王様のいいなり!

まぁ

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 チュンチュン……という雀の鳴き声が聞こえ、加奈は朝なのか……と重たい瞼を開こうとした。だが、瞼どころか身体も重い。というより何かが絡み付いてがっちりとホールドされてしまっている。まったく動けない。
 まさか……
 慌てて瞼を開け、顔を横に傾けると、加奈は驚愕してしまった。長い睫に高く通った鼻筋に頬から顎にかけて男性的にシャープな顔立ちが至近距離にある。そして明人の腕は加奈の上半身を絡め取り、足もしっかりと絡まっている。
「なっ……!南条さん!起きて下さい!」
「う、ん……」
 一瞬整った眉がピクッと動いたものの、起きる気配がしない。むしろ絡まった手足がより一層力を込める。
「ちょ……、ちょっとぉぉ!起きて下さいって!」
 大変だ!このままだと身動き一つ取れない……だが、それとは別に、もう一つ問題が生じた。寝る前にセットしたはずのケータイのアラームが今日は聞こえてないのだ。
 一体どういう事か…答えはなんとなくわかった。
「あぁ!」
 ケータイは見事明人の側にある。つまり明人がアラームを消してしまった。となれば……
「今何時?」
 必死にケータイへと手を伸ばし、掴んで時刻を確かめた時、加奈の表情が青くなった。今から準備をしても確実に遅刻だ。しかしここで諦めないのが加奈だ。隣で人を抱き枕のようにしてスヤスヤ眠る明人に、声をかけても無駄とわかったので、強行手段を取る事にした。
「南条さん!起きて下さい!」
 自由の利く手で明人の髪をぎゅっと引っ張った。すると明人は不快感を露わにしながら目を開けて叫んだ。
「いってぇ!ハゲるだろうが!」
「南条さんがハゲる事なんてどうでもいいです!いいからさっさとどいて下さい!」
 ようやく状況を掴めたのか、明人は加奈を解放した。それと同時に加奈はバタバタと身支度を整え始める。この際、抱き枕事件の事は忘れてしまおう。だが、遅刻しそうな原因を作った当の本人は、ふて腐れたままたばこに火を付けている。起こされたからかどうかはわからないが、朝は弱いのだろうと思った。
「あぁもう、どうしてアラーム切っちゃうのかな……」
 このわずかな時間に出来る事は、顔を洗い歯を磨き、簡単な化粧をするくらいだ。もう朝ご飯を作る時間もない。明人の事はもう置いておいて、加奈は出社する事にした。
「時間ないんで、朝ご飯とかお昼とか作れないんですが……なんか適当に出前でもなんでも取って下さい!」
「随分適当だな……」
「当たり前です!急いでるんです!じゃあ行って来ます!」
 マンションを後にした加奈は猛ダッシュをした。昨日からよく走ると思いながらも、遅刻は確実なので、半場諦めもあった。自宅アパートからならそんなに遠くないので、ギリギリ間に合ったかもしれない。だが明人のマンションから会社のあるビルまでは電車一つ揺られなくてはいけない。今までにない通勤ケースに泣きそうになった。
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