11 / 26
共に生きるため
しおりを挟む
「まだ、戦いの音が続いてるわね・・・。」
蒲公英がつぶやいた。
夢華達は、春美と別れた後、ジェネレーションの罠に阻まれ苦戦していた。
なんとか怪我人はでなかったものの、水の音を聞いたと思った瞬間敵の幻術にかかってしまっていたのだ。歩いても歩いても同じ景色が続いていた。有水が気づいて幻術を解いたときには、みんな疲れ切っていた。
それでも一行は先を進めた。もうすぐ月の村の入り口という所まで来た今、休憩に全員座り込んでいたのだった。
「一回やんだと思ったのにな・・・。」
秋美が音のする方向を見ながらつぶやいた。もう、春美の姿は一切見えない。
「幻術にかかる前、水の音が聞こえた。ってことは・・・。」
栄枝が有水を見ながら言葉を濁した。
「あぁ。たぶん俺の部下・・・この人数を幻術にかけれる力を持つ奴なんて、一人しか居ない。・・・水湖〈すいこ〉だ。陰の妖精で、海起達の一期上の男の妖精。」
有水が全体を見回し、続けた。
「水の妖精で、幻術が得意分野だ。ただ、あいつは単純だ。頭脳戦は弱い。」
「だったら、俺が行きます。」
海起が有水に向けて言った。
夢華達はだまって会話の様子を見ている。
「水湖さんは先輩だし、あの人の幻術がどれほど強いかはわかってます。・・・・俺も同じ水の妖精ですから・・・。けど、俺だって種子蕾隊のメンバーで、頭には自信があります。行かせてください。」
海起が、立ち上がって有水に頭をさげた。
「・・・わかった。お前に任せる。」
有水が海起に向かって言った。
その時、栄枝の顔色が変わった。
「有水・・・みんな・・・。感じるか?」
全員が首を横に振る。
「何か感じるのね?」
蒲公英が聞いた。
「俺の部下・・・大樹の気配だ・・・。」
栄枝がため息混じりにつぶやいた。
「・・・やっかいだな。」
有水もため息をつく。
「なんでそんなにやっかいなんだ?こっちも二人で応戦すればいいだろう?なんならあたいが海起と一緒に戦うぜ。」
秋美が言った。早く先を進めたそうにしているのがわかる。
「秋美、落ち着け・・・。大樹は頭がかなり冴える。その上、相性抜群の妖精が手を組めば、本人達の倍以上の力は余裕でだせる。俺と有水と氷河が昔最強チームと言われていた時代があるのも、そのせいだ。」
栄枝が秋美をなだめるように言った。
夢華は秋美を見つめた。秋美が何かしようとしている気持ちは、痛いほど伝わってくる。自分だって同じだ。だが、栄枝の言うことに納得できる。
「じゃあ、俺に行かせてください。」
ずっと無言で座っていた草多が立ち上がった。
「大樹さんも、俺の一個上で先輩です。先輩が、めっちゃ強いのは十分承知してます。俺はもともと大樹さんについてたし・・・俺と海起なら・・。コンビの練習だってしてます。海起は水湖さんについてましたから。」
草多が言うと、海起もうなずいた。
「大樹と水湖は,妖精の中でもかなり強い奴らだ。・・・しかも二人が付いていた先輩であるから,ある程度の力は読まれてしまうぞ。」
有水が言った。
「俺が行ったら駄目ですか?」
栄枝が唐突に有水に言った。
「栄枝さん・・・」
草多がつぶやいた。
「草多。お前はもう一度冬美のところに行け。・・・行きたいんだろう?」
栄枝が草多を優しく諭す。
「栄枝・・・。わかった。お前と海起に任せる。・・・お前には来てほしかったが,水湖と大樹の二人には初めて実践のコンビを組むチームじゃ勝ち目はないからな。」
有水が栄枝と海起を見つめながら言った。
「はい。」
海起が返事をした。
「有水・・・・サンキュウな。俺もすぐ追いつくけど万が一の時は・・。草多と・・・・・氷河を,頼む。」
栄枝が有水にだけ聞こえるような小声で言った。
有水が軽く頷いた。
「夢華・・・この前はきついこといってごめん。ただ心配だっただけなんだ。俺言い方悪いから・・・。」
海起が夢華に言った。
「ううん・・・気にしてないよ。」
夢華が海起に向かってうなずきながら言った。
「海起・・・負けんじゃねーぞ。」
秋美が海起に向けて言った。
「分かってる。心配は無用だ。」
海起が背を向けながら親指を突き上げた。
「さってと,行くぞ。海起!!」
栄枝が笑って全員の前に進み出て呪文を唱えた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。木の幹を,伸ばして捕らえろ,我が敵を。我らの行く手を阻ぶ者,隠れていても草木は分かる。草木使わし我の名は,緑の力,栄枝なる!!」
呪文が終わると同時に,周りにはえていた木の幹が急激に伸び始めた。
「すごい・・・。」
夢華は思わず感歎の声を上げた。
「あのレベルの呪文は,あたいらにはまだ無理だ。難しい呪文ほど長くなって,力も多く必要なんだ。」
秋美も夢華の隣で木が伸びる様子を見つめている。
「うわぁ!」
見知らぬ男の声がした。
「捕らえたか?」
有水が目を光らせる。
「いや,まだです。・・・海起,コンビネーションの練習だ。木の成長を援助するんだ。」
栄枝が海起に言った。
海起はうなずき,呪文を唱え始めた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。我が水で,草木の力をみなぎらす。水使わし我の名は,波打つ海辺,海起なる!」
栄枝の呪文で成長をしていた草木の根本に,水が滴り始めた。木の成長が急速に早くなる。
「今のうちです,行ってください。」
栄枝が有水に背を向けて言った。
「栄枝・・・たのむぞ。」
有水が栄枝の背中にささやいた。
「わかってますよ。」
栄枝は振り向かずに答えた。
「海起・・・お前を信じてるから。」
草多が海起の横から言った。
「あぁ。俺だって,お前が・・・冬美達を連れて帰るのを信じてるぞ。」
海起と草多は握り拳を打ち合って別れを告げた。
草多と海起を残し,一行は月の村へ足を踏み入れて行った・・・。
残り四十一時間・・・・。
蒲公英がつぶやいた。
夢華達は、春美と別れた後、ジェネレーションの罠に阻まれ苦戦していた。
なんとか怪我人はでなかったものの、水の音を聞いたと思った瞬間敵の幻術にかかってしまっていたのだ。歩いても歩いても同じ景色が続いていた。有水が気づいて幻術を解いたときには、みんな疲れ切っていた。
それでも一行は先を進めた。もうすぐ月の村の入り口という所まで来た今、休憩に全員座り込んでいたのだった。
「一回やんだと思ったのにな・・・。」
秋美が音のする方向を見ながらつぶやいた。もう、春美の姿は一切見えない。
「幻術にかかる前、水の音が聞こえた。ってことは・・・。」
栄枝が有水を見ながら言葉を濁した。
「あぁ。たぶん俺の部下・・・この人数を幻術にかけれる力を持つ奴なんて、一人しか居ない。・・・水湖〈すいこ〉だ。陰の妖精で、海起達の一期上の男の妖精。」
有水が全体を見回し、続けた。
「水の妖精で、幻術が得意分野だ。ただ、あいつは単純だ。頭脳戦は弱い。」
「だったら、俺が行きます。」
海起が有水に向けて言った。
夢華達はだまって会話の様子を見ている。
「水湖さんは先輩だし、あの人の幻術がどれほど強いかはわかってます。・・・・俺も同じ水の妖精ですから・・・。けど、俺だって種子蕾隊のメンバーで、頭には自信があります。行かせてください。」
海起が、立ち上がって有水に頭をさげた。
「・・・わかった。お前に任せる。」
有水が海起に向かって言った。
その時、栄枝の顔色が変わった。
「有水・・・みんな・・・。感じるか?」
全員が首を横に振る。
「何か感じるのね?」
蒲公英が聞いた。
「俺の部下・・・大樹の気配だ・・・。」
栄枝がため息混じりにつぶやいた。
「・・・やっかいだな。」
有水もため息をつく。
「なんでそんなにやっかいなんだ?こっちも二人で応戦すればいいだろう?なんならあたいが海起と一緒に戦うぜ。」
秋美が言った。早く先を進めたそうにしているのがわかる。
「秋美、落ち着け・・・。大樹は頭がかなり冴える。その上、相性抜群の妖精が手を組めば、本人達の倍以上の力は余裕でだせる。俺と有水と氷河が昔最強チームと言われていた時代があるのも、そのせいだ。」
栄枝が秋美をなだめるように言った。
夢華は秋美を見つめた。秋美が何かしようとしている気持ちは、痛いほど伝わってくる。自分だって同じだ。だが、栄枝の言うことに納得できる。
「じゃあ、俺に行かせてください。」
ずっと無言で座っていた草多が立ち上がった。
「大樹さんも、俺の一個上で先輩です。先輩が、めっちゃ強いのは十分承知してます。俺はもともと大樹さんについてたし・・・俺と海起なら・・。コンビの練習だってしてます。海起は水湖さんについてましたから。」
草多が言うと、海起もうなずいた。
「大樹と水湖は,妖精の中でもかなり強い奴らだ。・・・しかも二人が付いていた先輩であるから,ある程度の力は読まれてしまうぞ。」
有水が言った。
「俺が行ったら駄目ですか?」
栄枝が唐突に有水に言った。
「栄枝さん・・・」
草多がつぶやいた。
「草多。お前はもう一度冬美のところに行け。・・・行きたいんだろう?」
栄枝が草多を優しく諭す。
「栄枝・・・。わかった。お前と海起に任せる。・・・お前には来てほしかったが,水湖と大樹の二人には初めて実践のコンビを組むチームじゃ勝ち目はないからな。」
有水が栄枝と海起を見つめながら言った。
「はい。」
海起が返事をした。
「有水・・・・サンキュウな。俺もすぐ追いつくけど万が一の時は・・。草多と・・・・・氷河を,頼む。」
栄枝が有水にだけ聞こえるような小声で言った。
有水が軽く頷いた。
「夢華・・・この前はきついこといってごめん。ただ心配だっただけなんだ。俺言い方悪いから・・・。」
海起が夢華に言った。
「ううん・・・気にしてないよ。」
夢華が海起に向かってうなずきながら言った。
「海起・・・負けんじゃねーぞ。」
秋美が海起に向けて言った。
「分かってる。心配は無用だ。」
海起が背を向けながら親指を突き上げた。
「さってと,行くぞ。海起!!」
栄枝が笑って全員の前に進み出て呪文を唱えた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。木の幹を,伸ばして捕らえろ,我が敵を。我らの行く手を阻ぶ者,隠れていても草木は分かる。草木使わし我の名は,緑の力,栄枝なる!!」
呪文が終わると同時に,周りにはえていた木の幹が急激に伸び始めた。
「すごい・・・。」
夢華は思わず感歎の声を上げた。
「あのレベルの呪文は,あたいらにはまだ無理だ。難しい呪文ほど長くなって,力も多く必要なんだ。」
秋美も夢華の隣で木が伸びる様子を見つめている。
「うわぁ!」
見知らぬ男の声がした。
「捕らえたか?」
有水が目を光らせる。
「いや,まだです。・・・海起,コンビネーションの練習だ。木の成長を援助するんだ。」
栄枝が海起に言った。
海起はうなずき,呪文を唱え始めた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。我が水で,草木の力をみなぎらす。水使わし我の名は,波打つ海辺,海起なる!」
栄枝の呪文で成長をしていた草木の根本に,水が滴り始めた。木の成長が急速に早くなる。
「今のうちです,行ってください。」
栄枝が有水に背を向けて言った。
「栄枝・・・たのむぞ。」
有水が栄枝の背中にささやいた。
「わかってますよ。」
栄枝は振り向かずに答えた。
「海起・・・お前を信じてるから。」
草多が海起の横から言った。
「あぁ。俺だって,お前が・・・冬美達を連れて帰るのを信じてるぞ。」
海起と草多は握り拳を打ち合って別れを告げた。
草多と海起を残し,一行は月の村へ足を踏み入れて行った・・・。
残り四十一時間・・・・。
0
あなたにおすすめの小説
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる