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Chapter.1 二人の皇子
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玉座の間には上段に豪奢な椅子がある。おそらくこれが皇帝の椅子なのだろう。
皇帝の隣にはもう一脚の椅子があり、それが皇后の椅子。一段下がった所から数段に渡り、計九の椅子がある。つまり皇帝と八人の椅子で、椅子の上下は妻の順位を示しているのだろう。
アストリアは皇后と謁見になっているので、皇后の席にプラチナブロンドの髪を大きく結って、襟が大きなドレスを纏った四十近い女性がいた。
「そなたがアストリアか?」
「は、はい……」
「妾はリーゼロッテじゃ」
鈴を転がすような声に、膝をついたままのアストリアはその人物を見る。微笑んではいるが、底が知れない何かを含んでいる。そんな風に見えるのだ。
「そなたの夫となる者は妾の息子、フィンネルじゃ。妾から見ても賢く優しい子じゃ。良き夫婦となれるであろう」
皇后の息子なのに第二皇子。そこがまた気になる所だったが、ここで聞いてはいけないと思い、アストリアはリーゼロッテの話を一通り聞く。
聞き終えた後は簡単に解放され、アストリアはアシュトンに連れられた。玉座の間から離れた事もあり、疑問に思った事を聞いてみる事にした。
「えっとアシュトンさん……」
「はい、何でしょうか?」
「聞きたいことがあって……どうして皇后様の息子が第二皇子なのですか?普通第一皇子になるのでは?」
さりげなく聞いたその質問に、アシュトンは険しい表情を浮かべ、シーッと黙るように示唆した。
「ここではその事は禁句事項でもあります」
「そうなんですか?でも気になって……」
「そうですね。いずれはわかりますが、一つだけ教えて差し上げます。ロア皇帝の八人の妻。現在は七人です」
「えっ?」
「後は自分で考えて下さい」
ヒントがヒントになっていない。だが八人のはずが七人。第一皇子と第二皇子の話と絡めるなら、第一皇子のお母さんが欠けた一人になる。
(もしかして何かあって地位を奪われたのかな?それだと第二皇子は第一皇子に繰り上がるはず……)
結局アシュトンの謎ヒントの解決が出来ないまま、アストリアは城にある客間へと連れて来られた。
「婚儀にはまだしばらくの準備が御座います。それまでの間、アストリア様はこの城の来客者となります。それまではここでお過ごし下さい」
それだけを言うとアシュトンは部屋を後にした。部屋には入れ替わるように三人の侍女が入ってきた。
「失礼します。本日よりアストリア様の身の周りのお世話を致しますサラです」
「ヘレンです」
「フィディスです」
「何かある場合は声をおかけください。また、部屋を出られる際は私達もご一緒致します」
「わ、わかったわ……とりあえず一人にしてほしいな……」
「かしこまりました」
正直三人とも顔を下げていたので誰が誰なのかもわからない。だがこの城を自由に歩く事は出来ないのだと悟った。
「さて、これからどうするべきか……」
自分やこの城にまつわる謎を知りたい気持ちもあるが、ここを脱出する為の方法も見つけなくてはいけない。
必ず侍女がつく事を考えたら、そう簡単に逃げ出す事は不可能だ。
「完全に軟禁状態ね……」
皇帝の隣にはもう一脚の椅子があり、それが皇后の椅子。一段下がった所から数段に渡り、計九の椅子がある。つまり皇帝と八人の椅子で、椅子の上下は妻の順位を示しているのだろう。
アストリアは皇后と謁見になっているので、皇后の席にプラチナブロンドの髪を大きく結って、襟が大きなドレスを纏った四十近い女性がいた。
「そなたがアストリアか?」
「は、はい……」
「妾はリーゼロッテじゃ」
鈴を転がすような声に、膝をついたままのアストリアはその人物を見る。微笑んではいるが、底が知れない何かを含んでいる。そんな風に見えるのだ。
「そなたの夫となる者は妾の息子、フィンネルじゃ。妾から見ても賢く優しい子じゃ。良き夫婦となれるであろう」
皇后の息子なのに第二皇子。そこがまた気になる所だったが、ここで聞いてはいけないと思い、アストリアはリーゼロッテの話を一通り聞く。
聞き終えた後は簡単に解放され、アストリアはアシュトンに連れられた。玉座の間から離れた事もあり、疑問に思った事を聞いてみる事にした。
「えっとアシュトンさん……」
「はい、何でしょうか?」
「聞きたいことがあって……どうして皇后様の息子が第二皇子なのですか?普通第一皇子になるのでは?」
さりげなく聞いたその質問に、アシュトンは険しい表情を浮かべ、シーッと黙るように示唆した。
「ここではその事は禁句事項でもあります」
「そうなんですか?でも気になって……」
「そうですね。いずれはわかりますが、一つだけ教えて差し上げます。ロア皇帝の八人の妻。現在は七人です」
「えっ?」
「後は自分で考えて下さい」
ヒントがヒントになっていない。だが八人のはずが七人。第一皇子と第二皇子の話と絡めるなら、第一皇子のお母さんが欠けた一人になる。
(もしかして何かあって地位を奪われたのかな?それだと第二皇子は第一皇子に繰り上がるはず……)
結局アシュトンの謎ヒントの解決が出来ないまま、アストリアは城にある客間へと連れて来られた。
「婚儀にはまだしばらくの準備が御座います。それまでの間、アストリア様はこの城の来客者となります。それまではここでお過ごし下さい」
それだけを言うとアシュトンは部屋を後にした。部屋には入れ替わるように三人の侍女が入ってきた。
「失礼します。本日よりアストリア様の身の周りのお世話を致しますサラです」
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「何かある場合は声をおかけください。また、部屋を出られる際は私達もご一緒致します」
「わ、わかったわ……とりあえず一人にしてほしいな……」
「かしこまりました」
正直三人とも顔を下げていたので誰が誰なのかもわからない。だがこの城を自由に歩く事は出来ないのだと悟った。
「さて、これからどうするべきか……」
自分やこの城にまつわる謎を知りたい気持ちもあるが、ここを脱出する為の方法も見つけなくてはいけない。
必ず侍女がつく事を考えたら、そう簡単に逃げ出す事は不可能だ。
「完全に軟禁状態ね……」
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