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レベル51.女騎士と女奴隷と日常②
15.女騎士と女奴隷と学祭③
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――ただいまより、第○回自主岩倉大学学生祭を開始いたします。
そんなアナウンスと共に、とうとう待ちに待った学祭が幕を開けた。
正門にあるゲートが開かれ、大勢の観客が押し寄せてくる。来年再来年の入学を夢見る高校生、学生の親御さん、興味半分に来た他校の生徒、老若男女問わずにわらわらと。
既に準備万端の構内は、いつもの堅実で真面目でまさに「学びの場」と呼べるような場所から、派手なアートや飾り付けで彩られたテーマパークになっていた。
「待ってたぜぇ! この瞬間をよォ!」
ぐっ、と木村渚はそう言ってガッツポーズを決めた。
不安だった俺達第二文化研究部の企画立案から一ヶ月。なんとかこうして無事に会場設営までこぎつけた。
そのなかなか広めの教室には、壁という壁にペーパーポンポン(紙で作った花みたいなやつ)が貼り付けられ、天井には色とりどりの布を垂らして華やかに演出していた。
無機質な教室の机は、キレイなテーブルクロスがかかったシャレオツな座席に大変身。そして部屋に充満しているのは香ばしいコーヒーの香り。それによく合うゆったりと心が落ち着くようなジャズ系のBGM。
そこはもはや、完璧にカフェであった。
だが、それだけではない。
所々に置いてあるパーテーションには、大きな紙が貼られていて、そこには緻密な文章が漫画のイラストを添えてびっしりと書かれてあった。
漫画(の文化研究)喫茶。
俺達のこの学祭での出し物だ。
紙に書かれているのは、漫画の文化や歴史、そして色々な作品の解説やレビューである。細かく読まなくても、作品への情熱と愛が籠もっていることがひしひしと感じられる光景であった。
「ついに始まったな、マスター」
「腕が鳴りますね、主くん」
そう明るい声で俺に声をかけてきたのは、異世界人リファレンスとクローラ。
二人は学校にはいつも猫耳パーカーとメイド服をそれぞれ着用してくるのだが……今目の前に立っている彼女達はそれとは違う格好だった。
リファは赤色の着物にねずみ色の袴。手にはいつもの100均ソードではなく日本刀。金髪は後ろで結わえてダウンのポニーテールに。外人ぽい風貌ながら、いかにも「サムライ」って感じだ。
クローラは肩に下げた銃とホルスターだけは変わらなかったが、服は黒のへそ出しタンクトップにホットパンツ。そして右肩から二の腕にかけてなんと大きなタトゥーが(もちろんシール)。普段の清楚な雰囲気から一転、アウトロー感あふれる出で立ちである。
「に、似合うだろうか?」
「ふふ、どうですか主くん」
俺は二人のその強烈なイメチェン姿にしばし目を奪われていたが、感想を聞かれてぎこちなく頷いた。
「す、すごく似合ってる。ていうかドハマリすぎだろ」
「ふふ、ありがとう。これで髪も赤かったら良かったんだけどなぁ」
「そう言ってもらえて嬉しいです。って、口調も合わせた方がいいんですかねこれ」
褒められて顔を綻ばせるお二人さん。
お察しの通り、この喫茶店はただ漫画研究の展示会を併設しただけのものではない。従業員全員が、そこで紹介されている作品に扮した格好をして接客するというサービス付きなのである。要は漫画限定のコスプレ喫茶だ。
当然俺とて例外ではない。
服装はシャツの上にノースリーブのジャケットを羽織り、頭には金髪のウィッグをかぶって背中に巨大な剣の模型を背負うという凝ったもの。
「主くんもすごく様になってますよ。いつも以上にかっこいいです」
「うむ、非常に見事な着こなしだぞ。他の奴等に見せるのがもったいないくらい」
「はは、ありがと」
鏡で見たときにはなんじゃこれと思ったもんだが、彼女達にそう言われるとあんまし悪い気はしないや。
とそんな感じで戯れていると、決まって邪魔が入るのはお約束。
「ちょっとバカセンパイ! このあたしにはなんにもないんすかぁ!?」
渚が俺の尻を膝蹴りしてどやしてきた。
ちなみに彼女は茶髪をツインテールにして、第3新東京市の中学校の制服に身を包んでいる。シンプルだがわかりやすいコスプレだ。
俺はケツをさすりながらテキトーにあしらった。
「はいはい可愛い可愛い」
「あんたバカァ!? 何そのどーでもよさそうな返事。本気でそう思ってんなら今すぐこの場でシコって熱いパトスを迸らせてみろってんですよぅ!」
君に対する殺意は年中無休で迸ってるんですがどうすりゃいいっすか?
と、いつものお下劣な振りに辟易していると。
「不潔」
と、これまたお決まりのセリフと共に誰かがやってきた。
ミディアムボブに銀縁メガネ。見た目は地味子で頭脳はドS。その名も八越未來さんであった。
彼女は黒の袖なしミニワンピに便所下駄。そして頭には巨大な赤いバンダナ。首には数珠みたいなのをジャラジャラ下げている。いかにも巫力が高そうなお姿でいらっしゃる。
「これから客が来るってのに、そんな醜態公衆の面前で晒すつもりですか。この変態」
靴にこびりついた犬の糞でも見るような目で睨みながら彼女はそう凄んでくる。怖いことこの上なしだ。というよりいつにもまして機嫌が悪そうに見える。
とはいえ、その原因はおおかた見当はついてるんだけども。
「本当に不潔……なんで私がこんな格好してこんなところで働かなくちゃならないのよ……」
ま、有り体に言えばこの漫画喫茶がお気に召さなかったんですな。
企画が立ち上がった日、彼女は会議に参加しておらず、代わりにエリアが代理で出席していた。
その際に全会一致で出し物が可決してしまったため、彼女が事情に気づいたときには既に諸々の手続きが完了してしまっていたのだ。
「まぁそうカッカすんなよ。やってみりゃ面白いかもしんないぜ?」
「現にこうやってて不快極まりないんですが」
なだめてもこんなふうに手厳しい反応。
何を隠そうこの女の子、同居人と違って漫画やラノベがすこぶる嫌いなんだそうだ。メイド喫茶でバイトしてるというのに、なぜこれはだめなんだか。という理由はあまり語ってくれないけど、とにかくそういうものに拒否感を示す御方なので、この結果は必然だということである。
何にせよまずいな。こんなムスッとした調子で接客とかされたら、運営にも支障が出かねない。
「そ、それよりもその服似合ってんじゃん。すごくいいよ」
ピタッ。
と、黙々とテーブルを拭いていた彼女の動きが止まった。
苦し紛れにおだてたつもりだったけど……もしかして火に油を注いじゃったかな?
と思ってたら、今度はさっきよりも忙しない動きでテーブルをゴシゴシこすり始める。
「ふ、ふん……不潔な先輩にそんな事言われたって返って不快なだけですね。下卑た男の欲情を煽ることがどれほど女にとっては屈辱か」
「ご、ごめん……そういうつもりじゃなかったんだけど」
「で、要するにクソ先輩にとってはこういう格好がいいってことなんですか?」
「え?」
「で、ですから! 派手に明るく着飾るようなのじゃなくて、こういう地味で寒色系の格好の方が先輩の好みってことでいいんですか!? あとはこういうバンダナがいいとか、スカートは膝丈これぐらいあったほうが良いとか!」
なんか食い気味に聞いてきた。
別にそんな細かいところまで言及したつもりはないんだけど……なんで?
「こ、こんな格好は正直嫌ですが、クソ先輩の好みというのあれば、同じような格好をした他の女にいろいろちょっかいを出す可能性があります。ですから今後はそういうのは私が着た方がいいと思うのです」
「……え?」
「か、勘違いしないでください! 先輩の教育係として! その不潔な視線の拡散を防ぐために! 仕方なく!」
何ムキになってんだこいつ? もしかしてなんか盛大に勘違いしてやしないかなぁ。
俺はポリポリと軽く人差し指で頬を掻きながら弁解した。
「あのー、誤解させたら申し訳ないんだけど……俺は単に『お前が』それを着ている姿が似合ってるって言ってるんだけど」
「……は?」
彼女の動作、二度目のストップ。
これがさらなる業火の火種にならないことを祈りつつ、かつ自然な口調で俺は続けた。
「だから……同じ格好をした奴なら誰でもいいとかそういうんじゃないから。少なくとも、今それが似合ってるなって思えるのは未來だけだよ」
「……」
黙りこくっちゃった。
あー、ちょっとキザすぎたかな。思ったことそのまま口に出しただけのつもりだったんだけど……女心って難しいや。
「私だけ今私だけって言ったよね絶対言った絶対言ったよこの前のメイド喫茶の時も聞き間違いかってずっと心配してたのにでも間違いじゃなかったやっぱり先輩には私だけなんだ私しかいないんだそうよ私にだって先輩しかいないんだから先輩に他の女がいていいはずがないんだああだめそんな事考えてたら濡れてきたどうしよう止まらないよ早く先輩のを受け入れたいってうずいちゃってる体全体で先輩を欲しがってるああ先輩先輩先輩先輩……」
そしていつものブツブツタイム。よく聞こえないけどどーせ言ってることは「不潔」連呼だからこれはもう無視してオゲ(OK)。
「あ、ところでエリアは? 今日来てないみたいだけど」
「……あ゛!?」
言い終わるか終わらないかのうちに未來の血相が急変。
こめかみに青筋を浮かべ、俺をハイライトのない目つきで睨んでくる。
さっき以上にお怒りであることが明確に読み取れる表情であった。さすが恐山さんだ、オーラがパネェ。
「あいつが……なんなんですか」
「いや、この展示品あいつ一生懸命頑張ってたから……来ないのかなぁって」
「私よりあいつのほうが気になるんですかあいつのほうがいいんですか今自分には私だけとか言ってたのになんで他の女のことをしかもよりにもよってあいつのことなんか考えてるんですか!」
「ちょ、ちょっ! 落ち着けよ未來!」
今にも掴みかかってきそうな気迫の彼女に、俺はただたじろくしかできず周りも怖くて近寄れなかったそんな時。
誰かが手を叩いて、その場を鎮めてくれた。
「ほらほらみんな、喧嘩してる場合じゃないでしょ今は」
細身で長身、女みたいに長い髪、どこか気取ったような声で話す男性。
木村渚の兄、乃愛さんであった。
彼の衣装は黒スーツにこれまた黒いトップハット。頬と首にはマジックで傷の模様が描かれており、ミステリアスでダークな雰囲気が目立つものであった。
「もう学祭は始まってるんだよ。お客さんの前でいざこざはよしてくれたまえよ。ただでさえ、この場所はマークされているんだから」
「……」
未來は乃愛さんの方には目もくれず、小さく舌打ちすると俺の胸倉を掴みかけた手を引っ込めた。た、助かった。
俺は安堵の息を吐いたが、耳に引っかかる点が一つ。
「あの、乃愛さん。ただでさえマークされている……って、一体どういうことです?」
「あれ、知らないのかい? 第二文化研究部立ち上げる前、他のサークルに君ら喧嘩売りまくってたんだって渚から聞いてるけど」
ジロッと木村妹を見ると、当の本人はわざとらしく窓際で吹けもしない口笛でごまかす。
確かにどこかサークルに入ってみようということで、異世界コンビを様々な部に紹介していった。だがサークル活動という文化そのものに慣れていなかったリファとクローラは、ところかしこで暴れたりちょっかい出したり。見学者のつもりがいつの間にかサークルクラッシャーと化してたというね。着々と積み重ねていく二人の黒歴史の一つである。
「じゃあマークされてるっていうのはもしかして……」
「うん、学校中でちょっとした噂になってるんだ。どのサークルもリベンジのチャンスを伺ってるって。でも普段別々のサークル同士が接する機会なんてそうそうないだろう?」
「ってことはまさか……」
そのまさかである、とでも言わんばかりのように。
ドタドタと慌ただしく来客がやってきた。それも入り口がつっかえ、教室に入り切らないくらい大量に。
「ここがあのリファレンスさんが所属しているという第二文化研究部ですか! 覚えてますか僕のこと、剣道部の部長ですよ。さぁ、あのときの一騎打ちの借りを返させてもらいましょうか!」
「邪魔するでぇ! ワイのこと忘れたとは言わせへんぞ首輪メイドさんよ! 茶道部元部長であるこのワイに断りもなく喫茶店開くたぁええ度胸や。その腕確かめさせてもらうさかい、覚悟せぇよ!」
「ごめんあさあせ! いつか華道部に殴り込んできたあのメイドさんがいらっしゃると聞きましたーの。あの勝負のせいで、私は盆栽しかできない体質になってしまったんですーの。トツギーノ。だから今日ここで恨みつらみをたっぷり晴らさせてもらいますーの。モンスーノ!」
比較的静かだった店内は一気にやかましくなり、まるでこの大学の来客が全員ここに押し寄せているんじゃないかと錯覚するくらいだった。
マジか、以前暴れたのがここで返ってくるとは……嬉しいような困るような。
「はいはい押さないでください! みなさん、順番にお席にご案内しますので一列に並んで整列にご協力ください!」
乃愛さんが我先にと客の誘導に取り掛かる。こうしちゃいられない、俺達も頑張らないと。どうやら仕事は思ったより楽じゃなさそうだ。
俺達は全員目を合わせてアイコンタクトをすると、喫茶店員の面目躍如とばかりにそれぞれの仕事のために動き出した。
「はいお客様何名様ですかー! 只今混雑しておりますので、お一人様の方同士での相席になる可能性がありますのでご了承ください!」
「え、えっと……ただ今このふわとろオムライスでお絵かきサービス実施中なので、よければご注文していってくださいね~」
「当店限定、色々漫画キャラをモチーフにしたジュース、ぜひ飲んでいってくれ! このリファレンスの手作りだぞっ!」
「リファっちとクロちゃんにお恨みの方は、こちらの列にお並び下さい! 只今五千円で直接対決できまーす! この機会に是非ー!」
とまぁ、てんやわんやなスタートではあったけれど、とにかくこうして俺達の学祭は始まりを告げたのだった。
○
そして数時間後。
「だぁぁぁぁぁもう、疲れたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
客がだいぶ捌け、やっと休憩が取れる余裕ができた頃、渚はだらしなく手足を投げ出して控え室のテーブルに腰掛けた。
あれから客はひっきりなしにきて、六人フルで回しても一息つく暇さえない。それと普段ガラガラの喫茶店で働いてるということも相まって、俺達は完全にグロッキー状態であった。
リファとクローラは、通常の業務以外に他サークルメンバーとのリターンマッチに付き合ってたせいで労働量も倍に。部屋の隅で燃え尽きてしまっていた。
「みんなお疲れ様。ここまでの集客があるとは想定外だよ。第二文研冥利に尽きるね」
そんな中、全く疲れを見せていないのは乃愛さんと未來。
フットワークもかなり軽かったし、この中で間違いなく群を抜いて活躍してた。未來はメイド喫茶で働いてるし、乃愛さんは一人で自主的に色んなボランティアとか自治会のイベントに参加してたわけだから体力面では自信があるんだろう。全く頭が上がらないや。
「だらしないですねクソ先輩。人並みのバイトっていうのは皆これぐらいこなして当然ですよ?」
渚と同じようにだれていると、未來が呆れ気味に言ってきた。
それでも労いとばかりに目の前にドリンクを置いてくれたのが読めない優しさ。
「ごめん……足引っ張っちゃってたかな?」
「べ、別にそこまでは言ってません」
ツンとした態度で、未來は俺の隣に腰掛けながら頬杖をついて言う。
かと思ったら、今度は自分の前髪をカールでも巻くみたいにくるくると捻りながら、
「で、ですが。そこまで貧弱だと午後の業務に支障が出ますので、今のうちにしっかり休んでおくのは大切だと思います。あとはその、何か食べるとか」
「ああ、もうお昼か」
時間を見ると十四時。食事を提供しておいて、自分が食べることをすっかり忘れてた。
朝から設営の準備してたせいで、弁当とかは作る暇なかったし、どっかに食べに行くか。
「先輩……お昼は外食で済ませるつもりですか?」
「そりゃね。別に今日くらいいいだろ、せっかくのお祭りなんだし」
「そ、そうですね。いつもはクソ先輩の教育係として栄養バランスとか堅苦しいことは言っていますが、今日は許します……が!」
くいっ、と未來はそこでメガネを押し上げる。
「い、いくら学祭中だからといってやはり羽目の外しすぎは禁物。ところかまわず暴飲暴食しまくらないよう監視する必要は大いにあるかと」
「はい?」
「で、ですからっ――!」
そこまで言いかけたところでまとめ役の乃愛さんが号令をかけた。
「よし、頃合いもいいし、ここらでお昼休憩しようか。外には休憩中の看板立てておいたからみんな今のうちにごはんとか食べに行ってきなよ」
「「おひるっ!?」」
ガバぁっ、と彼の言葉に屍とかしていた異世界コンビがゾンビみたいに跳ね起きた。
そして津波のように俺のもとまでやってきて同時に袖を引っ張る。
「マスターマスター! 一緒にお祭り見て回ろ!」
「行ってみたい所沢山あるんです!」
「うぇぇぇ! ちょ、ちょっと!」
さっきの鎮火ぶりはなんだったのか、遊園地に来た子供みたいにはしゃいで同行をせがんでくる。
「ちょいちょいセンパぁイ? せっかくあたし頑張ったのになんもご褒美なしとかありえないでしょ! 年上らしくなんか昼メシおごってくださいよ~」
と、それに悪乗りするように渚も参戦。
当然それを見かねた未來も苛ついたように他の面々を出し抜きにかかる。
「ちょっと! 余計なことしないで! クソ先輩は私がついてないと――」
「はいはいみんなそれくらいにしときなよ」
乃愛さんがまた手を叩いてこのカオスな事態を収束させてくれた。
やっぱ頼りになるなぁこの人。本当尊敬するし、こういう人に憧れるわマジで。
「いや、義弟くんが困ってる姿ってすごく笑えるから、これ以上やられると僕の腹筋が持たないからね」
前言撤回、こいつやっぱ渚の兄だわ。兄妹の血は争えないわ。ていうか歳上な分自己中度も上だわ。
「まぁみんなで義弟くんを連れてどこか行きたい気持ちもわかるけどさ。さすがにここをがら空きにするわけにはいかないじゃない?」
まぁ確かにそうだ。防犯上の問題もあるし、私情を優先させる訳にはいかない。
さて、どうするか……。
「ってことで提案だけど、彼を携帯できる権利をローテーション決めて回していくってのはどうだい?」
「ポケモンか俺は!」
冗談じゃねーよ、さらっと俺の人権無視発言。いやなとこもしっかり渚に似てやがるな!
で、そんな俺のツッコミは軽く無視して乃愛さんは勝手にローテーションとやらを決めていく。
「まぁとりあえず、一組ずつ二人だと時間がかかるから三人体制でやってこうか。リファさんとクローラさんペア、その後渚と八越さんペアって感じで義弟くんと同行してもらうってことでいいかな?」
「えぇ……」
リファとクローラは三人で一緒に回れるというので嬉しそうだが、未來と渚は露骨に嫌そうな表情。
「ないわー。なんか余り物同士で組まされた感半端無いんですけど?」
「まぁそう言うなよ渚。余り物には福があるというじゃないか」
「慰めてんのか追い打ちかけてんのかどっちよ!」
「……ホント最悪」
またギスギスしてきた……マジで大丈夫かよこれ。
早くも嫌な予感がダラダラとしてきた俺だったが、それとは対照的にめちゃくちゃ目を輝かせている異世界コンビが両端から腕を組んできた。
「さぁさ主くん! もたもたしてたら時間なくなっちゃいますよ! 行きましょう」
「せっかくの祭りだ。目一杯楽しまなければ損だぞ!」
「じゃあリファさん、クローラさん、お散歩は一時間以内にねー。フラフラとどっか行っちゃわないようにきちんと綱は繋いでおくんだよー!」
「犬か俺はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声を荒げて叫ぶが、リファとクローラに引きずられていく俺はやはり散歩を嫌がる犬みたいだった。
○
「「「いっただきまーす」」」
それからしばらくして色んな所を周り、俺達は中庭のベンチに腰を落ち着けることにした。
手元には出店であれこれ調達してきたたこ焼きやフランクフルト、フィッシュ・アンド・チップスなどがいっぱい。
全員でいつものように手を合わせて挨拶し、少し遅めのランチタイムだ。
漫画のコスプレした三人組が揃って座っているという光景に、当然通行人の誰もが注目してくる。が、そんなのはお構いなしに、俺達は俺達だけの世界に没頭していた。
「ん~♥ やっぱりこういうところで食べるとまた格別だな!」
「いつもとは違った食事……たまに食すからこそ味わえる特別感。学祭様様ですね」
二人共本当に幸せそうに、目の前のごちそうに舌鼓を打っている。
そんな様子を見ていると、俺も胸の内が暖かくなってくるような気がした。
そりゃそうだろう。なんだかんだいっても、こうして三人で一緒にいられる時間が、俺達にとっては何よりの幸せなんだから。
本当は一日中彼女達と遊んでいたかったんだけどな。サークルの仕事のせいで午前中はほとんど潰れた上に、この時間も一時間だけ。恋人同士なのになんだかもどかしい気分だ。
悶々とした気持ちでいると、それが顔に出ていたらしい。怪訝そうな顔をしてクローラがこちらを覗き込んできた。
「? 主くん、どうしました? 浮かない顔をしておられるようですが……」
「えっ」
「そーだぞマスター。辛気臭い顔してるとメシがまずくなるぞ」
続いてリファもたこ焼きを頬張りながら肩を寄せてきた。
「それとも……私達と一緒にいるのは気が進まなかったか?」
「違っ、そうじゃないよ! むしろ逆逆。せっかくこんな楽しい時間なのに、ちょっとしか過ごせないっていうのがなんかさ……」
「なんだ、そのようなことでしたか」
ホッとしたようにクローラは胸をなでおろす。
そんなことって……めちゃくちゃ重大問題だろうに……。
リファも同様、さほど気にしてないというふうに再びたこ焼きを口に放り込みながら言う。
「私も、喫茶店やってる時が楽しくないかっていうとそうでもなかったしな。夏祭りのときとは逆に、自分達が催す側となって活動する。非常に新鮮な体験ができたし。これまでのやってきた努力が報われたって気持ちになれた」
「リファさん、お客さんに漫画のこと訊かれたらノリノリで解説してましたからね。学者さんみたいでしたよ」
「そ、そんなにか? そう言われると結構照れるな」
彼女達は彼女達で働いていた時間も充実したものになっていたようだ。
だがやっぱり、そればかりが占めてこういう時間が思うように取れないってのは心苦しい。というのは俺の考えすぎなのだろうか?
「重要なのは時間じゃないだろ、マスター」
「え?」
「本当に大切なのは、一緒にいられる時間をどれだけ楽しむか、ではないのか」
「そうですよ。たとえ僅かな間しかいられなくても……今はこうして一緒にいるではありませんか。なら悔いのないように過ごすことが私達がすべきことだと思いますよ」
「……そっか」
そうだよな。後のことなんかグチグチ考えてたって、結局それは今両隣に座ってる恋人を無視してるのと一緒だ。
ちゃんと向き合えるときに向き合う。彼女達と過ごすことだけを考える。ネガティブなことなど切り捨てて、全力で今を楽しまなくちゃ。
「まぁ、私達と楽しんだ後に、別の女と共にある時間があるっていうのは、恋人としてちょっと辟易する部分はあるけどな」
リファはちょっぴり頬を膨らませて言うが、俺も完全に同意。ちょっとどころじゃないくらい。
彼女がいるのに、他の奴とデートみたいな真似なんかできるかよ。二人と付き合ってるから今更一人や二人増えようが変わんないんだろ、とかそういう問題じゃない。
さっきは空気に流されてしまったが、やっぱりこういうのはよくない。二人を悲しませるなんて、男して恥ずかしいにも程がある。ここはきちんと断っておこう。殺されるかもしれないけど。
「私は別にそういうのは気にしませんけどね」
「え!?」
まさかの予想外な返事がクローラさんから。
いや、気にしないって……それはせめて気にしてくれよ。君にとって俺の存在がどうでもいいみたいな感じに受け取れちゃうんですけど、ちょっと!
だが彼女は魚のフライに頭からかぶりつきながらしれっと答える。
「何度も言ってますけど、主くんが他の女性に目移りするような方にはとても思えませんので。いつだって貴方様は私とリファさん第一で考えてくれている、私には日々の中でそれははっきりとわかってますから」
「クローラ……」
「それに、相手が生ゴミさんならなおさらじゃないですか」
「おお、それもそうだな! 確かに渚殿に浮気するマスターなど想像できんし。なんだ、嫉妬するだけ馬鹿らしいや」
どうでもいい存在は渚だったというね。
可愛い顔してサラッと毒舌、それが我らのクローラさんなのだ。
あれ、でもそう考えると……未來はどうなるんだ?
「未來ちゃんもいいんです。気にすることはありません」
「なんで?」
訊いてみると、クローラは頬張ったフライを全て飲み込んだ後、簡潔にこう言った。
「未來ちゃんは、『友達』ですから」
「……」
しばらく言葉が出ない俺に、彼女はチップスを齧りつつ続ける。
「彼女……なんだか出会ったときから気が合いそうだなって思ってたんです。主くんにはきつく当たってますけど、根はいい人なんですよ。だから大丈夫です」
「随分な自信だね」
「そういうのわかるんですよ、人の内面ていうか……どういう人間かってことが」
そうなのか。確かに無差別に信頼してるってわけでもなさそうだけど……。
まぁ未來の根はいい奴ってのはまぁ俺もそうだと思ってる。言動や性格はちょっとあれだけど、なんだかんだ言って悪意があるようには感じられないからな。きっとそういうのを伝えるのがちょっと不器用だってことだろう。
「それで、主くん?」
「ん? どうした?」
「もうあと少し回ったら私達は戻らないといけませんけど……その、今日の仕事が終わった後、ちょっと付き合ってほしいところがあるのですが」
「仕事が終わった後?」
するってぇと、今日の学祭時間が終わった時ってことだから……。
もしかして、後夜祭か?
俺が訊くと、クローラは恥ずかしそうに頷いた。
後夜祭。二日に渡って実施される学祭のうち、一日目の夜に開催されるイベントだ。
「調べてみると色々あったんだが、特に興味深い催事があってな」
するとリファが、着物の袂から何かを取り出してこっちに見せてきた。
それはこの学祭のパンフレットであり、開かれているのは後夜祭のスケジュール日程であった。
彼女が指差す部分をよく見て、そこに書かれているイベント名を読み上げてみる。
「キャンプファイアー?」
「ああ。巨大な炎の周りで、踊ったり歌ったりする催しだそうだ」
「へー、そんなのがあったんだ。知らなかった……」
何で知らないのよ、というツッコミはどうか抑えてくれ。実を言うとこの俺、一年生の学祭はまともに参加してなかったんだから。ていうか、二日通してずっと家にいた。興味ない奴にとっては、学祭などただの休校日なのだ。
もしリファとクローラと出会っていなかったら、きっと俺は今年も孤独な日々を過ごしていたに違いない。
そんな物思いに耽っていると、クローラが顔を赤らめながら言ってきた。
「それだけでも十分面白そうなんですけど……私達がここに行きたい理由が別にあるんです」
「え? そうなん?」
「説明文のとこ、よく見てみてください」
示されるがままに視線を移すと、ページの下の方にコラムみたいな箇所があった。
そこを俺は黙々と音読していく。
「なになに……『特別イベント:学校の中心で愛を叫べ』。みんなのラブパワーで炎をもっと燃え上がらせよう。キャンプファイアー前のステージで愛の告白をするもよし、抱きしめたりキスするでもよし。とにかく熱い絆を周囲に見せつけて盛り上がっちゃえ! 参加者絶賛募集中!」
……これは。
読み終えると、リファもクローラも揃ってもじもじとして黙ってしまった。
なるほど……だいたいわかった。
俺達は恋人同士。こういうイベントがあると聞かされれば、参加しない訳にはいかない。
そう納得するのと同時に、俺は軽く後悔の念に見舞われた。もし最初からこれをしってたら、俺の方から二人を誘いたかった。ていうか男として誘うべきだった。
というのも、あんまり最近……二人に彼氏っぽいことしてあげられなかったから。
「それ、毎年やっているらしくて……そこにはある言い伝えがあるそうなんです」
「言い伝え?」
学校の一イベントに? 一体どんなものなんだろう。
尋ねてみると、二人は背筋をぴんと伸ばし軽く深呼吸。
そして目を閉じて、静かに言った。
「そこで愛を叫んだ恋人同士は――」
「永遠に結ばれるそうです」
……。
……そっか。
それを聞いた俺は少しこっ恥ずかしい思いに駆られたが、それでも二人がそれに誘ってくれたことへの嬉しさがすぐに勝った。
結ばれる……永遠に。
決して離れることなく、生涯共にあることを誓う、か。
「もちろん、それは私達が想いを確かめあった日にみんなで願ったことだ。この言い伝えだって、集客のための客寄せ文句かもしれない。ましてや愛の告白なんて、いつでもどこでだってできる。それでも……私達はやっぱり、ずっと一緒にいたい。たとえ迷信でも、そうすることで仲を深めることに意味があるんじゃないかなって思うのだ」
「はい。今だってもちろんこうして三人仲良しですよ? でも……でも私達は、その……もっともっと進展させていきたいなって思ってるんです。これ以上ないってくらい、強く、固く。だから、それに出れば……うまくいけるかなって」
「リファ……クローラ……」
二人のその言葉に胸を打たれた俺は、そっとパンフレットを閉じて膝の上に置く。
そして、彼女達の肩に手を回して抱き寄せた。
「わひゃっ!? ちょ、マスター!?」
「あ、主くん!?」
思わぬ行動に、異世界コンビは上ずった声を上げた。
俺はそんな大切な恋人達の耳元で静かに囁く。
「絶対に行こう。三人で一緒に」
「……マスター」
「主くん……」
「約束だ」
そう言って、肩に回した手の小指を立てて見せる。
「指切りしよう」
「ユビキリ?」
「こうして小指同士を絡め合う、日本で約束事をするときのおまじないだよ」
二人はぽかんとしてその指を見つめていたが、やがて自らも小指を立てて、おずおずと俺のそれに絡ませた。
そして軽く上下に振りながら音頭を取った。
「ゆーびーきーりげーんまんっ!」
指切った。
と、唱えても、女騎士と女奴隷は当然さっぱり。
「今のでいいのか?」
「ああ。これで、約束は結ばれた」
「よくわかりませんけど……でも、なんだか不思議な気分です。これが約束するってことなんでしょうか」
クローラは自分の指をしげしげと見つめながらそう言う。
たしかに俺自身ルーツはおろか、その歌の意味もろくにわかってない。特になんの効果があるわけでもない、謎のしきたり。
だけど、俺達の間では確かにその約束が結ばれた。今はそれで十分だ。
三人で改めて誓いあったその頃、俺のスマホが振動した。
ディスプレイを見てみると、案の定渚からの着信。催促の電話だ。まったく、いいところだったってのに邪魔しやがって。
ブツブツ言いながら俺は電話に出る。
「はいもしもし」
「ちょっとセンパイ! 今どこっすか! やばいっすよ、さっきから客が押し寄せてきてるんです!」
「なんで!? 今休憩中だろ!?」
「それが早く店開けろってみんな口々に言ってくるんですよ! だから仕方なく数分前に早めに切り上げて再開したんです! したら午前中ほどじゃないですけどすごい混雑で……」
マジかよ、閉店時間中にも殴り込んでくるとか人気ありすぎんだろウチ。
「とにかくリファっちとクロちゃんだけでも呼び戻してくれません!? でないとあたしがいつまでたっても離脱できないんす!」
「わかったわかった。ってか俺は戻らなくていいのか?」
「バカタレぇ! そんなことしてあたしとの約束有耶無耶にしようったってそーはいきませんよ! 破ったらハリセンボンでゴムに穴開けてやるから覚悟しといてくださいね!」
まだ飲まされる方がマシな仕打ちやなぁ。ていうか、君とは指切りした覚えないんだけどなぁ。
だがまぁ本部がピンチなら仕方ない。名残惜しいけど、ここらで解散にしよう。
「――ってわけだから。早めに戻って仕事手伝ってあげてくれる? 俺はここにいるって渚達には言っておいて」
「あいわかった。では、後夜祭で、また」
「約束ですよ?」
「ああ」
俺はしっかりとうなずくと、二人は満足そうな顔をして去っていった。
やれやれ、もうちょっと色んな所行ってみたかったけど……。
その後ろ姿に手を振りながら、若干の喪失感を味わっていたその時である。
「やーーーーーっと、邪魔者が消えたわね」
背後からそんな高飛車な声。
聞いただけで俺の全身に鳥肌が立つ。
聞き返さなくてもわかる、その言葉が俺に向けられたものであると。
見なくてもわかる、そいつがどんな人物であるかということを。
確認しなくてもわかる、俺に何の用件で話しかけてきたのかを。
恐る恐る背後を振り返り、俺はそいつを視界に捉える。
銀髪のツインテールに、赤い瞳、コテコテのゴスロリ服、そして手に持った分厚い書物。
コスプレじゃないのに、俺以上にコスプレ度は高い。
その人物の名は。
「エリア……」
「まったく、探したわよ我が婿。このあたしに足労をかけさせるなんて、何様のつもり」
「いや……その……」
言葉を濁すしか無い俺に、その自称ワイヤード帝王様は横髪を掻き分けて「まあいいわ」と流す。
「ねぇ我が婿……『約束』……忘れてないでしょうね?」
「……」
そう。約束はもう一つあったのだ。
それも、リファやクローラと結ぶ前から。
――学祭当日……あたしがデートしてあげるっ!
一週間ほど前。漫画の研究発表内容が完成した夜……一方的に彼女から「褒美」として取り付けられていたのだ。
別に忘れたわけではないが……正直忘れたくて仕方ないし、なかったことにしたくて仕方なかった。
「ていうかお前、いたのかよ。喫茶店にも顔出さないからてっきり休んでるのかと――」
「バカね、なんであたしがあんなところの店員なんてやらなくちゃいけないの? あたしは帝王、そんな庶民と一緒になって働くなんてバカげてるわ」
「メイド喫茶で働いてるくせにかよ?」
「うっ、あ、あれはいいの! 賃金も出るし、あたし自身興味深かったからやってるだけ!」
あーそーですか。
まぁエリアはサークルメンバーじゃないから、働けなんて言うつもりはない。第一彼女には既に研究発表の件で世話になっている。それだけでも十分感謝すべきことなわけだし。
「ちょっと見ていくくらいはしてもいいだろ? お前のレビューとか結構好評だったぞ」
「……別にいいわよ。あいつもいることだし」
「あっ……」
未來。彼女とエリアは非常に仲が悪い。行ったら鉢合わせしちゃうから険悪ムードになるのは避けられないか。
なるほど、教室に直接呼びつけに来なかったのはそのせいか。
「でも好評ならよかったわよ。必死にやった甲斐があるってもんだわ。ま、このエイリアスが手がけて成功しないはずがないんだけど」
お嬢様っぽくドヤ顔で彼女はそう自慢げに言う。
まぁ実際に成功してるから、ここは色々言わないでおくか。
「そんなことより、早く行くわよデートに!」
と思ってたら話を蒸し返された。
彼女は以前みたいに俺の腕をがっちりロックして、自分の方に引き寄せてくる。くそ、このまま煙に巻くつもりが退路を断たれてしまった。
いいのか俺、このままついていって!
彼女とデートした後、また別の女とデートするって……いくらリファとクローラが俺を信頼してくれてるからって、これじゃあその心につけ込んでるのと同じじゃないか!
「あの、エリア……」
「なによぅ、なんか文句あるっての?」
断ろうとした途端、エリアは口を尖らせて言ってくる。
「あんたねぇ、このエイリアス・プロキシ・スプーフィングと一緒に歩けるだけでもありがたいって思いなさいよ。これ以上ない栄誉、一生の誉れ、それを拒否するなんて普通ならありえないわ」
どう考えても普通じゃない人に普通の定義を説かれても正直困るんですが。
と言ったところで銀髪紅眼の少女は聞く耳もたず。
「いいから黙ってついてきなさいっての。退屈はさせないわ、それに……」
そこで彼女は一旦言葉を切ると、少し声のボリュームと音程を下げてぼそっと続けた。
「あんたと一緒なら、きっとあたしでも楽しめると思うから」
……え?
「さ、行きましょ」
その言葉の意味を考えている隙を突かれ、俺はズルズルとエリアに引っ張られるようにして雑踏の中へと連れられていった。
波乱万丈の学祭は……まだまだ続きそうだ。
そんなアナウンスと共に、とうとう待ちに待った学祭が幕を開けた。
正門にあるゲートが開かれ、大勢の観客が押し寄せてくる。来年再来年の入学を夢見る高校生、学生の親御さん、興味半分に来た他校の生徒、老若男女問わずにわらわらと。
既に準備万端の構内は、いつもの堅実で真面目でまさに「学びの場」と呼べるような場所から、派手なアートや飾り付けで彩られたテーマパークになっていた。
「待ってたぜぇ! この瞬間をよォ!」
ぐっ、と木村渚はそう言ってガッツポーズを決めた。
不安だった俺達第二文化研究部の企画立案から一ヶ月。なんとかこうして無事に会場設営までこぎつけた。
そのなかなか広めの教室には、壁という壁にペーパーポンポン(紙で作った花みたいなやつ)が貼り付けられ、天井には色とりどりの布を垂らして華やかに演出していた。
無機質な教室の机は、キレイなテーブルクロスがかかったシャレオツな座席に大変身。そして部屋に充満しているのは香ばしいコーヒーの香り。それによく合うゆったりと心が落ち着くようなジャズ系のBGM。
そこはもはや、完璧にカフェであった。
だが、それだけではない。
所々に置いてあるパーテーションには、大きな紙が貼られていて、そこには緻密な文章が漫画のイラストを添えてびっしりと書かれてあった。
漫画(の文化研究)喫茶。
俺達のこの学祭での出し物だ。
紙に書かれているのは、漫画の文化や歴史、そして色々な作品の解説やレビューである。細かく読まなくても、作品への情熱と愛が籠もっていることがひしひしと感じられる光景であった。
「ついに始まったな、マスター」
「腕が鳴りますね、主くん」
そう明るい声で俺に声をかけてきたのは、異世界人リファレンスとクローラ。
二人は学校にはいつも猫耳パーカーとメイド服をそれぞれ着用してくるのだが……今目の前に立っている彼女達はそれとは違う格好だった。
リファは赤色の着物にねずみ色の袴。手にはいつもの100均ソードではなく日本刀。金髪は後ろで結わえてダウンのポニーテールに。外人ぽい風貌ながら、いかにも「サムライ」って感じだ。
クローラは肩に下げた銃とホルスターだけは変わらなかったが、服は黒のへそ出しタンクトップにホットパンツ。そして右肩から二の腕にかけてなんと大きなタトゥーが(もちろんシール)。普段の清楚な雰囲気から一転、アウトロー感あふれる出で立ちである。
「に、似合うだろうか?」
「ふふ、どうですか主くん」
俺は二人のその強烈なイメチェン姿にしばし目を奪われていたが、感想を聞かれてぎこちなく頷いた。
「す、すごく似合ってる。ていうかドハマリすぎだろ」
「ふふ、ありがとう。これで髪も赤かったら良かったんだけどなぁ」
「そう言ってもらえて嬉しいです。って、口調も合わせた方がいいんですかねこれ」
褒められて顔を綻ばせるお二人さん。
お察しの通り、この喫茶店はただ漫画研究の展示会を併設しただけのものではない。従業員全員が、そこで紹介されている作品に扮した格好をして接客するというサービス付きなのである。要は漫画限定のコスプレ喫茶だ。
当然俺とて例外ではない。
服装はシャツの上にノースリーブのジャケットを羽織り、頭には金髪のウィッグをかぶって背中に巨大な剣の模型を背負うという凝ったもの。
「主くんもすごく様になってますよ。いつも以上にかっこいいです」
「うむ、非常に見事な着こなしだぞ。他の奴等に見せるのがもったいないくらい」
「はは、ありがと」
鏡で見たときにはなんじゃこれと思ったもんだが、彼女達にそう言われるとあんまし悪い気はしないや。
とそんな感じで戯れていると、決まって邪魔が入るのはお約束。
「ちょっとバカセンパイ! このあたしにはなんにもないんすかぁ!?」
渚が俺の尻を膝蹴りしてどやしてきた。
ちなみに彼女は茶髪をツインテールにして、第3新東京市の中学校の制服に身を包んでいる。シンプルだがわかりやすいコスプレだ。
俺はケツをさすりながらテキトーにあしらった。
「はいはい可愛い可愛い」
「あんたバカァ!? 何そのどーでもよさそうな返事。本気でそう思ってんなら今すぐこの場でシコって熱いパトスを迸らせてみろってんですよぅ!」
君に対する殺意は年中無休で迸ってるんですがどうすりゃいいっすか?
と、いつものお下劣な振りに辟易していると。
「不潔」
と、これまたお決まりのセリフと共に誰かがやってきた。
ミディアムボブに銀縁メガネ。見た目は地味子で頭脳はドS。その名も八越未來さんであった。
彼女は黒の袖なしミニワンピに便所下駄。そして頭には巨大な赤いバンダナ。首には数珠みたいなのをジャラジャラ下げている。いかにも巫力が高そうなお姿でいらっしゃる。
「これから客が来るってのに、そんな醜態公衆の面前で晒すつもりですか。この変態」
靴にこびりついた犬の糞でも見るような目で睨みながら彼女はそう凄んでくる。怖いことこの上なしだ。というよりいつにもまして機嫌が悪そうに見える。
とはいえ、その原因はおおかた見当はついてるんだけども。
「本当に不潔……なんで私がこんな格好してこんなところで働かなくちゃならないのよ……」
ま、有り体に言えばこの漫画喫茶がお気に召さなかったんですな。
企画が立ち上がった日、彼女は会議に参加しておらず、代わりにエリアが代理で出席していた。
その際に全会一致で出し物が可決してしまったため、彼女が事情に気づいたときには既に諸々の手続きが完了してしまっていたのだ。
「まぁそうカッカすんなよ。やってみりゃ面白いかもしんないぜ?」
「現にこうやってて不快極まりないんですが」
なだめてもこんなふうに手厳しい反応。
何を隠そうこの女の子、同居人と違って漫画やラノベがすこぶる嫌いなんだそうだ。メイド喫茶でバイトしてるというのに、なぜこれはだめなんだか。という理由はあまり語ってくれないけど、とにかくそういうものに拒否感を示す御方なので、この結果は必然だということである。
何にせよまずいな。こんなムスッとした調子で接客とかされたら、運営にも支障が出かねない。
「そ、それよりもその服似合ってんじゃん。すごくいいよ」
ピタッ。
と、黙々とテーブルを拭いていた彼女の動きが止まった。
苦し紛れにおだてたつもりだったけど……もしかして火に油を注いじゃったかな?
と思ってたら、今度はさっきよりも忙しない動きでテーブルをゴシゴシこすり始める。
「ふ、ふん……不潔な先輩にそんな事言われたって返って不快なだけですね。下卑た男の欲情を煽ることがどれほど女にとっては屈辱か」
「ご、ごめん……そういうつもりじゃなかったんだけど」
「で、要するにクソ先輩にとってはこういう格好がいいってことなんですか?」
「え?」
「で、ですから! 派手に明るく着飾るようなのじゃなくて、こういう地味で寒色系の格好の方が先輩の好みってことでいいんですか!? あとはこういうバンダナがいいとか、スカートは膝丈これぐらいあったほうが良いとか!」
なんか食い気味に聞いてきた。
別にそんな細かいところまで言及したつもりはないんだけど……なんで?
「こ、こんな格好は正直嫌ですが、クソ先輩の好みというのあれば、同じような格好をした他の女にいろいろちょっかいを出す可能性があります。ですから今後はそういうのは私が着た方がいいと思うのです」
「……え?」
「か、勘違いしないでください! 先輩の教育係として! その不潔な視線の拡散を防ぐために! 仕方なく!」
何ムキになってんだこいつ? もしかしてなんか盛大に勘違いしてやしないかなぁ。
俺はポリポリと軽く人差し指で頬を掻きながら弁解した。
「あのー、誤解させたら申し訳ないんだけど……俺は単に『お前が』それを着ている姿が似合ってるって言ってるんだけど」
「……は?」
彼女の動作、二度目のストップ。
これがさらなる業火の火種にならないことを祈りつつ、かつ自然な口調で俺は続けた。
「だから……同じ格好をした奴なら誰でもいいとかそういうんじゃないから。少なくとも、今それが似合ってるなって思えるのは未來だけだよ」
「……」
黙りこくっちゃった。
あー、ちょっとキザすぎたかな。思ったことそのまま口に出しただけのつもりだったんだけど……女心って難しいや。
「私だけ今私だけって言ったよね絶対言った絶対言ったよこの前のメイド喫茶の時も聞き間違いかってずっと心配してたのにでも間違いじゃなかったやっぱり先輩には私だけなんだ私しかいないんだそうよ私にだって先輩しかいないんだから先輩に他の女がいていいはずがないんだああだめそんな事考えてたら濡れてきたどうしよう止まらないよ早く先輩のを受け入れたいってうずいちゃってる体全体で先輩を欲しがってるああ先輩先輩先輩先輩……」
そしていつものブツブツタイム。よく聞こえないけどどーせ言ってることは「不潔」連呼だからこれはもう無視してオゲ(OK)。
「あ、ところでエリアは? 今日来てないみたいだけど」
「……あ゛!?」
言い終わるか終わらないかのうちに未來の血相が急変。
こめかみに青筋を浮かべ、俺をハイライトのない目つきで睨んでくる。
さっき以上にお怒りであることが明確に読み取れる表情であった。さすが恐山さんだ、オーラがパネェ。
「あいつが……なんなんですか」
「いや、この展示品あいつ一生懸命頑張ってたから……来ないのかなぁって」
「私よりあいつのほうが気になるんですかあいつのほうがいいんですか今自分には私だけとか言ってたのになんで他の女のことをしかもよりにもよってあいつのことなんか考えてるんですか!」
「ちょ、ちょっ! 落ち着けよ未來!」
今にも掴みかかってきそうな気迫の彼女に、俺はただたじろくしかできず周りも怖くて近寄れなかったそんな時。
誰かが手を叩いて、その場を鎮めてくれた。
「ほらほらみんな、喧嘩してる場合じゃないでしょ今は」
細身で長身、女みたいに長い髪、どこか気取ったような声で話す男性。
木村渚の兄、乃愛さんであった。
彼の衣装は黒スーツにこれまた黒いトップハット。頬と首にはマジックで傷の模様が描かれており、ミステリアスでダークな雰囲気が目立つものであった。
「もう学祭は始まってるんだよ。お客さんの前でいざこざはよしてくれたまえよ。ただでさえ、この場所はマークされているんだから」
「……」
未來は乃愛さんの方には目もくれず、小さく舌打ちすると俺の胸倉を掴みかけた手を引っ込めた。た、助かった。
俺は安堵の息を吐いたが、耳に引っかかる点が一つ。
「あの、乃愛さん。ただでさえマークされている……って、一体どういうことです?」
「あれ、知らないのかい? 第二文化研究部立ち上げる前、他のサークルに君ら喧嘩売りまくってたんだって渚から聞いてるけど」
ジロッと木村妹を見ると、当の本人はわざとらしく窓際で吹けもしない口笛でごまかす。
確かにどこかサークルに入ってみようということで、異世界コンビを様々な部に紹介していった。だがサークル活動という文化そのものに慣れていなかったリファとクローラは、ところかしこで暴れたりちょっかい出したり。見学者のつもりがいつの間にかサークルクラッシャーと化してたというね。着々と積み重ねていく二人の黒歴史の一つである。
「じゃあマークされてるっていうのはもしかして……」
「うん、学校中でちょっとした噂になってるんだ。どのサークルもリベンジのチャンスを伺ってるって。でも普段別々のサークル同士が接する機会なんてそうそうないだろう?」
「ってことはまさか……」
そのまさかである、とでも言わんばかりのように。
ドタドタと慌ただしく来客がやってきた。それも入り口がつっかえ、教室に入り切らないくらい大量に。
「ここがあのリファレンスさんが所属しているという第二文化研究部ですか! 覚えてますか僕のこと、剣道部の部長ですよ。さぁ、あのときの一騎打ちの借りを返させてもらいましょうか!」
「邪魔するでぇ! ワイのこと忘れたとは言わせへんぞ首輪メイドさんよ! 茶道部元部長であるこのワイに断りもなく喫茶店開くたぁええ度胸や。その腕確かめさせてもらうさかい、覚悟せぇよ!」
「ごめんあさあせ! いつか華道部に殴り込んできたあのメイドさんがいらっしゃると聞きましたーの。あの勝負のせいで、私は盆栽しかできない体質になってしまったんですーの。トツギーノ。だから今日ここで恨みつらみをたっぷり晴らさせてもらいますーの。モンスーノ!」
比較的静かだった店内は一気にやかましくなり、まるでこの大学の来客が全員ここに押し寄せているんじゃないかと錯覚するくらいだった。
マジか、以前暴れたのがここで返ってくるとは……嬉しいような困るような。
「はいはい押さないでください! みなさん、順番にお席にご案内しますので一列に並んで整列にご協力ください!」
乃愛さんが我先にと客の誘導に取り掛かる。こうしちゃいられない、俺達も頑張らないと。どうやら仕事は思ったより楽じゃなさそうだ。
俺達は全員目を合わせてアイコンタクトをすると、喫茶店員の面目躍如とばかりにそれぞれの仕事のために動き出した。
「はいお客様何名様ですかー! 只今混雑しておりますので、お一人様の方同士での相席になる可能性がありますのでご了承ください!」
「え、えっと……ただ今このふわとろオムライスでお絵かきサービス実施中なので、よければご注文していってくださいね~」
「当店限定、色々漫画キャラをモチーフにしたジュース、ぜひ飲んでいってくれ! このリファレンスの手作りだぞっ!」
「リファっちとクロちゃんにお恨みの方は、こちらの列にお並び下さい! 只今五千円で直接対決できまーす! この機会に是非ー!」
とまぁ、てんやわんやなスタートではあったけれど、とにかくこうして俺達の学祭は始まりを告げたのだった。
○
そして数時間後。
「だぁぁぁぁぁもう、疲れたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
客がだいぶ捌け、やっと休憩が取れる余裕ができた頃、渚はだらしなく手足を投げ出して控え室のテーブルに腰掛けた。
あれから客はひっきりなしにきて、六人フルで回しても一息つく暇さえない。それと普段ガラガラの喫茶店で働いてるということも相まって、俺達は完全にグロッキー状態であった。
リファとクローラは、通常の業務以外に他サークルメンバーとのリターンマッチに付き合ってたせいで労働量も倍に。部屋の隅で燃え尽きてしまっていた。
「みんなお疲れ様。ここまでの集客があるとは想定外だよ。第二文研冥利に尽きるね」
そんな中、全く疲れを見せていないのは乃愛さんと未來。
フットワークもかなり軽かったし、この中で間違いなく群を抜いて活躍してた。未來はメイド喫茶で働いてるし、乃愛さんは一人で自主的に色んなボランティアとか自治会のイベントに参加してたわけだから体力面では自信があるんだろう。全く頭が上がらないや。
「だらしないですねクソ先輩。人並みのバイトっていうのは皆これぐらいこなして当然ですよ?」
渚と同じようにだれていると、未來が呆れ気味に言ってきた。
それでも労いとばかりに目の前にドリンクを置いてくれたのが読めない優しさ。
「ごめん……足引っ張っちゃってたかな?」
「べ、別にそこまでは言ってません」
ツンとした態度で、未來は俺の隣に腰掛けながら頬杖をついて言う。
かと思ったら、今度は自分の前髪をカールでも巻くみたいにくるくると捻りながら、
「で、ですが。そこまで貧弱だと午後の業務に支障が出ますので、今のうちにしっかり休んでおくのは大切だと思います。あとはその、何か食べるとか」
「ああ、もうお昼か」
時間を見ると十四時。食事を提供しておいて、自分が食べることをすっかり忘れてた。
朝から設営の準備してたせいで、弁当とかは作る暇なかったし、どっかに食べに行くか。
「先輩……お昼は外食で済ませるつもりですか?」
「そりゃね。別に今日くらいいいだろ、せっかくのお祭りなんだし」
「そ、そうですね。いつもはクソ先輩の教育係として栄養バランスとか堅苦しいことは言っていますが、今日は許します……が!」
くいっ、と未來はそこでメガネを押し上げる。
「い、いくら学祭中だからといってやはり羽目の外しすぎは禁物。ところかまわず暴飲暴食しまくらないよう監視する必要は大いにあるかと」
「はい?」
「で、ですからっ――!」
そこまで言いかけたところでまとめ役の乃愛さんが号令をかけた。
「よし、頃合いもいいし、ここらでお昼休憩しようか。外には休憩中の看板立てておいたからみんな今のうちにごはんとか食べに行ってきなよ」
「「おひるっ!?」」
ガバぁっ、と彼の言葉に屍とかしていた異世界コンビがゾンビみたいに跳ね起きた。
そして津波のように俺のもとまでやってきて同時に袖を引っ張る。
「マスターマスター! 一緒にお祭り見て回ろ!」
「行ってみたい所沢山あるんです!」
「うぇぇぇ! ちょ、ちょっと!」
さっきの鎮火ぶりはなんだったのか、遊園地に来た子供みたいにはしゃいで同行をせがんでくる。
「ちょいちょいセンパぁイ? せっかくあたし頑張ったのになんもご褒美なしとかありえないでしょ! 年上らしくなんか昼メシおごってくださいよ~」
と、それに悪乗りするように渚も参戦。
当然それを見かねた未來も苛ついたように他の面々を出し抜きにかかる。
「ちょっと! 余計なことしないで! クソ先輩は私がついてないと――」
「はいはいみんなそれくらいにしときなよ」
乃愛さんがまた手を叩いてこのカオスな事態を収束させてくれた。
やっぱ頼りになるなぁこの人。本当尊敬するし、こういう人に憧れるわマジで。
「いや、義弟くんが困ってる姿ってすごく笑えるから、これ以上やられると僕の腹筋が持たないからね」
前言撤回、こいつやっぱ渚の兄だわ。兄妹の血は争えないわ。ていうか歳上な分自己中度も上だわ。
「まぁみんなで義弟くんを連れてどこか行きたい気持ちもわかるけどさ。さすがにここをがら空きにするわけにはいかないじゃない?」
まぁ確かにそうだ。防犯上の問題もあるし、私情を優先させる訳にはいかない。
さて、どうするか……。
「ってことで提案だけど、彼を携帯できる権利をローテーション決めて回していくってのはどうだい?」
「ポケモンか俺は!」
冗談じゃねーよ、さらっと俺の人権無視発言。いやなとこもしっかり渚に似てやがるな!
で、そんな俺のツッコミは軽く無視して乃愛さんは勝手にローテーションとやらを決めていく。
「まぁとりあえず、一組ずつ二人だと時間がかかるから三人体制でやってこうか。リファさんとクローラさんペア、その後渚と八越さんペアって感じで義弟くんと同行してもらうってことでいいかな?」
「えぇ……」
リファとクローラは三人で一緒に回れるというので嬉しそうだが、未來と渚は露骨に嫌そうな表情。
「ないわー。なんか余り物同士で組まされた感半端無いんですけど?」
「まぁそう言うなよ渚。余り物には福があるというじゃないか」
「慰めてんのか追い打ちかけてんのかどっちよ!」
「……ホント最悪」
またギスギスしてきた……マジで大丈夫かよこれ。
早くも嫌な予感がダラダラとしてきた俺だったが、それとは対照的にめちゃくちゃ目を輝かせている異世界コンビが両端から腕を組んできた。
「さぁさ主くん! もたもたしてたら時間なくなっちゃいますよ! 行きましょう」
「せっかくの祭りだ。目一杯楽しまなければ損だぞ!」
「じゃあリファさん、クローラさん、お散歩は一時間以内にねー。フラフラとどっか行っちゃわないようにきちんと綱は繋いでおくんだよー!」
「犬か俺はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声を荒げて叫ぶが、リファとクローラに引きずられていく俺はやはり散歩を嫌がる犬みたいだった。
○
「「「いっただきまーす」」」
それからしばらくして色んな所を周り、俺達は中庭のベンチに腰を落ち着けることにした。
手元には出店であれこれ調達してきたたこ焼きやフランクフルト、フィッシュ・アンド・チップスなどがいっぱい。
全員でいつものように手を合わせて挨拶し、少し遅めのランチタイムだ。
漫画のコスプレした三人組が揃って座っているという光景に、当然通行人の誰もが注目してくる。が、そんなのはお構いなしに、俺達は俺達だけの世界に没頭していた。
「ん~♥ やっぱりこういうところで食べるとまた格別だな!」
「いつもとは違った食事……たまに食すからこそ味わえる特別感。学祭様様ですね」
二人共本当に幸せそうに、目の前のごちそうに舌鼓を打っている。
そんな様子を見ていると、俺も胸の内が暖かくなってくるような気がした。
そりゃそうだろう。なんだかんだいっても、こうして三人で一緒にいられる時間が、俺達にとっては何よりの幸せなんだから。
本当は一日中彼女達と遊んでいたかったんだけどな。サークルの仕事のせいで午前中はほとんど潰れた上に、この時間も一時間だけ。恋人同士なのになんだかもどかしい気分だ。
悶々とした気持ちでいると、それが顔に出ていたらしい。怪訝そうな顔をしてクローラがこちらを覗き込んできた。
「? 主くん、どうしました? 浮かない顔をしておられるようですが……」
「えっ」
「そーだぞマスター。辛気臭い顔してるとメシがまずくなるぞ」
続いてリファもたこ焼きを頬張りながら肩を寄せてきた。
「それとも……私達と一緒にいるのは気が進まなかったか?」
「違っ、そうじゃないよ! むしろ逆逆。せっかくこんな楽しい時間なのに、ちょっとしか過ごせないっていうのがなんかさ……」
「なんだ、そのようなことでしたか」
ホッとしたようにクローラは胸をなでおろす。
そんなことって……めちゃくちゃ重大問題だろうに……。
リファも同様、さほど気にしてないというふうに再びたこ焼きを口に放り込みながら言う。
「私も、喫茶店やってる時が楽しくないかっていうとそうでもなかったしな。夏祭りのときとは逆に、自分達が催す側となって活動する。非常に新鮮な体験ができたし。これまでのやってきた努力が報われたって気持ちになれた」
「リファさん、お客さんに漫画のこと訊かれたらノリノリで解説してましたからね。学者さんみたいでしたよ」
「そ、そんなにか? そう言われると結構照れるな」
彼女達は彼女達で働いていた時間も充実したものになっていたようだ。
だがやっぱり、そればかりが占めてこういう時間が思うように取れないってのは心苦しい。というのは俺の考えすぎなのだろうか?
「重要なのは時間じゃないだろ、マスター」
「え?」
「本当に大切なのは、一緒にいられる時間をどれだけ楽しむか、ではないのか」
「そうですよ。たとえ僅かな間しかいられなくても……今はこうして一緒にいるではありませんか。なら悔いのないように過ごすことが私達がすべきことだと思いますよ」
「……そっか」
そうだよな。後のことなんかグチグチ考えてたって、結局それは今両隣に座ってる恋人を無視してるのと一緒だ。
ちゃんと向き合えるときに向き合う。彼女達と過ごすことだけを考える。ネガティブなことなど切り捨てて、全力で今を楽しまなくちゃ。
「まぁ、私達と楽しんだ後に、別の女と共にある時間があるっていうのは、恋人としてちょっと辟易する部分はあるけどな」
リファはちょっぴり頬を膨らませて言うが、俺も完全に同意。ちょっとどころじゃないくらい。
彼女がいるのに、他の奴とデートみたいな真似なんかできるかよ。二人と付き合ってるから今更一人や二人増えようが変わんないんだろ、とかそういう問題じゃない。
さっきは空気に流されてしまったが、やっぱりこういうのはよくない。二人を悲しませるなんて、男して恥ずかしいにも程がある。ここはきちんと断っておこう。殺されるかもしれないけど。
「私は別にそういうのは気にしませんけどね」
「え!?」
まさかの予想外な返事がクローラさんから。
いや、気にしないって……それはせめて気にしてくれよ。君にとって俺の存在がどうでもいいみたいな感じに受け取れちゃうんですけど、ちょっと!
だが彼女は魚のフライに頭からかぶりつきながらしれっと答える。
「何度も言ってますけど、主くんが他の女性に目移りするような方にはとても思えませんので。いつだって貴方様は私とリファさん第一で考えてくれている、私には日々の中でそれははっきりとわかってますから」
「クローラ……」
「それに、相手が生ゴミさんならなおさらじゃないですか」
「おお、それもそうだな! 確かに渚殿に浮気するマスターなど想像できんし。なんだ、嫉妬するだけ馬鹿らしいや」
どうでもいい存在は渚だったというね。
可愛い顔してサラッと毒舌、それが我らのクローラさんなのだ。
あれ、でもそう考えると……未來はどうなるんだ?
「未來ちゃんもいいんです。気にすることはありません」
「なんで?」
訊いてみると、クローラは頬張ったフライを全て飲み込んだ後、簡潔にこう言った。
「未來ちゃんは、『友達』ですから」
「……」
しばらく言葉が出ない俺に、彼女はチップスを齧りつつ続ける。
「彼女……なんだか出会ったときから気が合いそうだなって思ってたんです。主くんにはきつく当たってますけど、根はいい人なんですよ。だから大丈夫です」
「随分な自信だね」
「そういうのわかるんですよ、人の内面ていうか……どういう人間かってことが」
そうなのか。確かに無差別に信頼してるってわけでもなさそうだけど……。
まぁ未來の根はいい奴ってのはまぁ俺もそうだと思ってる。言動や性格はちょっとあれだけど、なんだかんだ言って悪意があるようには感じられないからな。きっとそういうのを伝えるのがちょっと不器用だってことだろう。
「それで、主くん?」
「ん? どうした?」
「もうあと少し回ったら私達は戻らないといけませんけど……その、今日の仕事が終わった後、ちょっと付き合ってほしいところがあるのですが」
「仕事が終わった後?」
するってぇと、今日の学祭時間が終わった時ってことだから……。
もしかして、後夜祭か?
俺が訊くと、クローラは恥ずかしそうに頷いた。
後夜祭。二日に渡って実施される学祭のうち、一日目の夜に開催されるイベントだ。
「調べてみると色々あったんだが、特に興味深い催事があってな」
するとリファが、着物の袂から何かを取り出してこっちに見せてきた。
それはこの学祭のパンフレットであり、開かれているのは後夜祭のスケジュール日程であった。
彼女が指差す部分をよく見て、そこに書かれているイベント名を読み上げてみる。
「キャンプファイアー?」
「ああ。巨大な炎の周りで、踊ったり歌ったりする催しだそうだ」
「へー、そんなのがあったんだ。知らなかった……」
何で知らないのよ、というツッコミはどうか抑えてくれ。実を言うとこの俺、一年生の学祭はまともに参加してなかったんだから。ていうか、二日通してずっと家にいた。興味ない奴にとっては、学祭などただの休校日なのだ。
もしリファとクローラと出会っていなかったら、きっと俺は今年も孤独な日々を過ごしていたに違いない。
そんな物思いに耽っていると、クローラが顔を赤らめながら言ってきた。
「それだけでも十分面白そうなんですけど……私達がここに行きたい理由が別にあるんです」
「え? そうなん?」
「説明文のとこ、よく見てみてください」
示されるがままに視線を移すと、ページの下の方にコラムみたいな箇所があった。
そこを俺は黙々と音読していく。
「なになに……『特別イベント:学校の中心で愛を叫べ』。みんなのラブパワーで炎をもっと燃え上がらせよう。キャンプファイアー前のステージで愛の告白をするもよし、抱きしめたりキスするでもよし。とにかく熱い絆を周囲に見せつけて盛り上がっちゃえ! 参加者絶賛募集中!」
……これは。
読み終えると、リファもクローラも揃ってもじもじとして黙ってしまった。
なるほど……だいたいわかった。
俺達は恋人同士。こういうイベントがあると聞かされれば、参加しない訳にはいかない。
そう納得するのと同時に、俺は軽く後悔の念に見舞われた。もし最初からこれをしってたら、俺の方から二人を誘いたかった。ていうか男として誘うべきだった。
というのも、あんまり最近……二人に彼氏っぽいことしてあげられなかったから。
「それ、毎年やっているらしくて……そこにはある言い伝えがあるそうなんです」
「言い伝え?」
学校の一イベントに? 一体どんなものなんだろう。
尋ねてみると、二人は背筋をぴんと伸ばし軽く深呼吸。
そして目を閉じて、静かに言った。
「そこで愛を叫んだ恋人同士は――」
「永遠に結ばれるそうです」
……。
……そっか。
それを聞いた俺は少しこっ恥ずかしい思いに駆られたが、それでも二人がそれに誘ってくれたことへの嬉しさがすぐに勝った。
結ばれる……永遠に。
決して離れることなく、生涯共にあることを誓う、か。
「もちろん、それは私達が想いを確かめあった日にみんなで願ったことだ。この言い伝えだって、集客のための客寄せ文句かもしれない。ましてや愛の告白なんて、いつでもどこでだってできる。それでも……私達はやっぱり、ずっと一緒にいたい。たとえ迷信でも、そうすることで仲を深めることに意味があるんじゃないかなって思うのだ」
「はい。今だってもちろんこうして三人仲良しですよ? でも……でも私達は、その……もっともっと進展させていきたいなって思ってるんです。これ以上ないってくらい、強く、固く。だから、それに出れば……うまくいけるかなって」
「リファ……クローラ……」
二人のその言葉に胸を打たれた俺は、そっとパンフレットを閉じて膝の上に置く。
そして、彼女達の肩に手を回して抱き寄せた。
「わひゃっ!? ちょ、マスター!?」
「あ、主くん!?」
思わぬ行動に、異世界コンビは上ずった声を上げた。
俺はそんな大切な恋人達の耳元で静かに囁く。
「絶対に行こう。三人で一緒に」
「……マスター」
「主くん……」
「約束だ」
そう言って、肩に回した手の小指を立てて見せる。
「指切りしよう」
「ユビキリ?」
「こうして小指同士を絡め合う、日本で約束事をするときのおまじないだよ」
二人はぽかんとしてその指を見つめていたが、やがて自らも小指を立てて、おずおずと俺のそれに絡ませた。
そして軽く上下に振りながら音頭を取った。
「ゆーびーきーりげーんまんっ!」
指切った。
と、唱えても、女騎士と女奴隷は当然さっぱり。
「今のでいいのか?」
「ああ。これで、約束は結ばれた」
「よくわかりませんけど……でも、なんだか不思議な気分です。これが約束するってことなんでしょうか」
クローラは自分の指をしげしげと見つめながらそう言う。
たしかに俺自身ルーツはおろか、その歌の意味もろくにわかってない。特になんの効果があるわけでもない、謎のしきたり。
だけど、俺達の間では確かにその約束が結ばれた。今はそれで十分だ。
三人で改めて誓いあったその頃、俺のスマホが振動した。
ディスプレイを見てみると、案の定渚からの着信。催促の電話だ。まったく、いいところだったってのに邪魔しやがって。
ブツブツ言いながら俺は電話に出る。
「はいもしもし」
「ちょっとセンパイ! 今どこっすか! やばいっすよ、さっきから客が押し寄せてきてるんです!」
「なんで!? 今休憩中だろ!?」
「それが早く店開けろってみんな口々に言ってくるんですよ! だから仕方なく数分前に早めに切り上げて再開したんです! したら午前中ほどじゃないですけどすごい混雑で……」
マジかよ、閉店時間中にも殴り込んでくるとか人気ありすぎんだろウチ。
「とにかくリファっちとクロちゃんだけでも呼び戻してくれません!? でないとあたしがいつまでたっても離脱できないんす!」
「わかったわかった。ってか俺は戻らなくていいのか?」
「バカタレぇ! そんなことしてあたしとの約束有耶無耶にしようったってそーはいきませんよ! 破ったらハリセンボンでゴムに穴開けてやるから覚悟しといてくださいね!」
まだ飲まされる方がマシな仕打ちやなぁ。ていうか、君とは指切りした覚えないんだけどなぁ。
だがまぁ本部がピンチなら仕方ない。名残惜しいけど、ここらで解散にしよう。
「――ってわけだから。早めに戻って仕事手伝ってあげてくれる? 俺はここにいるって渚達には言っておいて」
「あいわかった。では、後夜祭で、また」
「約束ですよ?」
「ああ」
俺はしっかりとうなずくと、二人は満足そうな顔をして去っていった。
やれやれ、もうちょっと色んな所行ってみたかったけど……。
その後ろ姿に手を振りながら、若干の喪失感を味わっていたその時である。
「やーーーーーっと、邪魔者が消えたわね」
背後からそんな高飛車な声。
聞いただけで俺の全身に鳥肌が立つ。
聞き返さなくてもわかる、その言葉が俺に向けられたものであると。
見なくてもわかる、そいつがどんな人物であるかということを。
確認しなくてもわかる、俺に何の用件で話しかけてきたのかを。
恐る恐る背後を振り返り、俺はそいつを視界に捉える。
銀髪のツインテールに、赤い瞳、コテコテのゴスロリ服、そして手に持った分厚い書物。
コスプレじゃないのに、俺以上にコスプレ度は高い。
その人物の名は。
「エリア……」
「まったく、探したわよ我が婿。このあたしに足労をかけさせるなんて、何様のつもり」
「いや……その……」
言葉を濁すしか無い俺に、その自称ワイヤード帝王様は横髪を掻き分けて「まあいいわ」と流す。
「ねぇ我が婿……『約束』……忘れてないでしょうね?」
「……」
そう。約束はもう一つあったのだ。
それも、リファやクローラと結ぶ前から。
――学祭当日……あたしがデートしてあげるっ!
一週間ほど前。漫画の研究発表内容が完成した夜……一方的に彼女から「褒美」として取り付けられていたのだ。
別に忘れたわけではないが……正直忘れたくて仕方ないし、なかったことにしたくて仕方なかった。
「ていうかお前、いたのかよ。喫茶店にも顔出さないからてっきり休んでるのかと――」
「バカね、なんであたしがあんなところの店員なんてやらなくちゃいけないの? あたしは帝王、そんな庶民と一緒になって働くなんてバカげてるわ」
「メイド喫茶で働いてるくせにかよ?」
「うっ、あ、あれはいいの! 賃金も出るし、あたし自身興味深かったからやってるだけ!」
あーそーですか。
まぁエリアはサークルメンバーじゃないから、働けなんて言うつもりはない。第一彼女には既に研究発表の件で世話になっている。それだけでも十分感謝すべきことなわけだし。
「ちょっと見ていくくらいはしてもいいだろ? お前のレビューとか結構好評だったぞ」
「……別にいいわよ。あいつもいることだし」
「あっ……」
未來。彼女とエリアは非常に仲が悪い。行ったら鉢合わせしちゃうから険悪ムードになるのは避けられないか。
なるほど、教室に直接呼びつけに来なかったのはそのせいか。
「でも好評ならよかったわよ。必死にやった甲斐があるってもんだわ。ま、このエイリアスが手がけて成功しないはずがないんだけど」
お嬢様っぽくドヤ顔で彼女はそう自慢げに言う。
まぁ実際に成功してるから、ここは色々言わないでおくか。
「そんなことより、早く行くわよデートに!」
と思ってたら話を蒸し返された。
彼女は以前みたいに俺の腕をがっちりロックして、自分の方に引き寄せてくる。くそ、このまま煙に巻くつもりが退路を断たれてしまった。
いいのか俺、このままついていって!
彼女とデートした後、また別の女とデートするって……いくらリファとクローラが俺を信頼してくれてるからって、これじゃあその心につけ込んでるのと同じじゃないか!
「あの、エリア……」
「なによぅ、なんか文句あるっての?」
断ろうとした途端、エリアは口を尖らせて言ってくる。
「あんたねぇ、このエイリアス・プロキシ・スプーフィングと一緒に歩けるだけでもありがたいって思いなさいよ。これ以上ない栄誉、一生の誉れ、それを拒否するなんて普通ならありえないわ」
どう考えても普通じゃない人に普通の定義を説かれても正直困るんですが。
と言ったところで銀髪紅眼の少女は聞く耳もたず。
「いいから黙ってついてきなさいっての。退屈はさせないわ、それに……」
そこで彼女は一旦言葉を切ると、少し声のボリュームと音程を下げてぼそっと続けた。
「あんたと一緒なら、きっとあたしでも楽しめると思うから」
……え?
「さ、行きましょ」
その言葉の意味を考えている隙を突かれ、俺はズルズルとエリアに引っ張られるようにして雑踏の中へと連れられていった。
波乱万丈の学祭は……まだまだ続きそうだ。
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