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胸を撫で下ろして店に戻ろうとすれば、上背のある若い男が一人、手持ち無沙汰に軒下に佇んでいるのが目に入った。
「ああ、長助やないか、久しぶりやな。なにしてるんや」
着古した印半纏に股引姿が似合う長助は、仏光寺通の染屋の息子である。同じ手習い塾に通った幼馴染で、ここ数年は父親について染物修行に励んでいて見かけることがなかった。手にはなぜか木刀を提げていてる。
「なんやお前のとこの店で、前に騒ぎがあったて聞いてな、様子を見に来たんや」
長助の後ろから佐世がひょっこり顔を出した。佐世との縁談をなかったことにするなどと父に脅されて以来、会いに行ってなかった。案じ顔で優しい笑みを浮かべた顔が、胸苦しくなるほどに眩しい。
「そこでばったり会うて、その話をしたのはうちなんや」
「なんや佐世ちゃんまで、心配かけて悪いな。大した事やないんや。運悪く鉢合わせた性の悪い奴に、絡まれただけなんや」
久々に幼馴染が三人顔を合わせれば、互いに笑みがこぼれる。
「今から遊びに行こか、どこがいい、祇園さんか天神さんか?」
「半次郎、遊んでる場合やないやろ。店の出入りを用心せんと、変な輩がまた来たらどないするんや?、わしが時々用心棒として見張ったる。これでも道場に長いこと通ってたからな」
長助は鍛えた胸板を張って余裕の笑みを浮かべる。涼やかな目元に初々しい気概が滲んだ。
「なんや男振りが上がって頼もしいな。しばらくあいつは来んと思うけど、時々見回りに来てくれたら心強いわな」
佐世も嬉しそうに長助を見上げる。
「長助はんは昔から、半次郎とうちを暴れん坊の太吉から守ってくれはったもんな。これからもよろしゅう頼みます」
佐世は半次郎と並んで、長助に頭を下げる。照れくさそうに頭を掻く長助の仕草は童のままで愛嬌があった。
「持つべきものは竹馬の友やな。ほんまに助かる、百人力や」
半次郎は長助と肩を組んだ。目尻に溢れる涙を拳でそっと拭う。
「しゃあないな、久しぶり手習い仲間が揃ったんや、ちょっとだけ北野天神の梅の咲き具合を見に行こか。わしも少しなら出かけられる。団子でも食べよか」
長介は手にした木刀を帯に差して、二人に目配せしてくる。佐世は顔を赤らめて手を叩く。
「そうしよ、行こ、行こ」
「なんや年明けから碌なことなかったけど、こんな楽しいこともたまにはあるもんやな」
半次郎は前掛けを取って店先にいた丁稚に押し付けると、二人と連れだって通りを北へと浮き浮きと歩きだした。春といえども風はまだ冷たいが、半次郎の身は芯から熱を帯びていた。
「ああ、長助やないか、久しぶりやな。なにしてるんや」
着古した印半纏に股引姿が似合う長助は、仏光寺通の染屋の息子である。同じ手習い塾に通った幼馴染で、ここ数年は父親について染物修行に励んでいて見かけることがなかった。手にはなぜか木刀を提げていてる。
「なんやお前のとこの店で、前に騒ぎがあったて聞いてな、様子を見に来たんや」
長助の後ろから佐世がひょっこり顔を出した。佐世との縁談をなかったことにするなどと父に脅されて以来、会いに行ってなかった。案じ顔で優しい笑みを浮かべた顔が、胸苦しくなるほどに眩しい。
「そこでばったり会うて、その話をしたのはうちなんや」
「なんや佐世ちゃんまで、心配かけて悪いな。大した事やないんや。運悪く鉢合わせた性の悪い奴に、絡まれただけなんや」
久々に幼馴染が三人顔を合わせれば、互いに笑みがこぼれる。
「今から遊びに行こか、どこがいい、祇園さんか天神さんか?」
「半次郎、遊んでる場合やないやろ。店の出入りを用心せんと、変な輩がまた来たらどないするんや?、わしが時々用心棒として見張ったる。これでも道場に長いこと通ってたからな」
長助は鍛えた胸板を張って余裕の笑みを浮かべる。涼やかな目元に初々しい気概が滲んだ。
「なんや男振りが上がって頼もしいな。しばらくあいつは来んと思うけど、時々見回りに来てくれたら心強いわな」
佐世も嬉しそうに長助を見上げる。
「長助はんは昔から、半次郎とうちを暴れん坊の太吉から守ってくれはったもんな。これからもよろしゅう頼みます」
佐世は半次郎と並んで、長助に頭を下げる。照れくさそうに頭を掻く長助の仕草は童のままで愛嬌があった。
「持つべきものは竹馬の友やな。ほんまに助かる、百人力や」
半次郎は長助と肩を組んだ。目尻に溢れる涙を拳でそっと拭う。
「しゃあないな、久しぶり手習い仲間が揃ったんや、ちょっとだけ北野天神の梅の咲き具合を見に行こか。わしも少しなら出かけられる。団子でも食べよか」
長介は手にした木刀を帯に差して、二人に目配せしてくる。佐世は顔を赤らめて手を叩く。
「そうしよ、行こ、行こ」
「なんや年明けから碌なことなかったけど、こんな楽しいこともたまにはあるもんやな」
半次郎は前掛けを取って店先にいた丁稚に押し付けると、二人と連れだって通りを北へと浮き浮きと歩きだした。春といえども風はまだ冷たいが、半次郎の身は芯から熱を帯びていた。
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