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レベル50.女騎士と女奴隷と新しい日々
7.悪役令嬢とワイヤード
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「なっ……」
しばらくポカンと口を開けていたエリアの顔は、徐々に鬼灯みたいに真っ赤に染まっていった。
「よ、よう」
どう反応してよいか困っていたので、とりあえず苦笑しながらそう軽く会釈した。
だが焦燥しきっている向こうはそれどころではなさそうであった。
「ちょ、なんでここに……嘘でしょ、えっと、これはその……違うくて、ただ……」
重ねたビール瓶ケースの上に立ちながら、曲芸師みたいにワチャワチャと手を振ってるゴスロリ服着たツインテの成人女性。
シュール。もうなんていうか、それ以外に言葉が出てこない。
「ふ、ふぅん。このあたしを見つけるなんてさすがね! やっぱりあなたは我が婿に相応しい男だわ!」
エリアはそう言って、無理に平静を装うも返って滑ってしまう様子を披露してくれた。
呆れたものだが、今はこいつに律儀にツッコミを入れてる場合じゃない。
「護衛もつけずに夜の街を放浪とは、ワイヤードの女帝様ってのは随分危なっかしい真似するな」
「べ、別に好きでこんなことしてるんじゃないわよ!」
今度はムキになって腕を組みながら彼女はツンと顔を背けた。
なんだ、もしかして自分だけ飲み会に誘われなかったから寂しくなってついてきちゃったりとか?
「違うってば! な、なんていうの……そう、偵察よ偵察! 我が覇道の邪魔立てをする反乱分子を叩くのにちょうどいい機会を伺ってたの!」
「反乱分子って……リファ達のことか?」
「そう。いっつもあなたにべたべたひっついてるあいつらよ。使えなさそうな騎士と、卑しい奴隷。あの二人を取り除かない限り、あたしとあなたの婚姻は結ばれないままだわ」
まるであいつらがいなけりゃ即結婚成立できるみたいな言い草ですね。毎度毎度どうしてボクの意思はないがしろにされるの?
「で、まぁ色々攻防戦を繰り広げてきたわけだけど……ようやく気づいた。もはや単純な腹の探り合いや小競り合いなど無意味。このあたしに不躾な真似をしたらどうなるかそろそろ本気で思い知らせてやらなくちゃって思ったのよ。真正面からガツーンと食らわせてやらないと」
「はぁ……」
そう言って結局なんだかんだでコケにされておしまいってのが今までの流れだったけど。何か策でも思いついたのか?
「そりゃもう、ここは酒場なんでしょ。ということは、あいつらが酔って酩酊してるところにこっそり忍び寄って寝首をかけば、そのまま二人もろとも地獄に叩き落すことができるって寸法よ!」
「思いっきり背後から奇襲かけてんじゃねーか」
もはや帝王というよりは悪代官って肩書のほうがよほどしっくりくる。執念深いというかなんというか……。
「なんでもいいの。あたしは帝王なのよ? あんな愚民どもにまともに相手する価値ないわ。それに、この魔導の力の前にはどんな奴だろうと敵じゃないんだから」
と言って、彼女はスカートの腰に下げていた革製のホルダーから何かを取り出した。
それを見た途端に、俺は目を丸くする。
禍々しい紋章が描かれた表紙が特徴的な、1000ページはありそうな分厚い書物。
間違いない、今日彼女が落とし、それを拾った俺が未來に渡した魔導書だ!
「その本……お前どこで!」
「え? どこって……何の話よ?」
「何じゃないだろ? お前、あいつに……未來に会ったのか!? あいつはどっちに行ったんだ!? 様子はどうだったんだよ!?」
「ちょ、待ちなさいよ、いきなり――きゃっ!?」
急に詰め寄る俺にたじろいだ拍子、エリアが乗っていたビール瓶ケースがぐらりと傾いた。そのままバランスを崩し、エリアの身体が限りなく真横へと近づくと共に落下運動を始めていく。下は硬いコンクリート。頭を打ったら大怪我は避けられない。
「あぶないっ!」
反射的に俺は走り出し、スライディングしながら両手を前に出して彼女の真下へと潜り込んだ。
どすん、という衝撃と。ガラガラガッシャン、というケースが崩れ落ちる音が同時にその閑散とした路地裏に響いた。
「いたたた…………なんなのよもう!」
度重なるアクシデントに耐え消れなくなったのか、そのゴスロリ少女は俺の腕の中でそう小さく喚いた。
正直そのセリフを言いたいのはこっちも同じなのだが、まぁこれは俺が悪い。
「ごめん、ちょっと焦ってて。怪我ないか?」
「まったくよ。次から次へとわけのわかんないことを……はっ!?」
ツンケンした態度でぼやいていたエリアだったが、そこであることに気づいて息を呑んだ。
あることとは何か。それはもちろん、俺達のこの体勢である。
俺が下になり、上から降ってきた彼女を抱きとめている状態。
お姫様抱っこ。
右手は太ももに。左手は背中から回って左乳にしっかりと添えられている。
とっさの行動で気づかなかったが、まさかこんなことになっているとは。
ちょっと指先に力を入れてみるとムニュッとつきたてのお餅みたいに柔らかく弾力のある感触が……。
「わっ! ごめっ!」
慌てて手を離したが、もはや触ったという事実は消せない。三秒ルールだって適用されない。
元々の元凶が俺だから『助けてやったんだから大目に見ろよ』という言い訳も通じない。ていうかそれ目当てでやっただろとか言いがかりつけられても文句は言えない。
そしてあわよくばそれをダシに強引に婚姻を取り決めさせられたりとか……。
有り得る。こいつの性格からして十二分に有り得る! くそ、ぬかった。未來を探すはずがこんなことになるなんて。ついてねぇよ。
目を固くつむり、心の中で地団駄を踏みながら、後悔の念に駆られていたが。
いつまで経ってもエリアの方からこちらの想定しているリアクションが返ってくることはなかった。
あれ、もうそろそろ……いや、とっくに怒号と罵声を浴びせられまくってもおかしくないはずなんだけどなぁ。どうしたんだろ。
と思って薄目を開けて彼女をちらっと見てみたら。
「……」
ぽやー、と。
半口を開けながらこっちを見上げてやんの。
瞬きもせずに、微かな濁りもない清純そのものといったような眼差しを向けてきている。
そのおしろいを塗りたくったような頬には、わずかに赤みが差していた。
まさかの反応。なんだこの乙女ゲーの主人公みたいな顔。黙ってるけど少女漫画だったら確実にこれポエム全開の長文モノローグ入ってるだろ、おもしれー女だ。
「あ、ありがと……」
「え? あ、うん」
お礼まで言われた。本当にさっきまでのタカビーモードが嘘のようだぜ。口では大層なことを言ってても、いざ迫られると上がっちゃうタイプってやつかね。
エリアは自力でその場から起き上がると、無言で衣服についた埃を手で叩いて落とす。そんな様子を俺はぼけーっと見つめていたのだが、さすがにそれは不審に思われたらしい。
「な、何よ。ジロジロ見て……そんなにあたしがこんな真似してるのがおかしい?」
「いやそうじゃないよ。気にはなるけど。ただ、言いふらされたくなきゃ結婚しろーとか言ってくるんじゃないかと思ってたからさ」
「はぁ? 助けてもらってそんなことするわけないでしょ」
「でも、変なとこ触っちゃったし……」
「それは……そうだけど……」
もじもじしながら指先をつつき合わせて、エリアはこもり気味に発言する。
「そりゃあ、なたはあたしの婿になる人間だから……別にちょっと触るくらい構わないわよ。それに将来的には、ちょっとどころじゃないほど……ごにょにょ」
「え? なんだって?」
「な、なんでもないわよバカッ!」
ブンブンと書物を振り回して彼女は威嚇してきた。危ないなもう。
「とにかく、何被害妄想膨らましてるのか知らないけど、そんな小悪党みたいな駆け引きはしないわ。あたしは帝王よ? 手に入れたいものはたとえ相手が誰だろうとボコる、どつく、吐かせる、もぎ取る、すなわちあたしの総取り。等価交換の必要なんてこれっぽっちもありゃしないわ」
前者が小悪党なら、キミのやろうとしていることは大悪党のそれに他ならないんですが。
こんなのが統治する帝国とか完全に恐怖政治間違いなしだろ。こいつがこいつならそれを選挙で選ぶ国民も国民だ。
「で、結局あなたはなにがしたいのよ?」
「あ、そうだ。未來を見なかったか? あいつ、さっきまで俺達と飲んでたんだけど、急に具合悪そうにして一人で帰っちゃって。心配だから追いかけてきたんだ」
「ふーん、そういうこと。通りで様子が変だと思ったわ」
「やっぱり会ってたのか!」
「ええ。さっきそこで鉢合わせした途端に、いきなりあたしにこれを押し付けてきたのよ。後のことは知らない」
魔導書を掲げながらエリアはつまらなそうに横髪をくるくるいじり始めた。自分のパートナーのことだというのに随分冷めてるな。ということをさり気なく伝えると、彼女は鼻で笑った。
「知ってるでしょ、あいつあたしのことかなり嫌ってるもの。もうお互いに最低限の干渉しかしない関係なのよ」
「気づいてたのか」
「でなきゃあたしを置いて酒場になんて来やしないし、あたしだって具合悪そうにしてたらその場で介抱したげてるわよ」
そりゃそうだ。
こいつもこいつで未來のことなんて自分の野望のための手駒程度にしか見てないとか言ってたしな。つまりお互いに冷戦状態同然ってことね。
なら、もう聞くことはないな。
「わかったよ。じゃあ俺は未來探しに行くから、お前もこんなとこにいつまでもいないで帰ったほうがいいぞ」
「探す? あいつを? 必要ないわ、放っておきなさいな」
「んなわけにいくかよ。道端で倒れちまったらどうするんだ」
「だからその可能性はないって言ってるの」
「え?」
呆けた声を出す俺に、エリアは肩を竦めて続けた。
「あいつ、ああ見えてかなり演技がうまいのよ。容態が悪いのだって、そういうフリしてるだけ。だって、あたしと会った時は全然平気そうだったもの」
「は?」
嘘……だろ?
「未來って、酒強かったのか?」
「ええ。喧嘩したりとかした時にはしょっちゅうやけ酒してたし。一晩で大瓶二、三本は普通ね。酔いやすくはあるけど、体調を崩すってことは絶対にない」
「で、でも! さっきは本当に頭抑えて苦しそうにしてたんだぞ! 仮に演技だったとしても、何でそんなことする必要があるんだよ!」
「知らないわよ、きっと何か派手にやらかして恥ずかしい思いでもしたんじゃないの? もしくは嫌なヤツに絡まれて逃げ出したかったとか。何かなかったわけ?」
「……」
ある。
思っクソある。
大勢の前で急性ヒステリー発症。
なんだよ、めちゃくちゃフリする必要あったじゃん。ってことは……単にあの場から離れたかったが故の三文芝居だったってわけか。はぁーあ。
肩の力が抜けた俺はその場にヘナヘナと膝をついた。それを見てクスクスとエリアが笑う。
「なんだか知らないけど、どうやら骨折り損のくたびれ儲けだったようね」
「いや、そうじゃないよ。ただ、よかったなって」
「え?」
「だって、結局未來に大事はなかったってことだろ。すごく心配してたから、無事で安心した」
「……」
気がつくと、エリアは目をぱちくりさせて俺を見ていた。なんだろう、また何か変なこと言ったかな?
「あなた、やっぱり面白いわね。あたしの見込んだとおりだわ」
「面白いって、何が?」
彼女は俺の問いかけには答えず、壁にもたれかかると意味深な笑みを浮かべて魔導書の背表紙を撫でた。
「それこそあたしの婿にとって相応しい素質。きっとあなたとなら元のワイヤードよりも何十倍も何百倍も面白い世界が創造できるわ」
結局その話か。なんでそこまで帝王の座にこだわるんだか。
この世界に第二のワイヤードを建国し、自らが統治すること。それが彼女の目的。
だがなぜ死後転生しても、なお王という地位を名乗りたがるのか。
ここでは王族でもなければ権力があるわけでもない。それは彼女自身よくわかってるはず。
でもまっとうに働いて自立していくという堅実な道は選ばず、貪欲に転生前から抱いていた野望へと突き進もうとしている。
よほど、それに固執する理由があるということだろう。
その理由は――。
「まさか、元の世界に未練があるのか?」
「は? みれん?」
「ああ。お前は一度ワイヤードで帝王になった。そして魔導を流通させて変革を起こすつもりでいたんだろ。でもその計画、きっと達成できなかったんだろ。なぜなら――」
「……」
「お前の死。何があったかは知らないけど、とにかく計画を推し進めている最中にお前はあの世界を去り、こっちの世界にやってきた。そうだろ?」
エリアは答えなかったが、俺からさりげなく目線を反らした。
肯定の意と受け取った俺はさらに続ける。
「本来なら、ここで生きていくために職業について、早く順応できるようにするのが務めだ。だけど、密告して、クローラの一族を没落させてまで王の地位を手に入れたってのに、早々に死んでしまった奴が簡単に気持ちの切り替えができるとは思えない」
「何が言いたいの?」
「わかるだろ。お前は王にはなったが長くは続かなかった。だからその未練故に、こっちの世界でも自分が帝王のワイヤードを続けようってことなんだろ?」
「……」
「まぁどういう生き方しようが勝手だけどさ、いつまでも過去にしがみついてたってなんにもならねぇよ。ここはワイヤードじゃないし、お前もすでにワイヤードの人間じゃない。王を僭称したって何の意味もないんだよ」
律儀に黙って最後まで俺の言葉に耳を傾けていたエリアは、肩を落として軽く息をつく。
そして。
「わかってないわね」
ため息混じりに言うと、俺の方につかつかと歩み寄ってそのレースの手袋がはめられた指先で俺の顎をくいっと軽く持ち上げた。
「いい? あたしが王座に就くんじゃない。あたしのいる場所が常に王座なの!」
「はぁ?」
「わかる? あたしが治め、統べる国がワイヤードなのよ! たとえそこが現実の世界だろうと異世界だろうと関係ない」
何だよそれ。
呆れてものも言えないが、向こうの目は本気だ。
「あたしにとってのワイヤードは国民全てが楽しめる、面白い国のこと。それが実現できるのはこのあたしだけ。すなわち、あたし以外が頂点に立つ国などワイヤードではないの。だからあっちの世界に未練なんかないし過去にしがみついてなどいない。今だって常にあたしの目には未来しか映ってないわ」
「おいおい……」
「あなただってそうでしょ、この国の暮らしがつまらないって思ってたんじゃない? あたしもよ。転生して少しは楽しめる世界に行けるのかなと高を括ってたけど、本当につまらない。代わり映えしない一日を憂いながら、毎日毎日同じことの繰り返し。自分が本当に生きているのだろうかとさえ疑うくらいに退屈だった。あたしが帝王の座に就く前の頃と全然変わらない生活よ」
……あれ?
そこで俺の頭に何かが引っかかった。
気のせいかな、全く同じセリフを誰かが言っていたような。
「やっぱり待ってても何も始まらないのはどこも一緒ね。真の面白さは享受するものじゃなく生み出すものってことよ。そうやってあたしはあっちの世界で既存の国の在り方をブチ壊した。だからあたしはこの世界でも頂点に立ち、そして創り変える。この魔導の力でね」
魔導。
彼女が発明した独自の技術。クローラが開発したキカイとは対をなすもの。
彼女達の住んでいた異世界には水道、電気、ガスといったインフラがない。
人々は周囲に存在する元素を魔具と呼ばれる容器に補完し、元素封入器を作り出してそれを各々の生活の要としていた。
キカイは元素封入器を動力源とし、人の手に依存しないスタンドアローンで機能する道具のことだ。
反対に魔導というのは、元素を直接人の体内に吸収させることで、元素封入器を用いずとも任意で溜め込んだ元素の力を使用することが可能になるというもの、らしい。
詳しいことはエリアの口からしか聞いていないのでわからないが……彼女がそれを確立させた頃には既にクローラのキカイが流通していたという。
彼女がクローラを陥れて王座を簒奪したのはその逆恨みによるものであり、いわばキカイに対するネガティブキャンペーンをやってのけたわけだ。結局その後こいつの目論見通り魔導がキカイに取って代わったのかは定かではないが。
「まぁ今に見てなさい。あたしに不可能はないんだから」
そんなことを考えている俺をよそに、エリアは鼻歌を歌いながら書の頁を開いてペラペラとめくっていた。
「ていうか前々から思ってたんだけど……その本、何が書いてあるんだ?」
「んー? これ? ふふん、気になるのね?」
ニマァ、とそのゴスロリ少女は意地悪く笑う。
「そうね、あなたとあたしで築く輝かしいワイヤードの未来が記されてる……って言ったら信じる?」
「何だそれ。てっきり魔導の使い方とか書いてあるものかと」
「もちろんそれも含めてよ。魔導の発明から、あたしがそれを使って帝王の座に付き、そしてこの世界でまた新たなワイヤードを創造する。そういうシナリオが余すところなく描かれているの。いわば――」
そこで言葉を切ると、エリアはその分厚い書物を勢いよく閉じて言った。
「予知書……といったところかしらね」
予知書。
未来の出来事が書かれた文書。
そこに記されてある出来事は、いずれ現実になるというアレか。どうにも胡散臭いけど。
「ええ、だからあなたには見せるわけにいかないの。タイムパラドックス的なことになりかねないからね」
「そーかい、そいつは残念だ」
「でも感謝してるわ、あなたが落としたこれを拾ってくれたんでしょ。あいつから聞いた。褒めてつかわすからありがたく思うことね」
偉そーに。
さっきの超絶キュートなお礼は何だったのよ。別人格か。
「あれからずっと探してたのよ。もし見つからないままだったら大変なことになってたわ。なんたってこれは、あなたとあたしの未来そのものと言っても過言ではないんだから」
「……あっそ」
そんなに大事なら落としてんじゃねぇよ、という愚痴をすんでのところで飲み込んだ。
ったく、ただの夢小説書きなぐった黒歴史ノートって言ったほうがまだ現実味のあるごまかし方だぜ。向こうも触れてほしくないみたいだし、その本にはこれ以上言及しない方が良さそうだ。
しかし、面白い世界……ねぇ。
国の頂点に君臨したいという奴は多々いるかもしれないけど、はたしてそういう目的で目指す人間はどれくらいいるのだろうか。
「どうでもいいけど、エンターテイメントだけじゃ国は成り立たないぞ。王様ならもっと経済とか国交とか、いろいろ考えるところあるでしょ」
「何言ってるのよ。何かをやってて楽しいと思える気持ちは、あらゆる発想の源。一人ひとりの独創性が国全体を動かし、活性化させ、発展させていくの。あなたの言ってるようなものはそこから生まれるただの副産物に過ぎないわ」
頭お花畑かよ、つくづくおめでたい奴だ。
と嘲笑いたくなるがそうもいかない。
だって現に彼女はそういう気持ちだけで魔導を発明したのだから。
なんというか、賛否両論になりそうな王様だよな。元の国の評判がどうだったかは知らんけど、そのための手段次第で良い方にも悪い方にも転ぶことは間違いない。
「そう不安がらなくても大丈夫。あたしは一度帝王になって世界を変えた者よ? あなたはあたしについてくればいいの。そうすればきっと輝かしい未来に辿り着けるから。それにあいつだって……」
「あいつ? 誰のこと?」
最後の方で小さく付け加えるように出てきた言葉に、俺は眉をひそめて問うた。
エリアは訊かれるとは思ってなかったのか、少し驚いたような顔をして予知書を胸に抱きしめた。
「バカね、この場であいつっていったら一人しかいないでしょ」
「……未來のことか?」
無言で彼女は首肯し、そのまま繁華街の明かりに照らされた星の見えない星空を仰ぐ。
「あいつ……いっつもつまんなそうにしてるのよね。毎日毎日、起きて食べて寝て、同じことばかり繰り返してるだけ。何の楽しみも面白みも感じてないような、人形みたいな娘。なんかまるで、ワイヤードにいた頃のあたしを見てるみたいだった」
「……」
「それでもあいつは不満も漏らさずにそれでもいいやって、この暮らしが一番幸せだと思い込んでる。自分を偽ってるっていうか」
……似てる。
俺のよく知っている人物の一人に、限りなく似ている。
自分を偽り、自分ではない誰かを演じる。本当の自分を身の内に押し込めている。
そうやって「それでもいい」という姿勢を貫き、絶望のどん底で這いずり回っていた人物が、未來の他にもう一人。
――えっと、息合うね、私達。
――心が通じ合ってる、っていうのかな。
さっき酒の席で、彼女と息を合わせるように同じ行動を取っていた健気な少女の顔が脳裏にフラッシュバックした。
……まさか、ね。
「だから、あいつにも見せてやりたいのよ。あたしの創る面白い世界をね。そうしたらあいつも、きっと楽しく毎日を生きられると思う。あんな退屈な日常を抜け出せるって」
エリアは屈託のない笑顔でそう言い、予知書の表紙を見つめた。まるでそれに彼女の顔を重ねているみたいに。
「意外だな。手駒程度にしか考えてないとか言ってた割には随分優しいじゃん」
「べっ、別にこれは……そう、褒美よ、褒美! このあたしに尽くしたのだからそれくらいは当然のことだわ!」
指摘すると、また狼狽えるように彼女はそう取り繕った。
褒美。
それはもちろん、この世界に転生してきて右も左も分からない中、色々世話してもらったことに対するものだろう。
彼女も彼女なりに、未來へ何かしら恩義のようなものを感じているということだろうか。健気な人間性を垣間見た気がする。
でも待てよ。
オリエンテーションが終わった後にも少し考察したが、エリアが転生したのは時期的に未來があのアパートに引っ越してきた日、もしくはその近日である可能性が高い。
だが、それは今日からたった数日前の話。出会ってから一週間すら経ってないのに、やや感情移入しすぎじゃないか?
この自己中極まりない人間が、特定の誰かのために何かしてやりたいと思うまでには相当な時間が必要であることは明白。時間の問題じゃなくても、二人の間にそれほど強固な絆があるとも思えない。
実際未來はエリアを嫌ってるけど、それでもかなり「慣れてる」素振りだった。
俺達が同じ転生者のパートナーだと知って、まるで自分の方が経験長いみたいな口調だったし。少なくとも数日一緒に過ごしただけではああはならないだろう。
不自然。
未來とエリア、あまりにも不自然な点が多すぎる。
「なぁエリア」
「何、あたしのお婿様」
茶化すように返事をする彼女に向けて、俺は率直な問いを投げかけた。
「お前って、いつから未來と一緒にいるんだ?」
「……」
その質問は予想していなかったのか、一瞬目を丸くしてエリアは俺を見る。
そしてそれが聞き間違いではなく確かにそう問われたということに気づき、そのまま革製のホルダーに予知書をしまうと簡潔に答えた。
「忘れちゃったわ」
「はい?」
素っ頓狂な声を上げる俺。
今度はこっちが聞き間違いかと疑う番だったが、その回答は撤回されることも修正されることもなく、彼女は背伸びをしながらこう付け足した。
「そんな昔のこと」
昔のこと。
具体的な時期は明かされなかったが、少なくとも俺が想像している時期ではないことは確かだ。
どういうことだ? だって、未來はあのアパートに引っ越す前は女子寮に入ってたはず。
まさか、一緒に同じ通信制高校に通ってたとでもいうのか? 確かにそれだと色々辻褄は合うし、死者処理事務局のことだから可能ではあるかもしれないけど……でもそんな話は一度も二人からは聞いてない。
それに、リファ達がこの世界にやってきてまだ二ヶ月程度しか経ってない。こいつが二人より後に死んだ人間なら、転生するならその間ってことになる。だがそれだとやっぱり「忘れるほど昔のこと」ではなくなってしまう。
考えられる可能性としては……必ずしも異世界での死亡時期とこちらでの転生時期は一致しないとか? 途中で死者処理事務局による手続きが入るから、その関係で多少は前後したりするんだろうか。
どっちにしても不可解すぎる。どうなっているんだ、一体。別にどうしても知る必要のあることではないとは言え、もやもやするなぁ。
「過去のことなんかいつまでも振り返っててもしょうがないわ我が婿様。さっきあなたも言ってたでしょ、あたし達は進むのは後ろじゃなくて前なのよ」
ノスタルジックな雰囲気になることもなく、エリアは腕を組んで先程までの高慢な調子に戻った。
「いい? なんとしてもあたしはあなたと婚姻を結んで、この世界に第二のワイヤードを創る。そして史上最高に面白くて楽しめる帝国として歴史を残すのよ!」
ビシィッ、と人差し指を天高く振り上げ、意気揚々に宣言する元帝王様。
「そのために、弊害となりうるものは即刻排除! 特にあの二人は早急に始末するわ。このあたしが直々にね! 今日こそ思い知らせてやるんだから!」
「いや、ちょっと」
こんなところでいざこざはよしてくれよ。と言おうとした矢先である。
エリアがさっきまで覗き込んでいた小窓からドガシャァン! と大きな物音がした。
何だと思って俺達は耳をそばだてた途端、今度は女性の棒読みに近い悲鳴が聞こえてきた。
「うわーリファっちとクロちゃんが倒れたー。センパイどうせもう戻ってこないだろうから飲めるだけ飲んじゃえと煽った結果、調子こいて二人共焼酎とワインとウイスキーまで頼んで全部ちゃんぽんして一気飲みしたらぶっ倒れてしまったー。こりゃてぇへんだー。センパイの成績は底辺だー」
あいつらぁ~、忠告無視しやがって! いや渚に子守り任せた時点で薄々こうなるってわかってたし、酔ってる奴に酔ってる奴等の世話させた俺が一番悪いけどさぁ! ていうか俺成績悪くねぇから! 前期だってフル単だったから!
んもうー、なんでこう毎度毎度面倒起こすんだよポンコツどもはー!
頭を抱える俺とは対照的に、エリアはそれを聞いて目をきらめかせながら飛び跳ねた。
「今ぶっ倒れたって言った? 言ったわよね!? なんだかわからないけどこれはもしかしてチャンスじゃない!?」
「あーそうだな」
その場にうんこ座りをして、俺は投げやりに返事を返した。
「酒に於いてあの二人には明確な臨界点ってのがある。ちょっとでも既定値を超えると一瞬でぶっ倒れてしばらく動けなくなる。最近は結構耐性ついてきたっぽいけど、さすがに飲み会終了までは保たなかったみたいだな」
「あら、自ら進んであいつらの弱点を教えてくれるとはさすが我が婿、殊勝な心がけね。よーし、これまであたしをコケにしてきた恨みつらみ、今こそ晴らしてやるわ……」
目的より私怨が上回ってんぞ。人の上に立つ者が私情最優先とは世も末だな。
そんな俺のツッコミはどこ吹く風。手を結んだり開いたりして、エリアはウォーミングアップを済ませると舌なめずりをした。
「捲土重来。このエイリアス・プロキシ・スプーフィングの魔導の力……とくと見るがいいわっ!」
カッ! と大きく赤い目を見開くと。そのゴスロリはのしのしと表道に出ていき、居酒屋のドアをさながら道場破りのように開けて威勢よく侵入していった。
そして。
「なーっはっはっっは! 覚悟しなさいこの愚民ども――」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 全員頭が高ぁぁぁぁぁい! この私を誰だと心得る! 現世に君臨せし真の王、リファレンス・ルマナ・ビューアであるぞ!!! 控えおろうーーーー!」
「おーっほっほっほっほ!! ここは養豚場かしら? 面白い光景ね、殺されるのを待つだけの豚どもが勢揃いですわ! このワイヤードの女王クローラ・クエリ・ワイヤードの余興にはちょうどいい見世物小屋ですこと!」
「ちょ、え? な、なにあんたら……え? さっき倒れてるって……」
「あぁ!? なんだ貴様、この私に頭の一つも下げんとは、まさか敵国の間者かぁ!?」
「あらあら、随分と間抜け面をした間者もいたものですわ。間者から間が抜けてるから、むしろただの『者』ね。笑止ですわぁ!!」
「いや、あの違――」
「問答無用! この王を前に無礼を働いた罪、この場で命を持って償えぇ!!」
「おーっほっほっほ!! このわたくしを楽しませられない玩具など視認する価値も無くってよ! 今すぐ消え去りなさいな!」
「ちょっと待って! 話せば分かる、話せば分か、ぎゃーーーーーっ!!! 我が婿ぉーーーー! たーーーすーーーけーーーてーーーぇぇ!!」
「お客様お客様お客様!!! 困ります! あーっ!!! 困ります!!! 店内で天翔龍閃とレールガンは困ります!!! あーっ!!! お客様!!! あーっ!!! お客様!!!」
……今日も世界は面白いなぁ。
しばらくポカンと口を開けていたエリアの顔は、徐々に鬼灯みたいに真っ赤に染まっていった。
「よ、よう」
どう反応してよいか困っていたので、とりあえず苦笑しながらそう軽く会釈した。
だが焦燥しきっている向こうはそれどころではなさそうであった。
「ちょ、なんでここに……嘘でしょ、えっと、これはその……違うくて、ただ……」
重ねたビール瓶ケースの上に立ちながら、曲芸師みたいにワチャワチャと手を振ってるゴスロリ服着たツインテの成人女性。
シュール。もうなんていうか、それ以外に言葉が出てこない。
「ふ、ふぅん。このあたしを見つけるなんてさすがね! やっぱりあなたは我が婿に相応しい男だわ!」
エリアはそう言って、無理に平静を装うも返って滑ってしまう様子を披露してくれた。
呆れたものだが、今はこいつに律儀にツッコミを入れてる場合じゃない。
「護衛もつけずに夜の街を放浪とは、ワイヤードの女帝様ってのは随分危なっかしい真似するな」
「べ、別に好きでこんなことしてるんじゃないわよ!」
今度はムキになって腕を組みながら彼女はツンと顔を背けた。
なんだ、もしかして自分だけ飲み会に誘われなかったから寂しくなってついてきちゃったりとか?
「違うってば! な、なんていうの……そう、偵察よ偵察! 我が覇道の邪魔立てをする反乱分子を叩くのにちょうどいい機会を伺ってたの!」
「反乱分子って……リファ達のことか?」
「そう。いっつもあなたにべたべたひっついてるあいつらよ。使えなさそうな騎士と、卑しい奴隷。あの二人を取り除かない限り、あたしとあなたの婚姻は結ばれないままだわ」
まるであいつらがいなけりゃ即結婚成立できるみたいな言い草ですね。毎度毎度どうしてボクの意思はないがしろにされるの?
「で、まぁ色々攻防戦を繰り広げてきたわけだけど……ようやく気づいた。もはや単純な腹の探り合いや小競り合いなど無意味。このあたしに不躾な真似をしたらどうなるかそろそろ本気で思い知らせてやらなくちゃって思ったのよ。真正面からガツーンと食らわせてやらないと」
「はぁ……」
そう言って結局なんだかんだでコケにされておしまいってのが今までの流れだったけど。何か策でも思いついたのか?
「そりゃもう、ここは酒場なんでしょ。ということは、あいつらが酔って酩酊してるところにこっそり忍び寄って寝首をかけば、そのまま二人もろとも地獄に叩き落すことができるって寸法よ!」
「思いっきり背後から奇襲かけてんじゃねーか」
もはや帝王というよりは悪代官って肩書のほうがよほどしっくりくる。執念深いというかなんというか……。
「なんでもいいの。あたしは帝王なのよ? あんな愚民どもにまともに相手する価値ないわ。それに、この魔導の力の前にはどんな奴だろうと敵じゃないんだから」
と言って、彼女はスカートの腰に下げていた革製のホルダーから何かを取り出した。
それを見た途端に、俺は目を丸くする。
禍々しい紋章が描かれた表紙が特徴的な、1000ページはありそうな分厚い書物。
間違いない、今日彼女が落とし、それを拾った俺が未來に渡した魔導書だ!
「その本……お前どこで!」
「え? どこって……何の話よ?」
「何じゃないだろ? お前、あいつに……未來に会ったのか!? あいつはどっちに行ったんだ!? 様子はどうだったんだよ!?」
「ちょ、待ちなさいよ、いきなり――きゃっ!?」
急に詰め寄る俺にたじろいだ拍子、エリアが乗っていたビール瓶ケースがぐらりと傾いた。そのままバランスを崩し、エリアの身体が限りなく真横へと近づくと共に落下運動を始めていく。下は硬いコンクリート。頭を打ったら大怪我は避けられない。
「あぶないっ!」
反射的に俺は走り出し、スライディングしながら両手を前に出して彼女の真下へと潜り込んだ。
どすん、という衝撃と。ガラガラガッシャン、というケースが崩れ落ちる音が同時にその閑散とした路地裏に響いた。
「いたたた…………なんなのよもう!」
度重なるアクシデントに耐え消れなくなったのか、そのゴスロリ少女は俺の腕の中でそう小さく喚いた。
正直そのセリフを言いたいのはこっちも同じなのだが、まぁこれは俺が悪い。
「ごめん、ちょっと焦ってて。怪我ないか?」
「まったくよ。次から次へとわけのわかんないことを……はっ!?」
ツンケンした態度でぼやいていたエリアだったが、そこであることに気づいて息を呑んだ。
あることとは何か。それはもちろん、俺達のこの体勢である。
俺が下になり、上から降ってきた彼女を抱きとめている状態。
お姫様抱っこ。
右手は太ももに。左手は背中から回って左乳にしっかりと添えられている。
とっさの行動で気づかなかったが、まさかこんなことになっているとは。
ちょっと指先に力を入れてみるとムニュッとつきたてのお餅みたいに柔らかく弾力のある感触が……。
「わっ! ごめっ!」
慌てて手を離したが、もはや触ったという事実は消せない。三秒ルールだって適用されない。
元々の元凶が俺だから『助けてやったんだから大目に見ろよ』という言い訳も通じない。ていうかそれ目当てでやっただろとか言いがかりつけられても文句は言えない。
そしてあわよくばそれをダシに強引に婚姻を取り決めさせられたりとか……。
有り得る。こいつの性格からして十二分に有り得る! くそ、ぬかった。未來を探すはずがこんなことになるなんて。ついてねぇよ。
目を固くつむり、心の中で地団駄を踏みながら、後悔の念に駆られていたが。
いつまで経ってもエリアの方からこちらの想定しているリアクションが返ってくることはなかった。
あれ、もうそろそろ……いや、とっくに怒号と罵声を浴びせられまくってもおかしくないはずなんだけどなぁ。どうしたんだろ。
と思って薄目を開けて彼女をちらっと見てみたら。
「……」
ぽやー、と。
半口を開けながらこっちを見上げてやんの。
瞬きもせずに、微かな濁りもない清純そのものといったような眼差しを向けてきている。
そのおしろいを塗りたくったような頬には、わずかに赤みが差していた。
まさかの反応。なんだこの乙女ゲーの主人公みたいな顔。黙ってるけど少女漫画だったら確実にこれポエム全開の長文モノローグ入ってるだろ、おもしれー女だ。
「あ、ありがと……」
「え? あ、うん」
お礼まで言われた。本当にさっきまでのタカビーモードが嘘のようだぜ。口では大層なことを言ってても、いざ迫られると上がっちゃうタイプってやつかね。
エリアは自力でその場から起き上がると、無言で衣服についた埃を手で叩いて落とす。そんな様子を俺はぼけーっと見つめていたのだが、さすがにそれは不審に思われたらしい。
「な、何よ。ジロジロ見て……そんなにあたしがこんな真似してるのがおかしい?」
「いやそうじゃないよ。気にはなるけど。ただ、言いふらされたくなきゃ結婚しろーとか言ってくるんじゃないかと思ってたからさ」
「はぁ? 助けてもらってそんなことするわけないでしょ」
「でも、変なとこ触っちゃったし……」
「それは……そうだけど……」
もじもじしながら指先をつつき合わせて、エリアはこもり気味に発言する。
「そりゃあ、なたはあたしの婿になる人間だから……別にちょっと触るくらい構わないわよ。それに将来的には、ちょっとどころじゃないほど……ごにょにょ」
「え? なんだって?」
「な、なんでもないわよバカッ!」
ブンブンと書物を振り回して彼女は威嚇してきた。危ないなもう。
「とにかく、何被害妄想膨らましてるのか知らないけど、そんな小悪党みたいな駆け引きはしないわ。あたしは帝王よ? 手に入れたいものはたとえ相手が誰だろうとボコる、どつく、吐かせる、もぎ取る、すなわちあたしの総取り。等価交換の必要なんてこれっぽっちもありゃしないわ」
前者が小悪党なら、キミのやろうとしていることは大悪党のそれに他ならないんですが。
こんなのが統治する帝国とか完全に恐怖政治間違いなしだろ。こいつがこいつならそれを選挙で選ぶ国民も国民だ。
「で、結局あなたはなにがしたいのよ?」
「あ、そうだ。未來を見なかったか? あいつ、さっきまで俺達と飲んでたんだけど、急に具合悪そうにして一人で帰っちゃって。心配だから追いかけてきたんだ」
「ふーん、そういうこと。通りで様子が変だと思ったわ」
「やっぱり会ってたのか!」
「ええ。さっきそこで鉢合わせした途端に、いきなりあたしにこれを押し付けてきたのよ。後のことは知らない」
魔導書を掲げながらエリアはつまらなそうに横髪をくるくるいじり始めた。自分のパートナーのことだというのに随分冷めてるな。ということをさり気なく伝えると、彼女は鼻で笑った。
「知ってるでしょ、あいつあたしのことかなり嫌ってるもの。もうお互いに最低限の干渉しかしない関係なのよ」
「気づいてたのか」
「でなきゃあたしを置いて酒場になんて来やしないし、あたしだって具合悪そうにしてたらその場で介抱したげてるわよ」
そりゃそうだ。
こいつもこいつで未來のことなんて自分の野望のための手駒程度にしか見てないとか言ってたしな。つまりお互いに冷戦状態同然ってことね。
なら、もう聞くことはないな。
「わかったよ。じゃあ俺は未來探しに行くから、お前もこんなとこにいつまでもいないで帰ったほうがいいぞ」
「探す? あいつを? 必要ないわ、放っておきなさいな」
「んなわけにいくかよ。道端で倒れちまったらどうするんだ」
「だからその可能性はないって言ってるの」
「え?」
呆けた声を出す俺に、エリアは肩を竦めて続けた。
「あいつ、ああ見えてかなり演技がうまいのよ。容態が悪いのだって、そういうフリしてるだけ。だって、あたしと会った時は全然平気そうだったもの」
「は?」
嘘……だろ?
「未來って、酒強かったのか?」
「ええ。喧嘩したりとかした時にはしょっちゅうやけ酒してたし。一晩で大瓶二、三本は普通ね。酔いやすくはあるけど、体調を崩すってことは絶対にない」
「で、でも! さっきは本当に頭抑えて苦しそうにしてたんだぞ! 仮に演技だったとしても、何でそんなことする必要があるんだよ!」
「知らないわよ、きっと何か派手にやらかして恥ずかしい思いでもしたんじゃないの? もしくは嫌なヤツに絡まれて逃げ出したかったとか。何かなかったわけ?」
「……」
ある。
思っクソある。
大勢の前で急性ヒステリー発症。
なんだよ、めちゃくちゃフリする必要あったじゃん。ってことは……単にあの場から離れたかったが故の三文芝居だったってわけか。はぁーあ。
肩の力が抜けた俺はその場にヘナヘナと膝をついた。それを見てクスクスとエリアが笑う。
「なんだか知らないけど、どうやら骨折り損のくたびれ儲けだったようね」
「いや、そうじゃないよ。ただ、よかったなって」
「え?」
「だって、結局未來に大事はなかったってことだろ。すごく心配してたから、無事で安心した」
「……」
気がつくと、エリアは目をぱちくりさせて俺を見ていた。なんだろう、また何か変なこと言ったかな?
「あなた、やっぱり面白いわね。あたしの見込んだとおりだわ」
「面白いって、何が?」
彼女は俺の問いかけには答えず、壁にもたれかかると意味深な笑みを浮かべて魔導書の背表紙を撫でた。
「それこそあたしの婿にとって相応しい素質。きっとあなたとなら元のワイヤードよりも何十倍も何百倍も面白い世界が創造できるわ」
結局その話か。なんでそこまで帝王の座にこだわるんだか。
この世界に第二のワイヤードを建国し、自らが統治すること。それが彼女の目的。
だがなぜ死後転生しても、なお王という地位を名乗りたがるのか。
ここでは王族でもなければ権力があるわけでもない。それは彼女自身よくわかってるはず。
でもまっとうに働いて自立していくという堅実な道は選ばず、貪欲に転生前から抱いていた野望へと突き進もうとしている。
よほど、それに固執する理由があるということだろう。
その理由は――。
「まさか、元の世界に未練があるのか?」
「は? みれん?」
「ああ。お前は一度ワイヤードで帝王になった。そして魔導を流通させて変革を起こすつもりでいたんだろ。でもその計画、きっと達成できなかったんだろ。なぜなら――」
「……」
「お前の死。何があったかは知らないけど、とにかく計画を推し進めている最中にお前はあの世界を去り、こっちの世界にやってきた。そうだろ?」
エリアは答えなかったが、俺からさりげなく目線を反らした。
肯定の意と受け取った俺はさらに続ける。
「本来なら、ここで生きていくために職業について、早く順応できるようにするのが務めだ。だけど、密告して、クローラの一族を没落させてまで王の地位を手に入れたってのに、早々に死んでしまった奴が簡単に気持ちの切り替えができるとは思えない」
「何が言いたいの?」
「わかるだろ。お前は王にはなったが長くは続かなかった。だからその未練故に、こっちの世界でも自分が帝王のワイヤードを続けようってことなんだろ?」
「……」
「まぁどういう生き方しようが勝手だけどさ、いつまでも過去にしがみついてたってなんにもならねぇよ。ここはワイヤードじゃないし、お前もすでにワイヤードの人間じゃない。王を僭称したって何の意味もないんだよ」
律儀に黙って最後まで俺の言葉に耳を傾けていたエリアは、肩を落として軽く息をつく。
そして。
「わかってないわね」
ため息混じりに言うと、俺の方につかつかと歩み寄ってそのレースの手袋がはめられた指先で俺の顎をくいっと軽く持ち上げた。
「いい? あたしが王座に就くんじゃない。あたしのいる場所が常に王座なの!」
「はぁ?」
「わかる? あたしが治め、統べる国がワイヤードなのよ! たとえそこが現実の世界だろうと異世界だろうと関係ない」
何だよそれ。
呆れてものも言えないが、向こうの目は本気だ。
「あたしにとってのワイヤードは国民全てが楽しめる、面白い国のこと。それが実現できるのはこのあたしだけ。すなわち、あたし以外が頂点に立つ国などワイヤードではないの。だからあっちの世界に未練なんかないし過去にしがみついてなどいない。今だって常にあたしの目には未来しか映ってないわ」
「おいおい……」
「あなただってそうでしょ、この国の暮らしがつまらないって思ってたんじゃない? あたしもよ。転生して少しは楽しめる世界に行けるのかなと高を括ってたけど、本当につまらない。代わり映えしない一日を憂いながら、毎日毎日同じことの繰り返し。自分が本当に生きているのだろうかとさえ疑うくらいに退屈だった。あたしが帝王の座に就く前の頃と全然変わらない生活よ」
……あれ?
そこで俺の頭に何かが引っかかった。
気のせいかな、全く同じセリフを誰かが言っていたような。
「やっぱり待ってても何も始まらないのはどこも一緒ね。真の面白さは享受するものじゃなく生み出すものってことよ。そうやってあたしはあっちの世界で既存の国の在り方をブチ壊した。だからあたしはこの世界でも頂点に立ち、そして創り変える。この魔導の力でね」
魔導。
彼女が発明した独自の技術。クローラが開発したキカイとは対をなすもの。
彼女達の住んでいた異世界には水道、電気、ガスといったインフラがない。
人々は周囲に存在する元素を魔具と呼ばれる容器に補完し、元素封入器を作り出してそれを各々の生活の要としていた。
キカイは元素封入器を動力源とし、人の手に依存しないスタンドアローンで機能する道具のことだ。
反対に魔導というのは、元素を直接人の体内に吸収させることで、元素封入器を用いずとも任意で溜め込んだ元素の力を使用することが可能になるというもの、らしい。
詳しいことはエリアの口からしか聞いていないのでわからないが……彼女がそれを確立させた頃には既にクローラのキカイが流通していたという。
彼女がクローラを陥れて王座を簒奪したのはその逆恨みによるものであり、いわばキカイに対するネガティブキャンペーンをやってのけたわけだ。結局その後こいつの目論見通り魔導がキカイに取って代わったのかは定かではないが。
「まぁ今に見てなさい。あたしに不可能はないんだから」
そんなことを考えている俺をよそに、エリアは鼻歌を歌いながら書の頁を開いてペラペラとめくっていた。
「ていうか前々から思ってたんだけど……その本、何が書いてあるんだ?」
「んー? これ? ふふん、気になるのね?」
ニマァ、とそのゴスロリ少女は意地悪く笑う。
「そうね、あなたとあたしで築く輝かしいワイヤードの未来が記されてる……って言ったら信じる?」
「何だそれ。てっきり魔導の使い方とか書いてあるものかと」
「もちろんそれも含めてよ。魔導の発明から、あたしがそれを使って帝王の座に付き、そしてこの世界でまた新たなワイヤードを創造する。そういうシナリオが余すところなく描かれているの。いわば――」
そこで言葉を切ると、エリアはその分厚い書物を勢いよく閉じて言った。
「予知書……といったところかしらね」
予知書。
未来の出来事が書かれた文書。
そこに記されてある出来事は、いずれ現実になるというアレか。どうにも胡散臭いけど。
「ええ、だからあなたには見せるわけにいかないの。タイムパラドックス的なことになりかねないからね」
「そーかい、そいつは残念だ」
「でも感謝してるわ、あなたが落としたこれを拾ってくれたんでしょ。あいつから聞いた。褒めてつかわすからありがたく思うことね」
偉そーに。
さっきの超絶キュートなお礼は何だったのよ。別人格か。
「あれからずっと探してたのよ。もし見つからないままだったら大変なことになってたわ。なんたってこれは、あなたとあたしの未来そのものと言っても過言ではないんだから」
「……あっそ」
そんなに大事なら落としてんじゃねぇよ、という愚痴をすんでのところで飲み込んだ。
ったく、ただの夢小説書きなぐった黒歴史ノートって言ったほうがまだ現実味のあるごまかし方だぜ。向こうも触れてほしくないみたいだし、その本にはこれ以上言及しない方が良さそうだ。
しかし、面白い世界……ねぇ。
国の頂点に君臨したいという奴は多々いるかもしれないけど、はたしてそういう目的で目指す人間はどれくらいいるのだろうか。
「どうでもいいけど、エンターテイメントだけじゃ国は成り立たないぞ。王様ならもっと経済とか国交とか、いろいろ考えるところあるでしょ」
「何言ってるのよ。何かをやってて楽しいと思える気持ちは、あらゆる発想の源。一人ひとりの独創性が国全体を動かし、活性化させ、発展させていくの。あなたの言ってるようなものはそこから生まれるただの副産物に過ぎないわ」
頭お花畑かよ、つくづくおめでたい奴だ。
と嘲笑いたくなるがそうもいかない。
だって現に彼女はそういう気持ちだけで魔導を発明したのだから。
なんというか、賛否両論になりそうな王様だよな。元の国の評判がどうだったかは知らんけど、そのための手段次第で良い方にも悪い方にも転ぶことは間違いない。
「そう不安がらなくても大丈夫。あたしは一度帝王になって世界を変えた者よ? あなたはあたしについてくればいいの。そうすればきっと輝かしい未来に辿り着けるから。それにあいつだって……」
「あいつ? 誰のこと?」
最後の方で小さく付け加えるように出てきた言葉に、俺は眉をひそめて問うた。
エリアは訊かれるとは思ってなかったのか、少し驚いたような顔をして予知書を胸に抱きしめた。
「バカね、この場であいつっていったら一人しかいないでしょ」
「……未來のことか?」
無言で彼女は首肯し、そのまま繁華街の明かりに照らされた星の見えない星空を仰ぐ。
「あいつ……いっつもつまんなそうにしてるのよね。毎日毎日、起きて食べて寝て、同じことばかり繰り返してるだけ。何の楽しみも面白みも感じてないような、人形みたいな娘。なんかまるで、ワイヤードにいた頃のあたしを見てるみたいだった」
「……」
「それでもあいつは不満も漏らさずにそれでもいいやって、この暮らしが一番幸せだと思い込んでる。自分を偽ってるっていうか」
……似てる。
俺のよく知っている人物の一人に、限りなく似ている。
自分を偽り、自分ではない誰かを演じる。本当の自分を身の内に押し込めている。
そうやって「それでもいい」という姿勢を貫き、絶望のどん底で這いずり回っていた人物が、未來の他にもう一人。
――えっと、息合うね、私達。
――心が通じ合ってる、っていうのかな。
さっき酒の席で、彼女と息を合わせるように同じ行動を取っていた健気な少女の顔が脳裏にフラッシュバックした。
……まさか、ね。
「だから、あいつにも見せてやりたいのよ。あたしの創る面白い世界をね。そうしたらあいつも、きっと楽しく毎日を生きられると思う。あんな退屈な日常を抜け出せるって」
エリアは屈託のない笑顔でそう言い、予知書の表紙を見つめた。まるでそれに彼女の顔を重ねているみたいに。
「意外だな。手駒程度にしか考えてないとか言ってた割には随分優しいじゃん」
「べっ、別にこれは……そう、褒美よ、褒美! このあたしに尽くしたのだからそれくらいは当然のことだわ!」
指摘すると、また狼狽えるように彼女はそう取り繕った。
褒美。
それはもちろん、この世界に転生してきて右も左も分からない中、色々世話してもらったことに対するものだろう。
彼女も彼女なりに、未來へ何かしら恩義のようなものを感じているということだろうか。健気な人間性を垣間見た気がする。
でも待てよ。
オリエンテーションが終わった後にも少し考察したが、エリアが転生したのは時期的に未來があのアパートに引っ越してきた日、もしくはその近日である可能性が高い。
だが、それは今日からたった数日前の話。出会ってから一週間すら経ってないのに、やや感情移入しすぎじゃないか?
この自己中極まりない人間が、特定の誰かのために何かしてやりたいと思うまでには相当な時間が必要であることは明白。時間の問題じゃなくても、二人の間にそれほど強固な絆があるとも思えない。
実際未來はエリアを嫌ってるけど、それでもかなり「慣れてる」素振りだった。
俺達が同じ転生者のパートナーだと知って、まるで自分の方が経験長いみたいな口調だったし。少なくとも数日一緒に過ごしただけではああはならないだろう。
不自然。
未來とエリア、あまりにも不自然な点が多すぎる。
「なぁエリア」
「何、あたしのお婿様」
茶化すように返事をする彼女に向けて、俺は率直な問いを投げかけた。
「お前って、いつから未來と一緒にいるんだ?」
「……」
その質問は予想していなかったのか、一瞬目を丸くしてエリアは俺を見る。
そしてそれが聞き間違いではなく確かにそう問われたということに気づき、そのまま革製のホルダーに予知書をしまうと簡潔に答えた。
「忘れちゃったわ」
「はい?」
素っ頓狂な声を上げる俺。
今度はこっちが聞き間違いかと疑う番だったが、その回答は撤回されることも修正されることもなく、彼女は背伸びをしながらこう付け足した。
「そんな昔のこと」
昔のこと。
具体的な時期は明かされなかったが、少なくとも俺が想像している時期ではないことは確かだ。
どういうことだ? だって、未來はあのアパートに引っ越す前は女子寮に入ってたはず。
まさか、一緒に同じ通信制高校に通ってたとでもいうのか? 確かにそれだと色々辻褄は合うし、死者処理事務局のことだから可能ではあるかもしれないけど……でもそんな話は一度も二人からは聞いてない。
それに、リファ達がこの世界にやってきてまだ二ヶ月程度しか経ってない。こいつが二人より後に死んだ人間なら、転生するならその間ってことになる。だがそれだとやっぱり「忘れるほど昔のこと」ではなくなってしまう。
考えられる可能性としては……必ずしも異世界での死亡時期とこちらでの転生時期は一致しないとか? 途中で死者処理事務局による手続きが入るから、その関係で多少は前後したりするんだろうか。
どっちにしても不可解すぎる。どうなっているんだ、一体。別にどうしても知る必要のあることではないとは言え、もやもやするなぁ。
「過去のことなんかいつまでも振り返っててもしょうがないわ我が婿様。さっきあなたも言ってたでしょ、あたし達は進むのは後ろじゃなくて前なのよ」
ノスタルジックな雰囲気になることもなく、エリアは腕を組んで先程までの高慢な調子に戻った。
「いい? なんとしてもあたしはあなたと婚姻を結んで、この世界に第二のワイヤードを創る。そして史上最高に面白くて楽しめる帝国として歴史を残すのよ!」
ビシィッ、と人差し指を天高く振り上げ、意気揚々に宣言する元帝王様。
「そのために、弊害となりうるものは即刻排除! 特にあの二人は早急に始末するわ。このあたしが直々にね! 今日こそ思い知らせてやるんだから!」
「いや、ちょっと」
こんなところでいざこざはよしてくれよ。と言おうとした矢先である。
エリアがさっきまで覗き込んでいた小窓からドガシャァン! と大きな物音がした。
何だと思って俺達は耳をそばだてた途端、今度は女性の棒読みに近い悲鳴が聞こえてきた。
「うわーリファっちとクロちゃんが倒れたー。センパイどうせもう戻ってこないだろうから飲めるだけ飲んじゃえと煽った結果、調子こいて二人共焼酎とワインとウイスキーまで頼んで全部ちゃんぽんして一気飲みしたらぶっ倒れてしまったー。こりゃてぇへんだー。センパイの成績は底辺だー」
あいつらぁ~、忠告無視しやがって! いや渚に子守り任せた時点で薄々こうなるってわかってたし、酔ってる奴に酔ってる奴等の世話させた俺が一番悪いけどさぁ! ていうか俺成績悪くねぇから! 前期だってフル単だったから!
んもうー、なんでこう毎度毎度面倒起こすんだよポンコツどもはー!
頭を抱える俺とは対照的に、エリアはそれを聞いて目をきらめかせながら飛び跳ねた。
「今ぶっ倒れたって言った? 言ったわよね!? なんだかわからないけどこれはもしかしてチャンスじゃない!?」
「あーそうだな」
その場にうんこ座りをして、俺は投げやりに返事を返した。
「酒に於いてあの二人には明確な臨界点ってのがある。ちょっとでも既定値を超えると一瞬でぶっ倒れてしばらく動けなくなる。最近は結構耐性ついてきたっぽいけど、さすがに飲み会終了までは保たなかったみたいだな」
「あら、自ら進んであいつらの弱点を教えてくれるとはさすが我が婿、殊勝な心がけね。よーし、これまであたしをコケにしてきた恨みつらみ、今こそ晴らしてやるわ……」
目的より私怨が上回ってんぞ。人の上に立つ者が私情最優先とは世も末だな。
そんな俺のツッコミはどこ吹く風。手を結んだり開いたりして、エリアはウォーミングアップを済ませると舌なめずりをした。
「捲土重来。このエイリアス・プロキシ・スプーフィングの魔導の力……とくと見るがいいわっ!」
カッ! と大きく赤い目を見開くと。そのゴスロリはのしのしと表道に出ていき、居酒屋のドアをさながら道場破りのように開けて威勢よく侵入していった。
そして。
「なーっはっはっっは! 覚悟しなさいこの愚民ども――」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 全員頭が高ぁぁぁぁぁい! この私を誰だと心得る! 現世に君臨せし真の王、リファレンス・ルマナ・ビューアであるぞ!!! 控えおろうーーーー!」
「おーっほっほっほっほ!! ここは養豚場かしら? 面白い光景ね、殺されるのを待つだけの豚どもが勢揃いですわ! このワイヤードの女王クローラ・クエリ・ワイヤードの余興にはちょうどいい見世物小屋ですこと!」
「ちょ、え? な、なにあんたら……え? さっき倒れてるって……」
「あぁ!? なんだ貴様、この私に頭の一つも下げんとは、まさか敵国の間者かぁ!?」
「あらあら、随分と間抜け面をした間者もいたものですわ。間者から間が抜けてるから、むしろただの『者』ね。笑止ですわぁ!!」
「いや、あの違――」
「問答無用! この王を前に無礼を働いた罪、この場で命を持って償えぇ!!」
「おーっほっほっほ!! このわたくしを楽しませられない玩具など視認する価値も無くってよ! 今すぐ消え去りなさいな!」
「ちょっと待って! 話せば分かる、話せば分か、ぎゃーーーーーっ!!! 我が婿ぉーーーー! たーーーすーーーけーーーてーーーぇぇ!!」
「お客様お客様お客様!!! 困ります! あーっ!!! 困ります!!! 店内で天翔龍閃とレールガンは困ります!!! あーっ!!! お客様!!! あーっ!!! お客様!!!」
……今日も世界は面白いなぁ。
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4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
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ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
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