捧げられし贄と二人の皇子

まぁ

文字の大きさ
5 / 5
Chapter.1 二人の皇子

3

しおりを挟む
 玉座の間には上段に豪奢な椅子がある。おそらくこれが皇帝の椅子なのだろう。
 皇帝の隣にはもう一脚の椅子があり、それが皇后の椅子。一段下がった所から数段に渡り、計九の椅子がある。つまり皇帝と八人の椅子で、椅子の上下は妻の順位を示しているのだろう。
 アストリアは皇后と謁見になっているので、皇后の席にプラチナブロンドの髪を大きく結って、襟が大きなドレスを纏った四十近い女性がいた。
「そなたがアストリアか?」
「は、はい……」
「妾はリーゼロッテじゃ」
 鈴を転がすような声に、膝をついたままのアストリアはその人物を見る。微笑んではいるが、底が知れない何かを含んでいる。そんな風に見えるのだ。
「そなたの夫となる者は妾の息子、フィンネルじゃ。妾から見ても賢く優しい子じゃ。良き夫婦となれるであろう」
 皇后の息子なのに第二皇子。そこがまた気になる所だったが、ここで聞いてはいけないと思い、アストリアはリーゼロッテの話を一通り聞く。
 聞き終えた後は簡単に解放され、アストリアはアシュトンに連れられた。玉座の間から離れた事もあり、疑問に思った事を聞いてみる事にした。
「えっとアシュトンさん……」
「はい、何でしょうか?」
「聞きたいことがあって……どうして皇后様の息子が第二皇子なのですか?普通第一皇子になるのでは?」
 さりげなく聞いたその質問に、アシュトンは険しい表情を浮かべ、シーッと黙るように示唆した。
「ここではその事は禁句事項でもあります」
「そうなんですか?でも気になって……」
「そうですね。いずれはわかりますが、一つだけ教えて差し上げます。ロア皇帝の八人の妻。現在は七人です」
「えっ?」
「後は自分で考えて下さい」
 ヒントがヒントになっていない。だが八人のはずが七人。第一皇子と第二皇子の話と絡めるなら、第一皇子のお母さんが欠けた一人になる。
(もしかして何かあって地位を奪われたのかな?それだと第二皇子は第一皇子に繰り上がるはず……)
 結局アシュトンの謎ヒントの解決が出来ないまま、アストリアは城にある客間へと連れて来られた。
「婚儀にはまだしばらくの準備が御座います。それまでの間、アストリア様はこの城の来客者となります。それまではここでお過ごし下さい」
 それだけを言うとアシュトンは部屋を後にした。部屋には入れ替わるように三人の侍女が入ってきた。
「失礼します。本日よりアストリア様の身の周りのお世話を致しますサラです」
「ヘレンです」
「フィディスです」
「何かある場合は声をおかけください。また、部屋を出られる際は私達もご一緒致します」
「わ、わかったわ……とりあえず一人にしてほしいな……」
「かしこまりました」
 正直三人とも顔を下げていたので誰が誰なのかもわからない。だがこの城を自由に歩く事は出来ないのだと悟った。
「さて、これからどうするべきか……」
 自分やこの城にまつわる謎を知りたい気持ちもあるが、ここを脱出する為の方法も見つけなくてはいけない。
 必ず侍女がつく事を考えたら、そう簡単に逃げ出す事は不可能だ。
「完全に軟禁状態ね……」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこからいろいろな人に愛されていく。 作者のキムチ鍋です! 不定期で投稿していきます‼️ 19時投稿です‼️

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!

カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から20年前の物語となります。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

能天気な私は今日も愛される

具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。 はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。 ※表紙はAI画像です

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...