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「何ですか?さっきの店で食べた料金半分寄越せですか?」
「馬鹿だろお前。男がこうして手を出してるんだ。さっさと手を出せ」
なんだ……そういう事か。などと思うか!
加奈は断固として差し出された手をとらない。ムッとした明人は無理やり加奈の手を握った。
「ちょっと!」
「お前がさっさとしないからだろ?」
「そうじゃなくてですね。一応私怒ってるんですからね?」
「お前が怒ってる事なんて昨日今日に始まった事じゃないだろ?」
だからその怒りを誰が……と言っても無意味なので、加奈は抵抗を止め盛大にため息を漏らした。それが明人には気に入らないらしく、不機嫌な表情を浮かべた。
「何だよ!せっかく紳士らしくエスコートしてやってるんだ!少しは喜べ!お前をエスコートする男なんてこの先現れないんだからな!」
「勝手に人の人生決めないで下さいよ!」
キーッと歯をむき出しにする加奈だが、ここはカップルのデートスポットだ。周囲のカップル達が加奈達を見てクスクスと笑っている。この場にこうしているのだから、加奈と明人は恋人に見えるのだろう。冗談ではない!
「そういえば、ふと気が付いたんですが、昨日よく私のいる場所気が付きましたね?」
「お前の所在を探すなど動作ない。何せお前がソファで寝ている間、追跡アプリを入れたからな」
「なっ!あんたは刑事か!それとも浮気調査する主婦か!」
「気が付かないお前が鈍感なだけだよバーカ!」
まさか寝ている間にそんな事が……後で消さなくてはっ!
だが、昨日というフレーズで川田の事が気になった。
「川田君、絶対誤解してるよなぁ……」
「川田って誰だ?」
「会社の後輩。あぁ、昨日いた童顔か」
何てことを言うのだ!たしかに童顔だが、間違いなく明人よりも性格がいいし、あのあどけなく無邪気な笑顔は天使だ。無理やり手を繋いでいるこのセクハラ大魔王と違い……
「あの男はお前には合わないぞ」
「そういう問題じゃないわ!後輩の面倒を見るのは先輩の役目なの!」
「お前みたいな奴には年上の男が似合ってる」
わけのわからない事をほざく明人に加奈は眉をしかめる。それよりも月曜に川田に何と説明すればいいのか。
「まっ、それはそうと……悪かったな」
「えっ?」
今謝らなかっただろうか?たしかに加奈の耳に「悪かった」と言う言葉が聞こえた。間違いではないだろうかと思ってしまった。
「お前の初物奪ってすまなかった」
「はは、初物って言い方なんかやらしいです!」
どうやら幻聴ではないらしい。加奈の目には明人の背しか見えないが、反省しているのだという姿勢が見てわかった。むしろこの傲慢な男が謝ったのだ。これは天変地異の前触れなのかと思う。
「その、もういいです。いやよくはないけど……とりあえず一つ星レストランで許します」
「そうか……」
意地悪じみた言葉が聞こえた。まさかと思い加奈は明人を見る。すると明人はニヤリと不敵な笑みを見せた。
「許してくれるんだな!そうか!ならお前の機嫌は取れたという事だな」
「ちょっと待って下さい!まさか……」
「言質は取った。なら明日からはきりきりと働けよ召使」
やられた……
レストランに行って加奈をご機嫌にさせる為だったとは……明人は悪びれた様子はもうまったくなかった。ついさっきまで以上の俺様っぷりに拍車がかかる。
「それとお前、いい加減南条さんは止めろ。ご主人様、もしくは明人様と呼べ」
「はぁ?意味わかんない!」
「今後南条さんなどとよそよそしい言い方したらお仕置きだからな。わかったか下僕」
「なっ!下僕って……召使よりも格下げされてるじゃないですか!」
「お前など下僕で十分だ。それよりちゃんとご主人様か明人様と呼べよ」
「意味わかんない!あんたなんか明人で十分よ!」
誰がご主人様などと呼ぶか!
だが、加奈が明人の名を呼ぶと、明人は少し満足気な表情を見せた。
「馬鹿だろお前。男がこうして手を出してるんだ。さっさと手を出せ」
なんだ……そういう事か。などと思うか!
加奈は断固として差し出された手をとらない。ムッとした明人は無理やり加奈の手を握った。
「ちょっと!」
「お前がさっさとしないからだろ?」
「そうじゃなくてですね。一応私怒ってるんですからね?」
「お前が怒ってる事なんて昨日今日に始まった事じゃないだろ?」
だからその怒りを誰が……と言っても無意味なので、加奈は抵抗を止め盛大にため息を漏らした。それが明人には気に入らないらしく、不機嫌な表情を浮かべた。
「何だよ!せっかく紳士らしくエスコートしてやってるんだ!少しは喜べ!お前をエスコートする男なんてこの先現れないんだからな!」
「勝手に人の人生決めないで下さいよ!」
キーッと歯をむき出しにする加奈だが、ここはカップルのデートスポットだ。周囲のカップル達が加奈達を見てクスクスと笑っている。この場にこうしているのだから、加奈と明人は恋人に見えるのだろう。冗談ではない!
「そういえば、ふと気が付いたんですが、昨日よく私のいる場所気が付きましたね?」
「お前の所在を探すなど動作ない。何せお前がソファで寝ている間、追跡アプリを入れたからな」
「なっ!あんたは刑事か!それとも浮気調査する主婦か!」
「気が付かないお前が鈍感なだけだよバーカ!」
まさか寝ている間にそんな事が……後で消さなくてはっ!
だが、昨日というフレーズで川田の事が気になった。
「川田君、絶対誤解してるよなぁ……」
「川田って誰だ?」
「会社の後輩。あぁ、昨日いた童顔か」
何てことを言うのだ!たしかに童顔だが、間違いなく明人よりも性格がいいし、あのあどけなく無邪気な笑顔は天使だ。無理やり手を繋いでいるこのセクハラ大魔王と違い……
「あの男はお前には合わないぞ」
「そういう問題じゃないわ!後輩の面倒を見るのは先輩の役目なの!」
「お前みたいな奴には年上の男が似合ってる」
わけのわからない事をほざく明人に加奈は眉をしかめる。それよりも月曜に川田に何と説明すればいいのか。
「まっ、それはそうと……悪かったな」
「えっ?」
今謝らなかっただろうか?たしかに加奈の耳に「悪かった」と言う言葉が聞こえた。間違いではないだろうかと思ってしまった。
「お前の初物奪ってすまなかった」
「はは、初物って言い方なんかやらしいです!」
どうやら幻聴ではないらしい。加奈の目には明人の背しか見えないが、反省しているのだという姿勢が見てわかった。むしろこの傲慢な男が謝ったのだ。これは天変地異の前触れなのかと思う。
「その、もういいです。いやよくはないけど……とりあえず一つ星レストランで許します」
「そうか……」
意地悪じみた言葉が聞こえた。まさかと思い加奈は明人を見る。すると明人はニヤリと不敵な笑みを見せた。
「許してくれるんだな!そうか!ならお前の機嫌は取れたという事だな」
「ちょっと待って下さい!まさか……」
「言質は取った。なら明日からはきりきりと働けよ召使」
やられた……
レストランに行って加奈をご機嫌にさせる為だったとは……明人は悪びれた様子はもうまったくなかった。ついさっきまで以上の俺様っぷりに拍車がかかる。
「それとお前、いい加減南条さんは止めろ。ご主人様、もしくは明人様と呼べ」
「はぁ?意味わかんない!」
「今後南条さんなどとよそよそしい言い方したらお仕置きだからな。わかったか下僕」
「なっ!下僕って……召使よりも格下げされてるじゃないですか!」
「お前など下僕で十分だ。それよりちゃんとご主人様か明人様と呼べよ」
「意味わかんない!あんたなんか明人で十分よ!」
誰がご主人様などと呼ぶか!
だが、加奈が明人の名を呼ぶと、明人は少し満足気な表情を見せた。
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