小国の王女ですが、とりあえず逃げてみた(無計画

たんぽぽ

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逃走中??

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 起きたら体中が痛かった。
 ベッドがあわなかったのか、昨日バルコニーから脱出するときに無理しすぎた筋肉痛なのかわからないけど。

「あれ? もう私だけ?」

 部屋を見渡すと昨晩いた三人の客の姿がない。窓を見るとずいぶん外が明るい。もしかしたら寝すぎたのかも。

 ナップザックの中身を軽く出して、盗まれた物がないか確認する。お金は一枚一枚数えるのも手間だし、財布の中をちらっと見て終了。なくなっている物はなかった。

 外、というか、王女一行がどうなっているか気になる。

 昨晩のうちに王女が行方不明になったことは確実にバレたと思う。騎士一人と兵士二人の三人組が町中をきょろきょろしながら歩いているのを見つけたから、間違いない。
 
 王女一行がこの町に居座って行方不明の王女を探すなら、私は少しでも早く町の外に逃げないといけない。けど、今外に不用意に出て捜索隊に見つかったら終わりだし、どうしたらいいかと頭を悩ませていると、部屋の扉が開いて、女性が部屋に入ってきた。

「おはようございます」

 私に目をとめて、女性が朝の挨拶をしてきた。よかった、まだ一般的には朝の時間帯みたい。

「おはようございます」

 女性に挨拶を返した後、周囲のベッド事情を見習って使ったタオルケットを四つ折りにして畳んでおく。

「サーホクト行きの馬車が出ますけど、乗車になりますか?」
「サーホクト?」

 女性はここの従業員さんだったみたい。
 話を聞くと、この町から北に向かって走る馬車に乗れるチケットを、宿屋に泊まった客に格安で提供しているという。この町を経由してサーホクトに向かう人は多くて、この部屋にいた三人の客は第一便に乗って旅立ったそう。

「サーホクト……んー北でもいいか。乗ります!」

 目的地のない旅だし、とりあえず今は西と東に向かわなければそれでいい。

「ではご案内します。ついてきてください」
「はーい。あ、顔だけ洗いたいです」
「……では、先に手洗い場に寄っていきましょう」

 ついでにトイレも済ませて、お待たせしていた女性従業員さんに乗り場へ案内してもらう。

「ずいぶん近いですね」
「うちから乗り込むお客さんがほとんどですから」
「へぇ」

 宿の裏口を出た路地の反対側に馬車が一台停車していた。
 女性は運転席に座る男性に声をかけたあと、馬車の乗車口を閉めているかんぬきをを勝手に引き抜いた。

「どうぞ」
「ありがとうございます……あ、お金!」
「あぁ、降りるときに御者に手渡してください」

 この馬車の運転席に座る御者さんと顔見知りみたいだし、宿と提携している馬車っぽいから、それでいいなら私はかまわないけど……。最初に言われた金額以上に請求されたらどうしよう。

「ぼったくりだったりしません?」
「大丈夫ですよ。そんなことしたら宿の評判に傷がつきますし」
「そうですよね、すみません」

 一瞬目を見開いて驚いたあと、女性は笑いながら「心配なら前払いでもいいですよ」と言ってくれた。他にお客さんが乗ってなくてよかった。なんだかすごく恥ずかしい。

「時間になったら勝手に出発するので、中に用意してある食事やクッションなどは自由にお使いください」
「はい」
「それでは、良い旅を」

 外からかんぬきがかけられた。
 
 そして数分後、乗合馬車は私一人を乗せて出発した。

 車内を照らす吊り下げランプを見て思い出す。昨日もらったランプを宿に忘れてしまったみたい。

 
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