共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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「まだ、戦いの音が続いてるわね・・・。」
蒲公英がつぶやいた。
夢華達は、春美と別れた後、ジェネレーションの罠に阻まれ苦戦していた。
なんとか怪我人はでなかったものの、水の音を聞いたと思った瞬間敵の幻術にかかってしまっていたのだ。歩いても歩いても同じ景色が続いていた。有水が気づいて幻術を解いたときには、みんな疲れ切っていた。
それでも一行は先を進めた。もうすぐ月の村の入り口という所まで来た今、休憩に全員座り込んでいたのだった。
「一回やんだと思ったのにな・・・。」
秋美が音のする方向を見ながらつぶやいた。もう、春美の姿は一切見えない。
「幻術にかかる前、水の音が聞こえた。ってことは・・・。」
栄枝が有水を見ながら言葉を濁した。
「あぁ。たぶん俺の部下・・・この人数を幻術にかけれる力を持つ奴なんて、一人しか居ない。・・・水湖〈すいこ〉だ。陰の妖精で、海起達の一期上の男の妖精。」
有水が全体を見回し、続けた。
「水の妖精で、幻術が得意分野だ。ただ、あいつは単純だ。頭脳戦は弱い。」
「だったら、俺が行きます。」                           
海起が有水に向けて言った。
夢華達はだまって会話の様子を見ている。
「水湖さんは先輩だし、あの人の幻術がどれほど強いかはわかってます。・・・・俺も同じ水の妖精ですから・・・。けど、俺だって種子蕾隊のメンバーで、頭には自信があります。行かせてください。」
海起が、立ち上がって有水に頭をさげた。
「・・・わかった。お前に任せる。」
有水が海起に向かって言った。

その時、栄枝の顔色が変わった。
「有水・・・みんな・・・。感じるか?」
全員が首を横に振る。                     
「何か感じるのね?」
蒲公英が聞いた。
「俺の部下・・・大樹の気配だ・・・。」
栄枝がため息混じりにつぶやいた。
「・・・やっかいだな。」
有水もため息をつく。
「なんでそんなにやっかいなんだ?こっちも二人で応戦すればいいだろう?なんならあたいが海起と一緒に戦うぜ。」
秋美が言った。早く先を進めたそうにしているのがわかる。
「秋美、落ち着け・・・。大樹は頭がかなり冴える。その上、相性抜群の妖精が手を組めば、本人達の倍以上の力は余裕でだせる。俺と有水と氷河が昔最強チームと言われていた時代があるのも、そのせいだ。」
栄枝が秋美をなだめるように言った。
夢華は秋美を見つめた。秋美が何かしようとしている気持ちは、痛いほど伝わってくる。自分だって同じだ。だが、栄枝の言うことに納得できる。
「じゃあ、俺に行かせてください。」
ずっと無言で座っていた草多が立ち上がった。
「大樹さんも、俺の一個上で先輩です。先輩が、めっちゃ強いのは十分承知してます。俺はもともと大樹さんについてたし・・・俺と海起なら・・。コンビの練習だってしてます。海起は水湖さんについてましたから。」
草多が言うと、海起もうなずいた。
「大樹と水湖は,妖精の中でもかなり強い奴らだ。・・・しかも二人が付いていた先輩であるから,ある程度の力は読まれてしまうぞ。」
有水が言った。
「俺が行ったら駄目ですか?」
栄枝が唐突に有水に言った。
「栄枝さん・・・」
草多がつぶやいた。
「草多。お前はもう一度冬美のところに行け。・・・行きたいんだろう?」
栄枝が草多を優しく諭す。
「栄枝・・・。わかった。お前と海起に任せる。・・・お前には来てほしかったが,水湖と大樹の二人には初めて実践のコンビを組むチームじゃ勝ち目はないからな。」
有水が栄枝と海起を見つめながら言った。
「はい。」
海起が返事をした。
「有水・・・・サンキュウな。俺もすぐ追いつくけど万が一の時は・・。草多と・・・・・氷河を,頼む。」
栄枝が有水にだけ聞こえるような小声で言った。
有水が軽く頷いた。
「夢華・・・この前はきついこといってごめん。ただ心配だっただけなんだ。俺言い方悪いから・・・。」
海起が夢華に言った。
「ううん・・・気にしてないよ。」
夢華が海起に向かってうなずきながら言った。
「海起・・・負けんじゃねーぞ。」
秋美が海起に向けて言った。
「分かってる。心配は無用だ。」
海起が背を向けながら親指を突き上げた。
「さってと,行くぞ。海起!!」
栄枝が笑って全員の前に進み出て呪文を唱えた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。木の幹を,伸ばして捕らえろ,我が敵を。我らの行く手を阻ぶ者,隠れていても草木は分かる。草木使わし我の名は,緑の力,栄枝なる!!」
呪文が終わると同時に,周りにはえていた木の幹が急激に伸び始めた。
「すごい・・・。」
夢華は思わず感歎の声を上げた。
「あのレベルの呪文は,あたいらにはまだ無理だ。難しい呪文ほど長くなって,力も多く必要なんだ。」
秋美も夢華の隣で木が伸びる様子を見つめている。
「うわぁ!」
見知らぬ男の声がした。
「捕らえたか?」
有水が目を光らせる。
「いや,まだです。・・・海起,コンビネーションの練習だ。木の成長を援助するんだ。」
栄枝が海起に言った。                                                     
海起はうなずき,呪文を唱え始めた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。我が水で,草木の力をみなぎらす。水使わし我の名は,波打つ海辺,海起なる!」
栄枝の呪文で成長をしていた草木の根本に,水が滴り始めた。木の成長が急速に早くなる。
「今のうちです,行ってください。」
栄枝が有水に背を向けて言った。
「栄枝・・・たのむぞ。」
有水が栄枝の背中にささやいた。
「わかってますよ。」
栄枝は振り向かずに答えた。
「海起・・・お前を信じてるから。」
草多が海起の横から言った。
「あぁ。俺だって,お前が・・・冬美達を連れて帰るのを信じてるぞ。」
海起と草多は握り拳を打ち合って別れを告げた。
草多と海起を残し,一行は月の村へ足を踏み入れて行った・・・。

残り四十一時間・・・・。
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