王様のいいなり!

まぁ

文字の大きさ
10 / 69

10

しおりを挟む
 間延びした言葉を放つ詩織の言いたい事はわかる気がするが、加奈は心なしかその発言に賛同も出来なかった。
(そのイケメンはかなりの王様風吹かせてますよ……かなり鬼畜ドSですよ……)
 声に出して叫びたい!そんな衝動にかられながらも、加奈は黙って平静を装った。
「それで、詩織ちゃん。何かあったの?」
「別に何もないですけど、いいなぁって話をうちの課で話してたんですよ!もし霧島さんが連絡先交換してたなら、合コンとかしたいぃって!」
「あはは……連絡先は聞いてないんだ。昨日病院で和解しちゃったから」
「そっかぁ、残念ですぅ……」
 しゅんと項垂れる詩織。どうやらこれを機に南条明人とお近づきになろうというわが社の女子達がいるようだ。だがあの男の本質を知ったらどう思うだろうか……そんな事を考えつつも、詩織に嘘をついたのはちょっと心苦しかった。
 結局遅刻のペナルティはコピーだけでなく、別仕事も押され、一時間の残業後、午後六時にようやく退社出来る事になった。パソコンの電源を切り、お疲れ様ですと言って更衣室に向かおうとした時だった。ケータイの着信がけたたましく鳴ったので、制服のポケットから取り出し相手を見た。
「げっ……!」
 電話の相手は明人だった。一体何かあったのか?そう思い、恐る恐る通話ボタンを押した。
「はい……」
『腹減った。さっさと帰って来い!』
 ブチッ!
 わかりやすい用件のみを伝え切られたケータイを持つ手が震えた。
「な、な、そんだけ?」
 何か具合でも悪くなったのかと思えば、お腹が空いたからさっさと帰れ?なめてんのかぁ!どこの昭和のお父さんだ!とケータイを絨毯貼りの床に叩きつけたくなった。一緒に住む事になり一日で明人という人物がわかったが、まさかここまで世界の中心は俺様だ!の性格だったとは……
「なんか腹立つなぁ。今日の夕食食べにくい魚にしてやろうか!あっ、ダメだ!どうせたま食べさせろとか言われて私が損する!」
 一人漫才をしていると、背後から「どうしたんですか?」と川田が声をかけてきたので、今のやりとりを見られたかもしれないと思い少し顔が火照った。
「なんかあったんですか?」
「いや、何もないよ。それより川田君は残業?」
「はい。さっきまで会議で、今から帰るとこです」
 愛くるしい笑顔を向ける川田。これは確かに癒し系と言われるのに頷ける。何せ加奈の場合は癒し系どころかいやらし系ドS王様がマンションに行けばいるのだから。今日はどんなセクハラまがいの強制を受けるのか……とても泣きそうになってきた。
「霧島さんも今から帰宅です?」
「うん。今から着替えて帰るとこ」
「だったら途中までご一緒しましょうか?」
「えっ?あぁ……」
 確か川田と加奈のアパートは方向が同じだが、今は電車に乗って一駅の真逆方向だ。
「ありがとう。けど帰り買い物とかして帰るから」
「いいですよ。俺も手伝います」
 何もなければ喜ばしい場面なのだろう。だが、喜ぶ事が出来ない状況に泣けてきた。
「いいよいいよ!私かなり時間かかるから!それじゃ!」
「あっ!霧島さん!」
 これでは避けたかのような態度だ。すまない!悪気はひとっつもないのだが、今は現状に甘える事が出来ない!さっさと帰らなければあの男がまた何か言うかもしれない!川田には明日謝ろう。そう心で呟きながら加奈はマンションへと向かう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

ベンチャー社長の元彼のヤンデレが異常過ぎる件

鳴宮鶉子
恋愛
ベンチャー社長の元彼のヤンデレが異常過ぎる件

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...