共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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時間を少し戻して一時間前。夢華達一行は月の村に入っていた。
「月の村に入ったら,一気に刺客が増えると思ったのに。えらく殺風景ね。」
蒲公英が言った。
「鈴蘭に大樹,水湖とくれば大丈夫と思ったんだろう。・・・奴らだって妖精だ。信頼関係で結ばれてるのさ。まっ、全員足止めしてるし陰の妖精の気配もなかったから、まだ氷河は俺たちが向かってることを知らないだろ。あの三人のほかに俺達に分からないよう気配を消せる奴なんてそうそう居ないからな。」
有水が辺りを見渡しながら言った。
夢華は大分疲れていた。肩で息をしている。
秋美に,夏美もだ。
「もうこれからは休めない。すぐ近くに種子蕾隊の隠れ家がある。・・・そこで最後の休憩だ。」
有水がそう言い,一行は隠れ家に向かった。
到着したところは,隠れ家と言っても至って普通の家だったから,夢華は少しがっかりした。
家に入って全員座り込んだ。

「海起・・・大丈夫かな・・・また,発作が出てないよな。」
草多がつぶやいた。本人にしゃべっている自覚はないみたいだ。
「大丈夫,栄枝がついてる。それにあいつはもう大丈夫だよ。」
有水が答えると,草多はびっくりして顔を上げた。どうやら,声を出していたのに気が付いたようだ。
「発作・・・?」
夢華が草多に問いかけた。
「あぁ・・・。あいつ,いつもつっぱてるけど,トラウマがあって・・・昔を思い出すとフラッシュバックが起きるんだ。まるで,その時の場所に居るようにな。泣きながら謝り始める。」
草多がため息をついた。
「トラウマ・・・?」
「あいつ・・・目の前で,父親が死んでるんだ。・・・海起をかばって。」
夢華の顔がこわばった。
草多はそんな夢華に気を遣いながらも,話を続けた。
「俺達は,昔からの幼なじみだった。・・・水と草の相性が抜群なのは知ってるだろ??俺達の父親も,栄枝さんと有水さん,そして氷河さんのようにコンビを組んでたんだ。だから俺らも,学校に入る前からよく遊んでた。いずれは俺らもコンビを組むつもりだったから。」
夢華は黙って草多を見つめていた。
有水は事情を知っているためか窓の外をぼんやり眺めている。
蒲公英は,誰かの写真を取り出して見ながら思い入れにふけっているようだ。
草多は続けた。
「学校に入学する一ヶ月前だった。たまたま海起は父親の仕事場に・・・とある海について行ったんだ。・・その日も,いつもの様に穏やかな海だったらしい。けど,丑三つ時を迎えた頃,大変な事が起きた。あっ,海起の父親は陰の妖精だったっんだ。母親が陽の妖精。海起は陽の妖精の血を受け継いだんだ。んで,その時・・・一隻の船が近くで停止した。異変を感じた妖精達はすぐさま集まって様子を見ていたんだ。・・・海起の父親は,その時の精霊で海の妖精のリーダーだった。・・・少し時間がたったとき,何かが海に流れ出した。」
秋美と夏美も夢華の横で聞いていた。
「・・・油だった。違法業者が産業廃棄物で出た油を海に捨てていたんだ。妖精は,海を捨てて避難するか自分たちの命を捨てて海を守るかの選択に迫られた。妖精が居なくなった自然は死んでしまうんだ。花が枯れるのも,妖精の役割が果たされて居なくなるからなんだ。妖精が誰も居なくなったら・・・そこは砂漠化する。」
草多は一息ついて,さらに続けた。
「海起の父親は海を守ろうとした。けど,命と引き替えになるから,やっぱりとまどって居たんだ。・・・その時,何匹もの魚が油によって命を失い水面に浮いてきた。海起はあぁ見えて優しい奴だから・・・父親に言ったんだ。お魚さん達が死んじゃう!!お父さん!!お魚さんを助けて!!!!ってね。その時,父親の覚悟が決まった。・・・そして海起に言ったんだ。海起,お前はお父さんの誇りだ。母さんを頼むよって・・・。」
蒲公英の目から一筋の涙が流れた。
有水が無言で,ハンカチを差し出した。
「そのまま,海の精霊と妖精達は命と引き替えに海を浄化する呪文を唱えた。そして,海起の目の前で父親達は海を守って死んだ。・・・海起は,父親のことを誇りに思っている。けど,自分があの時安易な事を言わなかったらとか,もっと力があったらとか,ずっと悩んでた。・・・・・・その時海起を連れて,逃げるように・・そして,生きるように指示されたのが水湖さんと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有水さんなんだ・・・。」
夢華はとっさに有水の方を向いた。有水は無言で,ほほえんだ。
そして草多に変わって話を続けた。
「水湖も,ずっと苦しんでいたよ。自分が生き残ったことに。海起の親父さんは,まだ若かった俺達に未来を託したんだ。なのに・・・。・・・・・水湖も最初,海起の親父さんのようになろうと勉強していた。そして,泣いている海起にお前は親父さんから未来を託されたんだぞと言って励ましていた。だから海起は,精霊を目指し頑張ってる・・・。だが,人間の海の破壊はひどくなるばっかりで・・・絶望した水湖は・・・ジェネレーションに入る道を選んだんだろう。そしていつの間にか俺は・・・あの時の海起の親父さんと同じ立場になっていた。」
有水が夢華に優しく微笑んだ。
「大精霊様から,君が傷つくといけないから話すのを禁止されてた事があるんだ。けど,やっぱり知ってたほうがいいと思う。だから俺の一存で君に教えるよ。君なら乗り越えられると思うから。
・・・・・ジェネレーションは,全員人間に愛する者を奪われた奴らなんだ。親・兄弟・先輩・後輩・恋人などの・・・。そして・・・種子蕾隊も・・・ほとんどはそんな経験を持つ。口には出さないけどね。ただね,考え方が違うだけで気持ちは同じなんだよ。まぁこの二つのチームに限らず,妖精はみんなそんな経験があるくらい・・・死んでいく妖精が多いんだ。」
夢華はどう反応すればいいかわからずにうつむいていた。
そんな夢華に秋美は寄り添った。
「あたいも,なんにもそういう経験がないわけじゃないけどさ。あたい,夢華やあたいらが見える人間が大好きだ。それだけは信じてくれな。」
それを聞いた夏美も頷いた。草多も・・・。
夢華は,全員にほほえんだ。
「・・・それなのに人間の男の子が中心になってるなんて・・・考えてることがまったくわからない。」
蒲公英が考え込んだ。
「そうだな。・・・胎芽も言ってたが,氷河は人間を抹消する事以外に考えがあるんだろうな。・・・かばってるようにしか聞こえないかな。」
有水がつぶやいた。
そして,立ち上がった。
「もう大丈夫か??そろそろ行こうか。」
有水の声に全員が立ち上がり始めた。
「有水さん・・・氷河さんも,誰か愛する人を・・・・?」
聞きかけた夢華を,有水は笑顔で遮った。
そして,優しく「それも,また話せるときが来たらちゃんと話すよ。」と言った。
一行は,ジェネレーションの本部に足を進めていった。

この時,残り四十時間・・・。栄枝達が,本格的に戦い始めた時だった。

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