加藤と佐藤は、バカ。

そらも

文字の大きさ
1 / 9

01 高校三年・夏、「「彼女ほしいっ!! 早くえっちがしたいぃぃーーっっ!!」」

しおりを挟む

「ぅあーー彼女ほし~っっ!」
「彼女ほし~いっっ!」


夏休みもあと少しで始まる、七月後半。
暑さも本格的になってきたこの時期、大半の生徒がダルそうにしてるそんな中。
教室の窓際、後ろの席のとある二人の男子

「「あ~っか~の~じょっ欲しーーーっっ!!!」」
「っ、だああああっっさっきからそこのバカコンビまじうっせえんだけどぉっっ!!?」

――加藤と佐藤だけは、いつもと変わらないおバカ全開の叫びを空に向け投げかけていたのだった。



ガチャっ、ドサリっ、ドササッ

「じゃましま~すっと。はぁ~今日もウチのクラスのいいんちょーは怒りんぼさんでしたな~怖い怖いっ」
「なっ、ほんといっつもオレらばっか怒って…って、おいこらっ!! オレが昨日徹夜で完成させた漫画本タワー崩してんじゃねえよっ佐藤っ!!」
「へっ、あ、何これタワーだったんかよっ…ごめん気づかんかった! …ん? じゃあ、加藤が今日遅刻したのって……ブフゥっ!!」
「なっ、わっ笑うなぁーーっ!!」
「あははははっ!!」
「くそぅっっ、これでもくらえっうおりゃああっ!!」
「わっちょっ待っ…グエっ!?」
「あはははっひでえ声っ!」
「ぐ、くそぅ……」

午後四時ちょっと過ぎ。学校終わり、加藤の部屋にていつものごとくじゃれ合う二人。
何でもない話に花を咲かせ、何でもないことに真剣になったりな、
そんなどこにでもある日常を普通に送る二人であったが……しかしこの二人、加藤と佐藤は、

「はぁ苦しかったぁ……なぁ、ところでこの漫画初めて見るやつだけど……タイトル、なんて読むんだ?」
「ごほっ…ちょっと待って笑い過ぎてのど痛くなったわ、アメ舐める……んで? ああそれっ昨日表紙カッコよくて買ってまだ中見てねぇけど、えっと……たぶん、ゆ『ユンリミテデ:コーデ』だったと思うぜ!」
「ああっこれそう読むんだっ…な~る!」

それはもう、恐ろしいほどの『バカ』なやつらであった。
――ちなみに、正しくは『UNLIMITED:CODE(あんりみてっど:こーど)』である。


加藤つかさ(かとうつかさ)十七歳、高校三年生。
佐藤みつる(さとうみつる)同じく十七歳、高校三年生。
二人は高校で初めて知り合い、三年になった現在では、無二の親友と言えるほどまでにすっかり何でも話せる仲の良い友人になっていた。
しかしこの二人がこんなにも仲良くなったのには、もう一つ理由があり。
それが、二人が『同程度の知能を持つバカ』であったことだった。

そんな二人は、三年生になった今。
将来のことについてなどはまったく考えもせず、
ここ最近は「「彼女が欲しいっ!」」をまるで口癖のように毎日叫んでいた。

高校生といえば青春真っ盛り、年頃の男の子ならそりゃあ彼女の一人や二人欲しいのは当たり前。
加藤と佐藤がそれを口にすること自体は、別に特段問題はないことなのだが。
なんとまぁ、二人が通う高校は……悲しいことに、男子校であった。
じゃあ何故、彼女が欲しいと熱望してるこの二人がわざわざ男子校なんかに入ったかというと
――それはこの『市立赤羽男子高等学校(しりつあかばだんしこうとうがっこう)』が、
「受験時に名前をしっかり書いただけで合格できる」とまで言われるほどの、県内屈指のバカ高だったからに他ならない。
そう、この二人はそんなバカ高の中でもさらに下から数えたほうが早いトップクラスのバカ・オブ・バカであり、
だから男女混ざりあうごく普通の高校に行けるのなんて、夢のまた夢の世界の話……というわけだったのだ。

もちろん、バカ高の名を背にしょった二人は当然お外でのナンパも上手くいくはずもなく。
結局今日の今日まで、両方とも彼女はゲットできず仕舞い。
なので高校三年生の今、二人はどうしても彼女が欲しい……というか、

「あ~…それにしても、まじ彼女欲しいのよなぁ~」
「それな~、まじ欲しい~……んでもって、」

「「早くえっちがしたいぃぃーーっっ!!」」

早く『セックス』という未知のモノを、体験してみたかったのである。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

処理中です...