男爵令嬢の贅沢な悩み

たんぽぽ

文字の大きさ
3 / 7

庭園茶会

しおりを挟む
 やわらかな陽ざしの中、とりとめのない会話で盛り上がりながら素敵なお庭を眺めていたところ、紹介したい人がいると主催者である伯爵夫人に呼ばれてしまいました。

 実家から離れたこの地域ではまだわたくしの噂話が届いていないようで、久しぶりに同年代の令嬢たちと普通の会話をすることができました。

 これを機に仲の良い友人を作るよう努力しようと頑張った成果ともいえるでしょう。

 主催者のいる場所まで案内してくれたこの家の使用人に軽く礼を言って別れると、すでに伯母様が夫人と話をしていました。
 近くに立っている男性を紹介してくださるのでしょうが、顔をしっかりと見るのは紹介されてから、と習ったのであまりそちらを見ないように気を付けて進みます。
 少し見ただけでも背が高く、体を鍛えている方なのだとわかりました。髪はわたくしと同じ金髪。
 
「呼び立ててしまってごめんなさいね。リリアンジェさんに是非紹介したい方がいるのよ」

 伯爵夫人にそう言われたので随分前から視界に入っていた男性に視線を向けると、青い瞳と目が合い、自然と笑みが浮かびました。お相手の方はとても優しそうな顔立ちをしていらっしゃいます。 

「ローゼン様、わたくしの妹の娘でリリアンジェですわ。現在15歳で恋人も想い人もおりません」

 伯母様がわたくしを紹介すると、ローゼン様は伯爵夫人へ視線を移します。

「リリアンジェさん、わたくしの弟の息子で名前はローゼン。今年16歳のリリアンジェさんには少し年上に感じるかもしれないけれど、このくらいの年の差が丁度良いのよ」

 ローゼン様は21歳。騎士団に勤めていて所属は赤。もちろん独身で現在は恋人も想い人もいないそうだ。

「少し彼女と話をしてきてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」

 整えられた庭を歩いて、周囲に人がまばらになったところでローゼン様が話を切り出しました。

「君には恋人かそれに近い存在がいると聞いたのだが? もしそうなら、遠慮せず言ってくれ」
「そのような方はいません。でもその噂には心当たりがあります」

 迷惑な伯爵子息を思い出し、顔に出ないように注意しながら噂とは違う事実を伝えます。

「そうなのか。同席していた友人が君の事を知っていたようで、先ほど聞いたばかりだったんだ。気を悪くさせてしまってすまない」

 失敗した、と顔に書いてありそうなほど申し訳なさそうにしているローゼン様を責めるつもりはありません。
 悪いのは悪質な噂を故意に流した人たちと、噂を放置していたわたくし。そして元凶の伯爵子息。

「でも、驚きました。まさかこの辺りまでその噂が届いているなんて」
「我々は各地を移動しているから、たまに仲間に会うと情報交換をするようにしているんだ」

 所属先が違うとはいえ騎士が絡む噂なので話題に上るのは仕方ないことなのでしょう。

 ローゼン様はしばらくこちらに滞在するようなので、わたくしの休日に一度会う約束をして伯母様たちがいる場所まで戻りました。

ー社交界なんて滅んでしまえー

本当に噂がこんな離れたところまで広がるなんて
忠告してくれた伯母様には感謝しかないわ。ありがとう伯母様
なぜこんな苦労をしなければならないのかしら
わたくし何もしてないのだけど
お茶会で話題になるたび必死に否定していたら何か変わっていたかしら?

お友達作り頑張ろう
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

処理中です...