102 / 123
レベル51.女騎士と女奴隷と日常②
3.女騎士と女奴隷とお小遣い
しおりを挟む
ある日。
「主くんっ。お茶が入りましたので、どうぞ!」
そう言ってコップに入ったコーヒーを差し出してくれたのは、我が家の元女奴隷にして現俺の彼女さんであるクローラだった。
「おお、ありがとうクローラ」
俺は彼女がお茶と言い張るコーヒーを礼を言って受け取った。
軽く一口啜り、ほのかな苦味を舌先で堪能すると、ゆっくりと嚥下する。
「ど、どうでしょうか?」
おずおずとお盆で顔を半分隠しながら訊いてくる彼女に、俺は笑ってその頭を撫でてやった。
「うん、すっごく美味しいよ。ちゃんとゴキブリ混ぜずにできるようになったねー、えらいえらい」
「えへへ……クローラ頑張りました!」
嬉しさを抑えきれずにはにかむクローラさん。
うん自分で言うのもなんだけど、褒め言葉としてはだいぶ狂ってんなこれ。
「あ、そうでした。お風呂の掃除、済ませておきましたので」
「え? でも今日は俺が当番だったはずじゃ……」
「いえいえ、暇だったものですから。手間がかかるものでもないですし、どうせならと」
「そっか、悪いな。あ、じゃあ俺はトイレ掃除の方――」
「そ、それも既に完了しております!」
立ち上がろうとした俺の手を軽く引っ張って、彼女はやや上がり気味な声で報告してきた。
マジかよ。一体いつの間に。
「はい。お、お風呂が終わった際についでにやっておきました」
「そっか。でも一昨日も昨日も、掃除から洗濯まで全部やってくれてたし。さすがにちょっと働きすぎじゃない?」
「お気になさらず。主くんの身のお世話をするのは私の生きがいのようなものですから」
ニコッ、と屈託のない笑みでクローラは微笑む。そこからは微塵の不安も感じられない。無償の善意がそこにはあった。
照れ隠しとばかりに、俺は彼女の頭をまた優しく撫でた。
「ありがとね。ホント助かるよ」
「えへへ……恐れ入りますです」
さて、部屋の掃除は粗方終わってるし。他になにかすることあったかな。
ご飯の支度はまだ早いし、買い物は昨日行ってきたし。
「……」
ぱたぱたぱた。
と、気がつくとクローラが尻尾を振りながらこちらをじーっと見つめてきていた。
なんというか、すごい何かを期待している目つきだ。
「ん? どうしたの?」
「はわ、あ、や、なんでもないです」
そそくさと彼女は立ち上がってキッチンへと引っ込んでいった。一体どうしたんだろう。
特に気にすることもなく、読んでいたジャンプに目を戻そうとしたその時。
「あ、やっべ。今日はあれやっとかないと」
腰を上げて、俺は思い出したとある用事に取り掛かろうとする。
部屋の隅にあるタオルスタンド。そこに無数に積まれているシャツ類やハンカチ類。
一人暮らしの時はそこまで意識していなかったが、新たなる同居人が増えて以降、週一でやるようになったお仕事。
そう、アイロンがけである。
男服がシワクチャだろうが誰も見向きはしないだろうが、女物となると、そうもいかない。というわけで、かなり前にアイロンセットを購入したのである。
アイロン台の四脚を出し、水をアイロンに入れ、コンセントを挿れたら準備OK。
さて、始めますかね。
と、一枚目のシャツを広げたその瞬間。
「はっ!!」
という掛け声とともに、それが奪い去られた。
目の前に突如現れた、金髪碧眼の女によって。
俺は呆気にとられて思わず服の簒奪者たる彼女の名前を呼ぶ。
「……リファ?」
正式名称リファレンス・ルマナ・ビューア。
元異世界の女騎士にして、現俺の彼女さんである。あ、以下二股コメ禁止な。
ものすごいスピードで俺から服をひったくったリファは、アイロン台の向こう側に腰を下ろして胡座をかいた。
そして呆然とするしかない俺の方に手を伸ばして――
「ん」
「え?」
「んっ!」
一文字しか言葉を発さず、ただ女騎士は俺の持っていたアイロンをしきりに指さした。
な、何? これを寄越せと?
目で尋ねると、向こうはコクリと頷く。
「きょ、今日から私がアイフォンをしてやる」
「アイロンね。でもこれ結構コツがいるし、何より熱くて危険だから俺が――」
「いいからさっさと渡さんか!」
と言って、彼女は身を乗り出して無理矢理俺の手からアイロンをもぎ取った。
そして。
「とりゃああああああああああ!!」
シュババババババババ!
世にも驚き。目にも留まらぬ速さでシャツを次々とプレスしていくではないか。
一枚、二枚、三枚……。凄まじい勢いでタオルスタンドのシワの寄った衣類が減っていく。まるでビデオを早送りで再生しているようだ。
「あーたたたたたたたたたた! おーわったぁ!」
ダァン! とアイロンを荒々しく置き、全ての洗濯物を片付けたリファは一息つく。
そしてドヤ顔。
「ふふーん、どうだ見たかマスター。神速のナイトレイダー、リファレンスの実力を!」
「お、おう。すげぇな」
「当然だ、剣術の修行で会得したこの手さばきをもってすれば、この程度の作業など造作もないわ」
褒められてますます鼻を高くするリファ女史。
確かに一分もかからずに、すべての洗濯物はアイロン処理された。それは素直に褒めるべきだろう。
だがしかし。女騎士は肝心なところを見落としていた。
それは何かというと……。
「かけた後にぐちゃぐちゃに積み重ねたら意味ねーんだよポンコツ」
と、俺は彼女の隣にできた洗濯物の山(プレス後)を指さした。
「あ」
アイロンをかけることだけに集中していたリファは事後処理まで気が回らなかったのか、完全に見落としていた模様。
まったく、全部やり直しじゃないか……。
呆れて肩を落としていると、背後からコソコソと声が聞こえてくる。
「んもう、リファさんなにやってるんですか! これじゃせっかくの作戦が……」
「……」
くるっと振り返ってみると、なにやらクローラがキッチンの影からジェスチャーでリファに発信していた。それを受信したリファも、面目ないというふうに身振り手振りで軽く謝罪。ひと目見ただけで内緒話とわかるものであった。
「……あの、なんなの二人して」
「うぇ!? や、なんでもないぞなんでも!」
「ですです!! ただ今主くんに知られるとまずいお話をしているだけです!」
直球~。
「また変なこと企んでるんじゃねぇだろうな」
「んもう、ひどいです主くん。変なことを考えるのは生ゴミさんくらいのもんですよ」
せやな。
だが大事なのは君らもその「くらい」の範疇内にいるってことなの。わかる?
「そ、そんなことより主くん! なにかしてほしいこととかないですか? クローラなんでもいたしますよ?」
「何を企んでるかを言ってほしい」
「『何を企んでるか』! はい言いました!」
この野郎。
「あ、そうだ! ではマスター、ここは特別に私がアレをやってやろう」
「アレ?」
「ふふん、これを見よ」
ババァン! と誇らしげに取り出しましたるは……。
細い木の棒に綿みたいなのがくっついた何か。
「耳かきだ。これでマスターの耳を掃除してやろう」
「はぁ? なんでそんないきなり……」
「そ、それはその……そう、こういうのは恋愛ごとの定番行事だそうじゃないか。マスターと私は恋人同士……別になんの問題もあるまい。うん」
「そういうもんか?」
「そういうものだ。ほら、早くここに寝れ」
正座してリファはぽんぽんと自分の膝を叩く。
観念した俺は、渋々彼女の太ももに頭をあずけるようにして横になる。
柔らかい感触が側頭部に広がり、先程までの怒りが消え、心なしか安らかな気分になってきた。
「よぉし、それじゃいくぞ」
「リファさん……今度は失敗しないでくださいよ……」
「わかってる」
耳打ちするクローラにリファは自信たっぷりに返事をすると、そろそろと耳かきの先端を俺の外耳道へ侵入させていった。
心地よいような、こそばゆいような感じとともに、中の不純物が取り除かれていくのがわかる。
「おお、結構取れるぞ。相当溜まってたみたいだな」
なんとなく嬉しそうに言って、彼女はせっせと耳掃除を続けていく。
太ももの柔らかさと耳かきのダブル快楽を楽しむこと数分後。ようやく左右の耳の掃除が終わった。
「ふーっ、と。終わったぞマスター」
最後に耳に息を吹きかけて、リファは仕上げを終えた。うん、スッキリしたし、ちょっと聞こえは良くなったかも。俺は顔を起こしながら礼を言った。
「ありがと。初めてにしてはうまかったぞ」
「当然だ。こういう細かい作業のテクニックも、騎士団兵長だった私だからこそできる芸当なのだ」
えへん、と胸を張って彼女は大えばり。耳かきに活かせる剣術とは一体どのようなものなのか気になるところだが、まぁいいや。
でもなんで急に耳掃除なんてやろうって言い出してきたんだ? 今までそんなこと一度もしてくれたことなかったのに。
「……」
ぱたぱたぱた。
と、気がつくとリファがさっきのクローラと同じように、尻尾を振りながらこちらをじーっと見つめてきていた。
その目の色も同じく、お預けを食らっている犬のような、イブの夜に寝付けない子どものような、そんな期待に満ちたものであった。
「何?」
「ほぇ? や、なんでも? ないぞ?」
キョドったように女騎士は口笛を吹きながら目線をそらす。
クローラといいこいつといい、一体さっきからなんなんだよ。ずーっとそわそわしてなんか言いたそうにしてるし。
今俺に聞かれるとまずいこと……ねぇ。
「……もしかして」
「「!」」
ぴんと二人が尻尾を張って、瞳をきらめかせながらこちらを振り返るのと同時。
一つの結論を導き出した俺は、二人に向かって尋ねた。
「まさか、また俺の茶碗割って、怒られる前にご機嫌取りしておこうって魂胆か?」
「「……」」
目を点にしてきょとんとする異世界コンビ。
反応を見るにやっぱり図星だったか? 通りで戸棚にないと思ったら……。こないだもクローラがうっかり割って、先日買い直したばっかなんだが。
だがこいつらもこいつらで、コソコソした真似しないで素直に謝りゃいいのに。別に俺だってそこまで怒るつもりはないし。
「「はぁーーーーあ」」
とか思ってたら露骨に肩を落としてため息を吐かれた。
目に宿っていた輝きも一瞬にして失せて錆びついた鈍色へと変貌する。
え? え? 何、違うの?
「ちょっと剣の稽古に出かけてくる……」
「クローラも、お散歩行ってきます……」
ちんぷんかんぷんなままでいると、くるりと突然背を向けて二人はトボトボとリビングを出ていこうとした。
「え、ちょっとまってよ! どうしちゃったのさ? なんか俺変なこと言った? ねえ――」
バタン。
と、無慈悲にもドアが閉まり、部屋には俺だけが取り残された。
えー。何なのこれ……。お茶碗割ったんじゃなかったの?
と、とにかく二人を追いかけてもう一度話を……。
「……やっぱり流石に無理があったか……」
「リファさんがアイロンかけ失敗したからじゃないですか。それで主くん怒ってるんじゃ……」
「そ、それは……でも耳掃除はうまくできてたし……」
なんか廊下からコソコソと話し声がする。
どうやらまだ出かけてなかったっぽい。
俺はドアに耳をそばだてて、可能な限り彼女達の会話を聞き取ろうとする。
「――とにかくはっきりしたのは、これくらいだと主くんにはただのご機嫌取りと捉えられてしまうこということです」
「だとしたら、もっとすごいことをしてあげないと気づいてもらえないってことか……」
「仕方ありません、少し作戦を変えましょう」
作戦?
よく聞き取れなかったけど、やっぱり何か企んでたのか。でもご機嫌取りじゃないんだよな。それにもっとすごいことって何だよ、怖いよ。
今すぐドアを開けて問いただすべきなのだろうが、ただならぬ会話にどうにも足がすくんでそこから動けない俺であった。
○
次の日。
「たでーま」
バイトが終わって帰宅した俺は疲れ気味にリビングに向けて言った。
が、それに対しての返事は一切なかった。
おかしい。いつもならクローラとリファが嬉しそうに出迎えてくれるはずなんだが。
どうしたんだろ、寝てるのかな? そんならそれでいいけど。
「お風呂先入るねー」
俺は大声でリビングの向こうの二人にひと声かけて、そのまま脱衣所へと入る。
そのまま何も考えずに服を脱いで洗濯機に放り込み、浴室へと続くドアを……開けた。
瞬間。
俺の身体は金縛りでもあったように硬直してしまった。
浴室には、すでに先客がいたのだ。
それも若い女が、二人も。
並んで三つ指をついて、深々とこちらに頭を下げていたのである。
「クローラ? リファ? なにやってんのお前ら」
俺はおずおずと二人の名前を呼ぶ。返事がないと思ってたらこんなとこでこんなことをしていたとは誰が想像できただろうか。
彼女達はそう言われてゆっくりと面をあげる。
よく見ると、両者とも普段着のままではなかった。
リファは白い競泳水着。肌が透けて見えそうなほどの薄生地で非常に扇情的。
クローラは黒いスリングショット。マイクロ一歩手前くらい布地の部分が少ない。見えそうで見えないところがまたセクシー。
我が後輩、木村渚が二人に買い与えたものであった。
だがなぜ今そんな格好でいるのか。一体何が目的なのか。訊きたいことは山ほどあるが、どうにも言葉が出ない。その光景のインパクトに俺は身体だけでなく口まで固まってしまっていた。
「お、おかえりなさいませ主くん」
「本日も、お勤めご苦労であった、マスター」
俺を見上げながら、彼女達は震え声で言ってきた。
それはさっき玄関で期待していた言葉ではあったが、こんな状況でなんて誰も望んでねーよ。どういうことだ、まるで意味がわからんぞ!
「えっと、今日は日々の感謝の気持ちも込めて……その、ご奉仕をさせていただきたく」
「マスターはバイトできっと疲れてるだろうから……私達で癒やしてあげようと……」
「ええ……」
まさか昨日言ってたすごいことって、これのこと?
いや完全にアレじゃん。浴場は浴場でも先頭に「特殊」が付くやつじゃん。吉原とか堀之内あたりでぞろぞろ店構えてるやつじゃん。
「ちょちょちょ! ちょっと待てって! どうしたんだよいきなり、明らかにおかしいだろこんなの!」
「お、おかしくなんかないです!」
するとクローラが悲痛な声で訴えてきた。
「クローラはもともと奴隷で、主人と一緒の空間にいることなど到底許されませんでした。だけど、今は主くんとは恋人同士の間柄。こうやって一緒にお風呂に入りたいと思うのは、いけないことでしょうか」
「そ、そうだぞマスター!」
間髪入れずに今度はリファが俺にすり寄ってきた。
赤く染まった頬は浴室の温度ではなく、羞恥によるものであるのは明白だった。
「私だって騎士だったから、こんな色事めいた真似などするような立場ではないはずだった。でも、マスターの恋人になった今、こういうことをするのに恥じらうこともない。いや、むしろ私がそうしたいって思ってる。マスターに、女として見てもらいたい。あなたにいっぱい尽くしたいって」
「いや、でも――」
真剣に言ってくる彼女らを直視できず、俺はしどろもどろな反応しか返せなかった。
雰囲気は確かにアレだけど、二人と俺は恋仲。彼女達の言い分が変かというとそうでもない。
いい年した男女が一つ屋根の下で暮らしてるんだ。そうなったって別に不思議な話じゃないだろう。
声を大にして言うことではないが……二人とはもうセックスは何度もしてる。
だが、ここまで大胆に誘ってくるパターンは初めてだ。別に嬉しくないわけじゃないけど、。昨日二人が企んでいたことがどうにも引っかかるというか。
とにかく何から何まで突然すぎる。きっと何か理由があるはずだ。今すぐにでも襲ってしまいたい衝動に駆られるが、ここは冷静になって話を――。
と、ぐずぐずしてたら、まんまと先手を取られた。
二人は立ち上がって俺に身体を預けてくる。
その美しい肢体の柔肌の感触が、ダイレクトに伝わってきた。
それだけでもかろうじてクールだった脳を麻痺させるには十分だったのに、水着姿の異世界コンビは容赦なく追撃を仕掛けてくる。
上目遣いでの、甘い殺し文句。
「来て、主くん……」
「お願い……マスター」
ぷっつん、と俺の理性が切れた。
次の瞬間には、既に二人をマットが敷かれた床に押し倒していた。
「お前らっ、そんなこと言われたら……俺……」
息を荒くし、二人のすべすべの水着に手を這わす。
途端に彼女達は身をよじり、鼓膜がとろけそうな嬌声が浴室に反響した。
「やっ、主くん……っ、今日は私達が……」
「ばかっ、これでは奉仕できんではないか。んっ……」
そんな制止の声も、もはや俺をさらに興奮させる結果しか生まない。既に二人が何を企んでいようがどうでもよくなっていた。ただ本能のままに目の前の女体を愛でたい、あるのはそんな欲望だけ。
「お前らが悪いんだぞ。俺の心を滾らせやがって」
その欲望に身を任せ、俺は鼻息を荒くして彼女達の胸をまさぐった。
すると、女奴隷と女騎士のからだがビクっ、と小刻みに痙攣した。
「やんっ! そんないやらしい手つきで触られたら……私達、我慢できなくなっちゃいますっ!」
「マスター、もうダメ……欲しい……焦らしちゃいや……」
「ん? なんだ、何が欲しいんだ? 言ってみなよ、ほら」
指先で肌をなぞりながら、俺は発情しきってる彼女達を煽る。
さっきまで緊張で全身が固まってたのに、面白いくらいに動けるな。まぁ一部分はさっきまで以上にガチガチに硬くなってるわけだが。
その硬度が増した一部を持て余すように、二人の熱を帯びた耳元に口を寄せて詰問を続けた。
「ほら、言えったら。口に出して言わないとあげないよ」
「うぅ……主くんのあれが、欲しいですぅ」
「あれじゃわかんない。ちゃんと言って」
「あぅ、マスターの意地悪……」
クローラとリファは目尻に涙を浮かべながら懇願するように喘ぐように言った。
「お……」
「お? 何? 聞こえないよ?」
そう言って女の敏感な部分を布越しに擦り上げると、二人は沸き立つ快感に身悶えた。
それを見て俺も限界まで興奮度が高まる。やばい、もうこのまま事に及んでしまいそうだ。
つばを飲み込み、タガが外れそうになる一歩手前。
目の前の女二人は、観念したように同時に言った。
自らが狂おしいほど望むモノの名を。
「「お、お金……」」
萎えた。
○
「小遣いが欲しいだぁ?」
入浴後。
改めて尋問すると、正座をして白状した二人は無言で申し訳なさそうに頷いた。
「ま、マスターに養わせてもらっている身で、こういうことをねだるのは無礼とは思っているのだが」
「もしかして、最近やたら進んで家事とか俺の世話とかするようになったのって……」
こくり、とまた異世界コンビは首肯。俺は溜息。
なるほど、全部おためごかしだったってわけね。
「こちらからいきなりせびるのはどうかと思ったので、せめて普段のお仕事をいつも以上に頑張ってれば、そのうち主くんが『お前ら最近よくやってくれてるから何でも願いを一つ叶えてやろう』とか仰るはずだからそのタイミングでおねだりしようかな、と」
何その謙虚の皮被った傲慢そのものみたいなプラン。俺も甘く見られたもんだな。
「でも、それだと結局いつもみたく褒められて終わりでしたから……」
「もっとすごいことをしようという話になって……」
「それでアレかよ」
あのギリギリアウトなお風呂ご奉仕。一瞬でも本気にしちまった自分が恥ずかしい。
だが彼女らも彼女らであんな突飛なことを自分から思いつくはずがない。
まぁ、考えずとも吹き込んだ蛇の正体はわかってるけど。
「ああすればきっと500円くらいは儲けが出るだろうって、生ゴミさんが」
やっぱりな。もうここまでくると怒る気もしない。
毎度毎度考えることがお下劣だし、第一金額低すぎだろいくらなんでも!
「そ、そうでしょうか。では1000円くらいなら……」
「だから低いってば! そう自分を安売りするなよ!」
「マスター。何を勘違いしてるか知らんが、一秒ごとに1000円だぞ」
「高ぇぇぇぇぇぇよ!!!」
一分で6万、三十分で、180万! 何が無償の善意だ、ボり過ぎにもほどがある。悪質なキャバクラだってここまでいかねぇよ。
「あ、お得なオプションプランも作ったんですが、見ます?」
「いらんいらんいらん!」
俺は手をぶんぶん振って再び大きくため息を吐く。
「いいか、クローラもリファも、俺にとっては大切な恋人だ。かけがえのない存在なんだよ。二人の価値は金になんて替えられないし、値段なんてつけられるわけない」
「渚殿は?」
「一円以下」
「辛辣ですね」
残念でもないし当然。
「とにかく、冗談でもああいうのはやめてよ。悲しくなるから」
「す、すまぬ……」
「申し訳ありません……」
しゅんとしてうなだれる異世界少女二人組。
だが彼女達の望みはちゃんと聞き入れる必要はある。正直そろそろ考えなきゃいけないころだとは思ってるし。
「ワイヤードで二人は、給料ってもらったことなかったのか?」
「給料? 騎士団では寝る場所、食い物、武器、その他諸々の不自由のない生活がそれに当たるな。定期的に何かを手当してもらうような制度はなかったぞ」
「クローラは奴隷でしたから、そんなものとは無縁ですね。王族の頃も、働いてたわけではありませんし……」
「そっか……」
ぶっちゃけ今は二人は無収入である。
近くのカフェ「Hot Dog」というところで俺と一緒にたまにアルバイトはしているが、諸事情により彼女達だけは無給である。どれだけ働こうが給与は入らない。
釈明しておくと、確かに俺は二人に小遣いを与えてないが、二人に何も欲しいものを買ってあげていないわけではない。
どういうことか説明するとこういうことである。
・リファの場合
スーパーにて。
「……」
どさっ。
「おいリファ」
「……」
「勝手に買い物かごにお菓子入れちゃダメだって言ったでしょ」
「……」
「まったく、昨日だって買ってやっただろ……(戻し戻し)」
「……」
レジにて。
「お次でお並びのお客様どうぞー」
「はいお願いします」
「お預かりいたしまーす。牛乳が一点、ほうれん草が一点、大根が一点、鶏肉が一点、バターが一点、食パンが一点……」
「ふんっ!」
どさどさどさどさっ!
「ガムが三点、ポテチが二点、ねるねるねるねが五点、味しらべが二点、パルムが一点、森羅万象チョコが十点で計3345円でーす」
「リファァァァァァ!!!」
・クローラの場合
スーパーにて。
「主くん主くん」
「なんだねクローラさんや」
「見てくださいあれ、国産牛肉祭りとかいうフェアをやってるらしいですよ。お肉がお安く買えるんですって」
「そだねー」
「すごいですねー。ああやって定期的にイベントをやることで、普段の売り物を注目させられる。それで売れ残らないよう効率よく捌けるようにしてるんですね。なかなか賢い商売だと思います」
「でも国産牛ってもともとすごく高いものだから、大してお得でもない――」
「それを私達が購入することで、おいしいものが食べられるし、経済も回っていくと。非常に世のため人のためになるシステムというわけですね。なるほどなるほど」
「うん。でも今日の献立は筑前煮だから――」
「いいですよねぇ、牛肉。一度『すきやき』という料理を振る舞っていただきましたが、あれは格別でしたね」
「いやだから今日は筑前」
「不思議ですよね。お肉なんて、王族だった頃は毎日のように食べてたはずなのに、すごく美味しいと感じたんです。きっと奴隷になって、虫とか残飯とかばかり口にしてたせいで舌が忘れちゃってたんでしょうね」
「筑ぜ」
「でもそんな境遇を経験したからこそ、こうして当たり前のようにお肉が食べられる日常がとても幸せなんです。そしてそれを当たり前にしてくれてる主くんには、感謝してもしきれません」
「ちく」
「だって、こうしてお肉が一杯食べられるような幸せな食事をしているだけで、あの嫌な思い出や辛い日々を忘れことができるんですもの。むしろ、そうしてくれないとどんどん過去の傷が私を蝕んでいって……またあの頃のように戻ってしまうんじゃないかと不安でいてもたっても――」
「あー! なんだか今日は無性にすき焼きが食べたい気分だなー! おーっと、こんなところで国産牛肉フェアなんてものがやってるぞー! なんと、黒毛和牛100グラムが920円だってぇ? こいつぁ安いや! よぉし、今日はこれを使って豪勢にやろうかクローラ!」
「わぁい、羽振りの良い主くん大好きですぅ!」
○
とまぁこんな感じで、毎回毎回二人に振り回されているのである。
だが、そんなグダグダな生活にはいい加減ピリオドを打たねばならないと思ってた。
そのための策こそが小遣い制の導入である。
「よしわかった。お前らの願い、叶えてしんぜよう」
「「ホントか!?」
ですか!?」
目を輝かせた二人は、ブンブンと尻尾を扇風機並みの勢いで回転させた。
「やった、やったぞクローラっ!」
「やりましたねリファさんっ!」
手を合わせてキャッキャと喜びを分かち合う彼女達に、俺は自分の財布を取り出して中のお札をちゃぶ台の上に置いた。
「はい、これがリファの分。こっちがクローラの分」
「こ、これは……」
そこにあったのは、二人の福沢諭吉が二組。計四人。
「二万円ずつ。これがお前らのお小遣いだ」
「に、二万円って……こんなたくさんいいのですか?」
「一万円って、確か100円の百倍だろ? こんびにでおにぎりが100個買える額だろ? 桁違いではないか!」
わなわなと震える手で、そのお札二枚を手に取る異世界少女達は言う。
確かに、今まで小銭くらいしか実際に取り扱ったことのない彼女達にしてみれば衝撃度は相当のものだろう。
「こ、こんなにまでしていただいて……どう報いればよいのでしょう」
「うぅ、小遣いがもらえるようになったものの。ここまでの大金とは……」
「まぁ確かに安い額じゃないな。でも、大学生の小遣いなんてそんなもんだと思うよ」
「だ、だがっ! これが一分続くと120万円。一時間続けば7200万円になるんだぞ! そんなに賜るなんて、いくらなんでも恐れ多いというか――」
「だぁぁぁぁれが一秒ごとにくれてやるなんつった!!!」
なんて末恐ろしい金銭感覚。ビルゲイツだって出し渋るレベルだよまったく。
「いいかよく聞け。今こうして二万円を渡した。で、次にこのお金を渡すのは……一月後だ」
「ひと……」
「つき……」
「そう。つまりお前達はむこう30日間その金でしのいでいかなくちゃならない」
女騎士と女奴隷は今ひとつピンとこないというふうに、目をパチクリさせながらそのお金を見つめる。
「そして今まで俺は二人にお菓子だの服だのを買ってやったが、これからは自分の所持金からそのための代金を捻出してもらう」
「え?」
「もう買ってくれないのですか?」
「もちろん。新しい漫画も、自販機の飲み物も、どっか遊びに行くための交通費もだ」
言った途端に、二人の顔がどんどん青ざめていった。
「そ、そんな殺生な……」
「なんか急に……突き放されるみたいで悲しいです」
まぁ厳しいことを言ってる自覚はある。
だがここは心を鬼にして、我が子を崖下に蹴り落とすライオンのつもりでいかなくてはならない。
「なあクローラ、リファ。この世界で人が生きていくためには、当然金が必要だ。そしてどんなことをすればお金が手に入って、どんなことでお金が出ていくか。そういうことってまだ知らないよね」
「「……」」
当然黙るしかない異世界コンビ。
そんな二人に俺は小さく一息ついて語り始めた。
「じゃあまず収入から。俺のバイト先って時給……つまり一時間あたり1020円だ。そしてシフトは週三日、一日七時間働く。それを一ヶ月続けたら合計いくら?」
「……えっと」
「85680円」
目を伏せながら、静かに俺は答えを告げる。
「俺はお前らがこの家に来る前は、その金で主に生活してた」
「……」
「じゃあ次に支出の話。まずこのアパートの家賃。毎月四万五千円取られる。これだけで半分以上持ってかれて残り40680円。そこから電気代、水道代、ガス代。まとめて光熱費ってのが大体一万円くらい引かれるよ。これで残りは三万円だ。次にスマホ代とネット代。これも毎月一万くらい金がかかる。そしたらあと二万円。お前らに今渡した額と同じ」
ぽかん、と口を開けてクローラもリファも呆然としていた。
「で、最も重要なのが食費。毎日三食、それを30日。残りの二万円から出していくとなると……一食あたりいくらになると思う?」
「……えっと」
指折り数えて必死に計算する彼女達に、俺は天井を見上げるとそっと回答を教えてあげた。
「222円」
「「!」」
「わかるか? それだけで喰っていかなくちゃならない。当然外食なんてできないし、何より漫画買ったり、飲み会行ったりなんてできるわけがない」
「……」
それを聞いて、クローラもリファも愕然とした表情になる。
だがこれはまぎれもない真実。これからこの世界で生きていく上で、絶対に避けては通れない道だ。
「で、ここまで身銭を切っても……俺はまだ払わなきゃいけないものがある」
「それって……」
クローラの問いかけに、口端を歪めて俺は答えた。
「学費だよ」
「あっ……」
俺は大学生。
大学という学び舎に通う者。
そのためには、当然対価を納めねばならない。
その額、年間100万円。
四年通ったら400万。サラリーマンの年収とほぼ同じ。普通に考えたら、とても今の俺には払いきれない大金である。
「あの……なら、どうして主くんは大学に通えるのです?」
「そんなん決まってるだろ」
俺は自嘲気味に笑うと、端的に言った。
「親だ」
「おや……」
「そう、両親。親父とおふくろが汗水たらして稼いでくれた金で、俺は学校に通えてる」
「……」
「それだけじゃなく、毎月三万円ほど仕送りもしてくれてる。バイト代だけじゃ満足に遊べないでしょって。だから俺はこうしてなんとか一年やってこれたんだ。そういうことなんだよ、お金のやりくりって」
「……そう、だったのですか」
「色々……大変なのだな。そんなこと全然、考えたことなかった」
予想外に深刻な事情を知り、二人は諭吉を複雑な表情で見つめた。
俺は片目を瞑って、単調に解説を付け加える。
「そしてお前らがこの家に来てから、当然食費は三倍になる。光熱費やスマホ代ネット代だって同じ。あとは服代とか、生活用品揃えたりとか。でも二人は何不自由なく生活できてるし、きちんと大学に通えてる。死者処理事務局からの出資があるからな。それがなけりゃ到底お前らを養うなんざ無理な話だ」
「……」
「だが安心しろ。その二万円は生活費じゃなくて小遣いだ。家賃だの光熱費だの食費だのは考慮しなくていい、完全に自由に使える金。使い果たしたところで、死にはしねぇよ」
「自由に使える……」
「お金……」
「そ。まずはそれに慣れて、金のやりくりのこと少し勉強してみな。これはその訓練みたいなもんだ」
二人は黙ってお互いの顔を見合わせると、目を閉じて大きく頷いた。
「そうだな……お金のこと、大変勉強になった。確かにこれから暮らす上で、とても重要なことだ」
「今は主くんに養ってもらっている身ではありますが、そのままではいけないですよね。私達自身も生きる術を身に着けて協力していかないと」
「わかってもらえたようでなにより」
俺が肩を竦めてみせると、女奴隷と女騎士は固くなっていた表情を綻ばせた。
かと思うと、急にまたさっきのように三つ指をついて深々と頭を下げた。
「ありがとうございます主くん。このお金、ありがたく頂戴します」
「そして、今までの無礼を許してほしい。この家の一員でもあるにも関わらず、マスターに不必要にものをねだり、この家の経済事情を蔑
ないがし
ろにしてしまっていた」
「クローラ……リファ……」
それを見て俺の心は少し揺らいだ。
今日この話をして本当によかったと思えた。
「うん、こっちこそありがとう。二人がまた一つ成長できたようで、嬉しいよ」
「主くん」
「マスター……」
わだかまりが消え、三人共自然に笑みがこぼれてきた。
ひとまずは、一件落着かな。
「でも、好きなことだけに使えるお金だと考えると……やっぱり二万円って大金ですよね」
「うむ。いくら30日分とはいえ……」
「と思うじゃん? 存外そーでもないんだな。大学生って本当に結構な頻度で金が減ってくから。それに最近はいろんな物価が上がってきてるし。油断してるとすぐなくなっちゃうよ」
「そ、そうなのか?」
「ま、そのへんは実際に体験してみるこったな。何はともあれ、無駄遣いはしないようにね」
「はい、いつぞや言ってた『せつやく』ですね」
「そういうこと」
……でも待てよ。
ただ単純に二万円ずつ渡していくってのもアレだな。せっかくだしもうちょっと有効活用してもいい気がする。
さてさて、どうしようかな……。
「そうだ! いいこと思いついた」
パチン、と俺は指を鳴らして二人に提案した。
「名付けて、お小遣い増減システム!」
「ぞーげん?」
「どういうことです?」
自慢げに言う俺に対して、二人は小首を傾げる。
「まぁざっくり言えば、日頃の行いが毎月の小遣いに反映されるってことだよ。しっかり勉強とか、昨日までみたいに進んで家のこととか一生懸命やってくれれば、支給額アップ。逆に悪いことをしたり、色々怠けてたりすると減額だ。どうよ?」
「なるほど、昇給制度というやつか! 面白いな」
「いっぱい頑張れば頑張るほど、多くお小遣いがもらえるということですね!」
「そゆこと。やってみる?」
「「もちろん」」
女奴隷も女騎士も即答で快諾した。
二人はお小遣いのアップが見込める。俺は二人が進んでこの家のために貢献してくれる。ウィンウィンとはこのことだね。
「あ。でも、さっきみたいに色事で俺に取り入るのはナシだぞ? 金目当てでああいうことされても嫌だからな」
「それはわかってますよ。流石にあれは軽率すぎました。主くんも、私達にはお金には替えられない価値があると言ってくれましたしね」
「うむ。そして、それは私達も同じだ。マスターのことは何にも替えられないほど大切に想ってるぞ」
「……ん」
微笑みながらそう言ってくれる二人に、俺は頬を掻きながら返事をした。
自分で言い出しておいてなんだが、こっ恥ずかしいな。
「よし、とにかく明日から頑張るぞクローラ!」
「はいです! あ、でもせっかくお小遣いが入ったのですし、みんなでお買い物行きません?」
「おお、そうだな。服とか漫画とか……何買おうかな。ふふ、楽しみだ」
「ですねっ」
キャッキャとはしゃぎながら楽しそうにおしゃべりする二人を眺めがら、俺はほんわかした気分になった。
こうして見ると、人並みの女子大生、って感じで微笑ましいな。
金という異世界にはなかったインフラを学び、そしてこの度自らの手でそれを管理する使命を負った。
これが二人の生活にどう影響するのか、価値観がどう変わっていくのか。
俺はそれを見守りつつ、かつ道を踏み外さないようにしっかり導いてやらなくちゃいけない。それが俺の使命であり、意思でもあるから。
単純そうに見えて、とても難しいことだけど。彼女達なら大丈夫だろう。
これまでにずっと、曲がりなりにも様々なことを学んで、立派に成長してきているのだから。
――頑張れ。
自分の大切な恋人達に、俺はそう小さくエールを贈るのだった。
「あ、そうだ主くんっ」
「ん? どうしたの?」
「主くんのお茶碗は本当に割っちゃいました!」
「ついでに私はマグカップも割ったぞ!」
「来月の小遣いなしな」
「主くんっ。お茶が入りましたので、どうぞ!」
そう言ってコップに入ったコーヒーを差し出してくれたのは、我が家の元女奴隷にして現俺の彼女さんであるクローラだった。
「おお、ありがとうクローラ」
俺は彼女がお茶と言い張るコーヒーを礼を言って受け取った。
軽く一口啜り、ほのかな苦味を舌先で堪能すると、ゆっくりと嚥下する。
「ど、どうでしょうか?」
おずおずとお盆で顔を半分隠しながら訊いてくる彼女に、俺は笑ってその頭を撫でてやった。
「うん、すっごく美味しいよ。ちゃんとゴキブリ混ぜずにできるようになったねー、えらいえらい」
「えへへ……クローラ頑張りました!」
嬉しさを抑えきれずにはにかむクローラさん。
うん自分で言うのもなんだけど、褒め言葉としてはだいぶ狂ってんなこれ。
「あ、そうでした。お風呂の掃除、済ませておきましたので」
「え? でも今日は俺が当番だったはずじゃ……」
「いえいえ、暇だったものですから。手間がかかるものでもないですし、どうせならと」
「そっか、悪いな。あ、じゃあ俺はトイレ掃除の方――」
「そ、それも既に完了しております!」
立ち上がろうとした俺の手を軽く引っ張って、彼女はやや上がり気味な声で報告してきた。
マジかよ。一体いつの間に。
「はい。お、お風呂が終わった際についでにやっておきました」
「そっか。でも一昨日も昨日も、掃除から洗濯まで全部やってくれてたし。さすがにちょっと働きすぎじゃない?」
「お気になさらず。主くんの身のお世話をするのは私の生きがいのようなものですから」
ニコッ、と屈託のない笑みでクローラは微笑む。そこからは微塵の不安も感じられない。無償の善意がそこにはあった。
照れ隠しとばかりに、俺は彼女の頭をまた優しく撫でた。
「ありがとね。ホント助かるよ」
「えへへ……恐れ入りますです」
さて、部屋の掃除は粗方終わってるし。他になにかすることあったかな。
ご飯の支度はまだ早いし、買い物は昨日行ってきたし。
「……」
ぱたぱたぱた。
と、気がつくとクローラが尻尾を振りながらこちらをじーっと見つめてきていた。
なんというか、すごい何かを期待している目つきだ。
「ん? どうしたの?」
「はわ、あ、や、なんでもないです」
そそくさと彼女は立ち上がってキッチンへと引っ込んでいった。一体どうしたんだろう。
特に気にすることもなく、読んでいたジャンプに目を戻そうとしたその時。
「あ、やっべ。今日はあれやっとかないと」
腰を上げて、俺は思い出したとある用事に取り掛かろうとする。
部屋の隅にあるタオルスタンド。そこに無数に積まれているシャツ類やハンカチ類。
一人暮らしの時はそこまで意識していなかったが、新たなる同居人が増えて以降、週一でやるようになったお仕事。
そう、アイロンがけである。
男服がシワクチャだろうが誰も見向きはしないだろうが、女物となると、そうもいかない。というわけで、かなり前にアイロンセットを購入したのである。
アイロン台の四脚を出し、水をアイロンに入れ、コンセントを挿れたら準備OK。
さて、始めますかね。
と、一枚目のシャツを広げたその瞬間。
「はっ!!」
という掛け声とともに、それが奪い去られた。
目の前に突如現れた、金髪碧眼の女によって。
俺は呆気にとられて思わず服の簒奪者たる彼女の名前を呼ぶ。
「……リファ?」
正式名称リファレンス・ルマナ・ビューア。
元異世界の女騎士にして、現俺の彼女さんである。あ、以下二股コメ禁止な。
ものすごいスピードで俺から服をひったくったリファは、アイロン台の向こう側に腰を下ろして胡座をかいた。
そして呆然とするしかない俺の方に手を伸ばして――
「ん」
「え?」
「んっ!」
一文字しか言葉を発さず、ただ女騎士は俺の持っていたアイロンをしきりに指さした。
な、何? これを寄越せと?
目で尋ねると、向こうはコクリと頷く。
「きょ、今日から私がアイフォンをしてやる」
「アイロンね。でもこれ結構コツがいるし、何より熱くて危険だから俺が――」
「いいからさっさと渡さんか!」
と言って、彼女は身を乗り出して無理矢理俺の手からアイロンをもぎ取った。
そして。
「とりゃああああああああああ!!」
シュババババババババ!
世にも驚き。目にも留まらぬ速さでシャツを次々とプレスしていくではないか。
一枚、二枚、三枚……。凄まじい勢いでタオルスタンドのシワの寄った衣類が減っていく。まるでビデオを早送りで再生しているようだ。
「あーたたたたたたたたたた! おーわったぁ!」
ダァン! とアイロンを荒々しく置き、全ての洗濯物を片付けたリファは一息つく。
そしてドヤ顔。
「ふふーん、どうだ見たかマスター。神速のナイトレイダー、リファレンスの実力を!」
「お、おう。すげぇな」
「当然だ、剣術の修行で会得したこの手さばきをもってすれば、この程度の作業など造作もないわ」
褒められてますます鼻を高くするリファ女史。
確かに一分もかからずに、すべての洗濯物はアイロン処理された。それは素直に褒めるべきだろう。
だがしかし。女騎士は肝心なところを見落としていた。
それは何かというと……。
「かけた後にぐちゃぐちゃに積み重ねたら意味ねーんだよポンコツ」
と、俺は彼女の隣にできた洗濯物の山(プレス後)を指さした。
「あ」
アイロンをかけることだけに集中していたリファは事後処理まで気が回らなかったのか、完全に見落としていた模様。
まったく、全部やり直しじゃないか……。
呆れて肩を落としていると、背後からコソコソと声が聞こえてくる。
「んもう、リファさんなにやってるんですか! これじゃせっかくの作戦が……」
「……」
くるっと振り返ってみると、なにやらクローラがキッチンの影からジェスチャーでリファに発信していた。それを受信したリファも、面目ないというふうに身振り手振りで軽く謝罪。ひと目見ただけで内緒話とわかるものであった。
「……あの、なんなの二人して」
「うぇ!? や、なんでもないぞなんでも!」
「ですです!! ただ今主くんに知られるとまずいお話をしているだけです!」
直球~。
「また変なこと企んでるんじゃねぇだろうな」
「んもう、ひどいです主くん。変なことを考えるのは生ゴミさんくらいのもんですよ」
せやな。
だが大事なのは君らもその「くらい」の範疇内にいるってことなの。わかる?
「そ、そんなことより主くん! なにかしてほしいこととかないですか? クローラなんでもいたしますよ?」
「何を企んでるかを言ってほしい」
「『何を企んでるか』! はい言いました!」
この野郎。
「あ、そうだ! ではマスター、ここは特別に私がアレをやってやろう」
「アレ?」
「ふふん、これを見よ」
ババァン! と誇らしげに取り出しましたるは……。
細い木の棒に綿みたいなのがくっついた何か。
「耳かきだ。これでマスターの耳を掃除してやろう」
「はぁ? なんでそんないきなり……」
「そ、それはその……そう、こういうのは恋愛ごとの定番行事だそうじゃないか。マスターと私は恋人同士……別になんの問題もあるまい。うん」
「そういうもんか?」
「そういうものだ。ほら、早くここに寝れ」
正座してリファはぽんぽんと自分の膝を叩く。
観念した俺は、渋々彼女の太ももに頭をあずけるようにして横になる。
柔らかい感触が側頭部に広がり、先程までの怒りが消え、心なしか安らかな気分になってきた。
「よぉし、それじゃいくぞ」
「リファさん……今度は失敗しないでくださいよ……」
「わかってる」
耳打ちするクローラにリファは自信たっぷりに返事をすると、そろそろと耳かきの先端を俺の外耳道へ侵入させていった。
心地よいような、こそばゆいような感じとともに、中の不純物が取り除かれていくのがわかる。
「おお、結構取れるぞ。相当溜まってたみたいだな」
なんとなく嬉しそうに言って、彼女はせっせと耳掃除を続けていく。
太ももの柔らかさと耳かきのダブル快楽を楽しむこと数分後。ようやく左右の耳の掃除が終わった。
「ふーっ、と。終わったぞマスター」
最後に耳に息を吹きかけて、リファは仕上げを終えた。うん、スッキリしたし、ちょっと聞こえは良くなったかも。俺は顔を起こしながら礼を言った。
「ありがと。初めてにしてはうまかったぞ」
「当然だ。こういう細かい作業のテクニックも、騎士団兵長だった私だからこそできる芸当なのだ」
えへん、と胸を張って彼女は大えばり。耳かきに活かせる剣術とは一体どのようなものなのか気になるところだが、まぁいいや。
でもなんで急に耳掃除なんてやろうって言い出してきたんだ? 今までそんなこと一度もしてくれたことなかったのに。
「……」
ぱたぱたぱた。
と、気がつくとリファがさっきのクローラと同じように、尻尾を振りながらこちらをじーっと見つめてきていた。
その目の色も同じく、お預けを食らっている犬のような、イブの夜に寝付けない子どものような、そんな期待に満ちたものであった。
「何?」
「ほぇ? や、なんでも? ないぞ?」
キョドったように女騎士は口笛を吹きながら目線をそらす。
クローラといいこいつといい、一体さっきからなんなんだよ。ずーっとそわそわしてなんか言いたそうにしてるし。
今俺に聞かれるとまずいこと……ねぇ。
「……もしかして」
「「!」」
ぴんと二人が尻尾を張って、瞳をきらめかせながらこちらを振り返るのと同時。
一つの結論を導き出した俺は、二人に向かって尋ねた。
「まさか、また俺の茶碗割って、怒られる前にご機嫌取りしておこうって魂胆か?」
「「……」」
目を点にしてきょとんとする異世界コンビ。
反応を見るにやっぱり図星だったか? 通りで戸棚にないと思ったら……。こないだもクローラがうっかり割って、先日買い直したばっかなんだが。
だがこいつらもこいつらで、コソコソした真似しないで素直に謝りゃいいのに。別に俺だってそこまで怒るつもりはないし。
「「はぁーーーーあ」」
とか思ってたら露骨に肩を落としてため息を吐かれた。
目に宿っていた輝きも一瞬にして失せて錆びついた鈍色へと変貌する。
え? え? 何、違うの?
「ちょっと剣の稽古に出かけてくる……」
「クローラも、お散歩行ってきます……」
ちんぷんかんぷんなままでいると、くるりと突然背を向けて二人はトボトボとリビングを出ていこうとした。
「え、ちょっとまってよ! どうしちゃったのさ? なんか俺変なこと言った? ねえ――」
バタン。
と、無慈悲にもドアが閉まり、部屋には俺だけが取り残された。
えー。何なのこれ……。お茶碗割ったんじゃなかったの?
と、とにかく二人を追いかけてもう一度話を……。
「……やっぱり流石に無理があったか……」
「リファさんがアイロンかけ失敗したからじゃないですか。それで主くん怒ってるんじゃ……」
「そ、それは……でも耳掃除はうまくできてたし……」
なんか廊下からコソコソと話し声がする。
どうやらまだ出かけてなかったっぽい。
俺はドアに耳をそばだてて、可能な限り彼女達の会話を聞き取ろうとする。
「――とにかくはっきりしたのは、これくらいだと主くんにはただのご機嫌取りと捉えられてしまうこということです」
「だとしたら、もっとすごいことをしてあげないと気づいてもらえないってことか……」
「仕方ありません、少し作戦を変えましょう」
作戦?
よく聞き取れなかったけど、やっぱり何か企んでたのか。でもご機嫌取りじゃないんだよな。それにもっとすごいことって何だよ、怖いよ。
今すぐドアを開けて問いただすべきなのだろうが、ただならぬ会話にどうにも足がすくんでそこから動けない俺であった。
○
次の日。
「たでーま」
バイトが終わって帰宅した俺は疲れ気味にリビングに向けて言った。
が、それに対しての返事は一切なかった。
おかしい。いつもならクローラとリファが嬉しそうに出迎えてくれるはずなんだが。
どうしたんだろ、寝てるのかな? そんならそれでいいけど。
「お風呂先入るねー」
俺は大声でリビングの向こうの二人にひと声かけて、そのまま脱衣所へと入る。
そのまま何も考えずに服を脱いで洗濯機に放り込み、浴室へと続くドアを……開けた。
瞬間。
俺の身体は金縛りでもあったように硬直してしまった。
浴室には、すでに先客がいたのだ。
それも若い女が、二人も。
並んで三つ指をついて、深々とこちらに頭を下げていたのである。
「クローラ? リファ? なにやってんのお前ら」
俺はおずおずと二人の名前を呼ぶ。返事がないと思ってたらこんなとこでこんなことをしていたとは誰が想像できただろうか。
彼女達はそう言われてゆっくりと面をあげる。
よく見ると、両者とも普段着のままではなかった。
リファは白い競泳水着。肌が透けて見えそうなほどの薄生地で非常に扇情的。
クローラは黒いスリングショット。マイクロ一歩手前くらい布地の部分が少ない。見えそうで見えないところがまたセクシー。
我が後輩、木村渚が二人に買い与えたものであった。
だがなぜ今そんな格好でいるのか。一体何が目的なのか。訊きたいことは山ほどあるが、どうにも言葉が出ない。その光景のインパクトに俺は身体だけでなく口まで固まってしまっていた。
「お、おかえりなさいませ主くん」
「本日も、お勤めご苦労であった、マスター」
俺を見上げながら、彼女達は震え声で言ってきた。
それはさっき玄関で期待していた言葉ではあったが、こんな状況でなんて誰も望んでねーよ。どういうことだ、まるで意味がわからんぞ!
「えっと、今日は日々の感謝の気持ちも込めて……その、ご奉仕をさせていただきたく」
「マスターはバイトできっと疲れてるだろうから……私達で癒やしてあげようと……」
「ええ……」
まさか昨日言ってたすごいことって、これのこと?
いや完全にアレじゃん。浴場は浴場でも先頭に「特殊」が付くやつじゃん。吉原とか堀之内あたりでぞろぞろ店構えてるやつじゃん。
「ちょちょちょ! ちょっと待てって! どうしたんだよいきなり、明らかにおかしいだろこんなの!」
「お、おかしくなんかないです!」
するとクローラが悲痛な声で訴えてきた。
「クローラはもともと奴隷で、主人と一緒の空間にいることなど到底許されませんでした。だけど、今は主くんとは恋人同士の間柄。こうやって一緒にお風呂に入りたいと思うのは、いけないことでしょうか」
「そ、そうだぞマスター!」
間髪入れずに今度はリファが俺にすり寄ってきた。
赤く染まった頬は浴室の温度ではなく、羞恥によるものであるのは明白だった。
「私だって騎士だったから、こんな色事めいた真似などするような立場ではないはずだった。でも、マスターの恋人になった今、こういうことをするのに恥じらうこともない。いや、むしろ私がそうしたいって思ってる。マスターに、女として見てもらいたい。あなたにいっぱい尽くしたいって」
「いや、でも――」
真剣に言ってくる彼女らを直視できず、俺はしどろもどろな反応しか返せなかった。
雰囲気は確かにアレだけど、二人と俺は恋仲。彼女達の言い分が変かというとそうでもない。
いい年した男女が一つ屋根の下で暮らしてるんだ。そうなったって別に不思議な話じゃないだろう。
声を大にして言うことではないが……二人とはもうセックスは何度もしてる。
だが、ここまで大胆に誘ってくるパターンは初めてだ。別に嬉しくないわけじゃないけど、。昨日二人が企んでいたことがどうにも引っかかるというか。
とにかく何から何まで突然すぎる。きっと何か理由があるはずだ。今すぐにでも襲ってしまいたい衝動に駆られるが、ここは冷静になって話を――。
と、ぐずぐずしてたら、まんまと先手を取られた。
二人は立ち上がって俺に身体を預けてくる。
その美しい肢体の柔肌の感触が、ダイレクトに伝わってきた。
それだけでもかろうじてクールだった脳を麻痺させるには十分だったのに、水着姿の異世界コンビは容赦なく追撃を仕掛けてくる。
上目遣いでの、甘い殺し文句。
「来て、主くん……」
「お願い……マスター」
ぷっつん、と俺の理性が切れた。
次の瞬間には、既に二人をマットが敷かれた床に押し倒していた。
「お前らっ、そんなこと言われたら……俺……」
息を荒くし、二人のすべすべの水着に手を這わす。
途端に彼女達は身をよじり、鼓膜がとろけそうな嬌声が浴室に反響した。
「やっ、主くん……っ、今日は私達が……」
「ばかっ、これでは奉仕できんではないか。んっ……」
そんな制止の声も、もはや俺をさらに興奮させる結果しか生まない。既に二人が何を企んでいようがどうでもよくなっていた。ただ本能のままに目の前の女体を愛でたい、あるのはそんな欲望だけ。
「お前らが悪いんだぞ。俺の心を滾らせやがって」
その欲望に身を任せ、俺は鼻息を荒くして彼女達の胸をまさぐった。
すると、女奴隷と女騎士のからだがビクっ、と小刻みに痙攣した。
「やんっ! そんないやらしい手つきで触られたら……私達、我慢できなくなっちゃいますっ!」
「マスター、もうダメ……欲しい……焦らしちゃいや……」
「ん? なんだ、何が欲しいんだ? 言ってみなよ、ほら」
指先で肌をなぞりながら、俺は発情しきってる彼女達を煽る。
さっきまで緊張で全身が固まってたのに、面白いくらいに動けるな。まぁ一部分はさっきまで以上にガチガチに硬くなってるわけだが。
その硬度が増した一部を持て余すように、二人の熱を帯びた耳元に口を寄せて詰問を続けた。
「ほら、言えったら。口に出して言わないとあげないよ」
「うぅ……主くんのあれが、欲しいですぅ」
「あれじゃわかんない。ちゃんと言って」
「あぅ、マスターの意地悪……」
クローラとリファは目尻に涙を浮かべながら懇願するように喘ぐように言った。
「お……」
「お? 何? 聞こえないよ?」
そう言って女の敏感な部分を布越しに擦り上げると、二人は沸き立つ快感に身悶えた。
それを見て俺も限界まで興奮度が高まる。やばい、もうこのまま事に及んでしまいそうだ。
つばを飲み込み、タガが外れそうになる一歩手前。
目の前の女二人は、観念したように同時に言った。
自らが狂おしいほど望むモノの名を。
「「お、お金……」」
萎えた。
○
「小遣いが欲しいだぁ?」
入浴後。
改めて尋問すると、正座をして白状した二人は無言で申し訳なさそうに頷いた。
「ま、マスターに養わせてもらっている身で、こういうことをねだるのは無礼とは思っているのだが」
「もしかして、最近やたら進んで家事とか俺の世話とかするようになったのって……」
こくり、とまた異世界コンビは首肯。俺は溜息。
なるほど、全部おためごかしだったってわけね。
「こちらからいきなりせびるのはどうかと思ったので、せめて普段のお仕事をいつも以上に頑張ってれば、そのうち主くんが『お前ら最近よくやってくれてるから何でも願いを一つ叶えてやろう』とか仰るはずだからそのタイミングでおねだりしようかな、と」
何その謙虚の皮被った傲慢そのものみたいなプラン。俺も甘く見られたもんだな。
「でも、それだと結局いつもみたく褒められて終わりでしたから……」
「もっとすごいことをしようという話になって……」
「それでアレかよ」
あのギリギリアウトなお風呂ご奉仕。一瞬でも本気にしちまった自分が恥ずかしい。
だが彼女らも彼女らであんな突飛なことを自分から思いつくはずがない。
まぁ、考えずとも吹き込んだ蛇の正体はわかってるけど。
「ああすればきっと500円くらいは儲けが出るだろうって、生ゴミさんが」
やっぱりな。もうここまでくると怒る気もしない。
毎度毎度考えることがお下劣だし、第一金額低すぎだろいくらなんでも!
「そ、そうでしょうか。では1000円くらいなら……」
「だから低いってば! そう自分を安売りするなよ!」
「マスター。何を勘違いしてるか知らんが、一秒ごとに1000円だぞ」
「高ぇぇぇぇぇぇよ!!!」
一分で6万、三十分で、180万! 何が無償の善意だ、ボり過ぎにもほどがある。悪質なキャバクラだってここまでいかねぇよ。
「あ、お得なオプションプランも作ったんですが、見ます?」
「いらんいらんいらん!」
俺は手をぶんぶん振って再び大きくため息を吐く。
「いいか、クローラもリファも、俺にとっては大切な恋人だ。かけがえのない存在なんだよ。二人の価値は金になんて替えられないし、値段なんてつけられるわけない」
「渚殿は?」
「一円以下」
「辛辣ですね」
残念でもないし当然。
「とにかく、冗談でもああいうのはやめてよ。悲しくなるから」
「す、すまぬ……」
「申し訳ありません……」
しゅんとしてうなだれる異世界少女二人組。
だが彼女達の望みはちゃんと聞き入れる必要はある。正直そろそろ考えなきゃいけないころだとは思ってるし。
「ワイヤードで二人は、給料ってもらったことなかったのか?」
「給料? 騎士団では寝る場所、食い物、武器、その他諸々の不自由のない生活がそれに当たるな。定期的に何かを手当してもらうような制度はなかったぞ」
「クローラは奴隷でしたから、そんなものとは無縁ですね。王族の頃も、働いてたわけではありませんし……」
「そっか……」
ぶっちゃけ今は二人は無収入である。
近くのカフェ「Hot Dog」というところで俺と一緒にたまにアルバイトはしているが、諸事情により彼女達だけは無給である。どれだけ働こうが給与は入らない。
釈明しておくと、確かに俺は二人に小遣いを与えてないが、二人に何も欲しいものを買ってあげていないわけではない。
どういうことか説明するとこういうことである。
・リファの場合
スーパーにて。
「……」
どさっ。
「おいリファ」
「……」
「勝手に買い物かごにお菓子入れちゃダメだって言ったでしょ」
「……」
「まったく、昨日だって買ってやっただろ……(戻し戻し)」
「……」
レジにて。
「お次でお並びのお客様どうぞー」
「はいお願いします」
「お預かりいたしまーす。牛乳が一点、ほうれん草が一点、大根が一点、鶏肉が一点、バターが一点、食パンが一点……」
「ふんっ!」
どさどさどさどさっ!
「ガムが三点、ポテチが二点、ねるねるねるねが五点、味しらべが二点、パルムが一点、森羅万象チョコが十点で計3345円でーす」
「リファァァァァァ!!!」
・クローラの場合
スーパーにて。
「主くん主くん」
「なんだねクローラさんや」
「見てくださいあれ、国産牛肉祭りとかいうフェアをやってるらしいですよ。お肉がお安く買えるんですって」
「そだねー」
「すごいですねー。ああやって定期的にイベントをやることで、普段の売り物を注目させられる。それで売れ残らないよう効率よく捌けるようにしてるんですね。なかなか賢い商売だと思います」
「でも国産牛ってもともとすごく高いものだから、大してお得でもない――」
「それを私達が購入することで、おいしいものが食べられるし、経済も回っていくと。非常に世のため人のためになるシステムというわけですね。なるほどなるほど」
「うん。でも今日の献立は筑前煮だから――」
「いいですよねぇ、牛肉。一度『すきやき』という料理を振る舞っていただきましたが、あれは格別でしたね」
「いやだから今日は筑前」
「不思議ですよね。お肉なんて、王族だった頃は毎日のように食べてたはずなのに、すごく美味しいと感じたんです。きっと奴隷になって、虫とか残飯とかばかり口にしてたせいで舌が忘れちゃってたんでしょうね」
「筑ぜ」
「でもそんな境遇を経験したからこそ、こうして当たり前のようにお肉が食べられる日常がとても幸せなんです。そしてそれを当たり前にしてくれてる主くんには、感謝してもしきれません」
「ちく」
「だって、こうしてお肉が一杯食べられるような幸せな食事をしているだけで、あの嫌な思い出や辛い日々を忘れことができるんですもの。むしろ、そうしてくれないとどんどん過去の傷が私を蝕んでいって……またあの頃のように戻ってしまうんじゃないかと不安でいてもたっても――」
「あー! なんだか今日は無性にすき焼きが食べたい気分だなー! おーっと、こんなところで国産牛肉フェアなんてものがやってるぞー! なんと、黒毛和牛100グラムが920円だってぇ? こいつぁ安いや! よぉし、今日はこれを使って豪勢にやろうかクローラ!」
「わぁい、羽振りの良い主くん大好きですぅ!」
○
とまぁこんな感じで、毎回毎回二人に振り回されているのである。
だが、そんなグダグダな生活にはいい加減ピリオドを打たねばならないと思ってた。
そのための策こそが小遣い制の導入である。
「よしわかった。お前らの願い、叶えてしんぜよう」
「「ホントか!?」
ですか!?」
目を輝かせた二人は、ブンブンと尻尾を扇風機並みの勢いで回転させた。
「やった、やったぞクローラっ!」
「やりましたねリファさんっ!」
手を合わせてキャッキャと喜びを分かち合う彼女達に、俺は自分の財布を取り出して中のお札をちゃぶ台の上に置いた。
「はい、これがリファの分。こっちがクローラの分」
「こ、これは……」
そこにあったのは、二人の福沢諭吉が二組。計四人。
「二万円ずつ。これがお前らのお小遣いだ」
「に、二万円って……こんなたくさんいいのですか?」
「一万円って、確か100円の百倍だろ? こんびにでおにぎりが100個買える額だろ? 桁違いではないか!」
わなわなと震える手で、そのお札二枚を手に取る異世界少女達は言う。
確かに、今まで小銭くらいしか実際に取り扱ったことのない彼女達にしてみれば衝撃度は相当のものだろう。
「こ、こんなにまでしていただいて……どう報いればよいのでしょう」
「うぅ、小遣いがもらえるようになったものの。ここまでの大金とは……」
「まぁ確かに安い額じゃないな。でも、大学生の小遣いなんてそんなもんだと思うよ」
「だ、だがっ! これが一分続くと120万円。一時間続けば7200万円になるんだぞ! そんなに賜るなんて、いくらなんでも恐れ多いというか――」
「だぁぁぁぁれが一秒ごとにくれてやるなんつった!!!」
なんて末恐ろしい金銭感覚。ビルゲイツだって出し渋るレベルだよまったく。
「いいかよく聞け。今こうして二万円を渡した。で、次にこのお金を渡すのは……一月後だ」
「ひと……」
「つき……」
「そう。つまりお前達はむこう30日間その金でしのいでいかなくちゃならない」
女騎士と女奴隷は今ひとつピンとこないというふうに、目をパチクリさせながらそのお金を見つめる。
「そして今まで俺は二人にお菓子だの服だのを買ってやったが、これからは自分の所持金からそのための代金を捻出してもらう」
「え?」
「もう買ってくれないのですか?」
「もちろん。新しい漫画も、自販機の飲み物も、どっか遊びに行くための交通費もだ」
言った途端に、二人の顔がどんどん青ざめていった。
「そ、そんな殺生な……」
「なんか急に……突き放されるみたいで悲しいです」
まぁ厳しいことを言ってる自覚はある。
だがここは心を鬼にして、我が子を崖下に蹴り落とすライオンのつもりでいかなくてはならない。
「なあクローラ、リファ。この世界で人が生きていくためには、当然金が必要だ。そしてどんなことをすればお金が手に入って、どんなことでお金が出ていくか。そういうことってまだ知らないよね」
「「……」」
当然黙るしかない異世界コンビ。
そんな二人に俺は小さく一息ついて語り始めた。
「じゃあまず収入から。俺のバイト先って時給……つまり一時間あたり1020円だ。そしてシフトは週三日、一日七時間働く。それを一ヶ月続けたら合計いくら?」
「……えっと」
「85680円」
目を伏せながら、静かに俺は答えを告げる。
「俺はお前らがこの家に来る前は、その金で主に生活してた」
「……」
「じゃあ次に支出の話。まずこのアパートの家賃。毎月四万五千円取られる。これだけで半分以上持ってかれて残り40680円。そこから電気代、水道代、ガス代。まとめて光熱費ってのが大体一万円くらい引かれるよ。これで残りは三万円だ。次にスマホ代とネット代。これも毎月一万くらい金がかかる。そしたらあと二万円。お前らに今渡した額と同じ」
ぽかん、と口を開けてクローラもリファも呆然としていた。
「で、最も重要なのが食費。毎日三食、それを30日。残りの二万円から出していくとなると……一食あたりいくらになると思う?」
「……えっと」
指折り数えて必死に計算する彼女達に、俺は天井を見上げるとそっと回答を教えてあげた。
「222円」
「「!」」
「わかるか? それだけで喰っていかなくちゃならない。当然外食なんてできないし、何より漫画買ったり、飲み会行ったりなんてできるわけがない」
「……」
それを聞いて、クローラもリファも愕然とした表情になる。
だがこれはまぎれもない真実。これからこの世界で生きていく上で、絶対に避けては通れない道だ。
「で、ここまで身銭を切っても……俺はまだ払わなきゃいけないものがある」
「それって……」
クローラの問いかけに、口端を歪めて俺は答えた。
「学費だよ」
「あっ……」
俺は大学生。
大学という学び舎に通う者。
そのためには、当然対価を納めねばならない。
その額、年間100万円。
四年通ったら400万。サラリーマンの年収とほぼ同じ。普通に考えたら、とても今の俺には払いきれない大金である。
「あの……なら、どうして主くんは大学に通えるのです?」
「そんなん決まってるだろ」
俺は自嘲気味に笑うと、端的に言った。
「親だ」
「おや……」
「そう、両親。親父とおふくろが汗水たらして稼いでくれた金で、俺は学校に通えてる」
「……」
「それだけじゃなく、毎月三万円ほど仕送りもしてくれてる。バイト代だけじゃ満足に遊べないでしょって。だから俺はこうしてなんとか一年やってこれたんだ。そういうことなんだよ、お金のやりくりって」
「……そう、だったのですか」
「色々……大変なのだな。そんなこと全然、考えたことなかった」
予想外に深刻な事情を知り、二人は諭吉を複雑な表情で見つめた。
俺は片目を瞑って、単調に解説を付け加える。
「そしてお前らがこの家に来てから、当然食費は三倍になる。光熱費やスマホ代ネット代だって同じ。あとは服代とか、生活用品揃えたりとか。でも二人は何不自由なく生活できてるし、きちんと大学に通えてる。死者処理事務局からの出資があるからな。それがなけりゃ到底お前らを養うなんざ無理な話だ」
「……」
「だが安心しろ。その二万円は生活費じゃなくて小遣いだ。家賃だの光熱費だの食費だのは考慮しなくていい、完全に自由に使える金。使い果たしたところで、死にはしねぇよ」
「自由に使える……」
「お金……」
「そ。まずはそれに慣れて、金のやりくりのこと少し勉強してみな。これはその訓練みたいなもんだ」
二人は黙ってお互いの顔を見合わせると、目を閉じて大きく頷いた。
「そうだな……お金のこと、大変勉強になった。確かにこれから暮らす上で、とても重要なことだ」
「今は主くんに養ってもらっている身ではありますが、そのままではいけないですよね。私達自身も生きる術を身に着けて協力していかないと」
「わかってもらえたようでなにより」
俺が肩を竦めてみせると、女奴隷と女騎士は固くなっていた表情を綻ばせた。
かと思うと、急にまたさっきのように三つ指をついて深々と頭を下げた。
「ありがとうございます主くん。このお金、ありがたく頂戴します」
「そして、今までの無礼を許してほしい。この家の一員でもあるにも関わらず、マスターに不必要にものをねだり、この家の経済事情を蔑
ないがし
ろにしてしまっていた」
「クローラ……リファ……」
それを見て俺の心は少し揺らいだ。
今日この話をして本当によかったと思えた。
「うん、こっちこそありがとう。二人がまた一つ成長できたようで、嬉しいよ」
「主くん」
「マスター……」
わだかまりが消え、三人共自然に笑みがこぼれてきた。
ひとまずは、一件落着かな。
「でも、好きなことだけに使えるお金だと考えると……やっぱり二万円って大金ですよね」
「うむ。いくら30日分とはいえ……」
「と思うじゃん? 存外そーでもないんだな。大学生って本当に結構な頻度で金が減ってくから。それに最近はいろんな物価が上がってきてるし。油断してるとすぐなくなっちゃうよ」
「そ、そうなのか?」
「ま、そのへんは実際に体験してみるこったな。何はともあれ、無駄遣いはしないようにね」
「はい、いつぞや言ってた『せつやく』ですね」
「そういうこと」
……でも待てよ。
ただ単純に二万円ずつ渡していくってのもアレだな。せっかくだしもうちょっと有効活用してもいい気がする。
さてさて、どうしようかな……。
「そうだ! いいこと思いついた」
パチン、と俺は指を鳴らして二人に提案した。
「名付けて、お小遣い増減システム!」
「ぞーげん?」
「どういうことです?」
自慢げに言う俺に対して、二人は小首を傾げる。
「まぁざっくり言えば、日頃の行いが毎月の小遣いに反映されるってことだよ。しっかり勉強とか、昨日までみたいに進んで家のこととか一生懸命やってくれれば、支給額アップ。逆に悪いことをしたり、色々怠けてたりすると減額だ。どうよ?」
「なるほど、昇給制度というやつか! 面白いな」
「いっぱい頑張れば頑張るほど、多くお小遣いがもらえるということですね!」
「そゆこと。やってみる?」
「「もちろん」」
女奴隷も女騎士も即答で快諾した。
二人はお小遣いのアップが見込める。俺は二人が進んでこの家のために貢献してくれる。ウィンウィンとはこのことだね。
「あ。でも、さっきみたいに色事で俺に取り入るのはナシだぞ? 金目当てでああいうことされても嫌だからな」
「それはわかってますよ。流石にあれは軽率すぎました。主くんも、私達にはお金には替えられない価値があると言ってくれましたしね」
「うむ。そして、それは私達も同じだ。マスターのことは何にも替えられないほど大切に想ってるぞ」
「……ん」
微笑みながらそう言ってくれる二人に、俺は頬を掻きながら返事をした。
自分で言い出しておいてなんだが、こっ恥ずかしいな。
「よし、とにかく明日から頑張るぞクローラ!」
「はいです! あ、でもせっかくお小遣いが入ったのですし、みんなでお買い物行きません?」
「おお、そうだな。服とか漫画とか……何買おうかな。ふふ、楽しみだ」
「ですねっ」
キャッキャとはしゃぎながら楽しそうにおしゃべりする二人を眺めがら、俺はほんわかした気分になった。
こうして見ると、人並みの女子大生、って感じで微笑ましいな。
金という異世界にはなかったインフラを学び、そしてこの度自らの手でそれを管理する使命を負った。
これが二人の生活にどう影響するのか、価値観がどう変わっていくのか。
俺はそれを見守りつつ、かつ道を踏み外さないようにしっかり導いてやらなくちゃいけない。それが俺の使命であり、意思でもあるから。
単純そうに見えて、とても難しいことだけど。彼女達なら大丈夫だろう。
これまでにずっと、曲がりなりにも様々なことを学んで、立派に成長してきているのだから。
――頑張れ。
自分の大切な恋人達に、俺はそう小さくエールを贈るのだった。
「あ、そうだ主くんっ」
「ん? どうしたの?」
「主くんのお茶碗は本当に割っちゃいました!」
「ついでに私はマグカップも割ったぞ!」
「来月の小遣いなしな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる