異世界の女騎士と女奴隷が俺の家に住むことになったがポンコツだった件

コペルニクス

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レベル5.女騎士と女奴隷と告白

7.女騎士と女奴隷と告白(後編)

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 初代帝王。ワイヤードの創始者。
 帝国の礎を築き、強大国に発展させるまでの布石を打った人物。

 その血を引く者は、彼の偉大な意思をも受け継ぐ者。
 国の間ではそう言い伝えられ、彼の一族は生まれただけでもてはやされ、丁重され、崇められました。
 その一族の生まれというだけで、全てを手にすることが確約されたも同然だったのです。

 それは帝王の座とて例外ではありません。
 選挙君主制を導入してはいたものの、国民の信頼は全て初代王の一族に向けられていました。
 これまでで、一族以外の人間が帝王になった歴史がないことがその何よりの証明。
 人望よりも、人柄よりも、その系譜の持つ力の方が圧倒的に強かったのです。

 だから私は、あの国に生まれてからは何不自由のない生活を送ってきました。
 将来の、帝王候補として。

 王族というのはとても便利です。
 欲しいものは何でも手に入るから。 
 望めばいつだって好きなものを食べられるし、いつだってどんな綺麗な服でも選び放題。
 大きなお屋敷に、広いお部屋。そこで私は只々恩恵を享受する暮らしを送ってきました。

 窓の外から見える庶民の方の暮らしを見れば、いかに今の自分との差が大きいかということが実感できました。
 綺麗なドレスも、ふかふかのベッドも、美味しいごちそうも、可愛いぬいぐるみも。みんなが持っていないものを私は持っている。この世界のどんな人間よりも恵まれているのだ。物心がついた当初はそう思っていました。

 ですが、それを「私が」恵まれていると考えたことは一度たりとてありませんでした。
 私が彼らに持っていないものを持っているのと同じように、彼らもまた彼らにしか持っていないものを持っていたのですから。
 そしそれは、地位や名誉や財などよりももっと価値のあるものでした。

 彼らは、幸せそうだったのです。

 家族、恋人、友人……色んな人達と。
 職場、酒場、家……色んな場所で。
 面白おかしく、楽しそうに話したり笑い合ったりしていました。

 彼らにとっては当たり前のこと。取るに足らない日常の一片だったのでしょう。
 でも私の生活には、何一つありはしませんでした。

 ただ広いだけの屋敷で、たった一人で、日が昇ってから沈むまで。
 ほとんど誰とも話さず、誰とも目を合わせず、時間が経つのを待つだけでした。
 外に遊びに行ったりした時も、アカデミーに通う時もそれは変わらず、自分から私に話しかけてくれる人など皆無でした。
 立場が立場故に、全員が敬遠していたのでしょう。もちろんそんな彼らの中に私が入っていけるはずもなく、どこにいたって孤独なままでした。
 ただ単純に、彼らが羨ましかった。
 どれだけ財を投げ売っても、どれだけ自分の地位を利用しても、彼らの日常が手に入ることは叶わない。
 それがわかっていただけにずっともどかしかったです。
 多くは望まない、必要ならこの地位も財もいらない。
 ただ私とお喋りしてくれたら、私と遊んでくれたら、私と一緒に食事をとってくれたら。と。


 いえ、口を聞いてくれなくてもいい。
 ただ傍にいてほしい。
 ただ、私の手を握っていてほしい。

 本当に、それだけが望みでした。
 けれど結局、暗闇の中で佇む手を握ってくれる人は現れませんでした。私にとってそれは強欲に等しく、贅沢極まりない行為だと神様が仰るかのように……。
 いつからか私はすでに望むことを諦め、茫漠とした日々を送るようになりました。
 つまんない。
 そんなふうに代わり映えのしない毎日を憂いながら。
 来る日も来る日も、同じことの繰り返し。自分が本当に生きているのだろうかとさえ疑うくらいに退屈でした。

 確たる自分の意志を貫け。他人に流されることがあってはならない。
 初代帝王によって定められたワイヤードの掟。

 では私の意思はどこにあるのでしょうか。
 ただあーしろこーしろと言われたらそれに従って、誰かに決められたカリキュラムやマニュアル通りのことをするだけ。退屈だと愚痴はこぼすけど、だから何かをするわけでもない。それこそ心がない、誰かに操られてる人形みたいに。

 そこで私は気づいたのです。
 意思のない者だからこそ、誰も手を握ってくれないのだと。

 思い返してみれば当然の結果だったのかもしれません。そのへんに転がっているおもちゃの人形に、誰が好き好んで手を差し伸べてくださるというのでしょう。
 まさに今までの生き方は、掟に真っ向から反するようなもの。初代王一族の人間としてあるまじき行為。
 地位とか身分とかではなく、単に私がこんなだから私はいつまでたっても一人だったというわけです。

 だから私は、そんな自分を……自分を取り巻く世界ごと変えようとしました。
 誰もが私に話しかけてくれて、誰もが私の傍にいてくれて、誰もが私の手を握ってくれるような、そんな世界に。
 退屈なら、面白くすればいい。誰の力でもない、私自身の力で。
 私が変われば、世界だってきっと変わるはず。だって私は、帝王の血を引く者だから。
 そうなったら、きっとみんな振り向いてくれる。私をわかってくれる。
 窓の外から見るだけしかできなかった、あの幸せそうな人達のようになれる。

 暗闇から救い出してくれる人を探すのではなく、私が自分から抜け出すんだ。
 それがあの世界で抱いた、私の最初の意思でした。


 ○

「お前が……」
「ワイヤードの……王族?」

 クローラは肯定するように目を閉じると、背後を振り返ると同時に発砲した。
 再度攻撃を仕掛けてきていたシ霊が無数の水の弾丸によって血という名の虫の死骸を散布していく。
 驚きはしたものの、ぼさっと立ち話してる場合じゃない。俺は生唾を飲み込むと、その機関剣を両手で構えてシ霊に突っ込んでいく。
 歯車がうなり、振動する刃が敵の体をいともたやすく切り裂いていく。
 左下への斜斬りから、上段振り下ろし、そして回転斬り。これだけをインターバルなしで叩き込む。
 軽い……さっきのと同じ剣とは思えない。でも攻撃はしっかり通ってるみたいだ。
 だが負けじとシ霊も身体を再生させて、反撃の準備を始めている。蛇の姿へと形を変え、上空から噛み付こうと大口を開けてくる。

「マスター、挟撃するぞ!」

 背後に呼びかけられた声に振り返ると、リファが俺の方に向かって走ってきていた。
 挟撃? 一体どうやって? どっちかあいつの後ろに回り込むのか? 
 少し戸惑っている間に、リファは――

「すまん!」

 いきなり俺の背中と肩を踏みつけたかと思うと、踏み台代わりにして大きく跳躍した。闇夜に舞う女騎士は、蛇の頭よりも少し高い位置まで上昇。空中で燃え盛る剣を振りかざす。
 挟撃って……そういうことかよ。
 俺は痛む背中を擦るのもそこそこに、剣の切っ先を地面につけて引きずりながら走り出す。火花を散らして光る軌跡を作りながら、俺は蛇の腹部からの斬り上げ。リファは脳天から決死の斬り下ろしを繰り出した。

「龍翔閃!」
「龍槌閃!」

 各々の刃からは橙と紅が入り混じった息吹が噴出され、薙ぎ払われたそれは彼女の言っていた通り蛇を挟撃して細切れにした。
 くぐもった悲鳴が轟き、虫が雲散霧消する中で俺は天空から落ちてくるリファを抱きとめた。衝撃は大きかったが、腰を落としてなんとか耐えた。さっきの借りを返す意味でも、彼女にこれ以上怪我をさせるわけにはいかなかったから。

「大丈夫か?」
「ああ、ありがとうマスター」

 少し頬を赤くしながらリファは地面に降り立った。
 ったく、いきなり無茶なこと考えよってからに。

「二人とも、安心するにはまだ早いですよ」

 すると落ち着き払った口調でクローラが言ってきた。
 そして周囲を見渡しながら目を細めて、

「コアはまだ破壊できてません」

 ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!!
 と、気味の悪い音を立てながら、虫の大群はいつの間にか俺達をぐるぐる旋回しながら取り囲んでいた。今度は押し包んで殺しに来るってか。
 逃げ場を失った俺達は背中合わせになって一箇所に固まる。
 キリねぇな……こっちの体力が尽きるのも時間の問題だぞ……。

元素付与エンチャント

 ふいに隣のクローラがつぶやくと、首輪に埋め込まれたガラス玉からコバルトブルーの鮮やかな色をしたエネルギー体が滴り落ちる。それらは吸い込まれるように銃へと滲みこむと、今度は武器全体がとても眩しい青色に光に包まれた。
 彼女はそれを持つ腕を高く掲げ、引き金を引く。
 バシュッ、と一閃の青く細い光線が天高く打ち上がった。

 瞬間。
 まるで時間がそのまま次の日の昼になったかと思うくらいの青空になった。
 雲ひとつない快晴。暗闇が収縮し、淡く優しい光が俺達を照らしていく。
 なんだ……何が起きている? なんでいきなり空が青く……。

 いや、違う。
 よく見てみると、天に広がる景色はどこも表面が揺らめいたり泡沫を吹き出したりしている。 
 空が青くなったんじゃない。あれは……水だ。空に水が浮かんでいるんだ。
 これにはさすがに俺もリファも、ぽかんと口を開けて魅入ってしまった。

雨ときどき槍レイニースピア

 その幻想的な光景は、不覚にもクローラの一言でこれ以上無く暴力的な絵面に変化した。
 蒼穹の天井が、とんでもないものを吐き出したのだから。

 鋭く長い、水でできた槍。
 一本二本どころじゃない。何十本何百本と。
 まっすぐ、一直線に、俺達のいるこの公園めがけて降り注いでくる。それこそ、雨のごとく。

 断末魔の連続が公園中に響き渡った。
 シ霊は次々とその槍の餌食となり、再生する間もなくその身を散らしていく。

 気がついた時にはもうシ霊は跡形もなく消え去っていた。
 やった……のか?

 槍はきれいに俺達の周りだけを避け、逆にそれ以外の場所を埋め尽くした。
 無数に地面に突き刺さったそれらはまるで墓標。青白く光って俺達の姿を照らし出していた。
 燦然さんぜんな光景に息を呑む中、クローラだけはすまし顔で一歩前に出た。

「自分のいる世界を変えるため、まず私は帝国に新たなる技術を導入しようと極めました」
「え?」

 彼女はモデルガンを浴衣の帯に挿し、虚空を見上げて唐突に先程の語りを続けた。

「他のみんなが驚くようなものを作れば、まずはそれが注目される。そして世間に浸透させた後に実は作ったのが私だと知れば、たとえ相手が私でも無視するなんてことはできないはず。そう考えたんです」
「驚くような……」
「もの?」

 ピンとこない俺達は眉をひそめて小首をかしげる。
 クローラは振り返らずに、腰の後ろで手を組んだ。

「初めは単純なひらめきでした。生活にも、買い物にも、戦いにも、ありとあらゆる場面で必要不可欠なもの。その力を、普段庶民の人が使うような道具と組み合わせればどうなるのか……って」
「は?」
「だからやってみたんです。人の意思で動く元素封入器エレメントを道具と一体化させ、完全に自動化できるように。あるいは従来のそれよりもより強大な効果を生み出せるように。そうすればもっと今の暮らしは楽になる。いいえ、暮らしだけではありません。産業や政治にも変革が起きると、私は確信していました」
「……」
「初めての発明は大成功でした。『それ』をいくつか作り上げた私は、身分と名を隠し、異国から輸入された道具だと称して、城下街の人々に見せたり使い方を説いて回ったりました」

 もしかしたらこの時点で俺はすでに気づいていたのかもしれない。
 俺ですら察せてるのだからリファも当然、と思って横の女騎士を一瞥すると、予想通り顔をこわばらせていた。

「最初は驚かれましたよ。利便性を理解してもらうのはもっと先のことでしたけどね。人々は不思議だのありえないだのとただ大騒ぎするだけでした。おそらく手品や見世物の類だと思われてたんでしょう。道具の質もまだそこまで大したものではなかったですし、広めた私自身年端もいかない子供だったのも相まって、そこまで話題にもなりませんでした」
「……」
「その後も根気よく発明を続け、種類も増え、人々にただで配ったりもしました。そうやって『それ』は順調に流通していきましたが、しばらくはその真価に気づく者はそう多くなかったです。きっと見慣れないものに対する不信感や忌避感が大きかったのでしょうね」

 そこでクローラは右手を上げ、指をぱちんと鳴らす。
 その瞬間。周りに突き刺さっていた槍が、全て弾け飛んだ。
 無数の水玉はそのまま宙に浮き、ここが無重力空間にでもなったかのようにふわふわと漂う。

「だからかもしれませんが、いつしか人々は私の作ったその道具をこう呼びました」

 キラキラと周囲の光りを乱反射して舞う水の宝石達をバックに、彼女は俺達を振り返った。


奇怪キカイと」


 ……嘘、だろ。
 開いた口が塞がらなかった。
 キカイを……作っただって? クローラが?

「ええ、いわば私がワイヤードにおけるキカイの創始者……ということになるんですかね」
「お前、が……」

 目尻をヒクつかせながら言うリファに、クローラは怪しげに微笑む。

「なかなかいいネーミングだと思ったものです。抱いた感情がそのまま名前として定着するとは。確かに、今までの価値観からすれば斬新奇抜なものであったことは否定できませんし」 

 どこか自分に酔ったような口調で、女奴隷……今やそう呼ぶのが正しいのかどうかすら迷うところだが、とにかく彼女は気にせずに話を続けた。

「予想よりもキカイが話題にならず、一つのインフラとして機能する兆しすら全く見えませんでした。そこで私はこれまで以上にレベルの高い大作を作ることに決めました。極秘裏に時間をかけ、寝る間も惜しんで開発に取り組みました」
「大作……?」
「料理、裁縫、鍛冶、工作……これまでのキカイはそれらを行う人の助けとなるような、いわば手間を省くことを目的としたものでした。ですが、新しく作ったキカイは……完全にそういった人達の『代わり』となりうるものだったのです」

 鍛冶や工作を行う人……第二次産業の労働者……? 完全にその代りになるって……。
 ……まさか。

「コンバータ」

 リファがポツリとその答えを小さく呟いた。
 コンバータ。
 今で言う自動販売機の利用幅を広げたようなキカイ。
 原料と対価を投入するだけで、衣類でも武器でも食事でもありとあらゆる加工品が作れるという、こちらの世界からしても夢のような道具だ。
 正解とでも言うようにクローラは目を閉じた。

「そう、あれをきっかけにキカイは爆発的に普及することになった」
「あれもお前が作ったっていうのか……?」
「ええ、厳密には試作品を一つだけ。それとその設計図を街外れの村に配置したんです」
「そ、それだけ?」
「はい。ですが、今までのキカイとは一線を画すその性能と利便性は瞬く間に大勢の帝国民の耳に入り、同時に既存のキカイの有用性も認知されるようになっていきました。置いておいた設計図をもとに複製品も次々と作られ、帝都では私以外にもキカイを製作する専門の職人まで現れたほどです」
「……」
「こうして様々なキカイがワイヤード中に溢れかえり、生活の一部となった。あなた達の知っているワイヤードは、こうして出来上がったのですよ」

 信じられない……。こっちの世界で言えば産業革命に等しい変革。
 王族と言うだけでなく、そこまでの功績を彼女が残していたなんて。

「功績……ですか。ふむ、その言い方だと少し語弊があるかもしれません」
「え?」

 キョトンとする俺にクローラは片目を開けて言った。

「強いて言うとすれば、『功罪』でしょうか」
「こう、ざい?」
「リファさんはわかりますよね。ここまで説明すれば」

 話を振られたリファは、苦虫を噛み潰したような表情でぎこちなく首肯した。
 どうやら二人共しっている事情があるらしい。それも、クローラが功績ではなく、功罪と呼ぶに相応いい事情が。
 異世界人二人は目を合わせると、同時に答えを口にした。

「キカイ大戦」 

 そこでようやく思い出した。
 リファの初陣にして、兵長にまで上り詰めるきっかけになったワイヤードの内紛では最大級の戦争。
 コンバータを利用した層が増えたことにより、その割りを食った加工品業者や卸売業者達が反発。大きな衝突を産んだのが発端と言われている。

 よもやそれを引き起こしたのが……彼女だったなんて。

「私だって、こんなことになるなんて思いもしませんでした。私はただ、人に認められたかった。注目してもらいたかった。もう人形のような、他人に流されるだけの私ではないと証明したかった。ただそれだけなのに……」

 傍を浮遊する水の欠片を指でつつきながら彼女は言う。
 人々の役に立つ功労者となるはずが、逆に戦争の火付け役という汚名を被ることになろうとは、とんだ皮肉もあったものである。

「大戦が始まってから、もう自分がキカイを……コンバータを作り上げた人間だと言えるはずもなく。私はただ大勢の人々が死んでいくさまを見ていることしかできませんでした」
「……」
「そんな自分が嫌で嫌で仕方なくて……。じゃあどうすればいいんだろう、私は今何をすべきなんだろう、って何度も自問自答しました」

 悩みに悩み、考えに考え。
 右往左往して七転八倒した末にクローラ・クエリ・ワイヤードが導き出した一つの答え。
 それは……。

「私の力で、この戦争を終わらせようということでした」

 図らずも引き金を引いてしまったのなら、終止符を打つのも自分の役目。
 それが過酷な状況の中で、彼女が抱いた意思だった。

「そのために私は……今までの作品の中で最高傑作を作りました。この戦争を、終わらせるためのキカイを」
「……」
「自分がキカイの創始者及びコンバータの仕掛け人であることは伏せたまま、当時の帝王に進言しました。大戦を終結に導くための兵器を開発するべきだと。私はすでに一般に流布していたキカイ工作の知識を独学で得たという体で、帝国の技術者たちを集めてその兵器の作成を指揮しました」
「兵器……それって」

 リファからキカイ大戦のことを聞かされた時にでてきたワードが瞬時に俺の脳裏に浮かび上がる。
 キカイによって始まった戦争を終わらせたキカイ。
 その名は。

「スキュール・トランケート。ワイヤードの言葉で『全てを削除する』という意味……」
「あれも……お前が……」

 クローラは心苦しそうに頷く。
 次々と明らかになる彼女の過去。
 一つ一つの事実が驚きの連続だったが、今までにリファが語ってきた殆どの話の裏にクローラが関わっていたことが何よりの驚きだった。

「あとはお二方も知っての通り、あれのおかげで戦争は終結し、他国に攻め入られる前に帝国は内乱を鎮圧することに成功。再び平和が戻ったのです」
「……」

 それからどうなった? と訊こうとして俺は踏みとどまった。
 彼女は本来、代々帝王を輩出した一族の人間。だがここに転生してきた彼女は「ワイヤードの奴隷」だった。
 なぜ高貴な身分のはずの彼女が奴隷を名乗っていたのか。ただ単に素性を隠すためなのはありえない。何故なら実際に死者処理事務局の口から生前の彼女が奴隷であった、と聞かされているからだ。

 つまり、王族の身分から奴隷にまで堕ちた経緯が存在するということ。
 その詳細は……今までの流れからしてぼんやりと輪郭だけは見えていた。

「ふふ、そんなに躊躇する事はありませんよご主人様?」
「え?」

 そんな思惑が顔に出ていたのか、見透かしたようにクスクスとクローラが笑った。

「平和になった後……私がどうなったかと考えておられるのでしょう?」
「……う」
「お気になさらずとも、お話しますよ」

 バツが悪くなった俺に優しくそう言って、クローラは望み通りその続きを語り始める。

「帝国が平和になった後……私はすぐに捕らえられました。コンバータを作り上げ、世界に混沌をもたらした戦争犯罪人として」
「!?」

 予想のど真ん中を突き抜けていった回答に俺は若干うろたえた。
 やっぱり……バレたのか。

「何者かが密告したのですよ、元老院にね」
「げんろーいん?」
「帝政の補佐機関だ」

 隣のリファが即座に説明を入れてきた。

「基本政治の助言や、有事の際帝王の代わりに政治を執り行ったりしているが、最も大きな影響力を持つのが次期帝王の選挙だ」
「初代以降の帝王は候補の中から国民投票によって選ばれる。だが国民の殆どは政治を理解していない。誰が有能で、誰が時期帝王にふさわしい人物か、自分では決められない奴ばかりだった」
「……」
「だから特定の候補者を元老院が推薦という形で国民に示し、いわばこいつこそ王にふさわしいというお墨付きをくれてやるわけだ。国民はそれを真に受けてそいつに投票する。そのために候補者はこぞって元老院の支持を得ようとする。逆に言えば彼らに見初められなければ、帝王になることはほぼ不可能ということだ」
「じゃあそいつらに戦争を起こした奴だって知らされたら……」

 わかっている、というようにクローラは小さく「はい」と呟く。

「ご丁寧にその密告者さんは、コンバータが広まるところからスキュール・トランケートを作るところまで、全て私の計画のうちだったと告げたらしいのです。戦争を終わらせた英雄として扱われれば、元老院の賛辞を受けられるだろうと企んでいると。全ては私が仕組んだ次期の帝王の座を狙ったゆえの自作自演……いつの間にかそういうことにされていたのです」
「え? でも――」
「無論それは事実無根ですよ。でも元老院の人達にとっては、そっちの方が納得の行く『真実』だったのでしょうね。誰も私の言葉を信じようとはしませんでした。ま、私の方から名乗り出ていても結果は同じだったでしょうけど」

 段々と彼女の顔から笑みが消え、嘆きや悲しみといった感情が浮き出てくる。

「その一件で、私どころか、帝王一族の信頼が元老院……そして国民から失われました。次期の帝王はとうとう一族とは別の家の出の者が受け継ぐこととなり、長く続いた初代帝王の系譜は絶たれることになったのです」
「……」
「全国民どころか、家族からも非難轟々でしたよ。お前は初代帝王の意思を裏切ったと責め立てられ、私は誰にかばわれることもないまま……裁きを受けることになりました」
「もしかしてそれが……」
「ええ、一族からの追放。奴隷への格下げです」

 それを言うのと同時に、彼女は完全に真顔になった。

「処刑じゃなかっただけマシですかね。でも私は全てを失いました。家も、財も、服も。そして代わりに、これが付けられた」

 と言って、彼女は自身の首輪を指さした。
 隷属を意味する、決して外れることのない、奴隷の証。

「それから先は地獄でした。王族であった頃は考えられないような酷い待遇。そして痛みと苦しみ……今まで見えてなかったワイヤードの闇に放り込まれた気分を味わいましたよ」
「……」

「そしてそんな中、あなたの存在を知った」

 突然クローラがリファを見つめ、彼女に向かって正面から素早く歩み寄った。
 その目は穏やかだったが、奥に何かを溜め込んでいるような感じがする。

「あなたは……キカイ大戦で武勲を上げて一躍名を馳せた。その噂は奴隷である私の耳にも届きましたよ」
「クローラ……お前、ここに来る前からリファのことを知ってたのか?」
「ええ。もちろんです」

 平然とクローラは答える。
 そんな……。だとしたら、転生初日のあれは全部演技だったっていうのか?

「本当にその時はショックでしたよ。そして同時に、激しい嫌悪感を覚えました」
「嫌悪感って……何を言ってるんだよクローラ」
「だってそうじゃないですか」

 女奴隷は急に目を細めると女騎士に鋭い視線を向けた。

「どうして、上の命令に従うだけの一兵士が称賛されて、自分から世界を変えようとした私がこんな目に遭うの? 私だって頑張ったよ? 私のやったことだって、多くの人の役に立ったよ? 私とあなたで何が違ったというの?」
「……っ」

 あまりの気迫に、リファは思わず後ずさる。それを見たクローラはやりきれない思いを押し込めるように浴衣のたもとを握りしめた。

「惨めでした。私が意思を持ったばかりに。退屈な暗闇から抜け出したいと、手を握ってくれる人が欲しいと願ったばかりに……結果的に私自身を貶める結果にしかならなかった」
「……」
「こんなことになるのなら……最初から意思なんて持つべきではなかった。ずっと、人形のような他人に流されるだけの毎日を送っていればよかった。そう後悔しました。だって……リファさんのような人を見てしまった以上は、そう思うしかないでしょう?」
「クローラ……」
「だから私は、もう意思を持つのを止めて、置かれた環境を全てを『これでいい』と思うことにしました」

 クローラは目を落としてため息混じりに言う。

「私が今いる場所こそが、自分にとって最良の場所。だから決して変えようとしては駄目。抜け出そうとしては駄目。それが私が生涯安全に生きられる方法だという結論に達したのです」

 つまりそれが、今までの奴隷としてのクローラの在り方。
 変化を嫌い、どれだけ理不尽でも、どれだけ辛くて苦しい思いをしても。それを押し殺して納得しているのが「幸せ」という、どこまでも歪んだ認識を持ってしまった。ワイヤードの掟に真っ向から反故にする考え方に染まらざるを得なかった。
 彼女は結局、今までよりも深い暗闇へと呑み込まれてしまっていたのだ。

「でも、その考え方を変えてくれた人がいました」
「?」
「その人は、私が本当にしたいことを曲げずに貫けと言った。夢を現実にしてみせろと力強く、それでいて優しく仰ってくださいました」

 そこで女奴隷は、視線をリファから俺に移した。

「ご主人様、それがあなたですよ」
「……」
「あなたと触れ合って、あなたとお話して、私はやっと気づいた。あなたこそが私の探し求めていた人だと。あなたが、私の手を握ってくれる人だと。ワイヤードではどれほど頑張っても掴み取れなかった幸せを……この世界で、この人と一緒なら手に入れられるって」

 泣きそうになりながら、クローラは一気に思いを吐き出した。

「だからいっぱいあなたへの『好き』が溢れてきてて、胸の中が暖かいもので満たされていって……それを感じる度にこの世界に来れて心から嬉しかったと、ご主人様が私の同居人パートナーで本当によかったと思いました……」

 だのに。


「どうしてあなたまでここにいるんですか?」


 急にトーンを落ちた言葉とともに、気がついた時には信じられない光景が広がっていた。
 あろうことかクローラは、腰の帯から引き抜いた銃を……リファに向けていた。

「転生して、すべてが変わるかと思った。そんな時に……何故よりにもよってあなたが? ご主人様は私の手を握ってくれるはずだったのに……なんでもうあなたと繋いでるの!?」
「ひっ……」 

 小さな悲鳴が女騎士から漏れる。俺も一瞬何が起きているのかわからず、すぐには動けなかった。
 空気が凍りついた状況の中、クローラだけが饒舌に話す。


「あなたは一度幸せを得たはず……私にはないものを全部持っていますよね? 堕ちていく私のことなど知らずに、自分だけいい思いをしてて……。それで十分なはずでしょう? それなのに……あなたは今度は私の幸せまで奪うんですか?」
「クローラ、やめろ……」

 俺は震える声でいうが、意に介さないというようにクローラは一歩ずつリファへと近づいていく。


「私は耐えられないほどの地獄を味わったのに。生まれ変われたら、すべてが変わるって信じてたのに。私は元の王族の暮らしに未練なんかない。今のこの世界と、ご主人様と一緒にいられる暮らしがあれば他には何も望まない! それなのにどうしてあなたが『一番目』なんですか? なんであなたが私よりもご主人様に気に入られてるんですか? 私はこの世界でも幸せにはなれないっていうんですかっ!?」
「やめてくれ……頼む……」
「あなたは知る由もなかったでしょうね! 来る日も来る日も殴られ、詰られ、食事さえ満足に摂れない、狭くて暗い部屋に閉じ込められ、何度も何度も何度も何度も何度も汚い男達の慰み者にされた私の痛みがっ!! 必死で助けを求めても、誰にも手を握ってもらえない寂しさと苦しさがっ!!」
「クローラっ!!」


 俺が叫んだのと、彼女の人差し指がトリガーにかけられるのは、ほぼ同時だった。
 怒りと憎しみに任せるように、クローラは目の前の女騎士を睨みつけたまま……小さく力を込めた。

「あなたも味わえばいい」

 銃声。
 内部の水のエレメントが一発。せせらぐような銃声を上げて蒼い火を吹いた。
 それと同時に、空に散りばめられた水の欠片達が一斉に重力の法則に従って下に落ち、俺達と地面をしとどに濡らしていく。

 そして静けさが訪れた。
 誰も何も言えない。息遣いすら聞こえてこない。
 全員の目は、泡の硝煙を銃口から吐き出すモデルガンに向けられていた。

 その射線上にあるのは……額に風穴を開けられ、あとはただ膝をついて倒れるのを待つだけの女騎士。
 リファレンス・ルマナ・ビューア。

 ……ではなく。


「ぎぃぃぃぃぃぃ……」


 という錆びついた叫び声を上げて崩れ落ちるシ霊であった。

 瞬きすらできず、時間を数秒前から一気に飛ばされてきたような感覚に陥った俺とリファはその場で意識を保っているのが精一杯だった。


「……なんてね」


 ほんの少しだけ口元を歪めてクローラはモデルガンを引っ込めた。
 そこまできて、俺は彼女が最初からリファの背後で再生していたシ霊を狙っていたことに気づいた。

「わかってますよ。ただの理不尽な八つ当たりだってことくらいっ!」

 クローラはリファを押しのけ、まだしぶとく活動を再開しようとするシ霊に追撃の弾丸を食らわせる。
 スキップしながらシ霊の飛ばす虫をかわし、翻弄するように一発ずつ確実に削っていく。
 俺もリファもその様子に我に返り、すぐに加勢に入る。
 機関剣のレバーを引き、更にエンジンの出力を上げて斬りかかる。リファもそれにタイミングを合わせるように、俺の攻撃が終わった隙を着実にカバーしてくれる。

「リファさんに落ち度はない。むしろ私は、あなたに感謝しなきゃいけないくらいなんですからね!」
「感謝だと!?」
「ええそうですよ!」

 轟音がして、もはや弾丸と言うよりレールガンと言ったほうが妥当なくらいのエネルギー砲がクローラの銃から放たれる。
 これで何度目かになるシ霊の叫び。
 無数の虫となって崩壊する化物を眺めながら、クローラは肩で息をしつつ真実を告げた。 

「だって私は……あなたのおかげで死ねたんですから」

 危うく持っていた機関剣を落としそうになった。
 クローラが……リファのせいで、死んだ?

「私が死ぬまでの経緯……まだお話してませんでしたよね」

 浴衣についた泥を払いながらクローラはぶっきらぼうに言った。
 彼女の死にリファが関係してるって……何があったっていうんだよ。

「きっかけはあの日ですよ。リファさん、あなたが死んだ日です」
「!」

 リファの死因。
 それは彼女が帝国でのさばっていた逆賊を捕らえるために単身アジトに侵入した事件。そこで逆に自分が捕まってしまい、あっけなく首を切り裂かれて逝ってしまった。
 それだけ聞けばバカらしい間抜けな最期だと思うだろう。だがことはそんな単純ではなかった。
 そのアジトには、奴隷に身を落としたクローラもいたのである。
 彼女は同じように賊に攫われており、リファは自分が賊の注意をひくことで、図らずもそれを助けることになったのだと。

 でも俺たちが知っているのはそこまで。
 ここから先の話は、聞いてもいないし、聞かされてもいない。
 真実は……どうやらその続きにあるようだ。

「種明かしをしましょう。私が賊に攫われてたというのは嘘です」
「え?」

 嘘? え……? じゃあなんで賊のアジトにいたんだよ?
 疑問に次ぐ疑問が浮かぶ中、クローラのヒントが耳に届く。

「私が前に仕えてたご主人様……ご存知ですよね? 何度かお話したと思いますけど」
「あ、ああ……」

 クローラに、今で見れば虐待同然の仕打ちをしてきた人物。彼女を奴隷として煙たがり、忌み嫌い、ただの働くキカイとしてしか見てなかった奴。
 だがなぜ今そこでそいつが出てくるんだ?

「……って、まさか!」
「はい。そのまさかです」

 虚ろな瞳を俺に向けて、彼女は悲しげな表情で告げた。

「私は捕らえられていたのではなく、そこの長たる人物に奉仕していた奴隷だった、というわけです」
「前の主人が……賊のリーダー?」
「ええ、だからリファさんがアジトに単身突っ込んできた時に私がいたのは半ば必然だったのですよ」

 飄々と何食わぬ顔で彼女は解説する。まるで子供の頃の思い出話でもしてるように。

「帝都の騎士団。それも大戦で武勲を上げた兵長が乗り込んできたとなればアジト内は大騒ぎ。当然私も最初は慌てました。ですが……」
「私はすぐに捕縛され、殺された」

 苦い表情でその続きをリファが代弁した。

「なんでこの人が……って思いましたよ。私とは違って、地位も名誉も手にしたあなたがここに来るなんて。助けられるくらいなら、死んだほうがマシ。屈辱以外の何物でもないから、そう思いました」
「……」
「でも、結局あなたに助けられたんですよ。私は」
「どういう意味だ?」

 わかりませんか? とクローラは肩を竦めて少し勿体ぶる。

「賊のメンバーは前のご主人様を含め全員リファさんにしか注意を向けていない。私の動向など、誰も気にしようともしない。そんな時あなた達なら、何を思いますか?」
「……お前、ひょっとして」

 どうやら考えることは三人とも同じだったらしい。
 クローラは顔を伏せると、小さく問題の回答を教えてくれた。

「主人殺し」
「っ!?」
「文字通り、奴隷が自分の主を手に掛ける罪。ワイヤードでは頻発し、かつ最も重い罪の一種です」
「お前が……殺したのか? 前の主を?」
「ええ。後ろから、ナイフで心臓を一突き。ぐさーって」

 彼女はどこまでも軽い口調でそう言い、刃物を逆手に持って背後から刺すモーションを見せた。
 殺した……人を、殺していた。そんな……嘘だろ……。

「カシラを失った賊はすぐに壊滅しましたよ。帝国軍の軍勢も後からやってきて、残りのメンバーは統率もとれずに全員お縄。そのまま一人残らず処刑されました」
「……」
「そして、彼らだけでなく私も」
「は?」

 なんで? だって、確かに主人殺しは重罪かもしれないけど、相手は長年帝国でのさばってた悪党。クズ中のクズだろ? だったらそれくらい情状酌量の余地ってもんが……。
 俺がそう言っても、クローラは首を横に振った。

「残念ですが、主人殺しだけは別なんです。どのような経緯があれ、量刑が軽減されることはありません。だって、もしそんなことになれば、きっと犯罪件数はもっと増えることになる。抑止のための見せしめという意味で極刑は必要だったのです」
「そんな……じゃあクローラは……」
「はい、問答無用で処刑でした。斬首で」

 ちょん、と自分の首元をチョップして彼女は自虐気味な笑みを浮かべた。

「理不尽、と思われるかもしれませんが……でもあれでよかったんです。あの事件がなければ、私は一生あの地獄で生き続けなければならなかったでしょうから」
「……」
「だからリファさん、あなたにはお礼を言わないといけないんですよ」

 そう言われても、「どういたしまして」なんて言える空気ではなかった。
 それにクローラだって、今までの言いぐさからして心から感謝してるようにはとても見えない。

「感謝はしてます。それは本当です。でも……もう二度と会いたくはなかった。いえ、二度と会うことはないはずだった」

 だが、二人は出会ってしまった。しかも俺の家という一つ屋根の下で。

「運命ってとことん残酷ですよね。転生先でも一緒になって、その上好きな人まで同じになっちゃうだなんて……」

 やりきれない想いを噛み殺すように、クローラは湿ったくせっ毛の髪を乱暴に引っ掻いた。

「だから私は……あんなずるいことをした」
「ずるい、こと? 何だそれは」

 急に言われた謎の言葉に反応したリファは怪訝そうに尋ねた。
 クローラは髪を掻き毟る手を止め、その前髪の隙間から覗く目で女騎士を見つめた。

「見てましたよね……花火の場所で」
「……あ」

 聞いた途端にリファの顔が青ざめていく。
 花火の場所。そのキーワードで思い当たる出来事なんて一つしかない。
 俺とクローラが、二人で唇を重ねた場所。
 そもそもこんなふうないざこざにまで発展するきっかけは、よく考えてみればそれをリファが発見してしまったことだった。

「お前……気づいてたのか?」
「ええ。正確には気づいていたからこそ、私はあんなことをしたんです」
「え?」

 これには俺も大口を開けて聞き返すことを余儀なくされた。
 気づいてたからって……は? え? 気づいたのが後じゃなくて? リファが見ていることに気づいたからキスしたの?


「だから言ったじゃないですか。『いけないことしてもいいですか』って」


 絶句するしかない。
 そういうことだったのかよ。だとしたら意味合いが180度真逆のものになるじゃねーか。

「ああすれば、あなたを出し抜けると思った。あなたではなく、私がご主人様の『一番』になれると思った」
「……」 
「でも駄目でした……」

 クローラは強気な姿勢から一転、しゅんとしたように落ち込むと俺達から顔を背ける。

「あなたがその後公園からいなくなったって聞いて……。あのトイレの様子を見て、とんでもないことをしたって思った。それからずっとあなたの悲しんでる顔とか、苦しんでる顔が目に浮かんでくるようで……」
「クローラ……」

 自らの身体を抱きしめるようにしてクローラは肩を震わせながら告白を続けた。

「本当はこれが目的だったはずなのに……これでリファさんがご主人様のことを諦めてくれればって。でも……そう思えない。思えなかったんです!」
「……」
「まるであなたと感覚を共有してるみたいに……すごく胸が痛くて痛くて仕方なかった」

 胸の痛み。
 俺も感じていた、あの不可解な激痛。
 あれをクローラも感じていたということか……。

「だからご主人様がリファさんを探しに行くと言った時……ここにいてほしいっていう思いと、探してきてほしいという思いがせめぎ合っていました。もし行かせてしまえば、キスをした思い出は夢に終わる。現実にすることができなくなる。でも仮に引き留めていたら、ずっと胸の痛みに苛まれ続ける。リファさんの辛い顔がずっと頭から離れなくなる……もうどうしたらいいか、心の中がぐちゃぐちゃになって……」

 でも、最終的にクローラは俺をリファの元へと行かせてくれた。
 悲しい笑顔で手を振りながら見送ってくれた。
 その選択をすることが何を意味するのか……彼女は端的に述べた。

「私はこの世界でも『それでもいい』と思うことにしたんです」
「お前……」
「自分の意志を捨てて……今置かれている場所が最良だと。これ以上、幸せを求めるために変化を願ってはならないと」
「……」
「だってそうですよね……リファさんのほうが素敵ですもん。私よりも前から交流を深めてるし、ご主人様は私と喋る時よりも楽しそうだし。あとから来た私が出しゃばるのがおかしいんでしょうね。奪われるかも、なんて……笑っちゃいますよ。そもそも最初から私だけのものなわけじゃないのに。勝手に被害妄想激しくしちゃって……バカみたい」

 目尻に浮かんでいるであろう涙を拭い、彼女は俺らに嗚咽混じりに言った。

「だからごめんなさい、リファさん。ごめんなさい、ご主人様。私のせいで二人に誤解を与えてしまって……必要のない亀裂を産んでしまいました。でも、もういいんです。ご主人様には、リファさんこそが相応しいってはっきりわかりました」
「……」
「この世界でもやっぱり、意思なんか持つべきじゃなかったんですよね。私がこうしたい、なんて思ったばかりに……嫌な思いをさせてしまったんですから」

 歴史は繰り返す。たとえ住む世界が違っても、結果が変わることはない。
 きっと彼女はそう思ったのだろう。
 でも違う。そうじゃないんだよ……。お前が二度も失敗した原因はそんなことじゃないんだ……。

 そう伝えようとした時、大きな唸り声と羽音が周囲で巻き起こった。

「!?」

 気がつくと、クローラの背後で再生を完了させていたシ霊が彼女に襲いかかろうとしていた。
 しまった、話に気を取られてて完全にワンテンポ出遅れた。
 クローラが殺気を読み取ったその時にはもう、黒蛇が牙を向いて彼女を呑み込もうとしていた。
 まずい、間に合わない!

「いい加減にっ! しろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 緊迫した状況の中。そんな怒号がこだまして、蛇は女奴隷の身体ではなく、炎の刃を口内に収めることになった。
 リファが繰り出した上段斬りは清々しいくらいにクリーンヒット。クローラの窮地を救った。
 だが剣に纏うエレメントの力が弱まっているせいか、向こうも対してダメージは負っていない。そこに俺がすかさずエンジンブレードによる斬撃で反撃の手を抑える。

「黙って聞いてれば勝手なことをごちゃごちゃと! 何が私のほうが素敵だ! 何が私の方が相応しいだ! 被害者ぶるのも大概にしろ!」
「え……?」

 蛇に追撃を食らわせながら、時に飛んでくる虫に身体を切り裂かれながら、それでもリファは力強くクローラに怒鳴った。

「私からすればお前のほうがよっぽどマスターと一緒にいるに相応しいわ! 私なんて、事あるごとにマスターを迷惑かけては殴られてるし、高慢な態度で苛立たせてばかりだし! 言われたことを直せないまましつこくやらかしては怒られるし! どうしようもないポンコツだ私は!」
「……リファさん」
「それに比べればお前は聞き分けもいいし、奴隷だけど知識はあるし、この世界の順応も早いし! 誰だって私とお前だったらお前を選ぶぞ!」
「そ、そんなことないですっ!」

 クローラはムキになると、自らも戦いに参戦した。
 スライディングしながら銃を連射し、蛇の胴体に次々と水の弾丸をぶち込んでいく。

「リファさんの方がずっといい人間です! わかんないんですか? 私の起こした戦争であれど、立派に戦って武勲を上げたのはあなた自身の実力! それがポンコツなわけありますかっ!」
「黙れ! だったらお前なんかキカイという文明の利器を世界中に広めたという偉業を成し遂げたではないか! もうその時点で私どころか全ワイヤード国民の頂点に立つくらいのことやってるわ! それなのにいつまでもぐちぐち卑屈な言葉を吐きよって……過ぎた謙遜は逆に嫌味に聞こえるということくらいわかれ!」
「い、嫌味じゃないですもん! リファさんのほうが本当に素敵なんですもん!」

 次々とそんな応酬を交わしながら、二人は我先にとシ霊に突き進んでいく。再生も待たず、散らばった虫すら踏み潰し、完膚なきまでにぶちのめしていく。自らに溜まった鬱憤を晴らすように。

「リファさんはいいですよね! 髪もキレイだし! 料理も上手で美味しいし! 私なんか地味過ぎて何の役にも立ちゃしない、女としても奴隷としても価値のないポンコツです!」
「何を言うか! 掃除や洗濯で役に立ちまくってるだろう! 髪なんか、この世界では奇抜なだけだ! 何度ガキどもにパツキンパツキンとバカにされたことか! お前の黒髪のほうがよっぽど自然に馴染んでて魅力的と言うに他はない!」
「ふざけたこと言わないでください! あとはえっとえーっと……お、おっぱいだって大きいじゃないですか! ご主人様結構な頻度でガン見してましたよ!」
「そっちこそふざけるな! 大体いつも家で素肌にエプロン一枚だけで過ごしておいて何を言う! 貴様の扇情的な後ろ姿にマスターの目が釘付けになってたことすら気づけんか!?」

 お前ら……。
 完全に俺が手を出す隙が無くなってしまった。
 罵倒、と呼んでいいのかわからないキャットファイト。その巻き添えを喰らうシ霊。呆然と見てるしかない俺。
 筆舌に尽くしがたい光景である。

「とにかく、リファさんの方がすごい人なんです!」
「くどい! すごいのはクローラ、貴様の方だ!」

 そう言うと、二人はトドメと言わんばかりに溜めモーションに入る。
 武器に宿る紅と蒼の光がどんどん強くなっていく。お互いの意思をそのまま表しているかのように。
 それを攻撃のチャンスと踏んだのか、シ霊が再生を終えて二人に突撃。

「「だから――」」 

 それを待ち望んでいたかのごとく、リファとクローラはタイミングを合わせて溜めたエネルギーを化物へと放った。


「「そんなあなたを好きになりたいと思った」」


 炎のカッターと水の弾丸。相反する二つの属性が混ざりあい、威力も速度も倍加されたその一撃は……この公園ごと吹き飛ばしてクレーターになるかと錯覚するほどであった。
 揺らぐ大地と、吹きすさぶ爆風。俺は姿勢を低くして、エンジンブレードの内側に隠れて被害をまぬがれる。
 もはや悲鳴も断末魔もかき消してしまったようで、終わった時にはシ霊は跡形もなく綺麗サッパリ消え失せていた。流石にもうこれでくたばっただろ……。
 甚大な被害を被ったその場所に、たった二人だけ。なんてことないといった感じで平然と立ち尽くす女性達の姿が。

「リファさんも……同じこと思ってたんですね」
「……まぁな」

 クローラの言葉に、少し照れながらリファは答えた。

「リファさんがいなくなって気づいたんです。あなたのことは正直嫌いですけど、だけど追い出したくはない。離れていってほしくない。この板挟みな気持ちをどうすればいいのかって考えたら……」
「私も……お前が目障りだったよ。いい子ちゃんぶってマスターに取り入ろうとして、後から来たくせに馴れ馴れしくて……。でもだからといって、お前がいなくなってしまったら……きっと私はさっきのお前のように後悔するだろう。長いこと一緒に暮らしてきてわかった。私には、マスターと同じようにお前の存在も必要だったんだ。そうなったら――」


「「好きになるしかないじゃない」」


 目を合わせて、はっきりと二人は告白した。
 まだ好きじゃないけれど、好きにはなりたい。嫌いだと思う自分を変えたい。
 それが二人の、互いに向ける心からの本心だった。


「これで、もう偽らなくて済むよな」

 そこで俺はエンジンブレードを引きずりながら、彼女達に向かって言った。

「クローラもリファも、本当の気持ちを押し込めて、そしてこれでいいんだって納得して自分を偽った。確かに人間って、そういうところあるよ。心の奥底じゃそんなの嫌だって思ってるけど、でも自分一人じゃどうにもならない。だから仕方ないんだって」
「ご主人様……」
「マスター……」
「でも俺は二人にそんなふうにはなってほしくない。だから本当の気持ちを話してほしいってそれぞれにお願いした」

 俺は地面に剣を突き刺してその場に胡座をかいた。

「話すだけで何になる、って思うだろ? そりゃ全部が全部解決するわけじゃない。それでも気持ちを話すってことは、本当の自分をさらけ出すってことだ。誰かに一人でもそれを知ってもらえれば、もう自分を偽らなくてすむから」

 現にこうして、リファもクローラも今まで内に隠していた「本当の自分」をこの場にいる全員に見せた。そうすることで、押し込めた気持ちはもうそいつ一人のものじゃなくなる。故に偽りが効かなくなるんだ。

「クローラ。お前がワイヤードでひどい目に合ったのは本当に辛かったよな。でもそれは互いに誤解に誤解を重ねた結果だ。キカイやコンバータを作ることを、そして作った理由を、身分や名を隠さず正直に誰かに話していれば、もしかしたらあの運命は回避できてたかもしれない」

 クローラの頭に手を置いて優しく言うと、俺は今度はリファの方に向き直った。

「リファ。お前が素直になれない性格なのはわかる。今日だってすごく苦しい思いをしたよな。自分の気持をわかってもらえないから。どこにも吐き出せないから。でも、俺だって辛かったよ。お前が何も言ってくれないから。お前の気持ちがわからないから。だって口に出さなきゃ伝わらないもん。何も言わないことで、いい思いをする奴はいないんだ」
「……すまん」
「……ごめんなさい」
「謝るなよ。別に責めてるわけじゃない」

 俺は首を横に振って、彼女達に微笑みかけた。

「俺はさ、二人にそうやってこれからも本音でぶつかり合ってってほしいんだ。辛いことがあったら包み隠さず、一人で抱え込まず、俺に伝えてほしい。何ができるかはわからないけど……それでも、全力でお前達の支えになりたいと思ってる」
「どうしてそこまで私達のことを……」

 クローラのもっともな質問に俺は肩を竦めて答える。

「さっきも言っただろ。それが俺の願いだからだよ」
「違います」
「違う」

 言い終わるか終わらないかの内に即座に二人が否定してきた。

「私が知りたいのはそんなことじゃありません」
「『なぜそれを願う』? マスター、教えてくれ……」

 どうやらごまかしは無効みたいだ。
 ま、自分で「本音を言え」って言っておいてこれじゃ卑怯だしな。

 ああ、わかってる。
 ちゃんと正直に言うよ。俺の本音を。
 誰にも打ち明けなかった、今の今まで心の中で押し留めてきた、俺の本当の気持ちを。

「俺は―――」

 ずぉぉぉぉっっ!!!

 と、俺の告白はそんな闇の風音によって強制的に中断された。
 何だ、と思ったが答えはすぐに出た。

 俺達を取り囲む黒い影……シ霊だ。

 くそ、まだコアが生きているのか! っとにしぶといったらありゃしねぇなもう!
 シ霊は体内の虫を蠢かせ、津波のように俺達に押し寄せてくる。逃げ場はない。回避のためにはまた正面突破しかないぞ……。
 だが、そう何度も同じ手が通用するほど現実は甘くはない。

「くっ……もう脚が……限界だ」
「ちょっと……きついかもです」

 さっきの大技を繰り出した影響だろうか。リファもクローラも完全にグロッキー状態一歩手前。とてもその虫の波を壊せる余力が残っているようには見えなかった。
 俺のエンジンブレードも……中のエレメントは相当残りが少ないはず。もう次の一撃を放てば最後かもしれない。それでコアを破壊できなければ……全て終わりだ。
 賭けに出るか……どうする?
 人生史上最大の選択を迫られていたその時である。

 俺の頭に起死回生の打開策がひらめいたのだった。
 だがそれは名案と呼ぶにはかなり難しいもので、むしろ天使のお告げか悪魔の囁きかで迷うほどの奇策だった。
 実行に移すのは無謀極まりないだろうが、それでもやるしかない。
 この一手に全てを賭ける!


「リファ、クローラ! 二人共俺に掴まれ!」
「は!?」
「え!?」
「いいから早く!」

 二人は戸惑ったものの、すぐに言われたとおりにした。
 リファは俺の右腕に、クローラは左腕に、自らの両腕を絡ませてぎゅっとしがみつく。
 それを確認した俺はエンジンブレードから元素封入器を取り外した。中のエネルギーは予想通り後攻撃一回分程度。これをうまく使うしかない。

「あの、どうするのですご主人様?」
「早くしないと攻撃が来るぞ!」
「今やるから見てろ!」

 俺は剣のグリップの部分にまたがり、さながら魔法使いの箒乗りみたいな体勢になる。
 そして炎が封じ込められたガラス瓶を尻の下に敷いてしっかり固定。
 準備完了。あとはイチかバチかだ……。
 シ霊は唸り声を上げ、手も足も出ない俺達を潰そうと波の高度をさらに上げてくる。
 確かに、前も後ろも右も左も、どこに逃げても攻撃が当たる。
 でもたった一つだけ逃げられる方向がある。それは……。

 上。
 すなわち、闇の広がる空。

「いくぞ! 振り落とされんなよ!」

 俺は威勢よく掛け声を上げて、股に挟んだ元素封入器に、自分の意志を伝えた。


星に願いをブレイジングスター!!!」


 そして、俺達は流れ星になった。
 いや、地上から打ち上げられたらロケットか? 
 ともかく俺達三人はシ霊の海嘯攻撃を意外な方法で回避することに成功した。


「「「うわあああああああああああああああ!!!!」」」


 まぁ、助かったと安堵の息を吐くような雰囲気ではなかったが。
 予想よりもエネルギーが強かったらしい。火を吹き続ける元素封入器は俺達を上空へとどんどん押上げる。風圧で本当にいつ振り落とされてもおかしくないくらいの勢いだった。
 ジグザグに動きながら雲を突き抜け、大気圏まで突破するんじゃないかと思うほどの高さまで連れてこられた俺達。
 そこまできてやっと燃料が底をつきた。
 ぷすん、と最後の一発を力なく吐き出すと、ただの魔具カプセルと化したそれはうんともすんとも言わなくなった。

 ということは、これ以上俺達の身体も上昇することはない。
 やれやれ、これで宇宙まで飛び出しちゃってたら死亡確定だったよあっぶねー。

 と、思うじゃん?
 だがよーく考えよう。
 今俺達は、高度ウン千メートルの場所にいるわけでして。
 その場にいわゆる足場、というようなものは一切皆無でして。
 そんな状況の中、この後俺らに何が起きるかって言ったら……。

 当然、落下運動以外にないわけで。


「「「うわあああああああああああああああ!!!!」」」


 本日二度目の叫び声ハーモニー。
 俺達は真っ逆さまに、来た時と同じくらいのスピートで再び流星になる。
 剣も元素封入器も手放してしまい、二つは文字通り闇雲に紛れて見えなくなった。
 空を切るものすごい音と、風に煽られて服が肌を連打する音、そして俺達の絶叫で盛大な騒音を生み出す中、

「ご主人様っ!」
「マスターっ!」

 二人がこちらに手を伸ばして掴み取ろうとしてきた。
 俺はジタバタと犬かきみたいな動きで空中を泳ぎ、なんとか差し伸べられたその手を握った。指を絡ませて、離れないように。 
 クローラとリファも同じように手を繋ぎ、三人で輪になるような形になる。
 映画とかで見るような非常にロマンチックな画だが、そんな悠長なことを考えてる場合じゃない。これもう死ぬまでのカウントダウン入ってるから。まじで異世界転生の話が現実味帯びてきたレベルだから!

「大丈夫ですご主人様! ここで風のエレメントを吸収して、その力でなんとか衝撃は最小限に食い止められるかもしれません!」

 クローラが自分の鉄製の首輪に埋め込まれた魔具を見せてアピールしてくる。
 非常に心強いがそれでも「かもしれない」レベル。何をどうやって切り抜けるつもりかは知らないが、助かったところで果たして五体満足でいられるのかどうか。
 そうこうしている内に、もう下界の光景が見えるところまで落ちてきていた。街の景色が一望でき、点在する明かりがはっきりと見える。これからそこにパラシュートもなしに突っ込んでいくのかと思うと震えが止まらない。
 もうそのへんで俺の心が、シ霊に襲われた時以上に恐怖一色へ染りきるところだが……。


 タイミングがいいのか悪いのか、そこであるものを目にすることになる。


「あれは……」


 どーん、どーん。
 と大きな音を立てながら、赤、青、緑……様々な色をした光り輝く大小の花弁が、夜空に広がっていく。

 花火だった。

 そうだ……、今日は花火大会。さっきの公園は建物に阻まれて見えなかったけど、上空に舞い上がったことでとんでもない絶景を拝めることができた。


「綺麗……」

 初めて見る花火にうっとりとした声を漏らすリファ。その恍惚とした顔がカラフルな光に照らされる。
 クローラも先程一度目にしたものの、やはりそのインパクトに目を奪われているようだ。
 俺も、今まで見てきたどんな花火よりも豪華で、迫力で、最高だと感じた。

 まさかこんな形で去年見ることができなかった花火を、こんな特等席で観覧することになるとはね。
 でもよかった。こんな素晴らしいものを、三人一緒に見ることができて。

 色とりどりの花が次々と咲き乱れるその圧巻の光景は本当に「美」の一言だった。
 それこそ俺達が完全に今の危機的状況を忘れてしまうほどに。
 そういう意味で、少し余裕が生まれた。

 今なら……言ってもいいかな。

 こんなことを思うくらいに。
 ていうか、今しかないか。だってどうせ下に落ちて死ぬかもしれないんだし。
 場違い極まりないけど、他に何かできるわけでもない。
 だったら、それまでの短い間だけでも知っていてもらいたい。
 本当の俺を。本当の気持ちを。

「リファ。クローラ。さっきの答え……今言うよ」
「「え?」」

 花火を見る目を俺に向け、二人はキョトンとしたように呆けた声で返事をする。
 少し照れくさいけど、でも言わなきゃ。
 彼女達はちゃんと俺に打ち明けてくれた。だから……俺も言いたい。ちゃんと声に出して伝えたい。
 それが……俺の意思だから。

「俺はっ! リファレンス・ルマナ・ビューアが好きだ!」
「っ!」
「プライドだけ高くて、すぐにドジ踏んだりするポンコツなところも。そのくせ料理はすごく上手くて意外と家庭的な能力があるところも。素直じゃないけど、すっごく純粋で、どこまでもまっすぐで、自分に誇りを持って自宅警備隊っていう仕事を頑張ろうとする……そんな女騎士が大好きだ!」
「マスター……」
「そしてっ!」


 俺は二人の手を握る力を強くして息継ぎを一秒で済ますとすぐさま続けた。


「俺は、クローラ・クエリのことも好きだ!」
「ごしゅじん……さま……」
「天然で、無意識に毒吐いて、何やってもほとんど空回りしちまうポンコツなところも。何か役に立てることはないかって、掃除や洗濯を毎日手伝ってくれる頑張り屋なところも! ちょっと腹黒いとこあるけど、それでも健気で、愛嬌もあって、優しくて……奴隷なんて肩書以上に毎日を頑張って俺達の生活を支えてくれてる……。そんな女奴隷が大好きだっ!!」

 一息で言い切り、長々と語った俺は少し呼吸を整える。
 そして、花火の咲く音に負けないくらいの大声で結論を出した。
 これが嘘偽りのない、本当の俺の気持ちだ。


「俺はっ……お前ら二人のことが大大大大好きだーーーーーっっ!!!」


 光り輝く夜空に、俺の告白が反響した。
 誰が聞いてるかわからないけど、それでもいい。目の前にいる、想い人二人に伝われば。

 リファとクローラは、唖然とした表情でこちらを見ている。何のリアクションも返してこない。
 まーやっぱこうなるよな。
 正直な気持ちとは言え、事実上のどっちも選べません宣言。
 堂々と二股かけようとするクソ野郎だ。決して人に褒められるような言動じゃない。

 でも、だからといってそれを撤回するつもりも修正するつもりもない。
 だって、これが俺なんだから。
 周りの価値観に流されて捻じ曲げたら、それはもう本当の俺じゃない。
 たとえ最低最悪のクズと罵られようと、俺はあくまでこの思いを貫き続ける。

「ごめん……でも、本当にそう思ってるから」

 俺はいつ振りほどかれるかわからない手を握りながらそう言った。

「お前らの誰とも離れたくない。ずっと一緒にいて欲しい。どっちかを弾いて片方とだけなんて……選べない。だって……それでその先幸せになれる未来なんて見えねぇんだよ俺には!」
「……」
「俺の幸せには……リファ、クローラ。二人が必要なんだ。どっちも欠けちゃ駄目なんだ! だって……両方のことがこんなにも好きだから! 好きな人にはずっと傍にいてほしいから!」

 だから、そんな二人の手を握っていたい。
 彼女達がそう願うのと同じように。

 殴りたいなら殴れ。見限りたいなら見限れ。それが二人の俺に対する気持ちなら、俺は甘んじてそれを受け入れよう。こっちだって生半可な覚悟で告白したわけじゃない。
 俺は目を固く閉じて、審判の時を待った。

「ふふ……なんか予想通りすぎて笑っちゃいますね」
「ああ、まったくだ」

 ……へ?
 予想していたものの右斜め下あたりを突き抜けるようなその反応に、俺は素っ頓狂な声を上げた。
 そして、二人が俺を見て笑っているのを目の当たりにする。
 コントでも見てるみたいに、面白おかしそうにクスクスと。
 な、何? そんな笑うとこじゃないだろ? どういうつもりだよ?
 わけがわからず戸惑うばかりの俺に、リファとクローラが同時に優しく言った。

「「知ってた」」

 ……はい?


「覚えてないんですか? 前にそれ、一度聞いてますから。『ずっと一緒にいたい』って」
「あのとーろーながし、だったか? その時に自分で言ってただろう。まぁこっちも話半分にしか聞いてなかったが」
「でも、本気の本気でそう考えてるとは……愚直とはこういう事を言うんでしょうね」
「そういう『愚直な奴』に惚れた私達が言うのもアレだがな」
「お前ら……」

 キャッキャと俺をダシに遊ぶ二人はひとしきり笑った後、返事の続きを聞かせてくれた。

「大丈夫ですよ、あなたを責めたりするつもりはありません」
「マスターが単に優柔不断だったり、どっちの女も手に入れたいだけの独占欲故にそんなことを言ってるのではないことくらいわかる」

 女騎士と女奴隷はすまし顔でそんなことを交代交代で言ってくる。

「本当にご主人様は、私達二人を平等に愛してくださっている……その気持ちはもう十二分に伝わっておりますとも」
「それが今日直接聞けて、私はとても嬉しかったぞ……相思相愛だな」
「でもこの場合は三人ですからその言葉は当てはまらないのでは? リファさん」
「む、それもそうか。だったらなんだろ? えー、三角関係ってやつか?」
「それだとちょっとマイナスなイメージ付いちゃいますね。トライアングルラブなんてどうでしょう」
「いやそれ普通に意味同じじゃないか……マイナスから脱却できてないぞ」
「ふーむ、難しいですね」

 こ、こいつら……。人が真剣に言ってるのに何プチ女子会おっぱじめてんだよ。勇気を出した告白が早くもコケにされてる気分だぞ……。

「まぁよくわかりませんけど……とにかく言うべきことはこれだけです――」
「妥当な表現は見つからないが、言えることは一つだけだ――」

 彼女たちは目を閉じてそう言ったかと思うと、俺の手を同時に強く引っ張った。
 二人の方へ引き寄せられる俺。何のつもりだと問いかける前に……。

 ちゅ。
 と、俺の唇に温かい感触がいっぱいに広がった。

「ちゅ……ちゅぅっ」
「むっ……んっ」

 眼の前が真っ白になり、視界が晴れ渡る頃。最初に目に飛び込んできたのは、リファとクローラの顔だった。
 二人共目を閉じ、俺の唇に自分のそれを合わせている。
 クローラははむはむと吸い付くように。リファは力強く押し付けるように。 
 各々の個性が顕著に現れた、情熱的なキスだった。

 天空で、三人手を繋ぎながら、光り輝く花火をバックに。
 俺達はしばらくキスを繰り返した。
 何秒間か経った頃、二人はそっと俺から唇と身体を離した。

「これが私達の答えですよご主人様」
「これが私達の答えだ、マスター」 

 リファとクローラがうっとりとしたように頬を染めて言う。

「私、クローラ・クエリも……」
「私、リファレンス・ルマナ・ビューアも……」


「「あなたと、ずっと一緒にいたいです」」


 ……。
 じーん、と何かが心の底からこみ上げてくるような思いに駆られた。
 堰き止めていたものが、どんどん溢れてきて……抑えきれなくなる。
 それが何なのかは、潤む視界と頬を伝う液体が身をもって教えてくれた。

「ありがとう……俺……俺……」
「もう何泣いてるんですかご主人様。別に振ったわけでもないのに」
「そうだぞ。全員の願いが一致している。ならこれでいいではないか」
「はい、もう私達は離れません。誰一人欠けること無く」
「これからもずっと、三人一緒だ」

 そんな固い決意を二人は凛とした口調で宣言した。
 ああ、そうだな。もう全員が全員の本当の気持ちを知っている。だから、心配はいらない。何も恐れることはないんだ。

「ありがとう……リファ、クローラ」

 ああ、これが幸せっていうんだな。
 と、心から温かい気持ちになれた俺がそう思っていた矢先である。

 ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 と、獣の雄叫びのような音が俺達の直下で鳴り響いた。
 目線を下に向けると……やはりというかなんというか、シ霊が落ちてくる俺達を迎え撃とうと、塔の形を成してこちらに迫ってきていた。
 ああそうだ、お前を忘れてたよ。
 これからずっと三人一緒にいるためにも。生まれて初めてできた、自分の好きな人を守るためにも。

 お前だけは……倒さなきゃな!

「戦うぞ、クローラ」
「承知いたしてございます、ご主人様」
「戦うぞ、リファ」
「あいわかった、マスター」

 俺は息を吸い込み、シ霊に負けないくらいの渾身の叫びを放つ。

「戦うぞ、みんな!」

 それを合図に、俺達は手を離した。
 リファは鞘から抜いた元素付与エンチャント済みの剣を。クローラはモデルガンを同時に構える。

「最後の一発だ!」
「これで決めます!」

 その言葉の通り、彼女達は残っていたエネルギーの全てをその一撃に込めて……。
 一斉に解き放った。

「「炎槍と水剣の裁!!!」」

 さっきの攻撃よりももっと強大な技が炸裂した。
 各々の武器から放たれた炎の槍と水の剣は、接近してくるシ霊と真っ向からぶつかり合い……真っ二つにした。
 黒い塔は裂け、轟音を立てて崩壊していく。
 だが、バラける無数の虫達の中で……ぽつんと赤い球体のようなものが鈍く輝いているのを俺達は見逃さなかった。
 もしかしてあれが……コアか!
 俺達は全員目を合わせてアイコンタクトをすると、無言で頷いた。
 もう何をするべきか、言葉にせずともわかってるというように。

「「いっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

 リファとクローラは掛け声と共に、俺の背中に向けて息ぴったりのツープラトンキックをお見舞いした。
 それによって、俺の落下速度は一段階上がり、シ霊のコアへと近づいていく。
 敵はもう既に再生を始めており、それにつれて赤い塊も覆い隠されていく。
 逃がすか。今度こそ仕留める。

 俺は手を真っ直ぐに伸ばす。そこには何も握られていない。コアを壊すための武器は、既にこの虚空のどこかへと去っていってしまったのだから。
 だが俺は確信していた。
 なんにもない場所から突然現れたのなら……もう一度それができるはずだと。
 特に根拠も理由もない勘だったけれど、それでも不思議と俺にはわかったんだ。

 だから頼む。剣よ……俺の手にもう一度戻ってくれ。
 あいつを倒すために。
 三人で一緒にまた暮らすために。
 好きな人を守るために。
 それが、俺の意志だ!


「来い!!!」


 瞬間。俺の手がさっきの時と同じまばゆい光に包まれた。輝く粒子と光線が拡散し、まるで俺自身が太陽になったみたいに闇夜を明るく照らし出す。
 二度目ということもあって驚くことはなく、むしろ安堵の感情のほうが強かった。
 よかった……ちゃんと……応えてくれた。

 光はやがて形を変え、実体化する。

 指先に伝わるグリップの感触。
 鍔に設置されたエンジンのとてつもない重量感。
 そして歯車の付いたメカメカしい刀身……。
 光が弱まるごとにその輪郭がはっきりと浮かび上がってきた。

 完全に煌めきが収まった時、機関剣は俺の手に確かに戻っていた。

 さぁ今度こそ準備完了だ。
 俺は剣を両手で持ち、大きく振りかざす。

 狙いは……コアただ一つ。
 絶対に、外さない!


「これでっ! 終わりだあああああああああっっっ!!!」


 喉が潰れそうなほどの叫びとともに。
 雲の上からの超高速落下斬撃が、正確に赤い塊に命中した。
 刃は深々と球体に食い込み、表面に鮮やかな亀裂の模様を作り出す。

 程なくして、それは粉々に砕け散った。

 シ霊の最後の断末魔が聞こえた。
 再生はそこでストップし、化物の身体は完全なる崩壊を始める。
 同時に、虫達がシュウシュウと音を立てて黒い粒子に分解されていく。
 それらもすぐに闇に溶けて、とうとう見えなくなった。

「今度こそ……終わり……」

 トドメを刺し終えた俺はそう短く呟いて目を閉じた。
 気が遠くなるような戦いが、今決着した。

 ああ……これで守れる。
 リファとクローラと……ずっと一緒にいられる世界を……。
 三人で紡ぐ、幸せな暮らしを……。


 ○


「……はっ!?」

 目が覚めた。
 まるで死から生還したように感覚に襲われ、俺の肺に空気が一気に入り込む。
 俺はゼハゼハと荒い息を吐きながら胸を抑え、落ち着いて呼吸を整えた。

「あ、おはようございます。夜ですけど」
「目が覚めたようだな。どうだ、気分は?」

 ふいにそんな声が下かと思うと、二人の女性が俺を見下ろしていたことに気づいた。
 一人は純金を引き伸ばしたような眩く長い金髪と、サファイアブルーの碧眼を持ち、整った凛々しい顔立ちをしている。
 もう一人は少し癖っ毛のある黒髪で、幼げな印象があるのと同時に、豊満な包容力と温厚な雰囲気を感じる。
 そしてどちらにも共通するのは、完全に見惚れてしまいそうな程可愛らしいということだった。
 何だ、天使か? ここは天国? 俺もしかしてマジで死んじまったのか?

「よかった。ずっと目を覚まさなかったので内心ヒヤヒヤしてました」
「一応シ霊との戦いで受けた傷は治療しておいたぞ。ほんの応急処置程度だが」

 と、天使コンビがにこやかに微笑みながら、妙に馴れ馴れしく話しかけてくる。
 おかしいな、なんだか非常に聞き慣れた声だ。しかも目を凝らしてみると、その顔も見覚えのあるものだと気づく。


「リファ……クローラ……」

 俺は掠れ声で二人の名を呼んだ。
 天使のような女の子という意味ではある意味当たってたが、どうやらまだ俺の魂は現世に留まってるようだ。

 そんな俺に、二人は仲良く半分こで膝枕をしてくれていた。後頭部に当たる柔らかい太腿の感触が非常に気持ちいい。さっきまで受けたダメージが全部癒えていくみたいだ。

「助かったんだな……俺達」
「はい。かなりギリギリのタイミングでしたけど。私が…元素吸引アブゾーブで周囲の風の力を取り込んで――」
「私の剣に纏わせたのだよ。浮遊荷台ホヴァーコンテナとしてな」
「あとは二人でそれに乗ってから――」
「落ちていくマスターを拾いに行ったというわけだ」

 そう言って、自慢げにリファとクローラは剣と首輪を指さした。
 すげぇ無茶苦茶な策だな……まぁ助かったから、終わりよければすべてよしなんだけど。

「マスターこそ、お見事だったぞ、まさか私達ごと空中に打ち上げるなんてな。いやはやとんだ気さくを考えつくものだ」
「はい。それに最後の一撃。正確にコアに命中させるなんて。騎士でも一目置く程の腕前でした。拍手パチパチ、なのですよご主人様」
「はは……どうも」

 俺は苦笑しながら礼を言った。
 起き上がろうとするが、頭が動かない。完全に体力限界値越えちまったみたいだな。本当に辛勝中の辛勝、といった成果だ。

「ご主人様は少し休んでてくださいな。あまり無理に動かないほうがいいです」
「そうだぞ。マスターは騎士ではないのだから、そんなに無茶をすると身が持たんだろう。いいからおとなしくしてろ」
「ああ、そーする」

 俺は目を閉じて、もうしばらくこの心地よいW膝枕の世話になることにした。
 本当に疲れたし、死ぬかと思った。何から何まで不可思議の連続。本当に現実だったのかよと今でも疑ってる。
 でも、もう気にする必要はないか。三人共こうして無事で生きてる。それだけで十分だ。

「長かったけど、ようやく終わったな」
「何を言ってるんですかご主人様」

 クローラが俺の頬にそっと手をあてがった。

「終わりなんかじゃありませんよ、ご主人様」
「ああ。これから始まる・・・んだぞ、マスター」

 今度はリファが俺の顎を優しく撫でてくる。
 非常に心地よい感覚を味わう中で、俺は二人の意図を理解した。

 そっか、そうだよな。

 この夜が明けても……俺達はずっと一緒にいられる。明日も、明後日も、その次の日も。ずっと。
 だってそれが……三人全員の願いなのだから。
 だからこれはゴールではなく、スタート地点。

「ああ。始めようクローラ、リファ。俺達の、新しい関係を」
「はい、ご主人様」
「うむ。心得たぞ、マスター」

 壁を乗り越え……本当の自分を打ち明けて、俺もクローラもリファも歩きだそうとしている。その先に待つ、新しい日常に向かって。
 本当の幸せな日々は……今この瞬間から始まりを迎えたんだ。


 もうただの同居人ではない。
 俺達は……最高の恋人同士単語パートナーだ。


「ご主人様」
「マスター」
「ん? なんだ?」


 俺の同居人改め、恋人であるクローラ・クエリとリファレンス・ルマナ・ビューアは、そう言ってふいに俺の両手を片方ずつ取ってしっかりと握った。
 もう離さない。そんな強い意思がぬくもりと共に伝わってくるような気がした。

 そんな優しい二人の手を俺もしっかりと握り返すと、彼女達は耳元に口を近づけて囁いた。
 最高に可愛い笑顔で、最高に美しい声で、最高に幸せな一言を。





「「大好き」」
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