王様のいいなり!

まぁ

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 準備を終えた加奈は、息つく間もなくマンションに来ていたタクシーに押し込まれた。加奈が準備をしている間に呼んだのだろう。タクシーはそのまま繁華街の方に行き、雑誌でも有名なレストランの前で止まった。
「ここ……ここって、雑誌に載ってた一つ星レストラン!」
 お城のようなその建物は、白を基調としている。
「さっさと中に入るぞ」
 そう言われ中に足を踏み入れると、床には赤い絨毯が引かれ、エントランスには螺旋階段がある。柱や窓の淵には金が張られている。もちろんドレスコードのある店だ。
「よかったぁ……スカート穿いてて」
 シフォンレースのスカートに低いヒールの靴にシャツ姿の加奈に対し、明人は黒のパンツに白いシャツとジャケット。黙っていれば長身で服のセンスも悪くないのでかっこよくは見える。
 店員がやって来たが、店員はフランス語で対応している。もちろんそれに明人もフランス語で返している。
 一介のOLには縁のない店だ。正直食事を楽しむといった雰囲気になれない。席に座り明人が適当に注文し、それを食べる。並べられたナイフやフォークのカトラリーに戸惑いっていると、明人がこういった店での作法をボソリと教えてくれた。結局運ばれた料理がどんなもので、味はどうだったのか緊張して覚えていない。
「はぁぁぁ……何か余計疲れた」
 店を出た瞬間加奈は脱力した。
「お前、いい歳してマナーの一つもわからないのか?」
「しがないOLの身分でこんな豪勢な店来れるわけないじゃないですか!てか南条さんは流石ですね。とても慣れてらっしゃる……」
「そうだな。この店には何回か来た事あるしな」
 相変わらず嫌味な奴だ!っと思った時、加奈はふとある事に気が付いた。
「そういえば普通に食べてましたよね……?」
 明人は普通にフォークとナイフを使っていたし、腕に巻かれているはずの包帯が首から下げられていない。
「馬鹿かお前?こういう場所だ。さすがの俺でも少し無理をするさ」
「って、何してるんですか!怪我悪化したらどうするんですか!」
「あぁ、悪化したら召使期間が延びるな。それもいい案だ」
「よくないです!ホント!大胆な行動しかしませんよね!」
 やる事なす事が唐突で突飛押しもない。これで期間が延びる?冗談じゃないと加奈は思った。
「だが機嫌は戻ったようだな。いつものおたふく面だ」
「なっ!おたふくですって!」
「そうだろ?いつも頬膨らませて……あぁ、般若でもあるか」
「一体誰がこうさせてるのかわかってるんですか?」
「知らん!ほら、さっさと歩け」
 加奈の意思などお構いなし。スタスタと歩き始めた明人は、タクシーの停まっている場所を通り過ぎ、この近所にある公園の方へと向かって行く。しかもこの公園はデートスポットでもある場所だ。
「あの、帰らないんですか?」
「少し寄り道だ」
 公園からは海や工場の夜景などが見える。通りすがるカップル達はとても楽しそうだ。
(いいわねぇ……幸せそうで)
 彼氏の腕にすがりきゃっきゃとしている彼女を横目に見ていると、明人がスッと加奈に手を差し出した。
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