王様のいいなり!

まぁ

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「それじゃお先に!」
 ガタッと席を立った加奈だが、「待ってください!」と言って呼び止められた。
「どうしたの?」
「あの、確認なんですけど、霧島さんって今、彼氏とかいないんですよね?」
「いないよぉ。どうかした?」
「えっと、あの……」
 もじもじしながら顔を赤らめる川田に加奈は眉をしかめる。一体それが何だと言うのだろうか?やはり明人との事を誤解されているのか?そう思ったが、加奈の予想は見事外れた。
「あの!霧島さん!」
「な、何?」
「俺と付き合いませんか?」
 一瞬の間があった。川田が自分に付き合わないか?と聞いてきたものなので、加奈は意味が理解出来るまでに少々時間がかかったが、その表情はすぐに驚きのものとなった。
「えっ?あの、付き合う?私と川田君が?」
「はい……」
 ちょっと待て!つい先週、見られたくもない現場を見られてしまったではないか!そこからどうやってこのイベント展開するのだろうかと加奈はまったく理解出来なかった。
「こんな所で話す話じゃないのはわかってます。けど、こないだの見せられて、ショック受けて。それで朝聞いたら彼氏じゃないって事で、いても経ってもいられなかったので、ここで言わせてもらいました!」
「えっ?えぇ!」
「霧島さんの事、入社した時からずっと好きでした!俺と付き合ってくれませんか?」
 人生初の告白に加奈はポカンと口を開けたままでいた。とても嬉しい。嬉しいのだが……何故自分なのだ?という疑問が浮かんだ。真剣な眼差しのまま加奈を見つめる川田。
「もちろん霧島さんが俺の事、ただの後輩としか思ってないのもわかってます!けど、少しでもいいので、俺の事を男として見て欲しいです」
「私は……」
 何かを言いかけた瞬間、明人の顔が過った。今は介護する身分で、明人の自宅に入り浸っている。そんな不誠実な状況で返事など出来ない!
「あの、川田君……」
「はい!」
「返事、一か月待ってくれないかな?」
「へっ?」
 おかしな返答だとはわかっている。だが今はどうしても無理だ。明人と手が切れなければお付き合いは出来ない。これは交際する場合のけじめだ。
「川田君の事は嫌いじゃないよ!けど、ちょっと事情があって……」
 沈黙が続いた。そして川田から「わかりました」と言う言葉が出た。
「少なくとも俺と付き合うのダメとかじゃないんですよね?」
「う、うん……」
「だったら待ちます」
「ありがとう。そ、それじゃあね」
 小走りに更衣室へと向かった加奈だが、更衣室手前の壁にドンッともたれかかった。堪えていた感情が顔に出た。にやりと不気味な表情をしているだろう。だがとても嬉しかった。浮かれた加奈はその場で小躍りしたいくらいの衝動に駆られたが、なんとか理性で抑え込んだ。
(すごく嬉しんだけど!)
 着替えを終わらせ帰宅する加奈の足取りは軽く、すっかり明人の事など頭の外に追いやられていた。
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