110 / 123
レベル51.女騎士と女奴隷と日常②
11.女騎士とゲーセン
しおりを挟む
ある日の土曜日。
「ブックオフが……休み、だと!?」
いつものように半ドンで授業を終えた俺達は、暇になった午後の時間を利用して街へ遊びに出かけていた。
漫画好きのリファは大概オアシスであるブックオフに入り浸り、俺とクローラはその間別の場所を見て回るようにしてたのだが。ここにきて思わぬハプニング発生。
「『店内改装のためしばらく休業』だってさ。残念だったなぁリファ」
「そんな……私は何のために生きていけばよいのだ……」
へなへなとその場に崩れ落ちるリファ。
ブックオフが生きがいとかどんだけ低レベルな人生だよオイ。
「しょうがないよ、どっか別の所行けばいいじゃん。俺、他にもいいところいっぱい知ってるし」
「そうですよリファさん」
ひょこ、っと俺の後ろからクローラが顔を出して彼女を元気づけた。
「今までリファさんずっと別行動してて寂しかったんですし、久しぶりに三人一緒に回りましょうよ」
「うぅ~でも……」
「いいじゃん。どっちみちブックオフには寄れないんだし、気分転換だと思ってさ」
俺とクローラは二人で、リファの手を取って軽く引っ張った。
「それとも……俺達と一緒にいるのはイヤか?」
「い、いやなわけあるかっ!」
耳元でそう囁いた途端に、リファは顔を真っ赤にして即答した。そしてすぐ恥ずかしそうにしながらゴニョゴニョとこう続ける。
「二人は、その……私の大事な恋人だもん」
「よかった」
俺達はニッコリと笑い、その場から足早に去ることにした。
さて、デートコース変更だ。
○
「「げーせん?」」
着くなり異世界コンビは素っ頓狂な声を上げた。
八王子駅前徒歩数分のところにある、結構昔からある老舗のゲームセンターだ。
「ああ、俺もたまにしか来たことないんだけど……やっぱ大勢でワイワイやるならこういうところかなって」
「主くん……げーせん、とは一体?」
クローラが小首を傾げながら訊いてくる。
「ゲームセンター。略してゲーセン。ゲームは一度はやったことあるだろ?」
「げぇむ? あぁ私のスマホに入ってたやつか」
リファは自分の端末機を操作しながら言う。
この世界に来て二人共かなり経つが、あまりゲームの類はやらせたことがない。
そもそも、まだこの世界のメディア媒体の知識自体身についてないわけだから、そんなのをやらせてもちんぷんかんぷんだろうし。
リファは例外的にいくつかのスマホゲーを俺が許可したときだけやってはいたけれど、どれも決まって数日で飽きた。
「なんかどれもこれもやってることが同じでつまらん」
だとさ。
そりゃそうだ。スマホゲーなんてガチャ回してカード集めて、あとは画面連打するだけの作業に他ならない。そのくせ課金しないとまともに遊べやしない、毎日ログインしなきゃまともな恩恵すら受けられない、デメリットばっかりだ。
「でもクローラは、そういうシステムとか設定とかを作れる人は尊敬しますよ?」
それを横で眺めていたクローラはいつも決まってそう言う。
「つまらないと思われてても、現にこうして大勢の人が遊んでる。つまり人を惹きつけるだけの力がある。同じものが溢れ出したら、それと差別化するためにまた色々考える……それってすごく大変だし、立派なことだと思います」
彼女は受け手としての感想よりも、創り手としての立場からよくものを言う。
キカイという異世界での一大インフラの創始者だもんな。そういうところも関係しているんだろう。
「で、そのげぇせん、とはげぇむをやる場所、という認識でいいのか? だが、なぜにスマホでできることをわざわざ?」
「まぁ百聞は一見にしかずだ。とにかく入ってみようぜ」
俺は二人の手を引いて、そのやや古めなゲーセンに足を踏み入れた。
○
「「うるさっ!!」」
店内で稼働している機器の音量のデカさに、二人は思わず耳をふさぐ。
確かに外に比べればうるさいっちゃうるさい。加えて狭い室内の中だから壁に反響して余計に大きく感じる。
「これがげぇせん? 騒音小屋の間違いじゃないのか……」
「耳がおかしくなるかと思いました……」
「まぁそういうところだからね」
だが、ぶっちゃけゲーセンの中ではマシな部類である。ひどいところなら会話すらまともにできなくなるからな。
「しかし、どこにげぇむがあるのだ? スマホもなにも置いておらんではないか……」
リファは近くにあったクレーンゲームを訝しげな目で見つめながら言う。
中にはサンリオキャラクターのぬいぐるみがゴロゴロ転がっていた。だが二人にはそれがゲームとしては見えていないようだ。
確かにゲーム=スマホゲーみたいな認識でいる人には珍しいものだらけだろうね。
「ゲームにも色々あるんだよ。前やった将棋とかも盤上遊戯っていっただろ」
「それはそうだが……じゃあこういうのも遊戯なのか?」
「ああ、ちょっとやってみようか」
俺は百円硬貨を財布から出し、筐体に投入。
ピコピコとサウンドが鳴り、あとはクレーンを操作して獲物をゲットするだけだ。
「この上の捕獲装置みたいなので、このぬいぐるみを捕まえるんだよ」
ボタンを押して位置を調整、そしてクレーンを下ろす。
ウィーン……。
という音とともに、アームが伸びて……。
スカッ。
という音とともに、空振り。クレーンは戻っていく。
「……」
「な?」
「いや、な? と言われても……」
「取れてないじゃないですか」
「まぁ失敗したってことだな。そう毎回うまくいくわけじゃない」
二人共無言。
その後びっくりしたように目を見開く。
「え? まさか今ので終わり?」
「違いますよね? 今百円使ってませんでした?」
まー、驚かれるのも無理はない。実際俺も未だにこれほどあっけないと思ったことないしね。
「ゲーセンのゲームっていうのは、スマホでやるのと違って一回遊ぶごとにお金がかかるんだ。このクレーンゲームも百円を使うことで一回アームを動かせる。それを何度も繰り返して、景品をゲットするっていう遊び」
「……この間のお祭りで見かけた『しゃてき』とか『わなげ』みたいですね。あこぎというかなんというか」
まぁそれに通ずるものはあるかもしれない。
油断してたら湯水のように金が減っていくわけだし。
「金の無駄だ」
腕を組んできっぱりとリファは言った。
「たったそれだけの動作に百円? しかも中のものが手に入る保証はない。どう考えたって大損ではないか。それに、この中にあるぬいぐるみとやら、そのへんの店で見たことあるぞ。そこで買うほうがよほど得ではないか」
と言われるのも完全に予想済み。
さて、ここで「うんそうだね、本当に無駄だね。遊ぶ価値ないね」と同調してしまったら、確実にここでの用は終わる。せっかく来たっていうのに、ゲーセンのネガティブキャンペーンみたいなことだけして帰るなんて、それはいくらなんでも面白くない。
だから俺は口の端を釣り上げてこう言う。
「ほほー、つまり騎士様はこれが取れる自信がないので?」
「何?」
ぴくん、と女騎士の片眉がヒクついた。
挑発成功。こういう奴は本当に扱いやすい。
「だってわかんない? 百円で中の物を取るチャンスがもらえるってことだよ? つまり一回で取れれば、百円で買えるのと同じなわけだ。でもリファは店で買うほうが得だって言った。それはつまり……それほど金を費やさなきゃできないってことだろぉ?」
「マスター……私を侮辱するか」
ぷぷぷ、とわざとらしく含み笑いする俺に対し、リファの怒り度メーターがメラメラと上がっていく。
「えー? 俺は事実からそう考えただけだしぃ? 確かに俺でもそう簡単にいかないレベルだから、お前にできるわけないなーって。あ、別にいいんだよ、無理にやらなくても」
「くぬぬぬぬ……」
ぷっくりと頬を膨らませて怒りんぼな女騎士様。プライドが高い性格ゆえにこういう些細なことでも張り合っちゃうのだ。
「いいだろう、その勝負受けて立つ!」
ドン! と冷めた態度から一変、凛々しい顔つきに鳴ると俺を押しのけてそのクレーンゲーム台の前に立った。
見事にやる気を出したリファ選手、さてさてお手並み拝見といこうか。
そんな時、後ろのクローラがぼそっと耳打ちした。
「主くん、結構意地悪なとこありますね」
「え? いや俺はただ……」
「冗談ですよ、ちゃんと意図はわかってますから」
そっと俺の手に自分のを絡ませると、彼女は僅かに頬を染めて言った。
「そういう裏返しの優しさも、好きですよ」
「……ありがと」
こっちもそっと繋ぐ手に力を込めて小声で返す。
そんなラブ甘な雰囲気になっていることなどつゆ知らず、リファは意気込んで自分の財布から百円を取り出した。
「ふん、たかがこの変なキカイで物を取るだけだろう。大したことはない……見てろ」
ちゃりん。
ピコピコピコ……。
ウィーン……。
すかっ。
かすりもせずにアームは元に戻っていく。
「……」
「……」
「……ふぅん、まぁこんなところか」
結果を見届けた女騎士は首や肩を回しながらわざとらしく言う。
「だいたい仕組みはわかった。よーし早速挑戦してみよう」
で、出た~wwwwww失敗したらリハーサル扱いにしてノーカンにし奴~wwwwwwww
ちゃりん。
ピコピコピコ……。
ウィーン……。
がしっ!
「お!?」
アームがぬいぐるみを挟み込んだ。
リファはもちろん、俺もクローラも思わず息を呑む。このまま獲得なるか!?
そして……。
ずずず……べちょっ。
「……あ、落ちた」
「あらら」
「……」
惜しい、というレベルではないけれど。それでも結構位置はずらせたと思う。
だが、当人は完全にいけると思っていたらしい。プルプルと台に置いた彼女の手が震え始めた。
「むむーっ!! なんでだこのー! ちゃんと掴めてただろーがっ!!」
「どうどう」
腕を振り上げて台パンしかけた彼女を、慌てて羽交い締めにして止めた。
「こういうのは根気が必要なんだよ。何度も挑戦してやるものなの」
「何が挑戦だー! こんなのこのげぇむを作った奴が簡単に取れないように細工してるんだろう!」
ドンピシャ大正解。
二回のプレイでその真相に気がつくとは、さすがだね。
だがここでそれを肯定したら火に油を注ぐ行為と一緒。下手したら店員にクレーム入れて最悪出禁なんてことになりかねない。
ではここで最善の一手は何か。そんなのは決まっている。
「リファさん、ここのあたりにひっかけたらいいんじゃないですか?」
クローラが台を横から覗きながら、ぬいぐるみの端っこの部分をちょいちょいと指さした。
そこは下を支える棒にほんのちょっぴりひっかかっている程度であり、狙い目であることは確実だった。
「ひっかける?」
「はい? 持ち上げることは難しくても、ちょっとずつずらしながら動かしていけば、いずれは押し出す形で落とすことができる。そういうやり口で攻めてみてはどうでしょう」
「……むぅ、言われてみれば確かにそうだな」
「そこができたら次はこっちだな、対角線上を順番に処理していけば、決して回数はかからないさ」
「うむむ……わかった」
言われた通りにリファは慎重にボタンを操作しにかかる。
全員が食い入るように色んな角度から見つめながら、色々アドバイスを出していった。
「リファさんもうちょっと先です!」
「おっと、ここらへんか?」
「そうそう、うまいうまい。あーっと、こっちはちょっと行き過ぎたな……」
「あー、駄目か……。よぉし、もう一回だ。次こそ……」
「あーちょっとリファさん勢い付け過ぎですよ! もう、貸してください」
「なっ、クローラ! 今私がやってるのに……って、あれ、意外と動いた……すごい」
・
・
・
・
・
そして。
「取れたーっっ!!」
念願の景品初ゲット。
俺達全員、さっきまでのシラケた雰囲気が嘘のような盛り上がりっぷりだった。
リファはその丸っこいぬいぐるみを愛おしそうに抱きしめながらぴょんぴょん飛び跳ねた。
「いやー! 結構時間はかかったがやっと手に入ったぞ!」
「おめでとうございます、リファさん」
「おう、クローラも礼を言うぞ。お前の助力があってこその成果だ」
「いえいえそんな、それを言うなら主くんにですよ。最初の方のアドバイス、全部彼の言ったことそのままお伝えしただけですし」
「え、そうなのか?」
目を丸くして女騎士がこちらを見つめてきたので、俺は肩を竦めた。
「リファ、確かにこういうのって一見金の無駄なように思える。でもその金額に見合う楽しさはあると思うんだ。現にお前、夢中になってただろ?」
「それは……」
「んでもって、苦労して商品をゲットすれば、それだけの達成感が得られる。店でただレジに持ってって買ったものとは違う。こうして三人で一緒に協力して手に入れたかけがえのない思い出だ」
「……」
ぎゅ、とリファはそのぬいぐるみを抱く腕に力を込めた。
そもそも彼女は、人形遊びなんぞに興味がない。店先に並んでたって普通にスルーするだけだろう。
それが今は、本当に大事そうにしている。つまりそれだけ思い入れがあるものになったということなんだ。それだけでもう、十分に遊ぶ価値はあったと言っていい。
「そうだな、げぇむなんてただの暇つぶしのためのものと思っていたが……こういう役割がちゃんとあるのだな」
「ああ。そう考えると、案外捨てたもんじゃないだろ?」
「うむ。さすがげぇせん……侮りがたしだ」
顎でぬいぐるみをもふもふしながら、笑顔で頷く女騎士。非常に可愛らしい構図である。
「マスターマスター、この他にも色々な形態のげぇむがあるのではないか?」
「もちろんあるともさ。ついてきな」
「ふふ、リファさんすごく楽しそうですね」
こうしてブックオフ以外にもお楽しみスポットが出来たリファは、人生初のゲーセンの散策に出発したのである。
○
「これは何だ? ばくそう……バイク? うわ、バイクが置いてあるぞバイクが!」
「レースゲームだな。これは本物じゃなくてバイク型のコントローラーさ。実際にバイクに乗ったような体験ができるってわけだ」
「そうなのか!? 以前免許の試験に落ちて乗れずじまいだったから、また駆ってみたかったのだ! よぉしやるぞ! 神速のナイトレイダーのチカラ、とくと見せてやるわ!」
バイクを現代の馬として憧れの目を向けていた彼女は、俄然やる気になってその台座に跨った。
ま、こういうのは元騎士の面目躍如って感じでぴったりだな。
そう思って見物しようとすると、クローラが脇から袖を引っ張ってきた。
「主くん主くん、これあと二つあるみたいですし、三人でまた一緒にやりましょうよ」
「お、おお。そうだね」
・
・
・
・
「いやー楽しかった。いつぞやの三人で免許が取れたらツーリングに行くという約束がよもやこんな形で実現するとは思ってなかったよ」
「クローラもとっても楽しかったです!」
異世界コンビはほんわかした顔でゲームを終了した。
まぁあちこちぶつけたりコースアウトしたり逆走したりと、惨憺たる結果だったけど。それでも順位関係なく、全員終始笑いながら楽しめた。
「次は何にしようかな。おお、なんだこれ……でんじゃらす、ぞんび? おいクローラ! 見てみろこれ、銃があるぞ銃が!」
「あ、ホントですね。どういうげぇむなのでしょう」
銃といえばクローラ。
肩に下げたホルスターに収まった大口径のモデルガンは彼女のトレードマークだ。
「これはこの銃がコントローラーで……画面に出てくる敵を狙って撃ち倒していくやつだね。クローラならこういの得意そうじゃない?」
「そ、そうですかね? やってみようかしら……」
「よし銃も二つあるみたいだし、ここは私も加勢するぞ。さっきのクレーンゲームのときの恩返しだ」
「あ、ありがとうございますリファさん。それでは一緒に頑張りましょう!」
・
・
・
・
「かーっ! 大迫力だったな。迫りくる異形、そしてそれを蹴散らす快感! 結構奮闘できた方ではないか? なぁクローラ?」
「ですねー。私も久々に柄にもなく本気になっちゃいました」
「な? 結構ゲーセンも楽しいだろ?」
「うむ、家ではできないすごいものがいっぱいあったし、一人でスマホでやるのよりも何十倍も盛り上がれる。来て良かった、本当に」
心底嬉しそうにリファは背伸びをしてそう言った。ゲーセン大成功、かな。
そうしてまたしばらく放浪していると……女騎士はまたまた面白そうなものを見つけた。
「うぉ、なんだこのでかいテレビみたいなのは!? のっくあうと……ふぁいたー?」
「格闘ゲームだな。キャラクターを操作して、相手を倒すんだ。操作方法はこのレバーを使って……」
「なるほど、ようするに相手と戦って勝つというやつだな。どれどれ……」
興味深そうにリファは椅子に座れると、俺の指示に従ってボタンやレバーを動かす。
「えっと、このボタンがパンチで、こっちがキックと……わかった?」
「ん。大体」
「じゃあいくぞ」
硬貨を投入して、キャラを選択すると戦闘画面に移行。試合開始だ。
「うぉ! 変な男が二人……なんだこれ、ちょと……どっちが私なんだ? あれ!?」
やはり初めてということもあってか、慌てふためくままガチャガチャと取り乱す女騎士。
それに比べて相手は驚くほど無駄のない動きで、リファを画面端に追い詰めていく。
「あー、リファそこでガードガード! やられるぞ」
「え? ガードってどれ? あ、これか? あれ? なんかできない……」
格ゲー特有のコマンド操作の難しさに悪戦苦闘する中、敵は恐ろしく的確にリファのHPを削っていった。
もはや一方的なリンチに等しい戦闘が続き、そして……。
「あ、負けって出た」
でっかく表示された「YOU LOSE」の文字に俺は肩を落とす。
いや別に勝てるとも思ってなかったけどさ。だけど、相手がCPUにしては妙に強すぎたような……。
プロの動きというか……素人目にも常人のそれじゃないってわかるくらいに。レベル調整とか間違ってないかこれ?
俺が眉をひそめる傍らで、リファは大きく息を吐いて肩の力を抜いた。
「なんだかわからないけど、でもすごかったな。漫画の世界に飛び込んだみたいだ」
おや、負けたにしては潔い反応。騎士様らしくもない。てっきりまた台パンし始めるもんかと思ったのに。
「こういうところは楽しむことが重要なのだろう? 負けはしたが、それもそれで一興だ」
それもそうか。勝ち負けばかりにこだわってちゃ、面白くないからな。
こんな出鼻くじかれるような負け方しても後腐れなく満足できるようなら、何も言うことはない。
「で、どうする? もう一回やるか?」
「んー。どうしようかなっ……て、あれ? なんか色々文字が出てきたぞ」
「あ? あー、これはランキングだね」
「ランキング?」
きょとんとして小首を傾げるリファに俺は簡単に説明した。
「このゲームが上手い奴の名前が順位づけされてるんだ。ほら、一位、二位ってあるだろ?」
「序列のようなものか? 私が騎士団にいた頃は確かに剣の腕や戦績でそういう格付けは折に触れてされるが……げぇむにもそんなものがあるんだな」
「ゲームも奥が深いからな。リファも練習すればここに名前載るかもよ?」
「いや、私はそんな……純粋に楽しめればそれでいいし……って、ん?」
するとリファが突然怪訝そうな表情になって、画面に顔を近づけた。
どうしたんだろう、と俺とクローラも横から覗いてみるが……理由は瞬時にわかった。
「これ、全員同じ名前じゃねーか」
そう。
一位から十位くらいまで、ぜーんぶ。他の名前一切なし。
まるでこいつしかこのゲームをやってないんじゃないかと疑うくらいに。
その全てを牛耳るその名は……。
「Alias」
……おい。まさかこれって……。
俺の背筋をいやーな汗が伝ったその時である。
「騎士のくせに、随分軟弱な腰抜けに成り下がったものねぇ」
向こう側の筐体から、甲高く、気取ったような口調の声が聞こえてきた。台詞からして、俺達に向けたものであることは明白。俺の中の予感が的中した瞬間である。
「楽しめればそれでいい? さっきから見てればただ連れとワイワイ馬鹿騒ぎやってただけじゃない。そんなんで満足するとか、自堕落もいいとこだわ」
銀髪ツインテール、赤い瞳、そしてゴスロリ服。
間違いなく、今画面に流れているランキングを制している人物その人だった。
「エリア……」
なんでこんなところにいるんだよ。
ていうか裏の筐体から出てきたってことは、まさか今のリファの相手……お前?
「貴様ぁ! 何しに来た!?」
リファは牙を剥き出し、クローラは急いで俺の背後に隠れた。
一瞬にして険悪ムードになったにもかかわらず、エリアはいつものすまし顔で鼻を鳴らす。
「ふん、それはこっちの台詞よ。あたしが楽しんでたときに、あんたらが乱入してきたんでしょうが」
「え? マジ?」
気づかんかった。ということは勝てない喧嘩をこっちが売っちゃってたわけだ。くそう、よく確認しておくんだったよ。まずいな、ここでリアルファイト始められたらそれこそやばい。
「こ、この世界で王様目指す人がゲームなんかやってる場合かよ」
「なんか? 違うわね。あたしは常に頂点に立たなければならない。そしてこのゲーセンは様々な形で勝者を競い合う場所。たとえゲームであろうと、このあたしより上に立つ奴がいるなんてことはあってはならないのよ!」
なぜその情熱をもっと別なところに使おうとしないんですかねぇ。どんだけこのゲームやりこんでるって話なんだよ。努力の方向音痴という言葉がこれほどぴったりな人物もいないよ。
「そうかそうか、そういうことか……なら話は別だ」
ゆらぁり、と女騎士は言いながら立ち上がるとエリアを真正面から睨みつけた。
「貴様が自分以外の奴が上に立つことを良しとしないのなら、私は貴様のような者が頂点に立つことを断じて許さない」
「あ?」
「たしかにゲーセンはみんなで楽しむものだと思っていた。だが今までやってきたゲームはどれも順位を競ったり勝敗を決したりするものばかりだった……つまり『そういう』遊び方もあるということだ」
腰に下げた100均ソードを抜き、剣先をエリアの喉笛に突きつけると女騎士はニヤリと笑い。
「別のゲームで勝負だ。エセ帝王。貴様に勝って、クローラの恨みを晴らしてやる」
「え? いやでも――」
「ん? どーした? まさかこのゲームでなきゃ勝つ自信がないのか? ん、んー?」
「なっ、そんなわけないでしょ! あたしは帝王なんだから、どんなゲームでだって勝ってやるわよ!」
「ほーう。じゃあせいぜいその吠え面かいてる姿が、負け犬の遠吠えにならんよう祈るんだな」
注)煽ってる方がついさっきボロ負けした側です。
「わ、わかったわよ! 二度とその減らず口きけないようにしてやるんだから! 覚悟しなさいよね!」
見事にリファのペースに乗せられてしまったエリアさん。
というわけで楽しいゲーセンタイムは、血で血を洗うワイヤードの元騎士VS元帝王の決闘タイムになってしまったのである。
○
・レースゲーム
「邪魔邪魔だ! どけこのー!」
「うっさいわね、そっちがどきなさいよ! ってか転倒して死ねぇ!!!」
「死ぬのは貴様だ! 喰らえナイトレイダーキッーク!」
「痛っ!? ちょ、リアル攻撃とか反則でしょーが! 帝王に向かってなんて無礼な!」
「ふーんだ、戦争に反則も帝王もあるか! 勝つためなら何でもするというのは貴様が散々言ってきたことだぞ!」
「こんのぉ! 言わせておけばぁ!」
……。
・シューティングゲーム
「どうしたどうしたー!? 貴様、頂点を目指すのではなかったのか!? にしては、私と得点が拮抗しておるようだが!?」
「ごちゃごちゃやかましいわよ! 大差つけてるわけでもないのによくそんな偉そうにできるわね! またこっちにちょっかい出して妨害しようったってそうはいかないんだから!」
「そうか? 私がしなくても別の奴がするかもしれないぞ? 例えば……お前が陥れたクローラが仕返しとばかりに背後からばきゅーんと――」
「なっ、嘘でしょ!? ――って、何もしてないじゃないの! 騙したわね!」
「騙す? 私はただ可能性を示唆しただけだもーんだ♪」
「あんたねぇー! あっ、他所見してたせいでHPが、リロード間に合わない! あぁ~」
……。
・格闘ゲーム
「ぜぇぜぇ……性懲りもなくまたこれで勝負とは……飛んで、火に入る……夏のっ、虫ねぇ……」
「ああ。まぁ少しは貴様の得意な分野に付き合ってやらんと不公平だからな。騎士道とはいついかなるときも、フェアな勝負で勝つことにあり」
注)今まで散々卑怯な真似してる人です。
「さっき負けた分を取り返そうってわけ? 上等よ……はぁ、はぁ……あたしの一番の喜びっての教えて、あげるわ……。あ、あんたみたいなリベンジ野郎を……返りぃ、討ちにする……ことなのよ!」
「くっくっく……いいだろう。やれるものならやってみろ」
・
・
・
・
「なっ……あたしが……はぁ、はぁ……まけ、た?」
「はーっはっはっは! どうだ見たか! このリファレンス、敵将の首討ち取ったり! 見てたかマスター!?」
「ああ」
事前に敵プレイヤーの体力を消耗させて集中力を欠かせることで、操作を鈍らせるという姑息極まりない方法で勝った女騎士の姿をな。
○
「覚えてなさいよーーー!! 次はこてんぱんにノシてやるんだから~ッッ!!」
号泣してゲーセンから逃げ帰ったエリアの背中をリファはニヤニヤしながら見送った。
「いやー。楽しいもんだな、ゲーセンというのは」
「……」
「ワイワイみんなではしゃぐ楽しさもあれば、他の奴と戦って勝利を得る楽しさもある。うむ、この私にぴったりな場所を見つけたぞ」
その楽しみ方が最初は純粋だったのに一日で歪みに歪んじまったけどな。どうしてこうなった。
「よし、これから授業が終わったらこのゲーセンに通うことにしよう」
「は!? 何言ってんだお前」
いきなりな提案に驚く俺の肩に、ポンと手を置いてリファは何故か自慢げに言う。
「まだ戦いは終わってない。あのエセ帝王は懲りずにまた挑戦してくるだろう。今回は私の機転で勝てたものの、次もうまくいくかはわからない。だから私は次なる決戦の時に備えて腕を磨かねばならん」
頑なに卑怯な手とは認めないスタイル。
騎士道ってのは曲がってても、本人がまっすぐって言えばまっすぐってことになるんですね。都合いいですね。
「特にあの『かくげぇ』とやらはみっちりやらねば。あやつが一番得意とするもので勝てば、さすがに心も折れるというものだろう」
「そんな短期間で上達するものでもないぞ。しかも相手は仮にもランキング全部占めるような奴だぜ?」
「何を言ってるのだ? 私がやるのは、どうやって相手を妨害して初心者でも勝てる状況に持っていくかの特訓だぞ?」
「ブレないリファさん素敵です」
「いやーそれほどでも……あるかな?」
「ああ」
そういう皮肉が通じないところも含めてな。
「よぉし! そうと決まれば明日から特訓だ。めざせゲーセンマスター! ふふ、ブックオフに代わる私の第二のオアシス。存分に楽しむぞ~」
「「……はぁ」」
意気揚々と宣言するリファを、俺とクローラは一歩引いた位置で静かに見守るのだった。
○
そして後日。
例のゲーセンにて。
「今度こそあんたの息の根を止めてやるわ、ポンコツ女騎士!」
「ふん。貴様に勝って、ランキングとやらを今度は私の名前で埋め尽くしてやろうではないか!」
再び相まみえるお二人さん。
「言っておくが、今までの私と思って侮らないほうがいいぞ」
「こっちのセリフよ。こないだのようにはいかないわ」
すごいオーラを出しながら激しく火花をちらし合っている。
さぁ、いよいよ二回目の決闘の火蓋が切って落とされる。
「じゃあさっそく戦場に赴こうではないか。もっとも私にとっては凱旋に等しいがな」
「その口から出るのがいつ悲鳴に変わるのが今から楽しみだわ」
言い合いながら、リファとエリアは格ゲーコーナーに向かう。
やはり勝負をつけるのはこれということで、二人の意見に相違はなかった。
リファもあれから多少は真面目に練習してたようだし、基本的な動きやコンボ技はそれなりにできるようになってる。
エリアに渡り合えるかどうかは微妙だけど……まぁそん時はそん時でどーせまた卑怯なことして勝つから問題ないか!
「主くん、色々諦めてます?」
「うん♥」
というわけで戦いの場へ。
いくつも立ち並ぶ格ゲーの筐体。しかしいつもとなんだか雰囲気が違う。
遊んでる人は誰もいないし、そこだけ妙に静かだった。
「あれ? なによこれ、電源入ってないじゃない」
「本当だ」
確かにどれも画面は真っ暗。ボタンを押してもうんともすんとも言わない。
「むぅ、これでは勝負ができないではないか……店の者を呼ぶか?」
「あ、待ってください。あそこに張り紙が」
「「「ん?」」」
クローラが指差す方向を、俺達は揃って目で追う。
そこには「格ゲーコーナー」という釣り看板の下に、コピー用紙にマジックで書かれた簡素な書き置きが貼り付けられていた。
【連日奇声をあげるお客様がいると多くの苦情があったため、閉鎖しました】
第二のオアシス、枯渇。
「ブックオフが……休み、だと!?」
いつものように半ドンで授業を終えた俺達は、暇になった午後の時間を利用して街へ遊びに出かけていた。
漫画好きのリファは大概オアシスであるブックオフに入り浸り、俺とクローラはその間別の場所を見て回るようにしてたのだが。ここにきて思わぬハプニング発生。
「『店内改装のためしばらく休業』だってさ。残念だったなぁリファ」
「そんな……私は何のために生きていけばよいのだ……」
へなへなとその場に崩れ落ちるリファ。
ブックオフが生きがいとかどんだけ低レベルな人生だよオイ。
「しょうがないよ、どっか別の所行けばいいじゃん。俺、他にもいいところいっぱい知ってるし」
「そうですよリファさん」
ひょこ、っと俺の後ろからクローラが顔を出して彼女を元気づけた。
「今までリファさんずっと別行動してて寂しかったんですし、久しぶりに三人一緒に回りましょうよ」
「うぅ~でも……」
「いいじゃん。どっちみちブックオフには寄れないんだし、気分転換だと思ってさ」
俺とクローラは二人で、リファの手を取って軽く引っ張った。
「それとも……俺達と一緒にいるのはイヤか?」
「い、いやなわけあるかっ!」
耳元でそう囁いた途端に、リファは顔を真っ赤にして即答した。そしてすぐ恥ずかしそうにしながらゴニョゴニョとこう続ける。
「二人は、その……私の大事な恋人だもん」
「よかった」
俺達はニッコリと笑い、その場から足早に去ることにした。
さて、デートコース変更だ。
○
「「げーせん?」」
着くなり異世界コンビは素っ頓狂な声を上げた。
八王子駅前徒歩数分のところにある、結構昔からある老舗のゲームセンターだ。
「ああ、俺もたまにしか来たことないんだけど……やっぱ大勢でワイワイやるならこういうところかなって」
「主くん……げーせん、とは一体?」
クローラが小首を傾げながら訊いてくる。
「ゲームセンター。略してゲーセン。ゲームは一度はやったことあるだろ?」
「げぇむ? あぁ私のスマホに入ってたやつか」
リファは自分の端末機を操作しながら言う。
この世界に来て二人共かなり経つが、あまりゲームの類はやらせたことがない。
そもそも、まだこの世界のメディア媒体の知識自体身についてないわけだから、そんなのをやらせてもちんぷんかんぷんだろうし。
リファは例外的にいくつかのスマホゲーを俺が許可したときだけやってはいたけれど、どれも決まって数日で飽きた。
「なんかどれもこれもやってることが同じでつまらん」
だとさ。
そりゃそうだ。スマホゲーなんてガチャ回してカード集めて、あとは画面連打するだけの作業に他ならない。そのくせ課金しないとまともに遊べやしない、毎日ログインしなきゃまともな恩恵すら受けられない、デメリットばっかりだ。
「でもクローラは、そういうシステムとか設定とかを作れる人は尊敬しますよ?」
それを横で眺めていたクローラはいつも決まってそう言う。
「つまらないと思われてても、現にこうして大勢の人が遊んでる。つまり人を惹きつけるだけの力がある。同じものが溢れ出したら、それと差別化するためにまた色々考える……それってすごく大変だし、立派なことだと思います」
彼女は受け手としての感想よりも、創り手としての立場からよくものを言う。
キカイという異世界での一大インフラの創始者だもんな。そういうところも関係しているんだろう。
「で、そのげぇせん、とはげぇむをやる場所、という認識でいいのか? だが、なぜにスマホでできることをわざわざ?」
「まぁ百聞は一見にしかずだ。とにかく入ってみようぜ」
俺は二人の手を引いて、そのやや古めなゲーセンに足を踏み入れた。
○
「「うるさっ!!」」
店内で稼働している機器の音量のデカさに、二人は思わず耳をふさぐ。
確かに外に比べればうるさいっちゃうるさい。加えて狭い室内の中だから壁に反響して余計に大きく感じる。
「これがげぇせん? 騒音小屋の間違いじゃないのか……」
「耳がおかしくなるかと思いました……」
「まぁそういうところだからね」
だが、ぶっちゃけゲーセンの中ではマシな部類である。ひどいところなら会話すらまともにできなくなるからな。
「しかし、どこにげぇむがあるのだ? スマホもなにも置いておらんではないか……」
リファは近くにあったクレーンゲームを訝しげな目で見つめながら言う。
中にはサンリオキャラクターのぬいぐるみがゴロゴロ転がっていた。だが二人にはそれがゲームとしては見えていないようだ。
確かにゲーム=スマホゲーみたいな認識でいる人には珍しいものだらけだろうね。
「ゲームにも色々あるんだよ。前やった将棋とかも盤上遊戯っていっただろ」
「それはそうだが……じゃあこういうのも遊戯なのか?」
「ああ、ちょっとやってみようか」
俺は百円硬貨を財布から出し、筐体に投入。
ピコピコとサウンドが鳴り、あとはクレーンを操作して獲物をゲットするだけだ。
「この上の捕獲装置みたいなので、このぬいぐるみを捕まえるんだよ」
ボタンを押して位置を調整、そしてクレーンを下ろす。
ウィーン……。
という音とともに、アームが伸びて……。
スカッ。
という音とともに、空振り。クレーンは戻っていく。
「……」
「な?」
「いや、な? と言われても……」
「取れてないじゃないですか」
「まぁ失敗したってことだな。そう毎回うまくいくわけじゃない」
二人共無言。
その後びっくりしたように目を見開く。
「え? まさか今ので終わり?」
「違いますよね? 今百円使ってませんでした?」
まー、驚かれるのも無理はない。実際俺も未だにこれほどあっけないと思ったことないしね。
「ゲーセンのゲームっていうのは、スマホでやるのと違って一回遊ぶごとにお金がかかるんだ。このクレーンゲームも百円を使うことで一回アームを動かせる。それを何度も繰り返して、景品をゲットするっていう遊び」
「……この間のお祭りで見かけた『しゃてき』とか『わなげ』みたいですね。あこぎというかなんというか」
まぁそれに通ずるものはあるかもしれない。
油断してたら湯水のように金が減っていくわけだし。
「金の無駄だ」
腕を組んできっぱりとリファは言った。
「たったそれだけの動作に百円? しかも中のものが手に入る保証はない。どう考えたって大損ではないか。それに、この中にあるぬいぐるみとやら、そのへんの店で見たことあるぞ。そこで買うほうがよほど得ではないか」
と言われるのも完全に予想済み。
さて、ここで「うんそうだね、本当に無駄だね。遊ぶ価値ないね」と同調してしまったら、確実にここでの用は終わる。せっかく来たっていうのに、ゲーセンのネガティブキャンペーンみたいなことだけして帰るなんて、それはいくらなんでも面白くない。
だから俺は口の端を釣り上げてこう言う。
「ほほー、つまり騎士様はこれが取れる自信がないので?」
「何?」
ぴくん、と女騎士の片眉がヒクついた。
挑発成功。こういう奴は本当に扱いやすい。
「だってわかんない? 百円で中の物を取るチャンスがもらえるってことだよ? つまり一回で取れれば、百円で買えるのと同じなわけだ。でもリファは店で買うほうが得だって言った。それはつまり……それほど金を費やさなきゃできないってことだろぉ?」
「マスター……私を侮辱するか」
ぷぷぷ、とわざとらしく含み笑いする俺に対し、リファの怒り度メーターがメラメラと上がっていく。
「えー? 俺は事実からそう考えただけだしぃ? 確かに俺でもそう簡単にいかないレベルだから、お前にできるわけないなーって。あ、別にいいんだよ、無理にやらなくても」
「くぬぬぬぬ……」
ぷっくりと頬を膨らませて怒りんぼな女騎士様。プライドが高い性格ゆえにこういう些細なことでも張り合っちゃうのだ。
「いいだろう、その勝負受けて立つ!」
ドン! と冷めた態度から一変、凛々しい顔つきに鳴ると俺を押しのけてそのクレーンゲーム台の前に立った。
見事にやる気を出したリファ選手、さてさてお手並み拝見といこうか。
そんな時、後ろのクローラがぼそっと耳打ちした。
「主くん、結構意地悪なとこありますね」
「え? いや俺はただ……」
「冗談ですよ、ちゃんと意図はわかってますから」
そっと俺の手に自分のを絡ませると、彼女は僅かに頬を染めて言った。
「そういう裏返しの優しさも、好きですよ」
「……ありがと」
こっちもそっと繋ぐ手に力を込めて小声で返す。
そんなラブ甘な雰囲気になっていることなどつゆ知らず、リファは意気込んで自分の財布から百円を取り出した。
「ふん、たかがこの変なキカイで物を取るだけだろう。大したことはない……見てろ」
ちゃりん。
ピコピコピコ……。
ウィーン……。
すかっ。
かすりもせずにアームは元に戻っていく。
「……」
「……」
「……ふぅん、まぁこんなところか」
結果を見届けた女騎士は首や肩を回しながらわざとらしく言う。
「だいたい仕組みはわかった。よーし早速挑戦してみよう」
で、出た~wwwwww失敗したらリハーサル扱いにしてノーカンにし奴~wwwwwwww
ちゃりん。
ピコピコピコ……。
ウィーン……。
がしっ!
「お!?」
アームがぬいぐるみを挟み込んだ。
リファはもちろん、俺もクローラも思わず息を呑む。このまま獲得なるか!?
そして……。
ずずず……べちょっ。
「……あ、落ちた」
「あらら」
「……」
惜しい、というレベルではないけれど。それでも結構位置はずらせたと思う。
だが、当人は完全にいけると思っていたらしい。プルプルと台に置いた彼女の手が震え始めた。
「むむーっ!! なんでだこのー! ちゃんと掴めてただろーがっ!!」
「どうどう」
腕を振り上げて台パンしかけた彼女を、慌てて羽交い締めにして止めた。
「こういうのは根気が必要なんだよ。何度も挑戦してやるものなの」
「何が挑戦だー! こんなのこのげぇむを作った奴が簡単に取れないように細工してるんだろう!」
ドンピシャ大正解。
二回のプレイでその真相に気がつくとは、さすがだね。
だがここでそれを肯定したら火に油を注ぐ行為と一緒。下手したら店員にクレーム入れて最悪出禁なんてことになりかねない。
ではここで最善の一手は何か。そんなのは決まっている。
「リファさん、ここのあたりにひっかけたらいいんじゃないですか?」
クローラが台を横から覗きながら、ぬいぐるみの端っこの部分をちょいちょいと指さした。
そこは下を支える棒にほんのちょっぴりひっかかっている程度であり、狙い目であることは確実だった。
「ひっかける?」
「はい? 持ち上げることは難しくても、ちょっとずつずらしながら動かしていけば、いずれは押し出す形で落とすことができる。そういうやり口で攻めてみてはどうでしょう」
「……むぅ、言われてみれば確かにそうだな」
「そこができたら次はこっちだな、対角線上を順番に処理していけば、決して回数はかからないさ」
「うむむ……わかった」
言われた通りにリファは慎重にボタンを操作しにかかる。
全員が食い入るように色んな角度から見つめながら、色々アドバイスを出していった。
「リファさんもうちょっと先です!」
「おっと、ここらへんか?」
「そうそう、うまいうまい。あーっと、こっちはちょっと行き過ぎたな……」
「あー、駄目か……。よぉし、もう一回だ。次こそ……」
「あーちょっとリファさん勢い付け過ぎですよ! もう、貸してください」
「なっ、クローラ! 今私がやってるのに……って、あれ、意外と動いた……すごい」
・
・
・
・
・
そして。
「取れたーっっ!!」
念願の景品初ゲット。
俺達全員、さっきまでのシラケた雰囲気が嘘のような盛り上がりっぷりだった。
リファはその丸っこいぬいぐるみを愛おしそうに抱きしめながらぴょんぴょん飛び跳ねた。
「いやー! 結構時間はかかったがやっと手に入ったぞ!」
「おめでとうございます、リファさん」
「おう、クローラも礼を言うぞ。お前の助力があってこその成果だ」
「いえいえそんな、それを言うなら主くんにですよ。最初の方のアドバイス、全部彼の言ったことそのままお伝えしただけですし」
「え、そうなのか?」
目を丸くして女騎士がこちらを見つめてきたので、俺は肩を竦めた。
「リファ、確かにこういうのって一見金の無駄なように思える。でもその金額に見合う楽しさはあると思うんだ。現にお前、夢中になってただろ?」
「それは……」
「んでもって、苦労して商品をゲットすれば、それだけの達成感が得られる。店でただレジに持ってって買ったものとは違う。こうして三人で一緒に協力して手に入れたかけがえのない思い出だ」
「……」
ぎゅ、とリファはそのぬいぐるみを抱く腕に力を込めた。
そもそも彼女は、人形遊びなんぞに興味がない。店先に並んでたって普通にスルーするだけだろう。
それが今は、本当に大事そうにしている。つまりそれだけ思い入れがあるものになったということなんだ。それだけでもう、十分に遊ぶ価値はあったと言っていい。
「そうだな、げぇむなんてただの暇つぶしのためのものと思っていたが……こういう役割がちゃんとあるのだな」
「ああ。そう考えると、案外捨てたもんじゃないだろ?」
「うむ。さすがげぇせん……侮りがたしだ」
顎でぬいぐるみをもふもふしながら、笑顔で頷く女騎士。非常に可愛らしい構図である。
「マスターマスター、この他にも色々な形態のげぇむがあるのではないか?」
「もちろんあるともさ。ついてきな」
「ふふ、リファさんすごく楽しそうですね」
こうしてブックオフ以外にもお楽しみスポットが出来たリファは、人生初のゲーセンの散策に出発したのである。
○
「これは何だ? ばくそう……バイク? うわ、バイクが置いてあるぞバイクが!」
「レースゲームだな。これは本物じゃなくてバイク型のコントローラーさ。実際にバイクに乗ったような体験ができるってわけだ」
「そうなのか!? 以前免許の試験に落ちて乗れずじまいだったから、また駆ってみたかったのだ! よぉしやるぞ! 神速のナイトレイダーのチカラ、とくと見せてやるわ!」
バイクを現代の馬として憧れの目を向けていた彼女は、俄然やる気になってその台座に跨った。
ま、こういうのは元騎士の面目躍如って感じでぴったりだな。
そう思って見物しようとすると、クローラが脇から袖を引っ張ってきた。
「主くん主くん、これあと二つあるみたいですし、三人でまた一緒にやりましょうよ」
「お、おお。そうだね」
・
・
・
・
「いやー楽しかった。いつぞやの三人で免許が取れたらツーリングに行くという約束がよもやこんな形で実現するとは思ってなかったよ」
「クローラもとっても楽しかったです!」
異世界コンビはほんわかした顔でゲームを終了した。
まぁあちこちぶつけたりコースアウトしたり逆走したりと、惨憺たる結果だったけど。それでも順位関係なく、全員終始笑いながら楽しめた。
「次は何にしようかな。おお、なんだこれ……でんじゃらす、ぞんび? おいクローラ! 見てみろこれ、銃があるぞ銃が!」
「あ、ホントですね。どういうげぇむなのでしょう」
銃といえばクローラ。
肩に下げたホルスターに収まった大口径のモデルガンは彼女のトレードマークだ。
「これはこの銃がコントローラーで……画面に出てくる敵を狙って撃ち倒していくやつだね。クローラならこういの得意そうじゃない?」
「そ、そうですかね? やってみようかしら……」
「よし銃も二つあるみたいだし、ここは私も加勢するぞ。さっきのクレーンゲームのときの恩返しだ」
「あ、ありがとうございますリファさん。それでは一緒に頑張りましょう!」
・
・
・
・
「かーっ! 大迫力だったな。迫りくる異形、そしてそれを蹴散らす快感! 結構奮闘できた方ではないか? なぁクローラ?」
「ですねー。私も久々に柄にもなく本気になっちゃいました」
「な? 結構ゲーセンも楽しいだろ?」
「うむ、家ではできないすごいものがいっぱいあったし、一人でスマホでやるのよりも何十倍も盛り上がれる。来て良かった、本当に」
心底嬉しそうにリファは背伸びをしてそう言った。ゲーセン大成功、かな。
そうしてまたしばらく放浪していると……女騎士はまたまた面白そうなものを見つけた。
「うぉ、なんだこのでかいテレビみたいなのは!? のっくあうと……ふぁいたー?」
「格闘ゲームだな。キャラクターを操作して、相手を倒すんだ。操作方法はこのレバーを使って……」
「なるほど、ようするに相手と戦って勝つというやつだな。どれどれ……」
興味深そうにリファは椅子に座れると、俺の指示に従ってボタンやレバーを動かす。
「えっと、このボタンがパンチで、こっちがキックと……わかった?」
「ん。大体」
「じゃあいくぞ」
硬貨を投入して、キャラを選択すると戦闘画面に移行。試合開始だ。
「うぉ! 変な男が二人……なんだこれ、ちょと……どっちが私なんだ? あれ!?」
やはり初めてということもあってか、慌てふためくままガチャガチャと取り乱す女騎士。
それに比べて相手は驚くほど無駄のない動きで、リファを画面端に追い詰めていく。
「あー、リファそこでガードガード! やられるぞ」
「え? ガードってどれ? あ、これか? あれ? なんかできない……」
格ゲー特有のコマンド操作の難しさに悪戦苦闘する中、敵は恐ろしく的確にリファのHPを削っていった。
もはや一方的なリンチに等しい戦闘が続き、そして……。
「あ、負けって出た」
でっかく表示された「YOU LOSE」の文字に俺は肩を落とす。
いや別に勝てるとも思ってなかったけどさ。だけど、相手がCPUにしては妙に強すぎたような……。
プロの動きというか……素人目にも常人のそれじゃないってわかるくらいに。レベル調整とか間違ってないかこれ?
俺が眉をひそめる傍らで、リファは大きく息を吐いて肩の力を抜いた。
「なんだかわからないけど、でもすごかったな。漫画の世界に飛び込んだみたいだ」
おや、負けたにしては潔い反応。騎士様らしくもない。てっきりまた台パンし始めるもんかと思ったのに。
「こういうところは楽しむことが重要なのだろう? 負けはしたが、それもそれで一興だ」
それもそうか。勝ち負けばかりにこだわってちゃ、面白くないからな。
こんな出鼻くじかれるような負け方しても後腐れなく満足できるようなら、何も言うことはない。
「で、どうする? もう一回やるか?」
「んー。どうしようかなっ……て、あれ? なんか色々文字が出てきたぞ」
「あ? あー、これはランキングだね」
「ランキング?」
きょとんとして小首を傾げるリファに俺は簡単に説明した。
「このゲームが上手い奴の名前が順位づけされてるんだ。ほら、一位、二位ってあるだろ?」
「序列のようなものか? 私が騎士団にいた頃は確かに剣の腕や戦績でそういう格付けは折に触れてされるが……げぇむにもそんなものがあるんだな」
「ゲームも奥が深いからな。リファも練習すればここに名前載るかもよ?」
「いや、私はそんな……純粋に楽しめればそれでいいし……って、ん?」
するとリファが突然怪訝そうな表情になって、画面に顔を近づけた。
どうしたんだろう、と俺とクローラも横から覗いてみるが……理由は瞬時にわかった。
「これ、全員同じ名前じゃねーか」
そう。
一位から十位くらいまで、ぜーんぶ。他の名前一切なし。
まるでこいつしかこのゲームをやってないんじゃないかと疑うくらいに。
その全てを牛耳るその名は……。
「Alias」
……おい。まさかこれって……。
俺の背筋をいやーな汗が伝ったその時である。
「騎士のくせに、随分軟弱な腰抜けに成り下がったものねぇ」
向こう側の筐体から、甲高く、気取ったような口調の声が聞こえてきた。台詞からして、俺達に向けたものであることは明白。俺の中の予感が的中した瞬間である。
「楽しめればそれでいい? さっきから見てればただ連れとワイワイ馬鹿騒ぎやってただけじゃない。そんなんで満足するとか、自堕落もいいとこだわ」
銀髪ツインテール、赤い瞳、そしてゴスロリ服。
間違いなく、今画面に流れているランキングを制している人物その人だった。
「エリア……」
なんでこんなところにいるんだよ。
ていうか裏の筐体から出てきたってことは、まさか今のリファの相手……お前?
「貴様ぁ! 何しに来た!?」
リファは牙を剥き出し、クローラは急いで俺の背後に隠れた。
一瞬にして険悪ムードになったにもかかわらず、エリアはいつものすまし顔で鼻を鳴らす。
「ふん、それはこっちの台詞よ。あたしが楽しんでたときに、あんたらが乱入してきたんでしょうが」
「え? マジ?」
気づかんかった。ということは勝てない喧嘩をこっちが売っちゃってたわけだ。くそう、よく確認しておくんだったよ。まずいな、ここでリアルファイト始められたらそれこそやばい。
「こ、この世界で王様目指す人がゲームなんかやってる場合かよ」
「なんか? 違うわね。あたしは常に頂点に立たなければならない。そしてこのゲーセンは様々な形で勝者を競い合う場所。たとえゲームであろうと、このあたしより上に立つ奴がいるなんてことはあってはならないのよ!」
なぜその情熱をもっと別なところに使おうとしないんですかねぇ。どんだけこのゲームやりこんでるって話なんだよ。努力の方向音痴という言葉がこれほどぴったりな人物もいないよ。
「そうかそうか、そういうことか……なら話は別だ」
ゆらぁり、と女騎士は言いながら立ち上がるとエリアを真正面から睨みつけた。
「貴様が自分以外の奴が上に立つことを良しとしないのなら、私は貴様のような者が頂点に立つことを断じて許さない」
「あ?」
「たしかにゲーセンはみんなで楽しむものだと思っていた。だが今までやってきたゲームはどれも順位を競ったり勝敗を決したりするものばかりだった……つまり『そういう』遊び方もあるということだ」
腰に下げた100均ソードを抜き、剣先をエリアの喉笛に突きつけると女騎士はニヤリと笑い。
「別のゲームで勝負だ。エセ帝王。貴様に勝って、クローラの恨みを晴らしてやる」
「え? いやでも――」
「ん? どーした? まさかこのゲームでなきゃ勝つ自信がないのか? ん、んー?」
「なっ、そんなわけないでしょ! あたしは帝王なんだから、どんなゲームでだって勝ってやるわよ!」
「ほーう。じゃあせいぜいその吠え面かいてる姿が、負け犬の遠吠えにならんよう祈るんだな」
注)煽ってる方がついさっきボロ負けした側です。
「わ、わかったわよ! 二度とその減らず口きけないようにしてやるんだから! 覚悟しなさいよね!」
見事にリファのペースに乗せられてしまったエリアさん。
というわけで楽しいゲーセンタイムは、血で血を洗うワイヤードの元騎士VS元帝王の決闘タイムになってしまったのである。
○
・レースゲーム
「邪魔邪魔だ! どけこのー!」
「うっさいわね、そっちがどきなさいよ! ってか転倒して死ねぇ!!!」
「死ぬのは貴様だ! 喰らえナイトレイダーキッーク!」
「痛っ!? ちょ、リアル攻撃とか反則でしょーが! 帝王に向かってなんて無礼な!」
「ふーんだ、戦争に反則も帝王もあるか! 勝つためなら何でもするというのは貴様が散々言ってきたことだぞ!」
「こんのぉ! 言わせておけばぁ!」
……。
・シューティングゲーム
「どうしたどうしたー!? 貴様、頂点を目指すのではなかったのか!? にしては、私と得点が拮抗しておるようだが!?」
「ごちゃごちゃやかましいわよ! 大差つけてるわけでもないのによくそんな偉そうにできるわね! またこっちにちょっかい出して妨害しようったってそうはいかないんだから!」
「そうか? 私がしなくても別の奴がするかもしれないぞ? 例えば……お前が陥れたクローラが仕返しとばかりに背後からばきゅーんと――」
「なっ、嘘でしょ!? ――って、何もしてないじゃないの! 騙したわね!」
「騙す? 私はただ可能性を示唆しただけだもーんだ♪」
「あんたねぇー! あっ、他所見してたせいでHPが、リロード間に合わない! あぁ~」
……。
・格闘ゲーム
「ぜぇぜぇ……性懲りもなくまたこれで勝負とは……飛んで、火に入る……夏のっ、虫ねぇ……」
「ああ。まぁ少しは貴様の得意な分野に付き合ってやらんと不公平だからな。騎士道とはいついかなるときも、フェアな勝負で勝つことにあり」
注)今まで散々卑怯な真似してる人です。
「さっき負けた分を取り返そうってわけ? 上等よ……はぁ、はぁ……あたしの一番の喜びっての教えて、あげるわ……。あ、あんたみたいなリベンジ野郎を……返りぃ、討ちにする……ことなのよ!」
「くっくっく……いいだろう。やれるものならやってみろ」
・
・
・
・
「なっ……あたしが……はぁ、はぁ……まけ、た?」
「はーっはっはっは! どうだ見たか! このリファレンス、敵将の首討ち取ったり! 見てたかマスター!?」
「ああ」
事前に敵プレイヤーの体力を消耗させて集中力を欠かせることで、操作を鈍らせるという姑息極まりない方法で勝った女騎士の姿をな。
○
「覚えてなさいよーーー!! 次はこてんぱんにノシてやるんだから~ッッ!!」
号泣してゲーセンから逃げ帰ったエリアの背中をリファはニヤニヤしながら見送った。
「いやー。楽しいもんだな、ゲーセンというのは」
「……」
「ワイワイみんなではしゃぐ楽しさもあれば、他の奴と戦って勝利を得る楽しさもある。うむ、この私にぴったりな場所を見つけたぞ」
その楽しみ方が最初は純粋だったのに一日で歪みに歪んじまったけどな。どうしてこうなった。
「よし、これから授業が終わったらこのゲーセンに通うことにしよう」
「は!? 何言ってんだお前」
いきなりな提案に驚く俺の肩に、ポンと手を置いてリファは何故か自慢げに言う。
「まだ戦いは終わってない。あのエセ帝王は懲りずにまた挑戦してくるだろう。今回は私の機転で勝てたものの、次もうまくいくかはわからない。だから私は次なる決戦の時に備えて腕を磨かねばならん」
頑なに卑怯な手とは認めないスタイル。
騎士道ってのは曲がってても、本人がまっすぐって言えばまっすぐってことになるんですね。都合いいですね。
「特にあの『かくげぇ』とやらはみっちりやらねば。あやつが一番得意とするもので勝てば、さすがに心も折れるというものだろう」
「そんな短期間で上達するものでもないぞ。しかも相手は仮にもランキング全部占めるような奴だぜ?」
「何を言ってるのだ? 私がやるのは、どうやって相手を妨害して初心者でも勝てる状況に持っていくかの特訓だぞ?」
「ブレないリファさん素敵です」
「いやーそれほどでも……あるかな?」
「ああ」
そういう皮肉が通じないところも含めてな。
「よぉし! そうと決まれば明日から特訓だ。めざせゲーセンマスター! ふふ、ブックオフに代わる私の第二のオアシス。存分に楽しむぞ~」
「「……はぁ」」
意気揚々と宣言するリファを、俺とクローラは一歩引いた位置で静かに見守るのだった。
○
そして後日。
例のゲーセンにて。
「今度こそあんたの息の根を止めてやるわ、ポンコツ女騎士!」
「ふん。貴様に勝って、ランキングとやらを今度は私の名前で埋め尽くしてやろうではないか!」
再び相まみえるお二人さん。
「言っておくが、今までの私と思って侮らないほうがいいぞ」
「こっちのセリフよ。こないだのようにはいかないわ」
すごいオーラを出しながら激しく火花をちらし合っている。
さぁ、いよいよ二回目の決闘の火蓋が切って落とされる。
「じゃあさっそく戦場に赴こうではないか。もっとも私にとっては凱旋に等しいがな」
「その口から出るのがいつ悲鳴に変わるのが今から楽しみだわ」
言い合いながら、リファとエリアは格ゲーコーナーに向かう。
やはり勝負をつけるのはこれということで、二人の意見に相違はなかった。
リファもあれから多少は真面目に練習してたようだし、基本的な動きやコンボ技はそれなりにできるようになってる。
エリアに渡り合えるかどうかは微妙だけど……まぁそん時はそん時でどーせまた卑怯なことして勝つから問題ないか!
「主くん、色々諦めてます?」
「うん♥」
というわけで戦いの場へ。
いくつも立ち並ぶ格ゲーの筐体。しかしいつもとなんだか雰囲気が違う。
遊んでる人は誰もいないし、そこだけ妙に静かだった。
「あれ? なによこれ、電源入ってないじゃない」
「本当だ」
確かにどれも画面は真っ暗。ボタンを押してもうんともすんとも言わない。
「むぅ、これでは勝負ができないではないか……店の者を呼ぶか?」
「あ、待ってください。あそこに張り紙が」
「「「ん?」」」
クローラが指差す方向を、俺達は揃って目で追う。
そこには「格ゲーコーナー」という釣り看板の下に、コピー用紙にマジックで書かれた簡素な書き置きが貼り付けられていた。
【連日奇声をあげるお客様がいると多くの苦情があったため、閉鎖しました】
第二のオアシス、枯渇。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる