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レベル5.女騎士と女奴隷と告白
11.女騎士と女奴隷と変わらないもの
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11.女騎士と女奴隷と変わらないもの
後日談。というか今回のオチ。
あれから数日後。
俺達は再び呆れるほど平和な日常を送っている。
だけど、そこには少なからず変化が生じていた。
「ただいまー」
バイトを終えて帰宅した俺は、家の鍵を開けて玄関に入る。
ここで早速その変化の一端が顔を見せた。
「おかえりなさい、主くんっ!」
そんな明るい声とともに廊下に飛び出て出迎えてくれたのは、二十歳くらいの女の子。
肌にエプロンという非常にエロティックな格好、でもそれを全く恥ずかしがる素振りも見せず、元気いっぱいな笑顔でこっちに走ってくる。
俺はそんな彼女に軽く手を上げて応じる。
「ただいま、クローラ」
クローラ・クエリ。
異世界の帝国、ワイヤードから転生してきた女奴隷。
その正体は、初代帝王の一族の末裔であり。キカイという技術の発明者でもあり。未曾有の大戦争を引き起こした大罪人として奴隷に落とされた悲劇の人物でもある。
そんないくつもの顔を併せ持つ彼女だったが。
転生後の今では……普通の可愛い女の子。
そして、俺の大切な恋人さん。
「ずいぶん今日は遅かったですね」
「そーなんだよ。なんでも昨日有名なブロガーがうちの店のこと記事に上げてたみたいで、急にお客さんがどっと押し寄せてきてさ。マジでてんやわんやだったよ」
「まぁ、それは大変でしたね」
クローラはそっと俺の肩掛けカバンを受け取ったかと思うと……。
何も言わずに目を閉じてそのまま直立不動。
どうやらしきりに何かを待っている御様子。さてさてそれはなんなのか。
ちょっと放置してみたものの、本人は微動だにせず今か今かと期待してるオーラを静かに振りまいていた。
観念した俺は、膝を曲げて目線を合わせる。そして彼女の頬に軽く手を添えて……。
ちゅ。
と、軽く唇を合わせた。
瞬間、クローラはまるで白雪姫のように閉じていた眼を開け、自らを眠りにつかせた林檎みたいに顔を真っ赤に染めた。
「本日もお疲れ様です……主くん」
「……ああ」
お帰りのキス。
バイトから帰ってきたときの日課。最初は本当にドギマギしっぱなしだったが、今はもうだいぶ慣れた。
昔は帰っても薄暗い廊下が広がるだけだったのに、今ではこうされないと家に戻ったって感じがしないや。
「……」
「? どうしました、主くん?」
「いや……」
口ごもっていると、クローラが怪訝そうに訊いてきたので、俺は彼女の胸から顔を離して言った。
「その、主くんって呼び方……」
「ああ、これですか」
主くん。
今までの「ご主人様」呼びを変えてみようということで、クローラが新しく考えた呼び名だ。
結構あれこれ悩んでたみたいだけど、無事に決定したようだ。
「もしかして……お気に召しませんでしたか?」
「いやそんなことないよ。ただ、すごく新鮮だなーって」
ご主人様から、主くん、か。
確かに以前よりはフレンドリーにはなった。とはいえ、奴隷と主人の関係から脱却しようぜという試みとしては些かどうーなのよ、と最初思いはしたけどね。
「確かにそうでしたけれど、私思ったんです。二人の関係がステップアップしたからこそ、この呼び方にすべきだと」
「というと?」
「今までの私は奴隷であったこと、そして今はこうして気軽に呼ぶことができる恋仲であるということ。過去から今の間で距離が縮まり、親愛が深まったということが実感できるのですよ」
そう自慢げにクローラは、その場でくるりと回る。
わかるようなわからないような解釈だが、本人が満足そうならそれでいいか。
「それでは、このままずっとこう呼んでいいですか?」
「もちろん」
笑顔で頷くと、クローラは本当に嬉しさを抑えられないというふうに俺の胸に飛び込んできた。
「えへへ。主くん、主くーん!」
「ちょ、おいおい……」
飽き足らないのか、俺の胸板に顔をうりうりと押し付けて連呼しまくるクローラさん。
さっきは母性あふれる包容系女子っぽかったのに、急にただの甘えんぼさんになっちまいよって。
「別にいいじゃないですか、それでも」
「んあ?」
「これからはお互い気兼ねなく接する間柄。私がこうして主くんに甘えるのは何らおかしいことではないでしょう?」
「自分でそれ言うかふつー?」
「もちろん。それに主くんだって――」
彼女の顔が、胸から首筋を這うようにして耳元までやってくる。
熱い吐息とともに、とろけそうな囁き声が俺の耳管を通って鼓膜を震わせた。
「これからは、私にもいっぱい甘えていいんですよ」
「……」
「今までずっと主くんは私達に保護者みたいに尽くしてきてくれて、私達は限りなくそのお世話になってきました。でも逆にあなたの方は、誰にも弱音を吐けずにいつも頑張ることしかできなかった……」
でも、とそこで言葉を切り、俺の後頭部に手を回すと、自分の胸に優しく抱きかかえてくれた。
ふんわりとした、天にも昇るような心地よい感触が顔中いっぱいに広がった。
「これからは疲れたときとか辛いことがあったときは、遠慮なく仰ってくださいませ。たっぷり癒やして差し上げますから」
「……ありがと」
甘えていい……か。
一人暮らしから、異世界人を世話する教育係。確かに心の拠り所みたいなもんはなかったな。
別にそれが嫌ってわけじゃないし、つらかったわけでもない。頼られるのだって悪い気はしなかった。
けどこうされていると、なんだか母親に抱かれているような気分になって……段々とそーゆう欲求が芽生えてくるっつーか……。
……よく、わかんないけど。
「クローラ?」
「はい、なんですか」
俺は、彼女の柔らかい胸にうずまったまま素朴な思いを呟く。
「も少し、このままでいい?」
「もちろんですとも」
即答。そしていたわるようにクローラの温かい手が俺の髪を撫でる。一本一本の指が頭を往復するたびに少しずつ疲れが取れていくような気がした。
そっか……別にいいのか、こんなんでも。異世界人を養う身として、弱気でいちゃいけないと随分ええかっこしいでいたけど、もうこれからはそんな気を使う必要もないんだ。
全身を駆け巡る快楽の中、そのまま徐々にまどろみの世界に足を突っ込みかけた矢先である。
「マスターッ!? 帰ったのかー!?」
リビングの方から聞こえてくる怒鳴り声に、俺は現世に意識を呼び戻された。
な、なんだ一体?
「マスター!? いるなら至急こちらに来てくれ! 頼む!」
ものっそい切羽詰まったような口調で、声の主はしきりに俺を呼んでいる。
仕方ない、名残惜しいけどここまでのようだな。
俺はクローラから離れると、小走りでリビングへと通じるドアを開放。見慣れた我が家の内装が目の前に広がる。
「おお、マスター! 帰ったか!」
声がした方を見ると、リビングと隣接するカウンター型キッチンの奥に彼女がいた。
まるで金塊を引き伸ばしたのかと見紛うほどまばゆい金髪をポニーテールにして、サファイアを義眼にしてるのかと思うほどの碧眼。日本人とは何もかもがまるで違う顔立ちの若い女性。
そんな人物が、コンロの前でフライパンとフライ返しを両手にせわしなく炒め物をしている。ジュージューと油の弾ける音が激しい。大声だったのはそのせいか。
俺は彼女と同じくらい大声で返事を返した。
「ただいま、リファ!」
リファレンス・ルマナ・ビューア。
クローラと同じく、異世界ワイヤードからやってきた女騎士。
幾多もの戦場を駆け、剣を振るい、国の繁栄と名誉のためにその身を捧げてきた若き戦士。
けどこの世界に転生した今では、そんな戦いからは無縁の生活を送る普通の女の子。
そして……俺のもう一人の恋人さん。
クローラと同じ、守るべき大切な人。
「すまんマスター、今手が離せないから……」
「お、どうした?」
何か取って欲しい調味料でもあるのかな?
俺は急いでキッチンに入り、彼女の隣に寄り添う。フライパンの中では美味しそうなニラレバ炒めが踊っていた。
彼女の特技は料理。戦場では炊事係もやっていたようで、腕はなかなかのもの。今では立派な食事係要員として日々の暮らしを助けてもらっている。
「炒めものもすっかり板についてきたな!」
「ああ、転生して初めて知ったこの調理法……結構コツがいるけど慣れると楽しいしな。ところで――」
「おうよ。えっと、要るのは塩か? それとも――」
胡椒か? と言おうとしたが言えなかった。
なぜなら。
「んっ……」
喋るための口が塞がれてたからだ。
他でもない、リファの唇で。
不意打ち。この世の誰もこんなことをしてくると予想できまいと断言できるくらい不意打ちだった。
しばらく動けず、ただひたすらに女騎士の口吻を受けるのみな俺。
バランスを崩し、後方へ押し倒されそうになる一歩手前でリファは口を離した。
「おかえり、マスター」
「……」
「――っとと、炒めものが焦げてしまう……」
そして平然と、まったく態度もテンションも変化なしに調理に戻る。
手渡された調味料を受け取るリアクションと何ら変わらない。されたこっちは意識が吹っ飛ぶ寸前までいってるというのに。卑怯やろ、こんなん卑怯すぎるやろ……。
「よし、これで出来上がり……。ん、どうかしたか?」
火を止めて中の料理を大皿に移しているリファは、茫然自失な俺にこれまた平然と訊いてくる。
俺はまだ彼女の感触が残っている唇を指先でなぞりながらボソボソと言う。
「いや、ちょっと……急すぎてびっくりしてさ」
「? 手が離せないから、と前置きはしたつもりだったのだが」
「そーゆう問題じゃなくて……その、こっちにも心の準備ってもんが……」
「想い人が帰ってきたんだ。ちゃんと挨拶をするのは当然だ」
小声で抗議しても、真顔でこう返してくるんだから参ったもんだ。彼女にとってはキスはもう挨拶の一環でしかないらしい。
最初は子どもができるとか言ったり、キスって言葉を聞くだけで顔真っ赤にしてたのに。随分な変わりようだ。
「いつまでも私だって無垢なままじゃないさ。そりゃあ今まで騎士だったから、世間知らずで疎い面もあったが……」
昔の青臭い過去を思い出して自虐気味に笑うリファは、今度は隣の大鍋の様子を見ながら言った。
「だが、今は違う。好きな人に尽くしたい、愛情を伝えたい、もっと触れ合いたいと思うのは、なんら恥じることのないことだとここで暮らしてきてわかった」
「リファ……」
「そして私とマスターは恋人同士……もう遠慮はいらん関係のはずだろう? 何を気にすることがある」
「お前、それ色々と誤解生む発言だぞ。相手が俺じゃなかったら何されるか――」
「別に誤解したっていいぞ」
「へ?」
鍋の中のビーフシチューをお玉でかき混ぜる女騎士様は、呆気にとられる俺を見ると悪戯っぽく笑った。
「今更破廉恥とかふしだらとか喚くつもりはない。あの頃はまだ、昔の職業柄でそういうことにはあまり良いイメージもなくて、必要以上に忌避してただけだ。だがもう私は騎士ではないからな。告白をして、恋人になって、そして初めてマスターと結ばれたときから」
「えらく吹っ切れたもんだな」
「気にしなくても未練は無いぞ。戻れなくていいし、戻ろうとも思わない。もう私は身も心も全部マスターのモノだ。むしろ遠慮なんかしてほしくないというか……」
感慨深そうに言うとリファはかき混ぜる手を止め、俺の方をちらりと一瞥して。
「だからその、したいのなら……全然構わないからな?」
……。
「な、何を笑ってる?」
「いや。お前変わったなーって」
「は? だからさっきからそう言ってるではないか」
「そうじゃなくてさ」
価値観とか、考え方が変わったのはわかってる。
でも、中身が変わると人間振る舞いや印象も違って見えるんだなと思ったのだ。
まぁ、要するに。
「すごく、かわいくなった」
「!」
凛々しかったあの頃の彼女が、こんなにも女の子らしく見えるなんて。
こうなる前から彼女のことは意識してたし、だからこそ告白までしたわけだけど。
こういうの見せられたら、ますます好きになるじゃねーかよ……。
「ます、たー……」
リファはその言葉でようやく心が揺らいだのか、お玉を持ったまま氷のように固まる。でも顔はゆでダコのように真紅に染まっていた。
自分で言ったことに照れくささを覚え、まともに彼女の顔が見られなくなった俺は目をそらす。
その瞬間。
かぷっ。
と首筋に小さな痛覚が走った。
驚いて背後を振り返ると、そこにはいつの間にか忍び寄っていたクローラが俺に抱きつき、首元から肩にかけて軽く歯を立てていた。
「もう、ずるいですよ主くんもリファさんも」
かぷかぷと数回俺へ甘噛み攻撃を食らわせた彼女は、頬を膨らませながら俺達を恨めしそうな目で見て言う。
「忘れてないですか、私達は『三人で』恋人なんですよ?」
「お、おう。ごめんよ」
さっきの「リファももう一人の恋人さん」という文面でもうおわかりかと思うが、俺達はそういう関係である。
客観的に見れば俺が二股かけてるクソ野郎なだけなのだが……ここは批判覚悟で否定させてもらう。
つまり、
リファ&クローラ love 俺
という構図ではなく、あくまで全員が全員のことを好き合っている関係というわけ。
え、何? よくわからない? 確かに言葉じゃ上手く説明できないけど、要はこういうことだ。
「忘れてないぞクローラ! お前のことも大好きに決まってるだろ!」
「わひゃ、ちょ、リファさん!?」
「ふふ、ヤキモチ妬きおって憂い奴め。おのれ可愛がってくれるわ」
「んもう~! 妬いてませんってば! こっちもお返しですっ!」
二人でくんずほぐれつ。ほっぺた引っ張ったり、腋をくすぐったり、胸を揉んだり……。
めっちゃ仲良し。もう百合を越えて、レズまでいっちゃいそうなほど仲良しであった。
俺がどっちかに決められないから二人と付き合いたいと言ったのは確か。だけど決して彼女達はそれ妥協してこんな関係でいるわけではない。
正真正銘、この二人同士も懇意である。正確には「懇意になろうとしている」状態だ。
最初に言っておくと、クローラとリファはかーなーりー、仲が悪かった。
というのも、互いに「自分に無いものを持ってて羨ましい」という憧れとひがみから来るコンプレックスが原因だったようで。
でも、それで相手を弾き出したとしても幸せにはなれない。ただ両者共に傷つくだけと二人は気づいた。
だから羨むのではなく好きになれば、全員が幸せになれる……というのが彼女らが出した結論だ。
そんなわけで、あの日から二人は本当に仲睦まじくじゃれ合う毎日を送っている。
「今日も仲良し計画は絶好調みたいだな、ご両人」
「ああ。だが完璧には程遠い。もっとクローラのいいところを知って、今以上に好きになれるように努力せねば」
「わ、私だって……まだリファさんには私の知らない素敵なところがあるはずです。それを全部見つけて、もっともーっと好きになるんですから!」
と誇らしげに言った二人は、顔を見合わせて天使のような笑顔を飛ばし合う。
「「ねー♪」」
微笑ましいな。と、彼女達のそんな様子を見て俺はつくづく思うのだった。
誰も傷つくことのない、全員が幸せになれる、そんな関係。
決して切れることのない絆で結ばれている。それが今の俺達だ。
後悔なんてしてないし、これからもずっとこうして一緒に生きていくつもりだ。
だってこんなにも、二人のことが愛おしいのだから。
「おっとそうだ、料理の途中だった」
「あやや、そうでしたね」
とまぁそんなイチャイチャ劇場もそこそこに、二人は仕事である家事にいそいそと戻るのであった。
「マスター、よければこのビーフシチューを味見してはもらえないか? クローラが作ってくれたんだ」
「あ、そっちはクローラのだったんだ。結構美味そうにできてるじゃん」
「えへへ、ありがとうございます主くん。昼間から下ごしらえとか頑張ったんですよ?」
照れくさそうに言う女奴隷さんは、さっと小皿にシチューをよそって俺に手渡してくる。
ホクホクの人参に、柔らかそうな牛肉、ゴキブリの死骸など、具材がごろごろ入ってて非常にボリューミー。なんか硫黄みたいないい香りもするし、こりゃ絶品の予感。
「じゃあ、いただきます」」
一礼して受け取った皿を傾け、俺はそのクローラの手料理を口に含んで飲み込んだ。
「ど、どーでしょうか!?」
「うん」
すごいな。
見た目からはまったく気づかないヘドロみたいな食感と、舌の味覚細胞が全部死滅するほどの謎の刺激。ボリボリザクザクと、およそ全く煮込めてない具材の歯ごたえ。飲み込もうと思ってもベットベトのデロッデロで喉越し完全ブロック。全てがこびりついて永久にそこに残留すること間違いなしだ。それだけにとどまらず、生臭さが口と喉を通して全身を蝕み、身体中の神経という神経を麻痺させていく。それによって脳みそがファンタふるふるシェイカーされ、練れば練るほど色が変わって最悪の場合死に至る。
以上、命を代償にした感想でした。でもあいにくそれを全部口に出せるほどの余裕はないので手短にこうまとめる。
「すごく個性的な味だね」
「でしょう? 新鮮なじゃがいも、人参、牛肉、玉ねぎとゴキブリはもちろんのこと。味付けに唐辛子一瓶とわさび一本でパンチを利かせ、マイルドさを出すために歯磨き粉イチゴ味とバナナの匂いつき消しゴム。鮮やかな色を出せるように茶色と赤色の絵の具。そして香りを際立たせるため、温泉の素とトイレの芳香剤をひとつまみ入れてみました!」
「そっかぁ……」
新鮮どころか完全に腐ってるし。パンチを利かせるっていうか物理的にパンチ食らった気分だし。マイルドさと言うが消化難易度はベリーハードだし。鮮やかな色ったって俺の顔色は真っ青だし。香りといってももはや俺の死体の臭いが際立ちそうだし。
さてこれどうツッコめばいのかなぁ。
「なんだマスター、うずくまって呻き声を上げるほど美味かったか。よかったなクローラ」
「はいです!」
チミ達まさかとは思うけど共謀してボクの保険金狙ってたりしない? ちなみに入ってないよ? ていうか生命保険って未だに殺人の動機にしか使われないものだとばかり思ってるよ?
「随分……色んな物入れたんだね。エキサイティングな試みじゃないか」
「はい! リファさんが料理は一種の芸術だと教えてくださったので!」
「うむ。料理も芸術も独創性がモノを言うからな」
なるほどなぁー。通りでボクのお腹ん中がキュピズムになってるわけだ。はよ何とかしないと肛門がゲルニカしちゃうやばいやばい。
「ほほう、つまりこれぞ『芸術は爆発』というやつなのですね! 初挑戦でここまで真価を発揮できるとは思いもよりませんでした」
爆発してるのは君の頭なんだよなぁ。ふざけてっと印象派のルノワールと融合させてクロノワールにすんぞ。シロノワールがオワコンになってコメダ珈琲もびっくりだぞセザンヌ。
「くそ、やばい吐きそう! う~トイレトイレ!」
今トイレを求めて全力疾走しているボクは大学に通うごく一般的な男の子。強いて違うところを挙げるとすれば――今にも死にかけてるってとこカナ。
沸き立つ吐き気を必死に抑え、トイレのドアを開放。
そして待ち構える便器の口に身の内に溜まる穢れを全て放出しようとした。
のだが。
「クローラァァァァ!! またオメー便器に紙詰めて遊んだなぁぁぁぁぁぁ!!!」
はいその通り、いつぞやと同じくそこにはこんもりとトイレットペーパーの山が建立されていた。
便意がある時にトイレが使われていたのとは似ても似つかぬ絶望。トイレの神は我を見放したか。紙だけに。
「違いますよ主くん。今日はアレを新調してきたので、その効果を試そうと思ってやったんです」
悪びれるどころか、不満げに犯人は言って廊下のクローゼットから何かを取り出す。
それは誰もが知ってるトイレが詰まったときの御用達。ラバーカップであった。
「前にこれを主くんが使って見せてくれた時は本当に驚きました。あれだけの状態から一気に元通り……素朴な作りなのになんて画期的な発明なのでしょうと」
「だから!?」
「ですが過信は禁物。いくらこれでも解決できる限度というものはあります。なので一体どのくらいのつまり具合までならこの道具が通用するのかと気になりまして」
「わざわざつまらせては直すを繰り返したと!?」
「はい! すごいですよ、ここまでやってようやくうんともすんとも言わなくなりました!」
「本 末 転 倒 っ て 知 っ て る ぅ!?」
ちっきしょう! 余計なことしやがってからに。トイレが封じられたらどこに行けばいい!? バケツとかを探す暇はない……だったら!
「風呂場っっ!」
あそこには洗面器もあるし、水場もある。背に腹は代えられない。急いで突入だ!
と思って洗面所に入った瞬間。
第二の絶望が俺を襲った。
「リファぁぁぁぁぁぁぁぁ! 洗濯機がまた泡吹き出してんぞテメェ何しやがったぁぁぁぁぁ!?」
はいその通り。洗面所はすでに泡で満杯。ドアを開けた瞬間にどばぁーって廊下に一気に流れ出てきて、それ見た瞬間にもうパーンってなりましたね、頭が。まさに現代に蘇ったバブル時代(物理)。
しかしリファ容疑者は全く動じることなく、ニコニコと事の次第をのんきに釈明。
「んー? あぁ今日は結構汚れの強い衣類を選択したからな。普通の量じゃ落ちんだろうと思って」
「つまり前の反省から何一つ学んじゃいねぇってことかよ!?」
「失敬な。もう洗剤を一箱まるまるぶち込むような真似などしないさ。あの時は流石に度が過ぎていたと思っているよ」
なので、とそこで区切ると女騎士様は自信たっぷりにドヤ顔で言った。
「腹八分目に医者要らず、ということで前回の八割程度の量に留めておいたぞ!」
「そーゆう問題じゃねぇぇんだよこのどアホぉぉぉぉ!!」
何が医者要らずだ! めっちゃ必要だよ、オメーの頭のな!!
最悪だ。とにかくこの泡を越えて風呂場にたどり着かなくては! 冗談抜きでもう限界だっつの!
えっさほいさと泡を手ですくっては外にかき出し、なんとか動線を確保する。
よし、これでOK。今度こそ……!
と勝利を確信し、扉をぶち開けるとそこには……。
真っ黒に焦げた風呂場がありましたとさ。
「ゔぉええええええええええ……」
吐いた。
目的地についたという安堵感とこの惨状によるショックのダブルコンボで全部吐いた。
火事現場の跡地かと思うほどの見るに堪えない有様。出かける前の影も形もない。風呂場じゃなかったらガチで家全焼待ったなしだ。
トイレ、洗面所、そして風呂。
全滅である。繰り返す、全滅である。
清々しい気持ちで帰ってきて、何だこのRPGのラスダンでよく見る過去のボスラッシュ!? 冗談じゃねぇし心が折れそうだよマジで!
「おいこら異世界コンビぃ!!」
怒号を上げて彼女らを呼びつけると、主犯格二人は面倒臭そうにやってきた。
「なんなのださっきからギャーギャーと――うっわ、こんなところで嘔吐とか……汚いぞマスター」
「ちゃんと自分で掃除してくださいよ主くん……」
お前ら、この状況で最初に目に行くところが俺のゲロか? このまっ黒焦げバスルームは無視か? おい。この悪夢の再来を説明しろやい今すぐ。
詰問すると女騎士はぺろっと舌を出して、
「いやー、もう一度いずぞやの牛乳風呂がやりたくなってな」
「原因まったく一緒じゃねぇぇぇか畜生!!」
「いえいえ違いますよ主くん。今回はちゃんと普通のお風呂に牛乳パック一本分だけで作りましたよ?」
「火事現場を作り出した経緯を話せと言うとんのだがなぁ!?」
「それはもちろん、腐敗させないためです」
「あぁん?」
わけのわからん言い訳に眉をひそめていると、リファは人差し指を一本立てて偉そうに語る。
「前回学んだのは、牛乳を常温で放置しておくと腐ってしまうこと。そして腐敗した後に殺菌しても意味がないということだ。だったら答えは一つ」
「作ってからすぐに炎で焼き払えば万事解決、というわけで」
「それで前と同じ結果になったら意味ないでしょぉぉぉぉ!」
プラトーンのラストシーンみたく跪いて両腕を上げる俺。だが二人はそんなことは全く気にしてない様子。まさに対岸の火事ってか? 対岸の火事ってか!?
「まぁまぁ、そうカッカしなくてもいいではないか別に」
「はい。短気は損気ですよ、主くん」
それ元凶たるお前らだけは言っちゃいけないセリフなんですがねぇ!
なんでそんなお気楽でいられんの? なんでここまでしといてニコニコ笑ってられるの? ねぇ?
「それはもちろん、マスターがいるからだ」
「はい、主くんからいるからこそです」
「ひょ?」
一瞬何を言われたのか理解できない俺に彼女達はすまし顔で続けた。
「どんなに困ったときでも、マスターは私達を助けてくれる。どれだけ怒ったとしても、最後には笑って許してくれる優しさがあるからこそ」
「私達も主くんのためにいっぱい頑張ろうって思えるんですよ? 義務感とかではなく、一人の人間として」
ん? んん??
「共依存、というわけではないが……こうして互いの悪いところはいいところで補っていく。そういうものではないのか、恋人というのは」
「そうですね。無理して自分をよく見せる必要などない。主くんには、私達のありのままを曝け出せるのですから」
「私はそんなマスターが大好きだぞ♥」
「クローラもです♥」
ちょっと待ってちょっと待ってタンマタンマ。
おい、これなんかいい感じにまとめて終わろうとしてない? これそういう問題じゃないよね? そんな精神論で片付けられる話じゃないよね? もしもーし?
「というわけで私達は料理に戻るから、片付けは任せたぞマスター」
「頑張ってくださいね主くん、特製ビーフシチューが待ってますよ~」
「ちょ、待てこら……うぉい、うぉーーーい!」
急いで引き留めようとするも、二人はさっきのような仲良しムードで俺を放置して行ってしまう。追いかけようにも、さっきの特製ならぬ毒性シチューがさらに腹へと追い打ちをかけてきた。
焼き焦がされ、ゲロがぶちまけられた風呂場で一人残された俺はその場でのたうち回る。
ああ、やっと理解した。
あれから確かに俺達の日常は色んなものが変わった。
だけどたった一つ。全くと言っていいほど変わってないものがあった。
ぶっちゃけ、一番彼女ら自身に変えてほしかったものだったのだが。結局、それだけはいつもと同じであったようだ。
その事実を憂い、憤り、怒る俺はその偽りのない率直な気持ちを叫び声に変えた。
「このポンコツどもがあああああああああああ!!!」
リファレンス・ルマナ・ビューア。
クローラ・クエリ。
異世界の女騎士と女奴隷は……今日も相変わらず、ポンコツだったとさ。
後日談。というか今回のオチ。
あれから数日後。
俺達は再び呆れるほど平和な日常を送っている。
だけど、そこには少なからず変化が生じていた。
「ただいまー」
バイトを終えて帰宅した俺は、家の鍵を開けて玄関に入る。
ここで早速その変化の一端が顔を見せた。
「おかえりなさい、主くんっ!」
そんな明るい声とともに廊下に飛び出て出迎えてくれたのは、二十歳くらいの女の子。
肌にエプロンという非常にエロティックな格好、でもそれを全く恥ずかしがる素振りも見せず、元気いっぱいな笑顔でこっちに走ってくる。
俺はそんな彼女に軽く手を上げて応じる。
「ただいま、クローラ」
クローラ・クエリ。
異世界の帝国、ワイヤードから転生してきた女奴隷。
その正体は、初代帝王の一族の末裔であり。キカイという技術の発明者でもあり。未曾有の大戦争を引き起こした大罪人として奴隷に落とされた悲劇の人物でもある。
そんないくつもの顔を併せ持つ彼女だったが。
転生後の今では……普通の可愛い女の子。
そして、俺の大切な恋人さん。
「ずいぶん今日は遅かったですね」
「そーなんだよ。なんでも昨日有名なブロガーがうちの店のこと記事に上げてたみたいで、急にお客さんがどっと押し寄せてきてさ。マジでてんやわんやだったよ」
「まぁ、それは大変でしたね」
クローラはそっと俺の肩掛けカバンを受け取ったかと思うと……。
何も言わずに目を閉じてそのまま直立不動。
どうやらしきりに何かを待っている御様子。さてさてそれはなんなのか。
ちょっと放置してみたものの、本人は微動だにせず今か今かと期待してるオーラを静かに振りまいていた。
観念した俺は、膝を曲げて目線を合わせる。そして彼女の頬に軽く手を添えて……。
ちゅ。
と、軽く唇を合わせた。
瞬間、クローラはまるで白雪姫のように閉じていた眼を開け、自らを眠りにつかせた林檎みたいに顔を真っ赤に染めた。
「本日もお疲れ様です……主くん」
「……ああ」
お帰りのキス。
バイトから帰ってきたときの日課。最初は本当にドギマギしっぱなしだったが、今はもうだいぶ慣れた。
昔は帰っても薄暗い廊下が広がるだけだったのに、今ではこうされないと家に戻ったって感じがしないや。
「……」
「? どうしました、主くん?」
「いや……」
口ごもっていると、クローラが怪訝そうに訊いてきたので、俺は彼女の胸から顔を離して言った。
「その、主くんって呼び方……」
「ああ、これですか」
主くん。
今までの「ご主人様」呼びを変えてみようということで、クローラが新しく考えた呼び名だ。
結構あれこれ悩んでたみたいだけど、無事に決定したようだ。
「もしかして……お気に召しませんでしたか?」
「いやそんなことないよ。ただ、すごく新鮮だなーって」
ご主人様から、主くん、か。
確かに以前よりはフレンドリーにはなった。とはいえ、奴隷と主人の関係から脱却しようぜという試みとしては些かどうーなのよ、と最初思いはしたけどね。
「確かにそうでしたけれど、私思ったんです。二人の関係がステップアップしたからこそ、この呼び方にすべきだと」
「というと?」
「今までの私は奴隷であったこと、そして今はこうして気軽に呼ぶことができる恋仲であるということ。過去から今の間で距離が縮まり、親愛が深まったということが実感できるのですよ」
そう自慢げにクローラは、その場でくるりと回る。
わかるようなわからないような解釈だが、本人が満足そうならそれでいいか。
「それでは、このままずっとこう呼んでいいですか?」
「もちろん」
笑顔で頷くと、クローラは本当に嬉しさを抑えられないというふうに俺の胸に飛び込んできた。
「えへへ。主くん、主くーん!」
「ちょ、おいおい……」
飽き足らないのか、俺の胸板に顔をうりうりと押し付けて連呼しまくるクローラさん。
さっきは母性あふれる包容系女子っぽかったのに、急にただの甘えんぼさんになっちまいよって。
「別にいいじゃないですか、それでも」
「んあ?」
「これからはお互い気兼ねなく接する間柄。私がこうして主くんに甘えるのは何らおかしいことではないでしょう?」
「自分でそれ言うかふつー?」
「もちろん。それに主くんだって――」
彼女の顔が、胸から首筋を這うようにして耳元までやってくる。
熱い吐息とともに、とろけそうな囁き声が俺の耳管を通って鼓膜を震わせた。
「これからは、私にもいっぱい甘えていいんですよ」
「……」
「今までずっと主くんは私達に保護者みたいに尽くしてきてくれて、私達は限りなくそのお世話になってきました。でも逆にあなたの方は、誰にも弱音を吐けずにいつも頑張ることしかできなかった……」
でも、とそこで言葉を切り、俺の後頭部に手を回すと、自分の胸に優しく抱きかかえてくれた。
ふんわりとした、天にも昇るような心地よい感触が顔中いっぱいに広がった。
「これからは疲れたときとか辛いことがあったときは、遠慮なく仰ってくださいませ。たっぷり癒やして差し上げますから」
「……ありがと」
甘えていい……か。
一人暮らしから、異世界人を世話する教育係。確かに心の拠り所みたいなもんはなかったな。
別にそれが嫌ってわけじゃないし、つらかったわけでもない。頼られるのだって悪い気はしなかった。
けどこうされていると、なんだか母親に抱かれているような気分になって……段々とそーゆう欲求が芽生えてくるっつーか……。
……よく、わかんないけど。
「クローラ?」
「はい、なんですか」
俺は、彼女の柔らかい胸にうずまったまま素朴な思いを呟く。
「も少し、このままでいい?」
「もちろんですとも」
即答。そしていたわるようにクローラの温かい手が俺の髪を撫でる。一本一本の指が頭を往復するたびに少しずつ疲れが取れていくような気がした。
そっか……別にいいのか、こんなんでも。異世界人を養う身として、弱気でいちゃいけないと随分ええかっこしいでいたけど、もうこれからはそんな気を使う必要もないんだ。
全身を駆け巡る快楽の中、そのまま徐々にまどろみの世界に足を突っ込みかけた矢先である。
「マスターッ!? 帰ったのかー!?」
リビングの方から聞こえてくる怒鳴り声に、俺は現世に意識を呼び戻された。
な、なんだ一体?
「マスター!? いるなら至急こちらに来てくれ! 頼む!」
ものっそい切羽詰まったような口調で、声の主はしきりに俺を呼んでいる。
仕方ない、名残惜しいけどここまでのようだな。
俺はクローラから離れると、小走りでリビングへと通じるドアを開放。見慣れた我が家の内装が目の前に広がる。
「おお、マスター! 帰ったか!」
声がした方を見ると、リビングと隣接するカウンター型キッチンの奥に彼女がいた。
まるで金塊を引き伸ばしたのかと見紛うほどまばゆい金髪をポニーテールにして、サファイアを義眼にしてるのかと思うほどの碧眼。日本人とは何もかもがまるで違う顔立ちの若い女性。
そんな人物が、コンロの前でフライパンとフライ返しを両手にせわしなく炒め物をしている。ジュージューと油の弾ける音が激しい。大声だったのはそのせいか。
俺は彼女と同じくらい大声で返事を返した。
「ただいま、リファ!」
リファレンス・ルマナ・ビューア。
クローラと同じく、異世界ワイヤードからやってきた女騎士。
幾多もの戦場を駆け、剣を振るい、国の繁栄と名誉のためにその身を捧げてきた若き戦士。
けどこの世界に転生した今では、そんな戦いからは無縁の生活を送る普通の女の子。
そして……俺のもう一人の恋人さん。
クローラと同じ、守るべき大切な人。
「すまんマスター、今手が離せないから……」
「お、どうした?」
何か取って欲しい調味料でもあるのかな?
俺は急いでキッチンに入り、彼女の隣に寄り添う。フライパンの中では美味しそうなニラレバ炒めが踊っていた。
彼女の特技は料理。戦場では炊事係もやっていたようで、腕はなかなかのもの。今では立派な食事係要員として日々の暮らしを助けてもらっている。
「炒めものもすっかり板についてきたな!」
「ああ、転生して初めて知ったこの調理法……結構コツがいるけど慣れると楽しいしな。ところで――」
「おうよ。えっと、要るのは塩か? それとも――」
胡椒か? と言おうとしたが言えなかった。
なぜなら。
「んっ……」
喋るための口が塞がれてたからだ。
他でもない、リファの唇で。
不意打ち。この世の誰もこんなことをしてくると予想できまいと断言できるくらい不意打ちだった。
しばらく動けず、ただひたすらに女騎士の口吻を受けるのみな俺。
バランスを崩し、後方へ押し倒されそうになる一歩手前でリファは口を離した。
「おかえり、マスター」
「……」
「――っとと、炒めものが焦げてしまう……」
そして平然と、まったく態度もテンションも変化なしに調理に戻る。
手渡された調味料を受け取るリアクションと何ら変わらない。されたこっちは意識が吹っ飛ぶ寸前までいってるというのに。卑怯やろ、こんなん卑怯すぎるやろ……。
「よし、これで出来上がり……。ん、どうかしたか?」
火を止めて中の料理を大皿に移しているリファは、茫然自失な俺にこれまた平然と訊いてくる。
俺はまだ彼女の感触が残っている唇を指先でなぞりながらボソボソと言う。
「いや、ちょっと……急すぎてびっくりしてさ」
「? 手が離せないから、と前置きはしたつもりだったのだが」
「そーゆう問題じゃなくて……その、こっちにも心の準備ってもんが……」
「想い人が帰ってきたんだ。ちゃんと挨拶をするのは当然だ」
小声で抗議しても、真顔でこう返してくるんだから参ったもんだ。彼女にとってはキスはもう挨拶の一環でしかないらしい。
最初は子どもができるとか言ったり、キスって言葉を聞くだけで顔真っ赤にしてたのに。随分な変わりようだ。
「いつまでも私だって無垢なままじゃないさ。そりゃあ今まで騎士だったから、世間知らずで疎い面もあったが……」
昔の青臭い過去を思い出して自虐気味に笑うリファは、今度は隣の大鍋の様子を見ながら言った。
「だが、今は違う。好きな人に尽くしたい、愛情を伝えたい、もっと触れ合いたいと思うのは、なんら恥じることのないことだとここで暮らしてきてわかった」
「リファ……」
「そして私とマスターは恋人同士……もう遠慮はいらん関係のはずだろう? 何を気にすることがある」
「お前、それ色々と誤解生む発言だぞ。相手が俺じゃなかったら何されるか――」
「別に誤解したっていいぞ」
「へ?」
鍋の中のビーフシチューをお玉でかき混ぜる女騎士様は、呆気にとられる俺を見ると悪戯っぽく笑った。
「今更破廉恥とかふしだらとか喚くつもりはない。あの頃はまだ、昔の職業柄でそういうことにはあまり良いイメージもなくて、必要以上に忌避してただけだ。だがもう私は騎士ではないからな。告白をして、恋人になって、そして初めてマスターと結ばれたときから」
「えらく吹っ切れたもんだな」
「気にしなくても未練は無いぞ。戻れなくていいし、戻ろうとも思わない。もう私は身も心も全部マスターのモノだ。むしろ遠慮なんかしてほしくないというか……」
感慨深そうに言うとリファはかき混ぜる手を止め、俺の方をちらりと一瞥して。
「だからその、したいのなら……全然構わないからな?」
……。
「な、何を笑ってる?」
「いや。お前変わったなーって」
「は? だからさっきからそう言ってるではないか」
「そうじゃなくてさ」
価値観とか、考え方が変わったのはわかってる。
でも、中身が変わると人間振る舞いや印象も違って見えるんだなと思ったのだ。
まぁ、要するに。
「すごく、かわいくなった」
「!」
凛々しかったあの頃の彼女が、こんなにも女の子らしく見えるなんて。
こうなる前から彼女のことは意識してたし、だからこそ告白までしたわけだけど。
こういうの見せられたら、ますます好きになるじゃねーかよ……。
「ます、たー……」
リファはその言葉でようやく心が揺らいだのか、お玉を持ったまま氷のように固まる。でも顔はゆでダコのように真紅に染まっていた。
自分で言ったことに照れくささを覚え、まともに彼女の顔が見られなくなった俺は目をそらす。
その瞬間。
かぷっ。
と首筋に小さな痛覚が走った。
驚いて背後を振り返ると、そこにはいつの間にか忍び寄っていたクローラが俺に抱きつき、首元から肩にかけて軽く歯を立てていた。
「もう、ずるいですよ主くんもリファさんも」
かぷかぷと数回俺へ甘噛み攻撃を食らわせた彼女は、頬を膨らませながら俺達を恨めしそうな目で見て言う。
「忘れてないですか、私達は『三人で』恋人なんですよ?」
「お、おう。ごめんよ」
さっきの「リファももう一人の恋人さん」という文面でもうおわかりかと思うが、俺達はそういう関係である。
客観的に見れば俺が二股かけてるクソ野郎なだけなのだが……ここは批判覚悟で否定させてもらう。
つまり、
リファ&クローラ love 俺
という構図ではなく、あくまで全員が全員のことを好き合っている関係というわけ。
え、何? よくわからない? 確かに言葉じゃ上手く説明できないけど、要はこういうことだ。
「忘れてないぞクローラ! お前のことも大好きに決まってるだろ!」
「わひゃ、ちょ、リファさん!?」
「ふふ、ヤキモチ妬きおって憂い奴め。おのれ可愛がってくれるわ」
「んもう~! 妬いてませんってば! こっちもお返しですっ!」
二人でくんずほぐれつ。ほっぺた引っ張ったり、腋をくすぐったり、胸を揉んだり……。
めっちゃ仲良し。もう百合を越えて、レズまでいっちゃいそうなほど仲良しであった。
俺がどっちかに決められないから二人と付き合いたいと言ったのは確か。だけど決して彼女達はそれ妥協してこんな関係でいるわけではない。
正真正銘、この二人同士も懇意である。正確には「懇意になろうとしている」状態だ。
最初に言っておくと、クローラとリファはかーなーりー、仲が悪かった。
というのも、互いに「自分に無いものを持ってて羨ましい」という憧れとひがみから来るコンプレックスが原因だったようで。
でも、それで相手を弾き出したとしても幸せにはなれない。ただ両者共に傷つくだけと二人は気づいた。
だから羨むのではなく好きになれば、全員が幸せになれる……というのが彼女らが出した結論だ。
そんなわけで、あの日から二人は本当に仲睦まじくじゃれ合う毎日を送っている。
「今日も仲良し計画は絶好調みたいだな、ご両人」
「ああ。だが完璧には程遠い。もっとクローラのいいところを知って、今以上に好きになれるように努力せねば」
「わ、私だって……まだリファさんには私の知らない素敵なところがあるはずです。それを全部見つけて、もっともーっと好きになるんですから!」
と誇らしげに言った二人は、顔を見合わせて天使のような笑顔を飛ばし合う。
「「ねー♪」」
微笑ましいな。と、彼女達のそんな様子を見て俺はつくづく思うのだった。
誰も傷つくことのない、全員が幸せになれる、そんな関係。
決して切れることのない絆で結ばれている。それが今の俺達だ。
後悔なんてしてないし、これからもずっとこうして一緒に生きていくつもりだ。
だってこんなにも、二人のことが愛おしいのだから。
「おっとそうだ、料理の途中だった」
「あやや、そうでしたね」
とまぁそんなイチャイチャ劇場もそこそこに、二人は仕事である家事にいそいそと戻るのであった。
「マスター、よければこのビーフシチューを味見してはもらえないか? クローラが作ってくれたんだ」
「あ、そっちはクローラのだったんだ。結構美味そうにできてるじゃん」
「えへへ、ありがとうございます主くん。昼間から下ごしらえとか頑張ったんですよ?」
照れくさそうに言う女奴隷さんは、さっと小皿にシチューをよそって俺に手渡してくる。
ホクホクの人参に、柔らかそうな牛肉、ゴキブリの死骸など、具材がごろごろ入ってて非常にボリューミー。なんか硫黄みたいないい香りもするし、こりゃ絶品の予感。
「じゃあ、いただきます」」
一礼して受け取った皿を傾け、俺はそのクローラの手料理を口に含んで飲み込んだ。
「ど、どーでしょうか!?」
「うん」
すごいな。
見た目からはまったく気づかないヘドロみたいな食感と、舌の味覚細胞が全部死滅するほどの謎の刺激。ボリボリザクザクと、およそ全く煮込めてない具材の歯ごたえ。飲み込もうと思ってもベットベトのデロッデロで喉越し完全ブロック。全てがこびりついて永久にそこに残留すること間違いなしだ。それだけにとどまらず、生臭さが口と喉を通して全身を蝕み、身体中の神経という神経を麻痺させていく。それによって脳みそがファンタふるふるシェイカーされ、練れば練るほど色が変わって最悪の場合死に至る。
以上、命を代償にした感想でした。でもあいにくそれを全部口に出せるほどの余裕はないので手短にこうまとめる。
「すごく個性的な味だね」
「でしょう? 新鮮なじゃがいも、人参、牛肉、玉ねぎとゴキブリはもちろんのこと。味付けに唐辛子一瓶とわさび一本でパンチを利かせ、マイルドさを出すために歯磨き粉イチゴ味とバナナの匂いつき消しゴム。鮮やかな色を出せるように茶色と赤色の絵の具。そして香りを際立たせるため、温泉の素とトイレの芳香剤をひとつまみ入れてみました!」
「そっかぁ……」
新鮮どころか完全に腐ってるし。パンチを利かせるっていうか物理的にパンチ食らった気分だし。マイルドさと言うが消化難易度はベリーハードだし。鮮やかな色ったって俺の顔色は真っ青だし。香りといってももはや俺の死体の臭いが際立ちそうだし。
さてこれどうツッコめばいのかなぁ。
「なんだマスター、うずくまって呻き声を上げるほど美味かったか。よかったなクローラ」
「はいです!」
チミ達まさかとは思うけど共謀してボクの保険金狙ってたりしない? ちなみに入ってないよ? ていうか生命保険って未だに殺人の動機にしか使われないものだとばかり思ってるよ?
「随分……色んな物入れたんだね。エキサイティングな試みじゃないか」
「はい! リファさんが料理は一種の芸術だと教えてくださったので!」
「うむ。料理も芸術も独創性がモノを言うからな」
なるほどなぁー。通りでボクのお腹ん中がキュピズムになってるわけだ。はよ何とかしないと肛門がゲルニカしちゃうやばいやばい。
「ほほう、つまりこれぞ『芸術は爆発』というやつなのですね! 初挑戦でここまで真価を発揮できるとは思いもよりませんでした」
爆発してるのは君の頭なんだよなぁ。ふざけてっと印象派のルノワールと融合させてクロノワールにすんぞ。シロノワールがオワコンになってコメダ珈琲もびっくりだぞセザンヌ。
「くそ、やばい吐きそう! う~トイレトイレ!」
今トイレを求めて全力疾走しているボクは大学に通うごく一般的な男の子。強いて違うところを挙げるとすれば――今にも死にかけてるってとこカナ。
沸き立つ吐き気を必死に抑え、トイレのドアを開放。
そして待ち構える便器の口に身の内に溜まる穢れを全て放出しようとした。
のだが。
「クローラァァァァ!! またオメー便器に紙詰めて遊んだなぁぁぁぁぁぁ!!!」
はいその通り、いつぞやと同じくそこにはこんもりとトイレットペーパーの山が建立されていた。
便意がある時にトイレが使われていたのとは似ても似つかぬ絶望。トイレの神は我を見放したか。紙だけに。
「違いますよ主くん。今日はアレを新調してきたので、その効果を試そうと思ってやったんです」
悪びれるどころか、不満げに犯人は言って廊下のクローゼットから何かを取り出す。
それは誰もが知ってるトイレが詰まったときの御用達。ラバーカップであった。
「前にこれを主くんが使って見せてくれた時は本当に驚きました。あれだけの状態から一気に元通り……素朴な作りなのになんて画期的な発明なのでしょうと」
「だから!?」
「ですが過信は禁物。いくらこれでも解決できる限度というものはあります。なので一体どのくらいのつまり具合までならこの道具が通用するのかと気になりまして」
「わざわざつまらせては直すを繰り返したと!?」
「はい! すごいですよ、ここまでやってようやくうんともすんとも言わなくなりました!」
「本 末 転 倒 っ て 知 っ て る ぅ!?」
ちっきしょう! 余計なことしやがってからに。トイレが封じられたらどこに行けばいい!? バケツとかを探す暇はない……だったら!
「風呂場っっ!」
あそこには洗面器もあるし、水場もある。背に腹は代えられない。急いで突入だ!
と思って洗面所に入った瞬間。
第二の絶望が俺を襲った。
「リファぁぁぁぁぁぁぁぁ! 洗濯機がまた泡吹き出してんぞテメェ何しやがったぁぁぁぁぁ!?」
はいその通り。洗面所はすでに泡で満杯。ドアを開けた瞬間にどばぁーって廊下に一気に流れ出てきて、それ見た瞬間にもうパーンってなりましたね、頭が。まさに現代に蘇ったバブル時代(物理)。
しかしリファ容疑者は全く動じることなく、ニコニコと事の次第をのんきに釈明。
「んー? あぁ今日は結構汚れの強い衣類を選択したからな。普通の量じゃ落ちんだろうと思って」
「つまり前の反省から何一つ学んじゃいねぇってことかよ!?」
「失敬な。もう洗剤を一箱まるまるぶち込むような真似などしないさ。あの時は流石に度が過ぎていたと思っているよ」
なので、とそこで区切ると女騎士様は自信たっぷりにドヤ顔で言った。
「腹八分目に医者要らず、ということで前回の八割程度の量に留めておいたぞ!」
「そーゆう問題じゃねぇぇんだよこのどアホぉぉぉぉ!!」
何が医者要らずだ! めっちゃ必要だよ、オメーの頭のな!!
最悪だ。とにかくこの泡を越えて風呂場にたどり着かなくては! 冗談抜きでもう限界だっつの!
えっさほいさと泡を手ですくっては外にかき出し、なんとか動線を確保する。
よし、これでOK。今度こそ……!
と勝利を確信し、扉をぶち開けるとそこには……。
真っ黒に焦げた風呂場がありましたとさ。
「ゔぉええええええええええ……」
吐いた。
目的地についたという安堵感とこの惨状によるショックのダブルコンボで全部吐いた。
火事現場の跡地かと思うほどの見るに堪えない有様。出かける前の影も形もない。風呂場じゃなかったらガチで家全焼待ったなしだ。
トイレ、洗面所、そして風呂。
全滅である。繰り返す、全滅である。
清々しい気持ちで帰ってきて、何だこのRPGのラスダンでよく見る過去のボスラッシュ!? 冗談じゃねぇし心が折れそうだよマジで!
「おいこら異世界コンビぃ!!」
怒号を上げて彼女らを呼びつけると、主犯格二人は面倒臭そうにやってきた。
「なんなのださっきからギャーギャーと――うっわ、こんなところで嘔吐とか……汚いぞマスター」
「ちゃんと自分で掃除してくださいよ主くん……」
お前ら、この状況で最初に目に行くところが俺のゲロか? このまっ黒焦げバスルームは無視か? おい。この悪夢の再来を説明しろやい今すぐ。
詰問すると女騎士はぺろっと舌を出して、
「いやー、もう一度いずぞやの牛乳風呂がやりたくなってな」
「原因まったく一緒じゃねぇぇぇか畜生!!」
「いえいえ違いますよ主くん。今回はちゃんと普通のお風呂に牛乳パック一本分だけで作りましたよ?」
「火事現場を作り出した経緯を話せと言うとんのだがなぁ!?」
「それはもちろん、腐敗させないためです」
「あぁん?」
わけのわからん言い訳に眉をひそめていると、リファは人差し指を一本立てて偉そうに語る。
「前回学んだのは、牛乳を常温で放置しておくと腐ってしまうこと。そして腐敗した後に殺菌しても意味がないということだ。だったら答えは一つ」
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「まぁまぁ、そうカッカしなくてもいいではないか別に」
「はい。短気は損気ですよ、主くん」
それ元凶たるお前らだけは言っちゃいけないセリフなんですがねぇ!
なんでそんなお気楽でいられんの? なんでここまでしといてニコニコ笑ってられるの? ねぇ?
「それはもちろん、マスターがいるからだ」
「はい、主くんからいるからこそです」
「ひょ?」
一瞬何を言われたのか理解できない俺に彼女達はすまし顔で続けた。
「どんなに困ったときでも、マスターは私達を助けてくれる。どれだけ怒ったとしても、最後には笑って許してくれる優しさがあるからこそ」
「私達も主くんのためにいっぱい頑張ろうって思えるんですよ? 義務感とかではなく、一人の人間として」
ん? んん??
「共依存、というわけではないが……こうして互いの悪いところはいいところで補っていく。そういうものではないのか、恋人というのは」
「そうですね。無理して自分をよく見せる必要などない。主くんには、私達のありのままを曝け出せるのですから」
「私はそんなマスターが大好きだぞ♥」
「クローラもです♥」
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「このポンコツどもがあああああああああああ!!!」
リファレンス・ルマナ・ビューア。
クローラ・クエリ。
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