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レベル51.女騎士と女奴隷と日常②
12.女奴隷と兄
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「ちょっといいかな」
授業が始まる前。
席についた俺の肩を、後ろから誰かが叩いてきた。
振り返ってみると、そこには一人の若い男子学生がいた。
一言で言えば美青年。ほっそりとした体つきに色白の肌。男にしては長めの茶髪を、ゴムバンドで結わえて肩から前に垂らしている。
そんな奴が、こちらをニコニコと笑顔で見つめてきていのである。爽やかな、だけどどこか含みを感じる……そんな笑みだ。
にしても一体誰だ? 全然見覚えないけど。
「な、なんでしょう?」
ぎこちなく俺が返事をすると、彼は両手を合わせて拝みのポーズを取るとこう言った。
「ごめん、スマホの充電器持ってたら貸してもらっていいかな?」
「は? 充電器?」
「うん、実は僕のiPadがもう電池切れそうでね。これがないと今日の授業のノートが取れないんだ。頼むよ」
と、彼は大きめのタブレット端末を取り出してメニュー画面を見せてきた。確かに右上のバッテリーは既に風前の灯火である。
最近の授業では、こうして電子機器でノートを取る人も珍しくはない。管理や編集も便利だし、他人との共有や印刷もラクラクだからな。唯一のデメリットと言えば、こうして電池が切れると全ておじゃんになるというところだ。
「まぁ、いいっすよ」
俺は二つ返事でOKを出し、自分のトートバッグから充電器を取り出すと彼に渡した。
「ありがとう! 助かったよ。君、良い人だね」
ニヤニヤと笑みを絶やさずに礼を言うと、青年は充電器を机に備え付けられている電源に接続し、タッチペンを画面に走らせた。
「そうそう、ちゃんとお礼をしなくっちゃねぇ。なにか欲しいものとかあるかい? お昼ご飯で良ければ奢らせてもらうけど?」
「いやいや、別にいいですよ。それくらい……気にすることないんで」
「まぁそう言わずに。……そうだ、君彼女とかはいる?」
「は!?」
いきなり何を言ってんだこいつ!? 初対面なのに失礼なやっちゃなぁ。
もし俺にリファとクローラという愛しい恋人さんがいなけりゃ、確実にブチキレ確定だぜ。
「よし、じゃあこうしよう。君にぴったりな彼女候補を探してあげるよ。こう見えても僕は顔が広くてね。気に入ったタイプの娘が見つかったら、顔合わせとかのセッティングもするからさ」
「ちょちょちょちょ! 何やってんだよあんた!」
「さぁ、検索を始めよう」
俺は慌てて止めようとするがすでに奴は、恐ろしく速いスピードでタブレットを操作。いかん、今はリファとクローラは一緒にトイレに行ってるから大丈夫だけど、もし戻ってきて「君にお似合いの女の子は~」なんて会話を聞かれたら、それこそただじゃ済まされない。
「いや、あの彼女ならもういるから! そういうの必要ないんで!」
「よし、検索完了」
「早っ!?」
待て待て待て。検索って何かしら条件入れる必要あるよね? なんか俺の好みの性格とか年齢とか、そういうのから総合的に判断してマッチする人を絞っていくもんじゃないの? 俺もまだ何も言ってないんだけど? 「何やってんだよ」しか言ってないんだけど!? 何も絞らずに全人類の女性恋愛対象にできるほど俺守備範囲広くないよ?
「えー、君にぴったりな女の子はぁー……」
「聞けよ人の話!」
「まず、髪が茶色でー。ちょっと化粧っ気が強くてー。肌も少々焼けててー。茶目っ気たっぷりの年下の後輩でー」
べらべらとそのキザ男は、タブレットに表示されている内容をわざとらしく読み上げていく。くそ、こんなことになるなら充電器なんて貸すんじゃなかったよ! 完全に恩を仇で返されてるじゃねぇか!
って、待てよ?
茶髪? 化粧? 焼けてる肌? 年下の後輩?
あれれー、おかしいな。まだ実名出てないけどすんごい心当たり出てきちゃったんだが。嘘だよなオイ。
早くも嫌な汗がだらだらと全身から吹き出す俺に対し、キザ男はひょうひょうと告げた。
「今君のすぐ傍に立っている女性……かな?」
「!?」
反射的に背後を振り返ると……。
いたわ。今彼が言ってた通りのギャル女が。
「……」
毎度おなじみ、木村渚であった。
でもなんかいつもと様子が違う。
普段だったら背後からいきなり抱きついてくるかケツを引っ叩いてくるはずなのに。
だが今は、プルプルと握った拳を振るわせて俺達二人を恨めしそうに睨みつけている。
なんか……怒ってる?
「センパイに何してんのよ……兄貴っ!」
と、彼女は顔を真赤にしてそう怒鳴った。
……は?
あにき?
アニキ?
ANIKI?
……。
は!?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
○
「いやーごめんごめん。騙すつもりはなかったんだけどね。いや、別に騙してないか。訊かれていたわけじゃないし」
タブレットをスリープモードにしながら彼――渚兄はヘラヘラと悪びれる素振りも見せずに謝罪した。
俺はすかさず横の席でふてくされているギャルに耳打ち。
「オイ渚、どういうことだよ! 兄って、聞いてねぇぞ!」
「訊かれていたわけじゃないし」
ぷいっと顔を背けて彼女は同じセリフを吐く。
何でこんな不機嫌なんだ? あんまり家族関係良好じゃないってことなのかな。兄の方は全然そんなふうには見えないけど。
「改めまして、こんにちは。木村渚の兄、木村乃愛といいます。愛に及ぶと書いて乃愛。その名の通り愛のために生きる男さ。僕は三年生で君らよりは年上だけど、気軽に乃愛って呼んでくれていいから。よろしくね」
渚兄こと、木村乃愛さんはそう仰々しい口調でそう自己紹介すると右手を差し伸べてきた。
まったく、驚きの連続で頭をついていかせるのに精一杯だよ。
兄さん、かぁ。色々思うところはあるけど、まぁ悪い人じゃなさそうだし……。
とりあえず、彼の手を軽く握り返して頭を下げる。
「は、はじめまして……」
「はいよろしく。妹がいつも世話になってるみたいだね、ありがとう」
まぁ確かに結構世話になってますけどね。
と、俺は心の中でぼやく。
「ていうか、兄貴はなんでこんなとこにいんのよ」
「つれないなぁ渚。僕だってここの学生だよ? 授業受けに来るのに理由がいるのかい?」
そんな時、不機嫌そうに食って掛かってきた妹を兄は軽くあしらう。
「だからって、なんでわざわざセンパイにちょっかいかけるようなことすんのよ!」
「そりゃあ挨拶しておかなきゃと思ってね。君の愛しの人物に」
「なっ!?」
かぁぁー、と渚の顔がたちまち朱に染まっていく。
それをまるで映画鑑賞でもしているかのように、乃愛さんは笑いながら続けた。
「実はね、君のことは妹からよく聞いてたんだ。そりゃもう四六時中口を開けば君の話ばっかりでね」
「わーっ! わーっ!」
突然大きな声で叫びながら、渚はわちゃわちゃと手を振り回して俺と乃愛さんの間に割って入る。
妨害したつもりなのだろうが、兄の暴露は止まらない。
「でもこの娘、昔は結構奥手だったし、格好も地味だったしで、正直恋が実る見込みが無くてね。そんな時、心優しい僕が愛する妹のためにと、色々アドバイスしてあげることになって――」
「センパイ! 耳塞いで耳ぃ!」
「例えば、押しに弱くて迫られるとアガっちゃうタイプだから、逆に自分から押していくキャラになってみれば良いんじゃない? とかー。あとは格好もギャルっぽくして露出も増やしてみたら、とかー。あとは日頃からど直球にエロいセリフで誘っちゃえば向こうもきっとその気になる、とかね」
「うるっさい!! 少し黙れこのバカ兄!」
「僕の個人的にモテそうな可愛い妹のイメージを言っただけのつもりだったんだけど、まさか律儀に実践しちゃうとは思ってなかったよ。あっはっは」
……なるほどなるほど。よぉくわかった。
つまり渚は昔からこんな調子じゃなかったと。
で、モテる秘訣を兄に尋ねて、その通りにした結果……こういう常にシモネタ全開、人を引きずり回す、厄介事にいつも巻き込む超クソビッチに出来上がっちゃったわけか。
……。
…………。
…………………。
「お前の仕業かぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
激昂して俺は渚を突き飛ばし、乃愛さんに掴みかかって大絶叫。
そりゃそうだろ。半ばこいつの悪ふざけのせいで渚がこんなんになったのなら、俺には抗議する権利があるし、この男にはその責任を取る義務がある。
「お前なぁ、お前なぁ! どれだけ渚の好き勝手に俺らが振り回されたと思ってんだ。えーっ!?」
「ちょっちょっ、少し落ち着きなよ!」
「これが落ち着いていられるかーっ! お前さえいなけりゃなぁ! 俺はもうちょいまともな日常を送れてたんだよ!」
そうやってひとしきり呪詛の言葉をぶつけた後、俺は肩で息をしながらへなへなとその場に崩れ落ちた。
「ま、まぁまぁ。気持ちはわかるけどさ、ひとまず落ち着こうよ。ね?」
「あ、ああ……」
「そうっすよセンパイ。確かに全部兄さんのせいですけど、ここ教室ですし」
おう何自分は悪くないアピールしとんのじゃい、元凶はこの人だとして実被害出してんのは全部お前やぞ。
ん……? そういえば、ついさっき乃愛さんが言ってたような……。
――押しに弱くて迫られるとアガっちゃうタイプだから……
……。
もしかして。
「ほらほらセンパイ、こんな変な男ほっといて別な席に行きましょ? あたしと受けた方がずっと有意義ですしー」
しばらく黙っていると、渚が俺の腕を引っ張ってきた。
いつものように強引に、強欲に、強情に。
「あ、なんならこの後サボって二人だけの個人授業タイムいっちゃいます? なーんて、あはは」
「じゃあそれでお願いしよっかな」
「え? ――きゃっ!」
掴まれた腕を逆に引っ張り、彼女の身体をこちらに引き寄せる。そしてそのままクイックターンし、彼女の背中を教室の壁に押し付け、俺はそれに寄り掛かるようにして左手をつく。
壁ドン。
本来はうるさい隣人を黙らせるために部屋の壁を叩く行為だが、今ではこういう乙女心を刺激する方が一般知識として流布している。
「ちょ、センパイ……?」
「個人授業……してくれんだろ? お前が教師役なら科目は何だ? ん?」
顎をくいっと指で持ち上げて強制的に目線を合わせる。
途端に彼女のよく回る舌はぴたりと停止。瞳はぎょろぎょろと逃げ場をなくした子犬みたいに泳ぎ始める。いつもの舐めた目つきが嘘みたいだ。
「あ、あの……えと」
「経済学か? お前の授業だったら、俺のエンゲル係数もばっちり高度経済成長しちゃいそうだ……」
「あぅ……」
「それとも心理学? それもいいな、お前のアニマと俺のアニムスでフラストレーションさせようぜ……」
「や、待って……あたしはただ……」
「んー? それも違う? じゃあ……」
俺は右手で彼女の首からそっと指を移動させ、鎖骨から肋骨へ、肋骨から腰骨へと這わせていく。
「保健体育……かな?」
「ひぅんっ!」
びくっ、と彼女の身体がセイウチみたいに震える。もはや今までのウザ系ビッチじゃない。やっぱりこいつの本質は……小動物系の純情無垢ガール。
リファが転生してきた初日にやった、王様ゲームのときなんかまさにそうだったからな。そうかそうか、最初からこうすりゃよかったんだ。いっつもこいつの流れに乗ってるからダメだったんだな。
こうしてこっちのペースに引き込めば、抵抗できないただの女の子。ちょろいもんだぜ。
「センパイ……待って、みんなが、他のみんなが見てるっす……」
「いいじゃん。むしろ見せつけてやればいい。これが本当の授業参観ってやつさ」
「いや……ていうかそれより……」
「それより? あんまり焦らすなよ。早く二人で本鈴鳴らそうじゃねぇか……」
渚はもう俺の顔をまともに見ることすらできなくなったのか、ぎゅっと目をつぶって一言。
「く、クロちゃんが見てる……」
と、俺の背後を指さした。
クロちゃんが見てる。
くろちゃんがみてる。
クロチャンガミテル。
……。
Oh?
くるっと、振り返ってみると……そこにはっ!
「主くん?」
メイド服を着て、鉄製の首輪、そしてモデルガンを収納したホルスターを肩に下げた、可愛らしい女の子。
ニコニコと天使のような笑顔で恋人である俺(他の女に壁ドンしてる最中)を見つめてきている。
間違いなく、クローラ・クエリさんその人であった。
授業終了。俺は命という単位を落とした。
○
「――とまぁそういうことだったってわけ」
俺と渚は大慌てで事情を説明し、誤解を解こうとした。
しかしクローラは笑みを消すことはなく、小さく息を吐くのみだった。
「別にそんなに取り乱さなくても大丈夫ですよ。主くんが私とリファさんを愛してくださっているのはよくわかってます。それに、本気で生ゴミさんにそんなことするはずがありませんもの」
「そっか……ありがとう」
「おーう、ナギちゃん遠回しに負け犬ってことにされてるぅ~」
されてるんじゃなくて負け犬なんです。
「ところでリファは? 一緒にトイレ行ってたんじゃないの?」
「なんだかお腹が痛いってずっとこもりっきりでした。しばらく戻れないから資料とかもらっておいて、と言伝を預かってます」
「そっか……」
腹を下す女騎士ってのもなかなかシュールだねぇ。
まぁいいや、帰りに薬でも買って帰ろう。
「なるほど……もう彼女がいたってことなんだね」
するとタブレットを操作しながら、乃愛さんが口を挟んできた。
「ま、既にいるなら別に無理にあんな小芝居打つ必要はなかったね」
「違うったら兄貴! センパイの彼女はこの可愛い可愛いナギちゃんなんでーすぅ!」
「別にどっちだっていいよ」
きっぱりと切り捨てた。
なんだ、さっきのヘラヘラ口調と比べてやけに冷めきった口調。何? 自分の望む展開にならなかったからもうどーでもいいってか。やっぱりこの妹にしてこの兄ありだなオイ。
「……主くん、あの方はどなたですか?」
「あー、渚のお兄さんだって」
「はぁ……生ゴミさんの……にい、さん?」
クローラはやや怪訝そうな目で乃愛さんを見つめる。
じっと、目を細めて。まるで……何かを思い出そうとするように。
しばらく彼を凝視していた愛奴(メイド+奴隷。彼女は自分のことをそう呼ぶ)は、つかつかと歩み寄るとスカートの裾をつまんで一礼した。
「クローラ・クエリと申します。どうぞよしなに」
と言って、右手を差し出した。
握手。
珍しい、彼女が自分からこんなことするなんて。
だが、乃愛さんは……彼女とは目を合わせなかった。
その自分と同じ色白い華奢な手を一瞥したかと思うと、すぐに目を背けてこう言う。
「遠慮しておくよ」
「え」
突然の拒否。
まさかこう返ってくるとは思わなかったのか、クローラは当然戸惑う。
もちろん俺も渚もキョトンとするばかり。どうしたんだろう?
しばらくそのガヤガヤした教室の一角で全員黙っている状況が続いていたが、やがて乃愛さんが切り出した。
「いや、別に深い意味はないんだよ。ただちょっと今の僕の手は穢れているもんでね」
「けがれてる?」
なにそれ、どういう意味だ?
別に汚れがついているようには見えないけど……。
三人が首をひねってその真意を探っていると、彼はさっきみたいな意地の悪い笑顔に戻って、軽く手を上げた。
「さっきトイレに行って、手を洗ってなかったからさ」
「きたねーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
急いでズボンで握手した手を払う俺。
冗談じゃねぇよ! 俺のクリーンなおててになんてことしてくれてんだ! よりにもよってちんちん握った手で触ってくるなんて!
ってかクローラには気遣うのに、俺には何も言わずにいたんだよ喧嘩売ってんのか!
「別にいいじゃないか。それくらい、男だろ」
「そーゆー問題じゃねーだろ!!」
「おかしいなぁ、君も男なら理解できるはずだよ」
くるくるとタッチペンを回しながら、彼は気取ったような口調でいけしゃあしゃあとほざく。
「男というのはね、気がつくと無意識にちんちんをいじるものなんだよ」
くそう、なんかわかる!
わかりたくないけどわかる、くそう!
「君とて経験がないわけじゃああるまい。そうやって触った後、君は律儀に手を洗いに行くというのかい?」
びしっ、とペン先を俺に突きつけて乃愛さんは更に早口でまくしたてる。
「そもそも手を洗うという行為がそんなに大層なことかい? そういうことを偉そうに言う人は果たしてどんな手の洗い方をしている? ちゃんと石鹸つけて、爪の間や肘まで念入りに洗ってるとでも? 違うね、ただちょっと水かけただけさ。そんなの洗ってないのと大差ないよ」
なんか壮大な話に発展している。
なぜだ? ただ単に汚い手で握手を求めてくるその神経が理解できないってだけなんだけど!? ねぇ。
「同じことだよ。結局は君らの手も穢れてるってこと」
「はぁ……?」
「トイレに行ってようがいまいが、その後で手を洗ってようがいまいがなんら変わらない。なら、僕の汚さ具合は君とほぼ同じってことじゃない?」
「あ? ん? んん?」
「でも、君は自分の手のことをキレイだと思っているから僕の手を穢れているという。ということは……僕の手もキレイだということだ」
……。
おいなんだこれ。なんかすげぇ横車を押されてるような感覚なんだけど。なんだこれ。
はやく反論しないと無理が通って道理が引っこんじまいそうな勢いなんですけど! どうしよう、なんて返せばいいの!?
「それには同感だな!」
バーン!
というSEと共に姿を表したのは金髪碧眼の女騎士、リファレンスさん。
堂々とした、まるですごいことを成し遂げたような表情でいる。ちなみにトイレ帰りである。要はそういうことである。
「確かにマスターはいつも口酸っぱく私に言う。『もの食べる前には手を洗え』と。私は前々から疑問だった。果たしてそれをすることに何の意味があるのだろうか、と」
おい。
「私の住んでた世界ではそんな文化は存在しなかった。というより、清潔な水で手を洗える環境が整っているところが限られていた。だから誰もが汚れた手で物を掴んで食べていたわけだ。だけどそれで死にはしないし、それが原因で病気になるなら今頃あっちの世界は崩壊している。こっちの世界だけだぞ、そんなことにうるさいのは」
ドーン、と拳を掲げて力説する女騎士。
そして得意な顔で、まるで敵将の首を討ち取ったかのように声高に言う。
「現にさっきも、トイレに行っていたが手は洗っていないッ!!」
「だーらきたねぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺はもう声帯がぶっちぎれるくらいに叫び返すがもはやそれは無意味だった。
なぜなら。
「すばらしいね。確かにそれもそうだ」
渚兄(手を洗ってない)がすかさず同調したからだ
「トイレでなくても、毎日ここでランチをする前に手を洗う人間がどれくらいいるだろうか? みんなペンとかノートとかスマホを触った手で直接、おにぎりやサンドイッチを掴むわけだ。おかしいよね、それだって雑菌だらけのはずなのに。どうしてトイレの後に洗わない手だけが汚いモノ扱いされるんだろう?」
「そのとおりだ。排泄した後にケツを洗浄しないのならまだわかるが、この世界の人間は潔癖症というか、いちいちこだわりすぎだ」
「だね。そんなことを考えてても、僕らは……とうに穢れた存在なんだから」
ああああもうこいつらはぁ……。
頭を抱える俺を他所に、リファと乃愛さんはニッコリと笑い合う。
「気が合うね。僕は木村乃愛。渚の兄だ。君は?」
「リファレンス・ルマナ・ビューアだ。よろしく頼む」
「こちらこそ」
と言って固く握手を交わす、手を洗わない二人組。
それを見てドン引きする俺と渚。
「なんかあたし、もう見るだけで吐きそうなんですけど……」
「真面目に絶縁考えたほうが良いぜお前」
「いやあたしもほとんどトイレの後手洗ってないから、理解できちゃうのが悔しくて」
「四面楚歌~」
俺、絶望のあまりため息。
クローラはそんなカオスな空気にオロオロするしかない。
ていうか、乃愛さんはなんでリファとは握手するくせにクローラとはしなかったんだ? 皆穢れてるとかトンデモ理論かますならあいつだけ拒否する理由はなんなんだよ?。
まるで……彼女だけはこの世界で唯一清潔みたいじゃんか。
まったく、兄妹揃って考えることはよくわからん。
「ところで、『手を洗えとよく言われる』って下りでふと思ったんだけど、リファレンスさんは彼と同居しているのかい?」
「ああ、なにせ私はマスターの恋人だからな」
「恋人? あれ、そこのクローラさんが彼女だってさっき聞いたのだけど」
「ん? 間違ってないぞ? 私もクローラ、そしてマスター。私達は三人で恋仲なのだ」
「……」
空気が死んだ。
まぁ折に触れてこういう機会はあるからもう慣れっこだけど、言い訳が面倒なんだよなぁこれ。
仰るとおり、紆余曲折を経て俺はリファとクローラのどちらを選んでどちらを弾くという選択ができず、二人を平等に愛していくと誓った。
二股と言われてもおかしくないが、ただ違うのはリファとクローラも互いのことが好きになっているということ。全員が全員のことを好き。誰も不満を抱くことはなく、こうして仲睦まじく生活しているわけだ。
「ふーん。そうかい」
と思ったら意外に何も追求されなかった。嘘だろ、普通だったらもっとこう色々ツッコまれてもおかしくないのに。いや助かるけど、それはそれでなんかモヤっとするというか……。
「なんで? 君らが納得しているなら他人の僕がいちいち口出すことじゃないさ」
「……」
「ただ一つ言っておくよ」
彼は俺の方に近寄ると、手を(洗ってない)ポンと肩に置いて耳打ちしてきた。
「キミは彼女ら二人を幸せにできると思っているのかもしれない。だけどそれは大きな驕りだ。今はいいとしても、いずれは決断しなければならないときがくる。それはキミもわかっているだろう?」
ああ、わかってるさ。
二人の女を恋人にするという選択が、この先に大きな壁を作ることになるってことくらい。今はただそれから目を背けているといっても過言じゃない。
だけど、逃げるつもりもない。
きちんと向き合って、それにぶつかっていく。
そして三人で乗り越えていく。
なにがあったって、俺らはずっと一緒に暮らしていくんだ。
それが俺の……俺達の意思だから。
という主旨のことを噛み砕きに砕いて短く伝えると、乃愛さんは口の端を吊り上げた。
「まったく……威勢だけは一丁前だね。実に穢れてる者の考えそうなことだ」
「……」
まぁこう言われるのはわかってた。確かに俺はまだ壁にぶち当たってもいないし、何も乗り越えちゃいないのだから。
「でもさ、二兎追う者は一兎も得ずって言葉くらい知ってるだろ?」
「っ!?」
突然肩を組んできた彼は、さらに含みを持った口調になって言ってきた。
「一人を救えるはずが、君はもう一人をも救おうとしたせいで、どちらの女の子も救えずに終わる。そしたらきっとその後悔は計り知れないものになるだろうねぇ。愚かで、穢れた自分の判断が、二人共々殺したんだって。こんなことになるなら、最初から一人に絞って救うべきだったと――」
「その一人を救えなかったお前が言うのかよ」
……。
……え?
今、俺、なんて言った?
言ったの、俺だよな? そうだ、間違いなく今のセリフは俺が言った。
でもなんで? なんでそんなことを……。
頭で考えることもなく、ただ無意識に、反射的に唇が動き、声帯が震え、今の言葉を紡いだ。
「……」
ハッとして横を見ると、乃愛さんが俺を瞬きもせずに見ていた。
死んだ魚のような目……いや。
この世の全てに絶望したような目で。
「あ、いや、その……すみません。なんかこんなこと言うつもりなくて。なんでだろ……おかしいな、気が動転しちゃってたのかな……とにかくごめんなさい」
「……そうかい」
ぶん殴られる覚悟で謝罪したが、乃愛さんは今までのように軽く流しただけで済ませた。
「まぁ、僕もちょっとからかいすぎた部分もあるしね。気にすることはないよ」
「あ……はぁ」
「それに」
一旦そこで言葉を切ると、彼は目を閉じて静かに言った。
「君が本当に彼女達を全て救ってくれるなら……それに越したことはないしさ」
「……え?」
「ちょっと! 兄さんもセンパイも、なーに隠れてこしょこしょ内緒話してんのー!? そーいうの嫌い」
「はは、ごめんよ渚」
……。
向こうは納得したみたいだけど、発言者である俺は全然腑に落ちない。
なんだったんだ……今の。
まるで、誰かに操られていたみたいな感覚だった。
……まぁいいや。悩んだって意味のないことだ。本当に気が動転してただけか、もしくは単に疲れてたせいかもしれないし。
「さ、そろそろ授業も始まるし、席につこうか。リファレンスさん、渚、クローラさん。そして、えっと――」
くるっ、と乃愛さんは俺を振り返って言葉をつまらせた。
「そういえば、君のことはなんて呼んだらいいかな」
「え? ああ、俺の名前は……」
「後輩くん? それとも二股くんかな? うーん、どうしよう」
ひとしきり悩んだあと、彼はぱちんとフィンガースナップを決めて言う。
「そうだね、君にはもう彼女がいるわけだけど、二股かけちゃうくらいだからそこに渚も加わる可能性もあるってことだよね? それで結婚までこぎつけたら、僕と君は晴れて義理の兄弟ってことになるわけだ」
ねぇよ。天地かひっくり返ってもねぇよ。
と俺は冷静にツッコむが、案の定彼は聞いちゃいない。
「まぁまぁ可能性はゼロってわけじゃないだろ。むしろ僕はそうなるなら心から歓迎するところだけどねぇ。女三人寄れば姦しいっていうし、二股するよりいいイメージになりそうじゃないか」
全然よくねーよ。マイナスにしかなってねーよ。完全にスリーアウトでバッターアウトだよ。
「じゃあもう今から乃愛さんじゃなくて、義兄さんって呼んでもらってもいいよ?」
「呼びません!」
「おやおや強情だねぇ。まぁいいよ。こっちはこっちでそう呼ばせてもらうから」
勝手に色々未来設計を決めてった彼は肩を竦めると、屈託のない汚い笑みを浮かべ、俺に手を差し伸べるのだった。
トイレで手を洗ってない、穢れた手を。
「じゃあそういうことで『穢れた者同士』今後ともヨロシク。義弟くん」
授業が始まる前。
席についた俺の肩を、後ろから誰かが叩いてきた。
振り返ってみると、そこには一人の若い男子学生がいた。
一言で言えば美青年。ほっそりとした体つきに色白の肌。男にしては長めの茶髪を、ゴムバンドで結わえて肩から前に垂らしている。
そんな奴が、こちらをニコニコと笑顔で見つめてきていのである。爽やかな、だけどどこか含みを感じる……そんな笑みだ。
にしても一体誰だ? 全然見覚えないけど。
「な、なんでしょう?」
ぎこちなく俺が返事をすると、彼は両手を合わせて拝みのポーズを取るとこう言った。
「ごめん、スマホの充電器持ってたら貸してもらっていいかな?」
「は? 充電器?」
「うん、実は僕のiPadがもう電池切れそうでね。これがないと今日の授業のノートが取れないんだ。頼むよ」
と、彼は大きめのタブレット端末を取り出してメニュー画面を見せてきた。確かに右上のバッテリーは既に風前の灯火である。
最近の授業では、こうして電子機器でノートを取る人も珍しくはない。管理や編集も便利だし、他人との共有や印刷もラクラクだからな。唯一のデメリットと言えば、こうして電池が切れると全ておじゃんになるというところだ。
「まぁ、いいっすよ」
俺は二つ返事でOKを出し、自分のトートバッグから充電器を取り出すと彼に渡した。
「ありがとう! 助かったよ。君、良い人だね」
ニヤニヤと笑みを絶やさずに礼を言うと、青年は充電器を机に備え付けられている電源に接続し、タッチペンを画面に走らせた。
「そうそう、ちゃんとお礼をしなくっちゃねぇ。なにか欲しいものとかあるかい? お昼ご飯で良ければ奢らせてもらうけど?」
「いやいや、別にいいですよ。それくらい……気にすることないんで」
「まぁそう言わずに。……そうだ、君彼女とかはいる?」
「は!?」
いきなり何を言ってんだこいつ!? 初対面なのに失礼なやっちゃなぁ。
もし俺にリファとクローラという愛しい恋人さんがいなけりゃ、確実にブチキレ確定だぜ。
「よし、じゃあこうしよう。君にぴったりな彼女候補を探してあげるよ。こう見えても僕は顔が広くてね。気に入ったタイプの娘が見つかったら、顔合わせとかのセッティングもするからさ」
「ちょちょちょちょ! 何やってんだよあんた!」
「さぁ、検索を始めよう」
俺は慌てて止めようとするがすでに奴は、恐ろしく速いスピードでタブレットを操作。いかん、今はリファとクローラは一緒にトイレに行ってるから大丈夫だけど、もし戻ってきて「君にお似合いの女の子は~」なんて会話を聞かれたら、それこそただじゃ済まされない。
「いや、あの彼女ならもういるから! そういうの必要ないんで!」
「よし、検索完了」
「早っ!?」
待て待て待て。検索って何かしら条件入れる必要あるよね? なんか俺の好みの性格とか年齢とか、そういうのから総合的に判断してマッチする人を絞っていくもんじゃないの? 俺もまだ何も言ってないんだけど? 「何やってんだよ」しか言ってないんだけど!? 何も絞らずに全人類の女性恋愛対象にできるほど俺守備範囲広くないよ?
「えー、君にぴったりな女の子はぁー……」
「聞けよ人の話!」
「まず、髪が茶色でー。ちょっと化粧っ気が強くてー。肌も少々焼けててー。茶目っ気たっぷりの年下の後輩でー」
べらべらとそのキザ男は、タブレットに表示されている内容をわざとらしく読み上げていく。くそ、こんなことになるなら充電器なんて貸すんじゃなかったよ! 完全に恩を仇で返されてるじゃねぇか!
って、待てよ?
茶髪? 化粧? 焼けてる肌? 年下の後輩?
あれれー、おかしいな。まだ実名出てないけどすんごい心当たり出てきちゃったんだが。嘘だよなオイ。
早くも嫌な汗がだらだらと全身から吹き出す俺に対し、キザ男はひょうひょうと告げた。
「今君のすぐ傍に立っている女性……かな?」
「!?」
反射的に背後を振り返ると……。
いたわ。今彼が言ってた通りのギャル女が。
「……」
毎度おなじみ、木村渚であった。
でもなんかいつもと様子が違う。
普段だったら背後からいきなり抱きついてくるかケツを引っ叩いてくるはずなのに。
だが今は、プルプルと握った拳を振るわせて俺達二人を恨めしそうに睨みつけている。
なんか……怒ってる?
「センパイに何してんのよ……兄貴っ!」
と、彼女は顔を真赤にしてそう怒鳴った。
……は?
あにき?
アニキ?
ANIKI?
……。
は!?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
○
「いやーごめんごめん。騙すつもりはなかったんだけどね。いや、別に騙してないか。訊かれていたわけじゃないし」
タブレットをスリープモードにしながら彼――渚兄はヘラヘラと悪びれる素振りも見せずに謝罪した。
俺はすかさず横の席でふてくされているギャルに耳打ち。
「オイ渚、どういうことだよ! 兄って、聞いてねぇぞ!」
「訊かれていたわけじゃないし」
ぷいっと顔を背けて彼女は同じセリフを吐く。
何でこんな不機嫌なんだ? あんまり家族関係良好じゃないってことなのかな。兄の方は全然そんなふうには見えないけど。
「改めまして、こんにちは。木村渚の兄、木村乃愛といいます。愛に及ぶと書いて乃愛。その名の通り愛のために生きる男さ。僕は三年生で君らよりは年上だけど、気軽に乃愛って呼んでくれていいから。よろしくね」
渚兄こと、木村乃愛さんはそう仰々しい口調でそう自己紹介すると右手を差し伸べてきた。
まったく、驚きの連続で頭をついていかせるのに精一杯だよ。
兄さん、かぁ。色々思うところはあるけど、まぁ悪い人じゃなさそうだし……。
とりあえず、彼の手を軽く握り返して頭を下げる。
「は、はじめまして……」
「はいよろしく。妹がいつも世話になってるみたいだね、ありがとう」
まぁ確かに結構世話になってますけどね。
と、俺は心の中でぼやく。
「ていうか、兄貴はなんでこんなとこにいんのよ」
「つれないなぁ渚。僕だってここの学生だよ? 授業受けに来るのに理由がいるのかい?」
そんな時、不機嫌そうに食って掛かってきた妹を兄は軽くあしらう。
「だからって、なんでわざわざセンパイにちょっかいかけるようなことすんのよ!」
「そりゃあ挨拶しておかなきゃと思ってね。君の愛しの人物に」
「なっ!?」
かぁぁー、と渚の顔がたちまち朱に染まっていく。
それをまるで映画鑑賞でもしているかのように、乃愛さんは笑いながら続けた。
「実はね、君のことは妹からよく聞いてたんだ。そりゃもう四六時中口を開けば君の話ばっかりでね」
「わーっ! わーっ!」
突然大きな声で叫びながら、渚はわちゃわちゃと手を振り回して俺と乃愛さんの間に割って入る。
妨害したつもりなのだろうが、兄の暴露は止まらない。
「でもこの娘、昔は結構奥手だったし、格好も地味だったしで、正直恋が実る見込みが無くてね。そんな時、心優しい僕が愛する妹のためにと、色々アドバイスしてあげることになって――」
「センパイ! 耳塞いで耳ぃ!」
「例えば、押しに弱くて迫られるとアガっちゃうタイプだから、逆に自分から押していくキャラになってみれば良いんじゃない? とかー。あとは格好もギャルっぽくして露出も増やしてみたら、とかー。あとは日頃からど直球にエロいセリフで誘っちゃえば向こうもきっとその気になる、とかね」
「うるっさい!! 少し黙れこのバカ兄!」
「僕の個人的にモテそうな可愛い妹のイメージを言っただけのつもりだったんだけど、まさか律儀に実践しちゃうとは思ってなかったよ。あっはっは」
……なるほどなるほど。よぉくわかった。
つまり渚は昔からこんな調子じゃなかったと。
で、モテる秘訣を兄に尋ねて、その通りにした結果……こういう常にシモネタ全開、人を引きずり回す、厄介事にいつも巻き込む超クソビッチに出来上がっちゃったわけか。
……。
…………。
…………………。
「お前の仕業かぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
激昂して俺は渚を突き飛ばし、乃愛さんに掴みかかって大絶叫。
そりゃそうだろ。半ばこいつの悪ふざけのせいで渚がこんなんになったのなら、俺には抗議する権利があるし、この男にはその責任を取る義務がある。
「お前なぁ、お前なぁ! どれだけ渚の好き勝手に俺らが振り回されたと思ってんだ。えーっ!?」
「ちょっちょっ、少し落ち着きなよ!」
「これが落ち着いていられるかーっ! お前さえいなけりゃなぁ! 俺はもうちょいまともな日常を送れてたんだよ!」
そうやってひとしきり呪詛の言葉をぶつけた後、俺は肩で息をしながらへなへなとその場に崩れ落ちた。
「ま、まぁまぁ。気持ちはわかるけどさ、ひとまず落ち着こうよ。ね?」
「あ、ああ……」
「そうっすよセンパイ。確かに全部兄さんのせいですけど、ここ教室ですし」
おう何自分は悪くないアピールしとんのじゃい、元凶はこの人だとして実被害出してんのは全部お前やぞ。
ん……? そういえば、ついさっき乃愛さんが言ってたような……。
――押しに弱くて迫られるとアガっちゃうタイプだから……
……。
もしかして。
「ほらほらセンパイ、こんな変な男ほっといて別な席に行きましょ? あたしと受けた方がずっと有意義ですしー」
しばらく黙っていると、渚が俺の腕を引っ張ってきた。
いつものように強引に、強欲に、強情に。
「あ、なんならこの後サボって二人だけの個人授業タイムいっちゃいます? なーんて、あはは」
「じゃあそれでお願いしよっかな」
「え? ――きゃっ!」
掴まれた腕を逆に引っ張り、彼女の身体をこちらに引き寄せる。そしてそのままクイックターンし、彼女の背中を教室の壁に押し付け、俺はそれに寄り掛かるようにして左手をつく。
壁ドン。
本来はうるさい隣人を黙らせるために部屋の壁を叩く行為だが、今ではこういう乙女心を刺激する方が一般知識として流布している。
「ちょ、センパイ……?」
「個人授業……してくれんだろ? お前が教師役なら科目は何だ? ん?」
顎をくいっと指で持ち上げて強制的に目線を合わせる。
途端に彼女のよく回る舌はぴたりと停止。瞳はぎょろぎょろと逃げ場をなくした子犬みたいに泳ぎ始める。いつもの舐めた目つきが嘘みたいだ。
「あ、あの……えと」
「経済学か? お前の授業だったら、俺のエンゲル係数もばっちり高度経済成長しちゃいそうだ……」
「あぅ……」
「それとも心理学? それもいいな、お前のアニマと俺のアニムスでフラストレーションさせようぜ……」
「や、待って……あたしはただ……」
「んー? それも違う? じゃあ……」
俺は右手で彼女の首からそっと指を移動させ、鎖骨から肋骨へ、肋骨から腰骨へと這わせていく。
「保健体育……かな?」
「ひぅんっ!」
びくっ、と彼女の身体がセイウチみたいに震える。もはや今までのウザ系ビッチじゃない。やっぱりこいつの本質は……小動物系の純情無垢ガール。
リファが転生してきた初日にやった、王様ゲームのときなんかまさにそうだったからな。そうかそうか、最初からこうすりゃよかったんだ。いっつもこいつの流れに乗ってるからダメだったんだな。
こうしてこっちのペースに引き込めば、抵抗できないただの女の子。ちょろいもんだぜ。
「センパイ……待って、みんなが、他のみんなが見てるっす……」
「いいじゃん。むしろ見せつけてやればいい。これが本当の授業参観ってやつさ」
「いや……ていうかそれより……」
「それより? あんまり焦らすなよ。早く二人で本鈴鳴らそうじゃねぇか……」
渚はもう俺の顔をまともに見ることすらできなくなったのか、ぎゅっと目をつぶって一言。
「く、クロちゃんが見てる……」
と、俺の背後を指さした。
クロちゃんが見てる。
くろちゃんがみてる。
クロチャンガミテル。
……。
Oh?
くるっと、振り返ってみると……そこにはっ!
「主くん?」
メイド服を着て、鉄製の首輪、そしてモデルガンを収納したホルスターを肩に下げた、可愛らしい女の子。
ニコニコと天使のような笑顔で恋人である俺(他の女に壁ドンしてる最中)を見つめてきている。
間違いなく、クローラ・クエリさんその人であった。
授業終了。俺は命という単位を落とした。
○
「――とまぁそういうことだったってわけ」
俺と渚は大慌てで事情を説明し、誤解を解こうとした。
しかしクローラは笑みを消すことはなく、小さく息を吐くのみだった。
「別にそんなに取り乱さなくても大丈夫ですよ。主くんが私とリファさんを愛してくださっているのはよくわかってます。それに、本気で生ゴミさんにそんなことするはずがありませんもの」
「そっか……ありがとう」
「おーう、ナギちゃん遠回しに負け犬ってことにされてるぅ~」
されてるんじゃなくて負け犬なんです。
「ところでリファは? 一緒にトイレ行ってたんじゃないの?」
「なんだかお腹が痛いってずっとこもりっきりでした。しばらく戻れないから資料とかもらっておいて、と言伝を預かってます」
「そっか……」
腹を下す女騎士ってのもなかなかシュールだねぇ。
まぁいいや、帰りに薬でも買って帰ろう。
「なるほど……もう彼女がいたってことなんだね」
するとタブレットを操作しながら、乃愛さんが口を挟んできた。
「ま、既にいるなら別に無理にあんな小芝居打つ必要はなかったね」
「違うったら兄貴! センパイの彼女はこの可愛い可愛いナギちゃんなんでーすぅ!」
「別にどっちだっていいよ」
きっぱりと切り捨てた。
なんだ、さっきのヘラヘラ口調と比べてやけに冷めきった口調。何? 自分の望む展開にならなかったからもうどーでもいいってか。やっぱりこの妹にしてこの兄ありだなオイ。
「……主くん、あの方はどなたですか?」
「あー、渚のお兄さんだって」
「はぁ……生ゴミさんの……にい、さん?」
クローラはやや怪訝そうな目で乃愛さんを見つめる。
じっと、目を細めて。まるで……何かを思い出そうとするように。
しばらく彼を凝視していた愛奴(メイド+奴隷。彼女は自分のことをそう呼ぶ)は、つかつかと歩み寄るとスカートの裾をつまんで一礼した。
「クローラ・クエリと申します。どうぞよしなに」
と言って、右手を差し出した。
握手。
珍しい、彼女が自分からこんなことするなんて。
だが、乃愛さんは……彼女とは目を合わせなかった。
その自分と同じ色白い華奢な手を一瞥したかと思うと、すぐに目を背けてこう言う。
「遠慮しておくよ」
「え」
突然の拒否。
まさかこう返ってくるとは思わなかったのか、クローラは当然戸惑う。
もちろん俺も渚もキョトンとするばかり。どうしたんだろう?
しばらくそのガヤガヤした教室の一角で全員黙っている状況が続いていたが、やがて乃愛さんが切り出した。
「いや、別に深い意味はないんだよ。ただちょっと今の僕の手は穢れているもんでね」
「けがれてる?」
なにそれ、どういう意味だ?
別に汚れがついているようには見えないけど……。
三人が首をひねってその真意を探っていると、彼はさっきみたいな意地の悪い笑顔に戻って、軽く手を上げた。
「さっきトイレに行って、手を洗ってなかったからさ」
「きたねーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
急いでズボンで握手した手を払う俺。
冗談じゃねぇよ! 俺のクリーンなおててになんてことしてくれてんだ! よりにもよってちんちん握った手で触ってくるなんて!
ってかクローラには気遣うのに、俺には何も言わずにいたんだよ喧嘩売ってんのか!
「別にいいじゃないか。それくらい、男だろ」
「そーゆー問題じゃねーだろ!!」
「おかしいなぁ、君も男なら理解できるはずだよ」
くるくるとタッチペンを回しながら、彼は気取ったような口調でいけしゃあしゃあとほざく。
「男というのはね、気がつくと無意識にちんちんをいじるものなんだよ」
くそう、なんかわかる!
わかりたくないけどわかる、くそう!
「君とて経験がないわけじゃああるまい。そうやって触った後、君は律儀に手を洗いに行くというのかい?」
びしっ、とペン先を俺に突きつけて乃愛さんは更に早口でまくしたてる。
「そもそも手を洗うという行為がそんなに大層なことかい? そういうことを偉そうに言う人は果たしてどんな手の洗い方をしている? ちゃんと石鹸つけて、爪の間や肘まで念入りに洗ってるとでも? 違うね、ただちょっと水かけただけさ。そんなの洗ってないのと大差ないよ」
なんか壮大な話に発展している。
なぜだ? ただ単に汚い手で握手を求めてくるその神経が理解できないってだけなんだけど!? ねぇ。
「同じことだよ。結局は君らの手も穢れてるってこと」
「はぁ……?」
「トイレに行ってようがいまいが、その後で手を洗ってようがいまいがなんら変わらない。なら、僕の汚さ具合は君とほぼ同じってことじゃない?」
「あ? ん? んん?」
「でも、君は自分の手のことをキレイだと思っているから僕の手を穢れているという。ということは……僕の手もキレイだということだ」
……。
おいなんだこれ。なんかすげぇ横車を押されてるような感覚なんだけど。なんだこれ。
はやく反論しないと無理が通って道理が引っこんじまいそうな勢いなんですけど! どうしよう、なんて返せばいいの!?
「それには同感だな!」
バーン!
というSEと共に姿を表したのは金髪碧眼の女騎士、リファレンスさん。
堂々とした、まるですごいことを成し遂げたような表情でいる。ちなみにトイレ帰りである。要はそういうことである。
「確かにマスターはいつも口酸っぱく私に言う。『もの食べる前には手を洗え』と。私は前々から疑問だった。果たしてそれをすることに何の意味があるのだろうか、と」
おい。
「私の住んでた世界ではそんな文化は存在しなかった。というより、清潔な水で手を洗える環境が整っているところが限られていた。だから誰もが汚れた手で物を掴んで食べていたわけだ。だけどそれで死にはしないし、それが原因で病気になるなら今頃あっちの世界は崩壊している。こっちの世界だけだぞ、そんなことにうるさいのは」
ドーン、と拳を掲げて力説する女騎士。
そして得意な顔で、まるで敵将の首を討ち取ったかのように声高に言う。
「現にさっきも、トイレに行っていたが手は洗っていないッ!!」
「だーらきたねぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺はもう声帯がぶっちぎれるくらいに叫び返すがもはやそれは無意味だった。
なぜなら。
「すばらしいね。確かにそれもそうだ」
渚兄(手を洗ってない)がすかさず同調したからだ
「トイレでなくても、毎日ここでランチをする前に手を洗う人間がどれくらいいるだろうか? みんなペンとかノートとかスマホを触った手で直接、おにぎりやサンドイッチを掴むわけだ。おかしいよね、それだって雑菌だらけのはずなのに。どうしてトイレの後に洗わない手だけが汚いモノ扱いされるんだろう?」
「そのとおりだ。排泄した後にケツを洗浄しないのならまだわかるが、この世界の人間は潔癖症というか、いちいちこだわりすぎだ」
「だね。そんなことを考えてても、僕らは……とうに穢れた存在なんだから」
ああああもうこいつらはぁ……。
頭を抱える俺を他所に、リファと乃愛さんはニッコリと笑い合う。
「気が合うね。僕は木村乃愛。渚の兄だ。君は?」
「リファレンス・ルマナ・ビューアだ。よろしく頼む」
「こちらこそ」
と言って固く握手を交わす、手を洗わない二人組。
それを見てドン引きする俺と渚。
「なんかあたし、もう見るだけで吐きそうなんですけど……」
「真面目に絶縁考えたほうが良いぜお前」
「いやあたしもほとんどトイレの後手洗ってないから、理解できちゃうのが悔しくて」
「四面楚歌~」
俺、絶望のあまりため息。
クローラはそんなカオスな空気にオロオロするしかない。
ていうか、乃愛さんはなんでリファとは握手するくせにクローラとはしなかったんだ? 皆穢れてるとかトンデモ理論かますならあいつだけ拒否する理由はなんなんだよ?。
まるで……彼女だけはこの世界で唯一清潔みたいじゃんか。
まったく、兄妹揃って考えることはよくわからん。
「ところで、『手を洗えとよく言われる』って下りでふと思ったんだけど、リファレンスさんは彼と同居しているのかい?」
「ああ、なにせ私はマスターの恋人だからな」
「恋人? あれ、そこのクローラさんが彼女だってさっき聞いたのだけど」
「ん? 間違ってないぞ? 私もクローラ、そしてマスター。私達は三人で恋仲なのだ」
「……」
空気が死んだ。
まぁ折に触れてこういう機会はあるからもう慣れっこだけど、言い訳が面倒なんだよなぁこれ。
仰るとおり、紆余曲折を経て俺はリファとクローラのどちらを選んでどちらを弾くという選択ができず、二人を平等に愛していくと誓った。
二股と言われてもおかしくないが、ただ違うのはリファとクローラも互いのことが好きになっているということ。全員が全員のことを好き。誰も不満を抱くことはなく、こうして仲睦まじく生活しているわけだ。
「ふーん。そうかい」
と思ったら意外に何も追求されなかった。嘘だろ、普通だったらもっとこう色々ツッコまれてもおかしくないのに。いや助かるけど、それはそれでなんかモヤっとするというか……。
「なんで? 君らが納得しているなら他人の僕がいちいち口出すことじゃないさ」
「……」
「ただ一つ言っておくよ」
彼は俺の方に近寄ると、手を(洗ってない)ポンと肩に置いて耳打ちしてきた。
「キミは彼女ら二人を幸せにできると思っているのかもしれない。だけどそれは大きな驕りだ。今はいいとしても、いずれは決断しなければならないときがくる。それはキミもわかっているだろう?」
ああ、わかってるさ。
二人の女を恋人にするという選択が、この先に大きな壁を作ることになるってことくらい。今はただそれから目を背けているといっても過言じゃない。
だけど、逃げるつもりもない。
きちんと向き合って、それにぶつかっていく。
そして三人で乗り越えていく。
なにがあったって、俺らはずっと一緒に暮らしていくんだ。
それが俺の……俺達の意思だから。
という主旨のことを噛み砕きに砕いて短く伝えると、乃愛さんは口の端を吊り上げた。
「まったく……威勢だけは一丁前だね。実に穢れてる者の考えそうなことだ」
「……」
まぁこう言われるのはわかってた。確かに俺はまだ壁にぶち当たってもいないし、何も乗り越えちゃいないのだから。
「でもさ、二兎追う者は一兎も得ずって言葉くらい知ってるだろ?」
「っ!?」
突然肩を組んできた彼は、さらに含みを持った口調になって言ってきた。
「一人を救えるはずが、君はもう一人をも救おうとしたせいで、どちらの女の子も救えずに終わる。そしたらきっとその後悔は計り知れないものになるだろうねぇ。愚かで、穢れた自分の判断が、二人共々殺したんだって。こんなことになるなら、最初から一人に絞って救うべきだったと――」
「その一人を救えなかったお前が言うのかよ」
……。
……え?
今、俺、なんて言った?
言ったの、俺だよな? そうだ、間違いなく今のセリフは俺が言った。
でもなんで? なんでそんなことを……。
頭で考えることもなく、ただ無意識に、反射的に唇が動き、声帯が震え、今の言葉を紡いだ。
「……」
ハッとして横を見ると、乃愛さんが俺を瞬きもせずに見ていた。
死んだ魚のような目……いや。
この世の全てに絶望したような目で。
「あ、いや、その……すみません。なんかこんなこと言うつもりなくて。なんでだろ……おかしいな、気が動転しちゃってたのかな……とにかくごめんなさい」
「……そうかい」
ぶん殴られる覚悟で謝罪したが、乃愛さんは今までのように軽く流しただけで済ませた。
「まぁ、僕もちょっとからかいすぎた部分もあるしね。気にすることはないよ」
「あ……はぁ」
「それに」
一旦そこで言葉を切ると、彼は目を閉じて静かに言った。
「君が本当に彼女達を全て救ってくれるなら……それに越したことはないしさ」
「……え?」
「ちょっと! 兄さんもセンパイも、なーに隠れてこしょこしょ内緒話してんのー!? そーいうの嫌い」
「はは、ごめんよ渚」
……。
向こうは納得したみたいだけど、発言者である俺は全然腑に落ちない。
なんだったんだ……今の。
まるで、誰かに操られていたみたいな感覚だった。
……まぁいいや。悩んだって意味のないことだ。本当に気が動転してただけか、もしくは単に疲れてたせいかもしれないし。
「さ、そろそろ授業も始まるし、席につこうか。リファレンスさん、渚、クローラさん。そして、えっと――」
くるっ、と乃愛さんは俺を振り返って言葉をつまらせた。
「そういえば、君のことはなんて呼んだらいいかな」
「え? ああ、俺の名前は……」
「後輩くん? それとも二股くんかな? うーん、どうしよう」
ひとしきり悩んだあと、彼はぱちんとフィンガースナップを決めて言う。
「そうだね、君にはもう彼女がいるわけだけど、二股かけちゃうくらいだからそこに渚も加わる可能性もあるってことだよね? それで結婚までこぎつけたら、僕と君は晴れて義理の兄弟ってことになるわけだ」
ねぇよ。天地かひっくり返ってもねぇよ。
と俺は冷静にツッコむが、案の定彼は聞いちゃいない。
「まぁまぁ可能性はゼロってわけじゃないだろ。むしろ僕はそうなるなら心から歓迎するところだけどねぇ。女三人寄れば姦しいっていうし、二股するよりいいイメージになりそうじゃないか」
全然よくねーよ。マイナスにしかなってねーよ。完全にスリーアウトでバッターアウトだよ。
「じゃあもう今から乃愛さんじゃなくて、義兄さんって呼んでもらってもいいよ?」
「呼びません!」
「おやおや強情だねぇ。まぁいいよ。こっちはこっちでそう呼ばせてもらうから」
勝手に色々未来設計を決めてった彼は肩を竦めると、屈託のない汚い笑みを浮かべ、俺に手を差し伸べるのだった。
トイレで手を洗ってない、穢れた手を。
「じゃあそういうことで『穢れた者同士』今後ともヨロシク。義弟くん」
0
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