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共に生きるため
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「うわっ!!!」
さっきと同じ男の声がした。
「一人捕らえたな。」
栄枝がするどい目を向ける。
「大樹!!助けてくれよぅ!!」
捕まったと思われる水湖らしき男が叫ぶ。
「はぁ・・・水湖,ちったぁ頭使って逃げろって。」
別の男,大樹らしき声がした。
「ったく,しゃあねぇなぁ。・・・大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。木の葉っぱ,何より鋭き物に変え,木の幹すべて切り倒せ。木の葉使わし我の名は,吹き出る若葉,大樹なる!!」
【スパッ!!シュパパッ!!!!】
栄枝が成長させた木々がどんどん切断されていく。
【ドスン!!】
栄枝と海起の目の前に,水湖と思われる妖精が落ちてきた。
海起とほぼ同じ色の髪をしているが,すこしぽっちゃり気味でおしりを押さえて痛そうにしている。
「いててて・・・・大樹,ひでぇよう」
「水湖,お前がどんくさいからだろ。」
水湖の横に綺麗な緑色の髪の毛をした大樹と思われる妖精が舞い降りた。
「・・・栄枝さんじゃないですか。いんですか?こんな所で足止め食らって。」
大樹が罪悪感を持ったような苦い笑いを浮かべていった。
「あっ!海起じゃないか!!久しぶりぃ!」
水湖は立ち上がりながら海起ににっこりと笑って見せた。
そんな水湖から海起は目をそらしていた。
「大樹・・・あれほど人間を憎むなと言ったじゃないか・・・。」
栄枝が悲しそうな声で大樹に語りかけた。栄枝に怒りは感じられない。
「・・・」
大樹の顔から一瞬にして笑顔が消える。
「栄枝さん・・・すみません・・・。けど,俺・・・。」
何かを言いかけて,大樹は唇をかみしめた。水湖に対する態度からは考えられないほどおとなしくなっていた。
その時,水湖が
「ねぇねぇ,海起,なんで君が種子蕾隊に?・・・人間なんか守ったって,俺達からしてあと少しもすればあいつらは自分たちで身を滅ぼすことになるじゃないか。たとえ,俺達が何もしなくてもね♪」
と,言った。相変わらず海起に向けて笑いかけている。
「水湖さん・・・もう・・・」
「やめろってぇ?」
笑顔のままなのに,冷たい,激しい声で水湖は海起の言葉を遮った。
「やめるとでも思ったのかぁ?それに,お前が俺にそんな事いっていいのか?なぁ,海起ぃ?」
顔は笑っている。だが,目と声は冷水のように冷たく感じられた。
「お前ももう気が付いているんだろう?ジェネレーションのメンバーは全員,人間のせいで心を殺された妖精達だってことにねぇ。海起,お前と同じでさ♪・・・俺に勝てるとでも思ったぁ?」
水湖が笑顔のまま海起に詰め寄り始めた。
海起は後ずさる。
海起らしくない。足が震え始めていた。
「す・・・すみません・・・すみません・・・・・・・」
海起がいきなり空中を見つめて懇願し始めた。
「俺・・・俺・・・・お願いです。許して下さい。お願いします・・・お願いします・・・・・。」
海起の足から力が抜けそうになったその時。
「かいきぃぃぃぃ!!!!!!!しっかりしろやぁぁぁぁ!!」
栄枝が大声をあげた。
「はっ!!」
声に驚いて海起は我にかえっていた。
「・・・水湖,大樹,確かに海起もジェネレーションも・・・俺達だって気持ちは同じだろう。だがな,お前らがやっている事は人間と同じなんだぞ。わかっているんだろう?確かに俺達妖精界だって規則を破ったら抹消となる。けど,罪のない者が犠牲になる戦争・武力行使はないはずだ。それに・・・人間だって良い奴もいることくらい・・」
大樹が声を上げた。
「わかってますよ!!!わかってますとも!!」
「大樹・・・」
「けど・・・けど俺にはやっぱし無理なんです!!・・・辛いんです・・・。誰かを恨んでないと,自分を恨むんです・・・」
「辛いのは俺らだって一緒じゃないですか!!!」
海起が必死で声を荒げた。
「大樹さん・・・そして,水湖さん・・・お願いです。戻ってきてください!俺は・・・俺は,水湖さんに救われました。だから,今俺は種子蕾隊としてここに居るんです!俺,水湖さんに消えてほしくないんです。お願いします・・・。」
海起が頼み続ける様子を,水湖は黙って見つめていた。
顔だけは相変わらず笑っている。
「もう何を言っても無駄なのか・・・。」
と言いながら栄枝が海起の肩に手を置いた。
「どうする?お前には少し酷だったかもな・・・。先に行ってもいいんだぞ?」
海起に語りかける。
「いえ,俺のけじめです。戦います。」
海起はもういつのまにか震えていなかった。
「わかった。・・・甘えはゆるさねーぞ。」
栄枝にいつもの笑顔が戻ってきた。そしてそのまま呪文を唱え始めた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。寂しくも,強く伸びる雑草で。敵を一気に捕まえろ。雑草は,踏まれたくらいじゃ屈しない。草木使わし我の名は,緑の力,栄枝なる!」
栄枝が唱えて居る間に,海起も呪文を唱えていた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。地面から地下水吹き出し壁作る。水使わし我の名は,波打つ海辺,海起なる!」
大樹と水湖を取り囲むように地面から水が噴き出し始めた。ものすごい勢いのため,抜け出せない。
大樹が呪文で反撃しようとしたとき,大樹と水湖は雑草に絡まれているのに気が付いた。
足に絡まりついて振り払ってもとれない。
体に巻き付きながらどんどん上へと上がってきた。
「うわぁぁ!大樹どうすんだよう!!」
水湖が叫ぶ。
「このまま足をつぶして連行する。」
栄枝が大樹達に聞こえるように大声を上げた。
「うわわわわ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なーんちゃって♪」
水湖がそう言ったとたん,大樹と水湖の姿が消えた。
と同時に,栄枝と海起の真上から鋭い葉っぱが勢いよく落ちてきた。
「海起!!よけろ!」
栄枝が叫んで二人は左右に回避した。
「・・・幻術でしたか・・」
海起が栄枝のそばに走って来て言った。
「あぁ,甘く見過ぎたな。」
栄枝が少しだけ微笑んだ。
「じゃあ,本気で行くぞ!!!」
栄枝が海起に親指を突き上げる。
この時,残り四十時間だった・・・。
さっきと同じ男の声がした。
「一人捕らえたな。」
栄枝がするどい目を向ける。
「大樹!!助けてくれよぅ!!」
捕まったと思われる水湖らしき男が叫ぶ。
「はぁ・・・水湖,ちったぁ頭使って逃げろって。」
別の男,大樹らしき声がした。
「ったく,しゃあねぇなぁ。・・・大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。木の葉っぱ,何より鋭き物に変え,木の幹すべて切り倒せ。木の葉使わし我の名は,吹き出る若葉,大樹なる!!」
【スパッ!!シュパパッ!!!!】
栄枝が成長させた木々がどんどん切断されていく。
【ドスン!!】
栄枝と海起の目の前に,水湖と思われる妖精が落ちてきた。
海起とほぼ同じ色の髪をしているが,すこしぽっちゃり気味でおしりを押さえて痛そうにしている。
「いててて・・・・大樹,ひでぇよう」
「水湖,お前がどんくさいからだろ。」
水湖の横に綺麗な緑色の髪の毛をした大樹と思われる妖精が舞い降りた。
「・・・栄枝さんじゃないですか。いんですか?こんな所で足止め食らって。」
大樹が罪悪感を持ったような苦い笑いを浮かべていった。
「あっ!海起じゃないか!!久しぶりぃ!」
水湖は立ち上がりながら海起ににっこりと笑って見せた。
そんな水湖から海起は目をそらしていた。
「大樹・・・あれほど人間を憎むなと言ったじゃないか・・・。」
栄枝が悲しそうな声で大樹に語りかけた。栄枝に怒りは感じられない。
「・・・」
大樹の顔から一瞬にして笑顔が消える。
「栄枝さん・・・すみません・・・。けど,俺・・・。」
何かを言いかけて,大樹は唇をかみしめた。水湖に対する態度からは考えられないほどおとなしくなっていた。
その時,水湖が
「ねぇねぇ,海起,なんで君が種子蕾隊に?・・・人間なんか守ったって,俺達からしてあと少しもすればあいつらは自分たちで身を滅ぼすことになるじゃないか。たとえ,俺達が何もしなくてもね♪」
と,言った。相変わらず海起に向けて笑いかけている。
「水湖さん・・・もう・・・」
「やめろってぇ?」
笑顔のままなのに,冷たい,激しい声で水湖は海起の言葉を遮った。
「やめるとでも思ったのかぁ?それに,お前が俺にそんな事いっていいのか?なぁ,海起ぃ?」
顔は笑っている。だが,目と声は冷水のように冷たく感じられた。
「お前ももう気が付いているんだろう?ジェネレーションのメンバーは全員,人間のせいで心を殺された妖精達だってことにねぇ。海起,お前と同じでさ♪・・・俺に勝てるとでも思ったぁ?」
水湖が笑顔のまま海起に詰め寄り始めた。
海起は後ずさる。
海起らしくない。足が震え始めていた。
「す・・・すみません・・・すみません・・・・・・・」
海起がいきなり空中を見つめて懇願し始めた。
「俺・・・俺・・・・お願いです。許して下さい。お願いします・・・お願いします・・・・・。」
海起の足から力が抜けそうになったその時。
「かいきぃぃぃぃ!!!!!!!しっかりしろやぁぁぁぁ!!」
栄枝が大声をあげた。
「はっ!!」
声に驚いて海起は我にかえっていた。
「・・・水湖,大樹,確かに海起もジェネレーションも・・・俺達だって気持ちは同じだろう。だがな,お前らがやっている事は人間と同じなんだぞ。わかっているんだろう?確かに俺達妖精界だって規則を破ったら抹消となる。けど,罪のない者が犠牲になる戦争・武力行使はないはずだ。それに・・・人間だって良い奴もいることくらい・・」
大樹が声を上げた。
「わかってますよ!!!わかってますとも!!」
「大樹・・・」
「けど・・・けど俺にはやっぱし無理なんです!!・・・辛いんです・・・。誰かを恨んでないと,自分を恨むんです・・・」
「辛いのは俺らだって一緒じゃないですか!!!」
海起が必死で声を荒げた。
「大樹さん・・・そして,水湖さん・・・お願いです。戻ってきてください!俺は・・・俺は,水湖さんに救われました。だから,今俺は種子蕾隊としてここに居るんです!俺,水湖さんに消えてほしくないんです。お願いします・・・。」
海起が頼み続ける様子を,水湖は黙って見つめていた。
顔だけは相変わらず笑っている。
「もう何を言っても無駄なのか・・・。」
と言いながら栄枝が海起の肩に手を置いた。
「どうする?お前には少し酷だったかもな・・・。先に行ってもいいんだぞ?」
海起に語りかける。
「いえ,俺のけじめです。戦います。」
海起はもういつのまにか震えていなかった。
「わかった。・・・甘えはゆるさねーぞ。」
栄枝にいつもの笑顔が戻ってきた。そしてそのまま呪文を唱え始めた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。寂しくも,強く伸びる雑草で。敵を一気に捕まえろ。雑草は,踏まれたくらいじゃ屈しない。草木使わし我の名は,緑の力,栄枝なる!」
栄枝が唱えて居る間に,海起も呪文を唱えていた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。地面から地下水吹き出し壁作る。水使わし我の名は,波打つ海辺,海起なる!」
大樹と水湖を取り囲むように地面から水が噴き出し始めた。ものすごい勢いのため,抜け出せない。
大樹が呪文で反撃しようとしたとき,大樹と水湖は雑草に絡まれているのに気が付いた。
足に絡まりついて振り払ってもとれない。
体に巻き付きながらどんどん上へと上がってきた。
「うわぁぁ!大樹どうすんだよう!!」
水湖が叫ぶ。
「このまま足をつぶして連行する。」
栄枝が大樹達に聞こえるように大声を上げた。
「うわわわわ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なーんちゃって♪」
水湖がそう言ったとたん,大樹と水湖の姿が消えた。
と同時に,栄枝と海起の真上から鋭い葉っぱが勢いよく落ちてきた。
「海起!!よけろ!」
栄枝が叫んで二人は左右に回避した。
「・・・幻術でしたか・・」
海起が栄枝のそばに走って来て言った。
「あぁ,甘く見過ぎたな。」
栄枝が少しだけ微笑んだ。
「じゃあ,本気で行くぞ!!!」
栄枝が海起に親指を突き上げる。
この時,残り四十時間だった・・・。
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