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第13話 乱入

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 ドラゴンは人間の言葉を使わない。しかし、知性はある。
 己を召喚した主の命令のままに暴れるだけではなく、目の前の小さな人間に明らかな警戒心を見せている。
 己の何倍も小さな人間が、己を退けるほどの力を見せた。
 威嚇するように牙をむき出しにしても、怯む様子も無い。

―――強い

 ドラゴンは野性の本能でそう察していた。

「ありえぬ……なんだこの男は……我が僕である竜までも……なんだ、こやつは……だが……ふふ、ふはは、くく、ふ、ふはははははははは! 大したものだ! か弱い男の身でそれほど勇敢に、そして力を奮うとはな! 無礼者とはいえ、褒めてやろう!」

 顔を青ざめさせながら震えが止まらぬエクスタ。だが、同時にこの思わぬ拾い物に胸の高鳴りが抑え切れなかった。

「よし、ならばこうしよう!」

 高らかに笑うエクスタに視線が集ると、エクスタはドラゴンの前に出て、タックに告げる。

「本来なら貴様は大死罪であるが、これほどの者であれば死なすのは惜しい。そこでだ! 貴様を我ら王族関係者専用の所有物にしてやろう!」

 所有物。その意味が分からぬタックに構わず、エクスタは続ける。

「死罪は取り消してやる。無差別に輪姦するのも許してやる。貴様らの子種は選ばれし血統のみに受け継がすこととする。土地も財も与え、我ら王族貴族の選ばれしスケヴェルフたちを孕ませることに生涯を捧げよ!」

 エクスタの提案に、タックは呆気にとられた表情を浮かべながら……


「えっと、それって……つまり、エルフの人たちと、エッチなことをしろってことですか?」

「まあ、そういうことだ」


 タックはエクスタ、そしてオルガスの顔や体つきを見る。
 二人とも、女神と言っても差し支えないほどの体つきと美貌である。
 正直、元の大陸であれば、土下座したところで相手にすらされぬような相手である。
 そんな人物が自分に言っている。

(こ、この人たちとエッチしたら許してやる?)

 逆らえば殺す。自分たちと子作りしたら許してやる。

(な、そ、そんなの……なにそれ! こんな美人とエッチしろって!? しなきゃ殺すって!?)

 タックのいた世界の男であれば、あまりにも魅力的な提案過ぎて今すぐにでも服を脱いで飛びつきたいぐらいの提案だろう。
 タックも当然男として、そそられるのは無理もないことであった。
 しかし、


「……だけど俺……いや、昨日はしちゃったけど……やっぱり、お姉ちゃんの……」

「あ゛?」


 タックはどうしても姉二人の顔が過り、頷けなかった。


「な……んだ? 何を悩んでいる! 女に養われる身の男の分際で図に乗るな! 男は黙って子作りスッケベすればよいものを! それとも、初めては好きな人がいいとか、いかにも夢見がちな童貞男のようなことを言うのか?」

「あ、俺、全然童貞じゃ……」

「ふざけたことを! 我の寛大なる提案すらも無碍にするとは……何とも罪深い! ならば、望みどおり超死罪だッ! 我が可愛い下僕よ、奴を蹂躙せよ!」


 エクスタは羅刹の表情を浮かべて、待機している火竜に命じる。

「グルガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 火竜はその命を受け、己を奮い立たせるかのように両翼を大きく広げて、大地が揺れるほどの雄叫びを上げた。
 再びタックに牙を剥ける。

「あー、う~、こうなっちゃうか……でも、後でお姉ちゃん二人に怒られるより、こっちの方が全然いいや……」

 タックも観念して身構える。
 すると、その時だった!


「ニードルマウンテン!」

「ガブガアアアアアアッ!!??」


 何かが空から降ってきた。
 その何かは、火竜に不意打ちのような斬突を食らわせ、抉り、うめき声を上げさせた。

「「「「ッッ!!??」」」」

 何者か? またもや風のように現れた謎の人物に皆が視線を向けると、


「正義も大義も興味なし。興味あるのは私を貫ける男のアソコだけ! でも、ちょっと興味が出たので、気が向いたから助けてあげる! 別に、あんたが可愛いから助けてあげるわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」

 
 その女は、品の良い顔立ちと美しい金髪をなびかせながらも、実に品の無い格好をしていた。
 それは、青い色で装飾された、ビキニアーマーと呼ばれる鎧。
 胸と秘所と尻と膝下の足だけを鋼の鎧で覆い、後は全て白い肌を露出している。
 その手には、ドラゴンの血に染まった長い槍。
 しかし、タックの視線はまた別の場所へ。それは、顔でも胸でも尻でも、露出されたヘソでもモモでもない。
 女の股間の鎧の隙間から……

(ちょっ!? きき、金色の……ボーボー……はみ出して、ボボボーボ・ボーボボ!?)

あまりにも衝撃的な展開に言葉を失うタック。

「エクスタ姫! この女、ヴァギヌアです! トレジャーハンター・ヴァギヌアです!」
「な……に? ヴァギヌアだと? あの?」
「オルガス姫、いま、あの人、ヴァギヌァって!」
「あ、ああ……聞いたことがある。確か、大陸屈指の槍使い」
「はい。それに、確か、アソコの毛が……あまりの剛毛剛直で処理できず、入り口で男の子のアレが毛に阻まれて誰もそこから先に進めず、未だ処女って!」
「それ、私も知ってる! だから、常に品のない格好で街を歩いて、自分に欲情した男の子のアレの大きさを服の上からでも把握できるようにして、いつか自分を貫ける男の子を常に捜し歩いてるって!」

 場が再びざわめき出し、そしてあまりにも酷すぎる女の事情が暴露されているが、ヴァギヌアは一切気にした様子も無く、高飛車な態度で笑っていた。
 そして更に……

「ふえええん、待ってよ~、ヴァギヌアちゃん、待ってよ~、あんまりイジワルするとほんとにぶち殺しちゃうんだから~!」

 小さい影が空に現れた。
 皆が顔を上げると、そこには翼の生えた小柄の少女が、泣きながらヴァギヌアの名を呼んでいた。
 全身を小さなメイド服で包み、フリルのエプロン、フリルのカチューシャで前髪を上げている。
 そして、その額からは二本の赤い角。赤い翼。そして太く赤い鱗に覆われた尻尾がスカートの下から伸びていた。

「アレは……竜人っ!?」
「ということは……ヴァギヌアの相棒という、あの竜人族のアマクリかッ!」

 正直、翼の生えた人間がこの世に居るとはタックも思っていなかった。
 立て続けに変な女が現れて、ついに四人目まで登場してしまい、状況がまるで分からなかった。
 すると、その時だった。

「ふぁ、ふぇ、ひゃああああああ!」
「……えっ? ええええええええええええ!??」

 アマクリという少女は、翼を羽ばたかせることに疲れたのか、力尽きたかのようにそのまま空から急に落下したのだった。
 それは、タックの真上から。
 突然のことに慌てて反応が遅れたタックは、そのまま避けることも受け止めることもできず。

「ひゃああああああ! ッ、あん!?」
「んちゅぶ!?」

 二人は激突したのだった。

(ぐっ、いつつつつ、って?! 一体何が!? ッ、重い!? 暗い!?)

 落下したアマクリと激突し、痛みを感じながら目を開けると、そこは真っ暗闇の世界だった。
 そして、自分の体に感じる人一人分ぐらいの重さ。
 一体どうなっているのかと声をだそうとした、そのときだった。

「もがっ?!」
「ひゃうっ!?」

 喋ろうとしたタックの口に、柔らかい何かが触れた。その瞬間、自分に覆いかぶさっている何かがビクリと動いた。


(な、なにこれ!? す、すっごい甘い! 蜂蜜みたいだ! ……って、そうじゃなくて!)

「ひゃうんっ!?」


 タックは慌ててガバッと体を起こして、自分に覆いかぶさっているものをどかせた。
 すると……

「きゃっ、あう、あぶるる、……えっ?」
「へっ?」

 未だ状況が良く分からず、しかし顔を朱色に染めたアマクリと目が合うタック。
 視線を僅かに下にそらすと、そこには、スカートが大きくめくれ、足を開脚させた状態のアマクリの股間。
 しかしそこには……
 
「ひゃ、ひゃぶううっ!? お、お、男の子が、わ、わたしのをぉぉぉぉ!?」
「ごごご、ごめんなさいいいいいいい!? っていうか、なんでパンツ穿いてないのぉ!?」

 勢いよく地面に頭をこすり付けて土下座するタック。

(な、なんで? どうなってるの? ドラゴンと決着つけようとしたら、なんでいきなり……ボーボボと、甘い人たちが現れるんだよぉ!?)

 正直何がどうなっているかがまるで分からない。

「ガルル?」

 その状況下、不意の攻撃を受けてダメージを負ったドラゴンですら、首を傾げて困った様子だった。
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