。・・・嬉しかった・・・。その時からいつも影でその人を見てた・・・。」
鈴蘭の目から涙が消えた。その目は、またもや怒りに満ちていた。
「わたくしは、人間と共に死んだその人を誇りに思っていた。人間を恨んでなんかいなかったわ。けど・・・最近の人間は、自然に見向きもしない。いえ、自然を守ろうと言いながら破壊を繰り返し、かつて妖精が見えていたはずの子供は、周りを省みない冷たい大人となっていた。いつのまにか、子供でさえ、わたくしたちが見えなくなっている・・・。そして、あの時のように自然を守ろうとして死んでいく妖精は後を絶たない・・・。」
鈴蘭は立ち上がった。
「鈴蘭・・・貴方は本当に苦しんで生きてきたと思う。けど・・・・・けど・・・・・昔からそうだったじゃない。私たちと共存できる人間より、自然を壊す・・・私たちが見えない人間の方が、圧倒的に多かったじゃない・・・。」
春美の目から涙がこぼれ落ちた。
「それでもその人達の中で・・・ほんの一握りにも満たなくても、そのお爺さんや、夢華のような優しい心を持った人間が居たじゃない・・・。忘れちゃったの?その人達も死んでしまうのよ・・・?人だって妖精だって関係ない。命の重みは、それを経験している貴方が一番分かることでしょう・・・?」
春美は必死で訴えていた。
「夢華だって、大人になったらわたくし達との事なんて忘れてしまうわよ。」
鈴蘭が微笑んだ。名前にぴったりの、はかなくて、美しい笑顔だった。
「わたくしがやっていることが人間と同じ事だって事くらい、わかってるわ。けど、これがわたくしの出した答えなの。武力には武力。貴方達妖精を殺したくはない。けれど、邪魔する者は排除する。・・・まさに、人間ね・・・。」
鈴蘭の目に段々と殺意が戻ってきた。
春美は話の途中から,もしかしたら鈴蘭と分かり合えるかもしれないと思っていたが、鈴蘭の決意は、そう簡単に変わるものではなかったのだ。
「貴方がわたくしを殺さないのなら、わたくしが貴方を殺す。」
鈴蘭がかまえた。その姿を見て、春美もかまえた。
「私は、貴方と戦いたくなんかない。けど、私は種子蕾隊のメンバー・・・。掟により、貴方を捕らえます。いえ・・・そんな甘いことが言えないのなら、心を鬼にして、貴方を殺します。」
また、戦いが始まった。
それは、残り時間四十二時間の時だった・・・。
「貴方・・・何をしたの?」
鈴蘭が春美を睨み付けながら言った。
「ジャスミンの花言葉・・・」
春美が微笑みながら言った。
はっとした鈴蘭が答える。
「優美・・・それに官能的・・・。」
「よくわかったわね。私が操るジャスミンの香りは、相手を惑わす・・・。幻術の一種よ。」
「・・・ふふふ・・・こんなちっぽけな幻術でわたくしが倒せるとでも?」
鈴蘭の目が光ったように見えた。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を聞きたまえ。鈴蘭の、花粉に乗って飛ぶ毒牙。毒使わし我の名は、はかなき花びら鈴蘭なる!」
春美はとっさに息を止めた。花粉が春美を襲う。
(息さえしなければ・・・)
反撃しようとしたその時、春美の視界がぼやけた。地面を膝に付けるように倒れ掛ける。
「なぜ・・・?息はしなかったはず。」
そう言った瞬間、花粉を吸い込みよけいに毒が体に回った。体全体にしびれが回る。・・・動けない。
「馬鹿ねぇ・・。花粉よ?口から吸わなくても、目があるじゃない。目に花粉が付いたらこっちのものよ。そろそろ見えなくなるわ。その後は・・・確実に死ぬわね。」
鈴蘭が勝利の笑みを浮かべた。
「くっ・・・見えなくたって・・・呪文は唱えられる・・・。」
春美の目はすでに閉じていた。喋っている間も、毒は体をむしばんでいる。
「悪あがきを・・・。」
鈴蘭は苦しむ春美をじっと見つめていた。
「・・・大地の神・・・太陽の神よ・・・我の声を・・聞きたまえ・・・・我が敵の、背後を狙え、熊ん蜂・・・春使わし我の名は・・・桜の花びら春美なる・・・!!」
春美が口の中でつぶやくように必死で呪文をとなえた。勝利に浸っている鈴蘭に、その声は聞こえていなかった。
【ドスッ・・!!】
「うっ・・・・・・!!!」
鈴蘭が突然前に倒れ込んだ。背中に、何本もの太い針が刺さっている。熊ん蜂の大群が、一斉に鈴蘭を攻撃したのだ。
「・・・私の・・・勝ちよ・・。」
春美は確かに鈴蘭が倒れる音を聞いた。だが春美自身今にも意識を失い掛けている。
「こんな所で、倒れるわけには・・・・。」
春美は手探りで、瓶を探した。神秘の泉の水が入った大事な瓶を。
やっとのことで瓶をつかみ、蓋をとって一気に飲み込んだ。体のしびれがとれていく・・・。目も自然と開いてきた。
瓶の中には、もう水は残っていない。
(使えるのは一回かぎりか・・・。けど、私は勝ったわ。すぐにみんなを追わないと。)
瓶をしまうと、春美は立ち上がった。
「鈴蘭・・・その毒の量は妖精にとって致死量ではない。しばらくしたら増援部隊が来るわ・・・いくら貴方が敵でも、殺すなんて、私にはできないから・・・。」
そう言いながら鈴蘭の横を通り過ぎたその時、後ろから笑いの混じった声が聞こえてきた。
「これが大精霊様直属の部隊、種子蕾隊の力・・・?甘い・・・・甘すぎるわ・・・・」
春美は慌てて振り返った。春美の目の前には、しっかりと立って笑っている鈴蘭の姿があった。
「・・・どういうこと・・・?致死量ではないとはいえ、その量の毒をくらって立ち上がれるわけないわ・・・」
春美が震えながら言った。
「毒を以て、毒を制す・・・。」
鈴蘭は春美が震える姿を見て、相変わらず楽しみながら言った。
「貴方の鈴蘭の毒で・・・?そんな馬鹿なこと・・・。」
震えを止めようと、足を踏ん張りながら鈴蘭を睨み付けた春美が言った。
「そうね、確かにありえないと思うでしょう。けど、わたくしは鈴蘭に宿る妖精。・・・毒が体に入った瞬間、わたくしの体の中に持つ毒を最大限に高めた。その結果、わたくしの毒が勝ったわ。もし致死量の毒をくらわせていたなら、貴方の勝ちだったでしょうね・・・・。覚えておきなさい。貴方のその優しさが、戦いの場では身を滅ぼすことになるのよ。」
鈴蘭は春美に近づきながら言った。
「大地の神、太陽の神よ、我の声を・・・・・・・」
鈴蘭が呪文を唱え始めたのを聞き、春美も慌てて呪文を唱えた。
「大地の神・・・・・・・・」
「鈴蘭なる!」「春美なる!」
二人は同時に唱え終わった。
鈴蘭と春美の間で、力がぶつかり合う。今やお互いの姿が見えぬほど、力はぶつかり合っていた。
【バーン!!!】
音と共にぶつかり合っていた力は消えた。
「貴方を甘く見過ぎていたわ。」
と言いながら鈴蘭の余裕の笑みは消えない。
「なぜ・・・こうまでして人間を・・・?」
少し息を切らしながら,春美が聞いた。
「・・・・・・・いいわ。どちらかが死ぬ前に教えてあげましょう。いえ、わたくしが誰かに知っていてほしいのかもね・・・。
・・・秋馬山〈あきばざん〉の英雄と言われた妖精をご存じかしら?」
鈴蘭の目から、殺意が消えた。思い出しながら語りだしたようだ。
「・・・火事になった秋馬山を救おうとして、その命を失ったという妖精達・・・。」
春美が答えた。
「えぇ・・・秋馬山は、その時まで人間のキャンプ場として人気があり、子供の笑い声が響き、妖精達にとっても心地の良い場所だった。しかし段々と心ない人間により、ゴミが捨てられ、川に油を流され、妖精達は弱っていくようになった。」
鈴蘭の目に涙がにじむ。過去を思い出して居るようだ。鈴蘭は話を続けた。
「それでも陰と陽の妖精で交代していたし、なんとか持ちこたえていた。それに悪い人間ばかりでもなかったから。そのキャンプ場には一人の管理人のお爺さんが居たわ。毎日ゴミを拾い、草木に水をやり、話しかけていた。・・・大人で妖精が見えるほんのわずかな人の一人だったの。妖精達は、お爺さんに助けられ、仲良く共存していた。周りの人間から見たら、呆けたじいさんに見えたみたいだけどね・・・。」
春美は黙って話を聞いている。
「ある日、そんな幸せな日々は終わりを迎えた。その日も、いつものようにキャンプ客で賑わっていた・・・その夜、その中の何人かがタバコを吸い、そのまま捨てた。それで起きたのが、あの山火事よ。」
鈴蘭の目に、怒りの感情がわき上がってきた。
「逃げ遅れた陰の妖精は死んだ。管理人のお爺さんは、まだ焼けてない草木に宿る妖精に、逃げるように言ったわ。けれど、妖精が居なくなったら、草木は死んでしまう。妖精達は逃げなかった。・・・焼けたら同じなのにね・・・。お爺さんと妖精達は必死で火を消そうとしたわ。何百年・何千年と生きてきた草木を守ろうと。」
怒りの目から涙がこぼれ落ちてきた。
「結局、何人かを残してみんな死んだわ。お爺さんも・・・わたくしの想い人も・・・。その時、まだ妖精だった蒲公英さんの恋人も死んだ。秋馬山は、今や住宅地・・昔の面影なんて、一切ない。」
鈴蘭は崩れ落ちるように座り込んだ。涙が地面に打ち付けられる。
「わたくしはまだ学生だった。その想い人は・・・わたくしの気持ちなんて知らなかったでしょうね。一度、その人がわたくしの呪文を誉めてくれたの。校外練習の時、たまたま通りかかったらしくてね・・・。・・・嬉しかった・・・。その時からいつも影でその人を見てた・・・。」
鈴蘭の目から涙が消えた。その目は、またもや怒りに満ちていた。
「わたくしは、人間と共に死んだその人を誇りに思っていた。人間を恨んでなんかいなかったわ。けど・・・最近の人間は、自然に見向きもしない。いえ、自然を守ろうと言いながら破壊を繰り返し、かつて妖精が見えていたはずの子供は、周りを省みない冷たい大人となっていた。いつのまにか、子供でさえ、わたくしたちが見えなくなっている・・・。そして、あの時のように自然を守ろうとして死んでいく妖精は後を絶たない・・・。」
鈴蘭は立ち上がった。
「鈴蘭・・・貴方は本当に苦しんで生きてきたと思う。けど・・・・・けど・・・・・昔からそうだったじゃない。私たちと共存できる人間より、自然を壊す・・・私たちが見えない人間の方が、圧倒的に多かったじゃない・・・。」
春美の目から涙がこぼれ落ちた。
「それでもその人達の中で・・・ほんの一握りにも満たなくても、そのお爺さんや、夢華のような優しい心を持った人間が居たじゃない・・・。忘れちゃったの?その人達も死んでしまうのよ・・・?人だって妖精だって関係ない。命の重みは、それを経験している貴方が一番分かることでしょう・・・?」
春美は必死で訴えていた。
「夢華だって、大人になったらわたくし達との事なんて忘れてしまうわよ。」
鈴蘭が微笑んだ。名前にぴったりの、はかなくて、美しい笑顔だった。
「わたくしがやっていることが人間と同じ事だって事くらい、わかってるわ。けど、これがわたくしの出した答えなの。武力には武力。貴方達妖精を殺したくはない。けれど、邪魔する者は排除する。・・・まさに、人間ね・・・。」
鈴蘭の目に段々と殺意が戻ってきた。
春美は話の途中から,もしかしたら鈴蘭と分かり合えるかもしれないと思っていたが、鈴蘭の決意は、そう簡単に変わるものではなかったのだ。
「貴方がわたくしを殺さないのなら、わたくしが貴方を殺す。」
鈴蘭がかまえた。その姿を見て、春美もかまえた。
「私は、貴方と戦いたくなんかない。けど、私は種子蕾隊のメンバー・・・。掟により、貴方を捕らえます。いえ・・・そんな甘いことが言えないのなら、心を鬼にして、貴方を殺します。」
また、戦いが始まった。
それは、残り時間四十二時間の時だった・・・。
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