【R18】勉強不足な魔法蹴撃士~勉強しながら最強の足腰で♥イロイロ♥学園無双

アニッキーブラッザー

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第62話 真剣に

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 施設内で靴と靴下を脱いで裸足になるシィーリアス。
 その傍らでクルセイナは尋ねる。

「ところで、シィー殿は剣術の心得は?」
「うむ、先輩の一人に稽古をつけてもらったことや、剣を持った相手との戦いは経験がある」
「なるほど、嗜みは……いや……」

 シィーリアスは素人ではないと確認したが、すぐにクルセイナは顔をひきつらせた。

(シィー殿にとっての嗜む程度のレベルが分からぬ……足技だけでアレほどなのだ……何だかんだで剣の腕前も……)

 戦いに関しては、もはや疑いの余地もないレベルのシィーリアスなのだとしたら「剣の稽古もつけてもらったことがある」というサラっと告げた一言には、自分では想像もつかないほどのレベルの話なのではないかと、クルセイナは心配になった。
 
「っし、じゃあ早速模擬戦を――」

 そんなクルセイナの心配を余所に、ワクワクした表情を見せるパワーナ。
 すると……

「部長、彼の相手は私にさせてください。剣と知略を融合した私の―――」
「重要なのはスピード! 本物の速さというものを彼に」
「剣術三倍段……二刀流の私には六倍の段が必要です……一年坊やにこの私が―――」
「あんたたちには無理よ。実戦派の私が―――」

 と、剣錬場の奥から異様な雰囲気を醸し出した四人の女生徒たちが前へ出た。
 誰もが自信に満ちた笑みを浮かべて、自らがシィーリアスの相手をしようと名乗り出た。

「おお! いきなりあの四人が! 団体レギュラーが!」
「魔法剣士部の『四天女王』……パワーナ部長と副将のユリナ先輩と共にその名を大陸に轟かせたエリート剣士たち」
「いきなりあの四人が相手をするとは贅沢な」
「いや、しかしあの四天女王クラスでないと、あの驚異の新入生の力は計れないということだ」
「ああ……どうなる?」

 四人の女生徒たちの名乗りに男子部員たちも含めて周囲がざわつき始める。
 クルセイナも当然四人のことは知っていたし、その実力も分かっている。
 だからこそ……

「……う~む」

 四天女王が揃ってシィーリスの前に立つ姿を見て……

「どうしたの? クルセイナさん。あなたのお友達の彼が心配? でも、無理もないわ。うちのレギュラー陣も興味津々で一斉に……」

 難しい顔をしているクルセイナにユリナが尋ねると……

「ええ……心配ですね。四人がかりでもシィー殿には傷一つ負わせられないでしょうから……」
「……へ?」

 クルセイナはこの学園でフォルトと同様にシィーリアスの力を十分知っているようで、実際シィーリアスの力の底がまだまだ分かっていないと自身でも自覚していた。
 そんなクルセイナだからこそ、シィーリアスと対峙する四天女王、さらには……

「というより……私が誘っておいてなんですが、今になって私も心配になってきました……剣が嫌になって、先輩方がやめてしまわないか……」
「ッ!?」

 Aランクを倒したとか、フェンリルを倒したというのは、あくまで一つの事実であり、それがシィーリアスの力の限界ではないからこそ……


「下がってなお前ら。あたいがやる! ずっとヤッてみたくてウズウズしてたんだからよ、横取りしようとすんじゃねぇ! つーか、お前らじゃ勝てねえだろ」

「「「「部長ッッ!?」」」」


 パワーナはシィーリアスが四天女王より強いのは分かっている。
 だが、それでも分かっていない。
 パワーナはシィーリアスがどこまで強いのか分かっていない。


「部長自らお相手していただけるとは……よし、僕も猛烈に頑張ります!」

「ああ、ヤリ合おうじゃねえか! ツエー奴と戦うってのはワクワクするんだよぉ! あんたはあたいがこの学園に入学した中でも飛びぬけた雰囲気持ってやがる! 最高だ! ああ、最高だ!」

 
 全身から溢れる闘争本能を抑えることもせず、荒々しいオーラを激しく飛ばすパワーナは、剣を正面に構える。
 シィーリアスも訓練用の木剣を正面から構える。

(シィー殿が剣を……構えは正眼……部長は天の構え……)

 互いに向かい合って構える両者。
 野性的な笑みを見せ、ジリジリと少しずつ間合いを詰めていくパワーナ。
 だが、自然と頬に汗が流れた……

(おいおい……あたいがこれだけ闘志をぶつけてんのに、まるで揺らぐこともねぇって……鈍感じゃねえ。それともあたいが大したことないってか?)

 噂の強い男と早くヤリたいと少年のようにワクワクしていたパワーナも、ここに来てようやく頬が引きつった。

(やべえ……雰囲気あるわ……あたいがこれ以上踏み込めねえ……)

 目の前で対峙する男の異様さを、パワーナもようやく理解した。

「だがな、それを飛び込んでこそのあたいだ! こういうの待ってたんだよぉ!」

 パワーナから仕掛けた。力強い踏み込みで、その強靭な腕力からシィーリアスの脳天目がけて強烈な一閃を……

「足指白刃取りッ!」
「ッ!?」

 シィーリアスは、数日前にクルセイナにやったのと同じように、足の親指と人差し指だけでパワーナの剛剣を受け止めて……

「へ……?」
「うそ!?」
「な、あ、足で!?」
「いや、足での防御は反則……」
「ばか、そういう問題じゃ……」

 シィーリアスのやったことは反則……なのだが、部員の誰かが叫んだように、もはや事態はそういうことではなかった。

「せい!」
「え……あ……」

 事態の把握に努めようとしたパワーナだが、その隙をシィーリアスは逃さない。正眼に構えた剣をそのままパワーナの喉元に突き出し、寸止めした。

「ふむ、これで一本だな」
「……あ……う……あ……あ」

 次の瞬間、あれほど荒々しかったパワーナが顔を青ざめさせながら腰を抜かしてしまった。

「ぶ、部長……」
「う、うそだ……な、そ、そんなこと……」
「うそよ! こんなの……こんなの……」
「あ、ありえない……あんなのありえない! 部長、何か仕組んだんですか!?」
「パワーナ……」

 四天女王もユリナも、剣士として学生の間ではその名を轟かせている者たち。
 そんな彼女たちもまた目の前で起こった事態に震えが止まらない。
 そんな中でクルセイナは「やっぱり……」と頭を抱え……

「あ~、シィー殿。競技上での剣士の試合では、足を使って相手の攻撃を防いだり、攻撃したりするのは反則なのだ……」
「ぇ……えええ!? そ、そうだったのか! 部長さん、大変失礼をした! 自分の無知ゆえにこのようなことを……呆れさせてしまったようで、申し訳ない! では仕切り直し……って、ちょっと待って欲しい、クルセイナ! ということは、剣士部は剣のみで戦うというのか!?」
「……ルール上は……剣に魔法の付加をすることなどは可能だが……剣を通さずに魔法のみで攻撃したりは反則になる」
「なんと、そのような縛りが……魔法も使えない僕は本当に剣のみで……しかし、僕は剣のみで戦ったことはないぞ……」

 苦笑しながら告げるクルセイナの言葉にシィーリアスも顔を青くする。
 ルールなどを全く知らなかったことで、自分の無知を晒してしまったことを慌てて謝罪。
 だが、問題はそういうことではない。

「僕が先輩から教えてもらったのは、相手の剣をとにかく捌いて刺したりする方法だから……足で逃げ回って、隙を突くか……ううむ」

 呆然とする部員やパワーナたちを置いてきぼりにし、ブツブツと一人で呟くシィーリアス。
 やがて、もう一度訓練用の剣を持って……

「最初からコレだけで戦わなければいけないとなると……えっと……先輩の話では、リラックスしたように……脱力状態から……振り上げ、踏み込んで、腰で――――」

 自分なりに剣で攻撃するための素振りをしようとした、そのときだった。


「お、おわあっ!?」

「「「「「ッッッ!!!???」」」」」


 強烈な踏み込みで、床に大きな亀裂が走って足が沈み、降りぬいた訓練用の木剣が根元から折れてしまった。

「う、そ……だろ?」
「あ……ありえない……」

 パワーナとユリナを始め、部員たちが顔面蒼白になって震え上がる。
 ただの素振りで床板を踏み抜いて、さらに剣を折ってしまったのだ。

「あぁ~、床がぁ!? 借りた剣がぁ!? す、すみません、部長さん! 僕が未熟であるために、つい力加減が……手加減したつもりでしたが……申し訳ありません!」

 慌ててその場で土下座するシィーリアス。
 その土下座に対して、しばらくの間誰も何も発することができなかったが……

「あ……ありえ……ねえ」
「はい?」
「ツエーってのは分かったけど……こんなに差があるわけが……」

 パワーナは震えながらも目の前で起こった現実を受け入れられずに再び立ち上がろうとする。

「負けてたまるかよ……あたいが……男だろうが女だろうが関係ない……そう思って剣を振ってきた日々が嘘になっちまう……負けられねえ!」

 そしてパワーナはもう一度シィーリアスと向かい合い……

「あんた、もう一度あたいと勝負してくれ。今夜」
「ぇ……? も、もう一度……ですか?」
「ああ。そして今度は……真剣……魔法も使い、本物の剣を使ってだ!」
「へ?」

 そして再戦を要求した。

「ちょっ、待ってよパワーナ! 真剣って……」
「そうです部長! シィー殿相手に真剣などと……」

 パワーナが要求するのは、訓練でも試合でもない。
 ヤルかヤラれるかの命を懸けた戦い。


「えっと……そ、そうは言われましても……生徒同士で……いいのかな?」

「学園内じゃなければ問題ねぇ! あたいとユリナがルームシェアしてる家の庭でだ! お前らもこのことはセンコー共には黙ってろよな! これは、あたいとこいつの真剣勝負だからよ!」

「で、でも……」

「タダでとは言わねえ! もし、真剣勝負であたいが負けたら……あ、あたいの処女でもくれてやるよ!」

「「「「「ッッッ!!??」」」」」


 それは、パワーナのプライドと覚悟を込めた一言であった。
 女性の身でありながらも男子にも負けない、部内最強であるパワーナの意地。

「だ、だめ、いやよ、パワーナ! あ、あなたが、そんな……」
「許してくれ、ユリナ……でもな、あたいも引けねえ……だから……見守ってくれ!」
「そ、そんなぁ……」
「だが、あたいを信じてくれ。死んでも勝つからよ……あたいのこれまでの人生に懸けて……だからよ、頼む。これだけは引けねえんだ」

 と、シィーリアスの意志に関係なくどんどん話が進んでいく中で、シィーリアスは……


「ん~……いや、でも真剣って言われましても……それでも部長さんでは僕に勝てないと思いますからやめましょうよ」

「「「「「ッ!?」」」」」


 それは相手を見下したわけではなく、ただ単純にシィーリアスは思ったままのことを口にしたのだ。
 そして、その一言がパワーナ以外の者たちのプライドをも刺激した。

「今宵、部長と真剣勝負をされるなら、その前に―――」
「私たちを相手してもらおう! 私の速さは必ずやあなたを……」
「私の二刀流がお相手しましょう―――」
「実戦派である私が……嫌とは言わせませんよ? もちろん、私も身体を賭けましょう」

 シィーリアスの前に立つ、四天女王の四人。
 さらに……

「君……私のパワーナを侮辱したわね……確かに黙っていられないわ。いいわ、パワーナ。あなたの勝利を私も信じるわ。もし、あなたが負けたら、私の身体も彼に……」
「なっ、お、おい、お前ら! しかもユリナまで!」
「パワーナ……私の身体はあなたのもの……男なんかに私の身体を触らせないでね?」
「ッ、ばかやろう……」

 ユリナまでその真剣勝負の流れに乗ることにした。
 こうして、六人の女剣士たちからの挑戦状を叩きつけられたシィーリアスは……

「クルセイナ……よいのだろうか?」
「……………………ほどほどに。はぁ……一気に六人……」

 クルセイナはもはや未来が見えているかのように、パワーナとユリナと四天女王を哀れんだ。
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