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IF
IF たった一人の*
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カツンカツンと遠くから音が聞こえる。次第にそれは近づいてきて、ふと止まった。しかし今度はガチャガチャと鍵を開ける音がする。扉は二重、三重になっているのか、音だけ鳴って、解錠していく人物はなかなか見ることができない。
いっそのこと一生開かないで欲しいと思いつつ、ぎいっと軋んだ音を立てて扉がゆっくりと開かれる。恐怖でもあり、一縷の希望を抱く瞬間でもある。もしかすると、彼が自分を探してここまで――
「ただいま、姉さん」
見慣れた弟の姿――目覚めてこの部屋にいた時から、シンシアはエリアスの姿しか目にしていなかった。
「ごめんね、寂しかっただろう?」
自分は今、泣きそうな顔をしているのだろう。エリアスは申し訳なそうに謝り、近づいてくる。
――逃げたい。
来ないで、と言いそうになる。でも、エリアスはシンシアの大切な弟であり、拒絶することはできなかった。
そんな姉の様子を見て、彼は微笑んだ。そっと隣へ腰を下ろし、気遣う言葉をかけてくる彼は、今までと何も変わらないように思える。……そう思いたい、のかもしれない。今の現実から目を背けたくて。
「エリアス。もう、こんなことやめて……」
俯いて、もう何度繰り返したかわからない言葉を紡ぐ。
「こんなことって?」
何の前触れもなく、エリアスはシンシアを押し倒した。そうしてシュミーズしか着ていない胸元へ口づけを落とす。赤い痕が残るように少し歯を立てて吸い付くと、白い肌に鮮やかな花が咲いた。
「やめて!」
頭を押しのけようとするが、力が入らない。器用に視線だけをこちらへ向けて、エリアスは優しく問いかける。
「また、裸のままで過ごしたい?」
そう言われると、ますます抵抗が弱まることを彼は知っている。
「エリアス……」
涙があふれ、懇願するような声で彼の名前を呼んでいた。そんなシンシアをもっとよく見ようとして、エリアスは位置をずらして覆い被さってくる。額に張りついたシンシアの前髪をかき上げ、潤んだ目を覗き込んでくる。
「なぁに、姉さん」
「お願い、正気に戻って」
シンシアはエリアスの気が触れたのだと思った。だって自分が知っている今までの彼と、まるで違う。だからきっと、おかしくなってしまったのだと……
でもエリアスは少し笑って、姉の言葉を否定した。
「僕はいつだって正気ですよ」
「違う。……正気だったら、こんなこと姉弟でしないわ」
「だからこんなこと、ってどんなことですか?」
裾を捲らないようにして太股に指を這わせられた。逃げようとしても脚を絡めて、身体を押し返そうとする手首も、片手で容易に一纏めにされてしまう。
「手首の痣、ようやく消えてきましたね」
逃げ出そうとして、手首と足首を鎖で拘束されていた。外れたのは、何日前のことだったろうか。
「ごめんね、姉さん。本当は僕も、あんなことしたくなかったんだ」
でも姉さんが馬鹿な真似するから。
逆に傷ついてしまうから。
だから仕方なく。
同じ理由をまた聞かされ、まだ薄っすらと残っている赤い線を、労わるようにエリアスは舌で舐め始めた。
「うっ、あ、やめて!」
彼はやめない。
抵抗すればするほど、シンシアの身体に教えようとする。
「姉さんは僕のものなんだよ。誰のものでもなくて」
「違う。わたしは……」
「わたしは、何? 侯爵のもの?」
耳元でそっと囁かれ、びくりと身体を震わせると、また笑みを深くした。
「あの人、まだ僕のこと疑っているみたい。僕が姉さんをどこかへ連れ去ったんじゃないかって」
酷いよね、と言いながら脚の付け根をくすぐり、蕾を摘まんだり、花びらを割って中へ指を入れようと蜜口をそっとなぞってくる。
「今日もね、ここへ来る途中、後をつけられていたんだ」
ここがどこか、シンシアにはわからなかった。でも、つけられていたということはエリアスが部屋を借りている建物か、その近くだろうか。少なくともまだ、自分はロバートの行動範囲内にいる。もはやそう思うことでしか、シンシアは自分を勇気づけられなかった。
「大丈夫。ここのオーナーや住人たちは僕たちのこと、きちんと知らない振りをして、匿ってくれているから。何かあっても、守ってくれるよ」
くちゅっとした音が鳴り響いて、シンシアの顔が羞恥と絶望に変わる様をエリアスはじっと見ていた。不意に入れられた指はぬかるんだ媚肉に歓迎されるように包まれている。
「姉さん。もう、濡れている。……まだ少ししか弄っていないのに」
ぶんぶん首を振って、目を閉じようとする。
でもエリアスは許さず、ますます淫靡な音を立てて、シンシアを追いつめていく。
「姉さんがこんなにいやらしい身体だったなんて知らなかった」
「ちが、もうやめて……!」
声を出したくない。聴かせたくなくて、シンシアは必死に歯を食いしばった。反論できない彼女をいいことに、エリアスは言葉を重ねていく。
「侯爵に、よほど従順に躾けられたんだろうね。毎晩、毎晩、情熱的に抱かれて……そう言えば、以前昼間に行った時、二人で大事な話をしているって追い返されたことがあったなぁ。その時もやっぱり、抱かれていたの? あっ、締まった。姉さんはわかりやすいなぁ」
ロバートのことを口に出される度、心が軋みそうになる。
彼は今、どんな気持ちでいなくなった自分を探しているだろう。どんな気持ちで……
「あの時は本当に寂しかったなぁ。マーシア夫人が最後まで話に付き合ってくれましたけれど……でもあの人、絆されたようでやっぱり僕のこと疑っていたみたいですね。なるべく姉さんと二人きりにならないよう、ずっと相手をしていたの、知っていましたか?」
ばらばらと中で指を動かされ、時々陰核も一緒に弄られ、必死で耐えていたシンシアは限界を迎えた。
「っ――」
身体を丸めるようにして身体を震わせるシンシアを、横になったエリアスが後ろから抱きしめ、頬に口づけした。
「かわいい」
(やめて。そんなこと言わないで……)
こんなこと、姉弟がすることじゃない。
「姉さん」
「……」
「シンシア」
顎を掬うようにして振り向かされる。薄っすらと目を開ければ、顔を近づけられ、口づけされようとしていた。
「いやっ」
とっさに嫌悪感が募り、頭を振った。そうするとエリアスがかけていた眼鏡のつるの部分に当たり、カツンと小さな音を立てた。
「あ、」
傷つけてしまったかもしれない。
シンシアはすぐにそう思い、弟を心配した。彼は大丈夫だというように微笑んだので、彼女も安心して――こんな状況だというのに彼を非難することができない自分に愕然とした。
「眼鏡は邪魔だったね」
そう言ってエリアスは眼鏡を外して、邪魔にならない所へ置いた。まるで知らない男が現れたようだった。
「エリアス……」
確かめるように、自ずと名前を呼んでいた。
「シンシアは、弟とこんなことをするのが嫌なんだよね」
エリアスはもう一度横になると、後ろから体を密着させ、シンシアの腰を自分の方へ引き寄せた。顔を背けても、首筋をきつく吸われる。不意打ちとも言える行為にはしたない声が漏れる。口を塞ごうとすれば、後ろから指を口の中へ入れられた。
「声、上げたくなったら僕の指を噛んでください」
そんなことできない。
「いいよ。シンシアになら、どんな酷いことされても、全部嬉しいから……」
臀部に熱い塊を押し付けられている。空いた手で器用に胸の膨らみを揉み、すでに硬くなっていた蕾にさらに刺激を与えられる。
「んっ、ふぅっ、」
やめて、と言いたい。これ以上おかしくしないで、と。
でも、口の中に突っ込まれた指を噛んでしまいそうで、そしてどうしようもなく気持ちよくて、声を出す代わりにエリアスの指を舐めて、しゃぶってしまう。唇の端から唾液が零れても、彼は気にせず、時々顔を振り向かせて犬のように舐めた。
そのうち、股の間に彼の男根を差し込まれていることに気づいた。
「あ、やっ」
「大丈夫。まだ、いれないから」
閉じた太股に挟まれた剛直を、エリアスはゆっくりと抜き差しした。先走りが出ているのか、ぬめって、シンシアの蜜口をつつきながら何度も往復する。
「ああ……こうしているだけでも、すごく気持ちいい……」
エリアスの恍惚とした声に、シンシアは必死で違うと心の中で抗った。だってそうしなければ、自分もまた同じだと言いそうになったから。
でも、エリアスはシンシアの本当の気持ちをすでに見抜いている。
「シンシア、この音、俺だけが出しているんじゃないよ。おまえも、出しているんだよ」
違う。違う。
「ふぅ、ぁっ――」
中にぐっ、と雁首が押し入れられ、かと思うと、すぐに引き抜かれた。体勢的に入れにくいのか、エリアスは起き上がって、うつ伏せにさせたシンシアの尻をちょうどいい高さに持ってこさせると、再びゆっくりと挿入してくる。
「だめっ、エリアス! うっ――」
黙らせるように一気に奥まで貫かれ、圧迫感で言葉が出なくなる。
「ごめん。いきなりすぎた」
気遣うように剛直を蜜口まで引き抜くと、浅い部分を突くように彼は腰を動かし始める。隘路をゆっくりこじ開けるように。ロバートではなく、自分のものを馴染ませるように。
「んっ、はぁ、いや、やめてっ……!」
「まだ、痛い?」
痛くない。いっそ痛みであればよかった。
は、は、と荒い息を出しながら耐えるシンシアの姿に、エリアスはどう思ったのか、花芽の部分を撫でて溢れた蜜をまぶしてきた。
「あっ、それっ……!」
「一緒に弄ったら、気持ちがいいだろう?」
エリアスは的確にシンシアが弱い所を突いてくる。彼女がどうしたら狂っていくか、もうすべて熟知していた。
「シンシア。すごく、絡みついてくる。抜こうとすれば、きゅうって……」
彼の言葉に応えるように、シンシアは締めつけた。エリアスが快感の呻き声を上げながらも、笑った。
「侯爵も、たまらなかっただろうな……普段は貞淑な妻が、夜にはこんなに乱れて……はぁ、愛着も湧くはずだ……」
(やめて……)
「最初は身体だけでも、そのうち心まで欲しがるようになったのかな……」
(やめて)
「ようやく気持ちを伝えられると思ったのに、醜い女の嫉妬に巻き込まれて、でも、元はと言えば侯爵が蒔いた種でもあるから自業自得、」
「やめて!」
半ば悲鳴のようにしてシンシアは叫んでいた。
ぴたりとエリアスの動きが止まる。
小さく嗚咽するシンシアに、エリアスが後ろからぴったりと覆い被さってくる。
「どうして泣いているの?」
「ロバート様のこと、悪く言わないで……」
たとえ真実でも、シンシアは聞きたくなかった。
「シンシアは優しいね。それとも、絆されちゃった?」
うなじに唇を押し当てて、乳房を掬い上げるように掴むと、こりこりと蕾を布越しに摘まもうとする。じっとりとした汗でシュミーズは肌にぴたりと張り付き、気持ち悪かった。
「邪魔だね、これ」
そう言うと、エリアスは身に纏っていた肌着を慣れた手つきで引き裂いてしまう。はらりと落ちたそれはもうただの布切れであり、シンシアにとって最後の砦が失われた。
「初めて見た時、姉さんの身体、侯爵の痕がいっぱいつけられてたね」
エリアスは露わになった彼女の背中に舌を這わせ、吸いついてくる。乳房を今度は直接掬い上げ、執拗なまでにその先端を弄ってくる。エリアスの肌はシンシアの肌とくっつき、彼の熱い体温を嫌というほど伝えてくる。
「んっ、あっ、やだっ、」
止まっていた抽挿を再開され、シンシアは逃げようとしたが、がっちりと後ろから密着され、叶わない。
「はぁ、嫌じゃないでしょう」
ぐっと圧し掛かれ、耳元で囁かれる。
「もう、何回も、俺のものでイっているんですから」
「ちがっ、あぁっ――!」
反論を許さないとばかりに、彼は勢いよく肉壁を擦ってくる。身体全身でシンシアを揺さぶって、今誰が快感を与えているかその存在を否応なく刻みつけ、突きつけてくる。
「あっ、だめっ! はげ、し、うっ、ふぅっ、あっ、はぁっ、ぁんっ!」
パンパンと肉と肉がぶつかりあって、正常位よりもより深く、奥を抉られる。愛液は溢れて、太股を流れ落ちて、シーツに染みを作っていく。イきたくないと思っても、シンシアの身体は彼女の意思に反して、絶頂を迎えようとしている。
「ぁっ、はぁっ、はぁ、ん、んっ――」
びくびくと身体を震わせ、痙攣するシンシアを取り押さえるようにエリアスの抱きしめる力がこもった。
「姉さん。気持ちが良かった?」
(ああ、わたし……)
また、とシンシアは絶望した。
『あっ、きもちいいっ、もっとしてっ、もっとちょうだい!』
『はぁっ、んんっ、いいっ、イクっ、イクっ、はぁっ、あん――』
断片的な記憶の中で、シンシアは何度も快感を味わい、恍惚とした表情で啼いて、男に縋っていた。
その男は弟なのに。
自分はロバートの妻なのに。
「泣かないでいいんだよ、シンシア」
静かに涙を流すシンシアを慰めようと、エリアスが優しい声をかけてくる。繋がったまま、ゆさゆさと下腹部を揺らす。彼はまだ射精を迎えておらず、中のものは未だ硬く、熱を持っていた。
「姉さんはキャロラインに媚薬を飲まされて、子爵と悍ましいことをさせられようとしていた。そこに僕が助けに入って、別の部屋へ移した。時間が経っても姉さんは辛いままで、やむをえず僕たちは交接することになった。仕方がなかったことなんだ。姉さんのせいじゃない。何も悪くないんだよ」
弟の慰めも、シンシアには届かなかった。
ゆっくりと首を振り、違うと否定した。
どんな事情があっても、ロバートを裏切ったことに変わりはない。
(それに……)
「姉さんがここにずっといるのは、もうあんな目に遭わせたくない、俺の我儘なんだ」
(ずっと、この子に抱かれて……)
今も、ロバートを裏切っている。
その事実がシンシアをひどく苦しめる。
「弟に抱かれているから、姉さんは罪悪感を抱くんですよね? いけないことをしているって」
「……ふぅ、ぁ……」
息を吸って吐いて、必死で落ち着こうとする。焦れば焦るほど、中は締まり、エリアスを求めることになる。
「それじゃあ、気にしなくていいですよ。僕はあなたと、本当は血が繋がっていないんですから」
いっそのこと一生開かないで欲しいと思いつつ、ぎいっと軋んだ音を立てて扉がゆっくりと開かれる。恐怖でもあり、一縷の希望を抱く瞬間でもある。もしかすると、彼が自分を探してここまで――
「ただいま、姉さん」
見慣れた弟の姿――目覚めてこの部屋にいた時から、シンシアはエリアスの姿しか目にしていなかった。
「ごめんね、寂しかっただろう?」
自分は今、泣きそうな顔をしているのだろう。エリアスは申し訳なそうに謝り、近づいてくる。
――逃げたい。
来ないで、と言いそうになる。でも、エリアスはシンシアの大切な弟であり、拒絶することはできなかった。
そんな姉の様子を見て、彼は微笑んだ。そっと隣へ腰を下ろし、気遣う言葉をかけてくる彼は、今までと何も変わらないように思える。……そう思いたい、のかもしれない。今の現実から目を背けたくて。
「エリアス。もう、こんなことやめて……」
俯いて、もう何度繰り返したかわからない言葉を紡ぐ。
「こんなことって?」
何の前触れもなく、エリアスはシンシアを押し倒した。そうしてシュミーズしか着ていない胸元へ口づけを落とす。赤い痕が残るように少し歯を立てて吸い付くと、白い肌に鮮やかな花が咲いた。
「やめて!」
頭を押しのけようとするが、力が入らない。器用に視線だけをこちらへ向けて、エリアスは優しく問いかける。
「また、裸のままで過ごしたい?」
そう言われると、ますます抵抗が弱まることを彼は知っている。
「エリアス……」
涙があふれ、懇願するような声で彼の名前を呼んでいた。そんなシンシアをもっとよく見ようとして、エリアスは位置をずらして覆い被さってくる。額に張りついたシンシアの前髪をかき上げ、潤んだ目を覗き込んでくる。
「なぁに、姉さん」
「お願い、正気に戻って」
シンシアはエリアスの気が触れたのだと思った。だって自分が知っている今までの彼と、まるで違う。だからきっと、おかしくなってしまったのだと……
でもエリアスは少し笑って、姉の言葉を否定した。
「僕はいつだって正気ですよ」
「違う。……正気だったら、こんなこと姉弟でしないわ」
「だからこんなこと、ってどんなことですか?」
裾を捲らないようにして太股に指を這わせられた。逃げようとしても脚を絡めて、身体を押し返そうとする手首も、片手で容易に一纏めにされてしまう。
「手首の痣、ようやく消えてきましたね」
逃げ出そうとして、手首と足首を鎖で拘束されていた。外れたのは、何日前のことだったろうか。
「ごめんね、姉さん。本当は僕も、あんなことしたくなかったんだ」
でも姉さんが馬鹿な真似するから。
逆に傷ついてしまうから。
だから仕方なく。
同じ理由をまた聞かされ、まだ薄っすらと残っている赤い線を、労わるようにエリアスは舌で舐め始めた。
「うっ、あ、やめて!」
彼はやめない。
抵抗すればするほど、シンシアの身体に教えようとする。
「姉さんは僕のものなんだよ。誰のものでもなくて」
「違う。わたしは……」
「わたしは、何? 侯爵のもの?」
耳元でそっと囁かれ、びくりと身体を震わせると、また笑みを深くした。
「あの人、まだ僕のこと疑っているみたい。僕が姉さんをどこかへ連れ去ったんじゃないかって」
酷いよね、と言いながら脚の付け根をくすぐり、蕾を摘まんだり、花びらを割って中へ指を入れようと蜜口をそっとなぞってくる。
「今日もね、ここへ来る途中、後をつけられていたんだ」
ここがどこか、シンシアにはわからなかった。でも、つけられていたということはエリアスが部屋を借りている建物か、その近くだろうか。少なくともまだ、自分はロバートの行動範囲内にいる。もはやそう思うことでしか、シンシアは自分を勇気づけられなかった。
「大丈夫。ここのオーナーや住人たちは僕たちのこと、きちんと知らない振りをして、匿ってくれているから。何かあっても、守ってくれるよ」
くちゅっとした音が鳴り響いて、シンシアの顔が羞恥と絶望に変わる様をエリアスはじっと見ていた。不意に入れられた指はぬかるんだ媚肉に歓迎されるように包まれている。
「姉さん。もう、濡れている。……まだ少ししか弄っていないのに」
ぶんぶん首を振って、目を閉じようとする。
でもエリアスは許さず、ますます淫靡な音を立てて、シンシアを追いつめていく。
「姉さんがこんなにいやらしい身体だったなんて知らなかった」
「ちが、もうやめて……!」
声を出したくない。聴かせたくなくて、シンシアは必死に歯を食いしばった。反論できない彼女をいいことに、エリアスは言葉を重ねていく。
「侯爵に、よほど従順に躾けられたんだろうね。毎晩、毎晩、情熱的に抱かれて……そう言えば、以前昼間に行った時、二人で大事な話をしているって追い返されたことがあったなぁ。その時もやっぱり、抱かれていたの? あっ、締まった。姉さんはわかりやすいなぁ」
ロバートのことを口に出される度、心が軋みそうになる。
彼は今、どんな気持ちでいなくなった自分を探しているだろう。どんな気持ちで……
「あの時は本当に寂しかったなぁ。マーシア夫人が最後まで話に付き合ってくれましたけれど……でもあの人、絆されたようでやっぱり僕のこと疑っていたみたいですね。なるべく姉さんと二人きりにならないよう、ずっと相手をしていたの、知っていましたか?」
ばらばらと中で指を動かされ、時々陰核も一緒に弄られ、必死で耐えていたシンシアは限界を迎えた。
「っ――」
身体を丸めるようにして身体を震わせるシンシアを、横になったエリアスが後ろから抱きしめ、頬に口づけした。
「かわいい」
(やめて。そんなこと言わないで……)
こんなこと、姉弟がすることじゃない。
「姉さん」
「……」
「シンシア」
顎を掬うようにして振り向かされる。薄っすらと目を開ければ、顔を近づけられ、口づけされようとしていた。
「いやっ」
とっさに嫌悪感が募り、頭を振った。そうするとエリアスがかけていた眼鏡のつるの部分に当たり、カツンと小さな音を立てた。
「あ、」
傷つけてしまったかもしれない。
シンシアはすぐにそう思い、弟を心配した。彼は大丈夫だというように微笑んだので、彼女も安心して――こんな状況だというのに彼を非難することができない自分に愕然とした。
「眼鏡は邪魔だったね」
そう言ってエリアスは眼鏡を外して、邪魔にならない所へ置いた。まるで知らない男が現れたようだった。
「エリアス……」
確かめるように、自ずと名前を呼んでいた。
「シンシアは、弟とこんなことをするのが嫌なんだよね」
エリアスはもう一度横になると、後ろから体を密着させ、シンシアの腰を自分の方へ引き寄せた。顔を背けても、首筋をきつく吸われる。不意打ちとも言える行為にはしたない声が漏れる。口を塞ごうとすれば、後ろから指を口の中へ入れられた。
「声、上げたくなったら僕の指を噛んでください」
そんなことできない。
「いいよ。シンシアになら、どんな酷いことされても、全部嬉しいから……」
臀部に熱い塊を押し付けられている。空いた手で器用に胸の膨らみを揉み、すでに硬くなっていた蕾にさらに刺激を与えられる。
「んっ、ふぅっ、」
やめて、と言いたい。これ以上おかしくしないで、と。
でも、口の中に突っ込まれた指を噛んでしまいそうで、そしてどうしようもなく気持ちよくて、声を出す代わりにエリアスの指を舐めて、しゃぶってしまう。唇の端から唾液が零れても、彼は気にせず、時々顔を振り向かせて犬のように舐めた。
そのうち、股の間に彼の男根を差し込まれていることに気づいた。
「あ、やっ」
「大丈夫。まだ、いれないから」
閉じた太股に挟まれた剛直を、エリアスはゆっくりと抜き差しした。先走りが出ているのか、ぬめって、シンシアの蜜口をつつきながら何度も往復する。
「ああ……こうしているだけでも、すごく気持ちいい……」
エリアスの恍惚とした声に、シンシアは必死で違うと心の中で抗った。だってそうしなければ、自分もまた同じだと言いそうになったから。
でも、エリアスはシンシアの本当の気持ちをすでに見抜いている。
「シンシア、この音、俺だけが出しているんじゃないよ。おまえも、出しているんだよ」
違う。違う。
「ふぅ、ぁっ――」
中にぐっ、と雁首が押し入れられ、かと思うと、すぐに引き抜かれた。体勢的に入れにくいのか、エリアスは起き上がって、うつ伏せにさせたシンシアの尻をちょうどいい高さに持ってこさせると、再びゆっくりと挿入してくる。
「だめっ、エリアス! うっ――」
黙らせるように一気に奥まで貫かれ、圧迫感で言葉が出なくなる。
「ごめん。いきなりすぎた」
気遣うように剛直を蜜口まで引き抜くと、浅い部分を突くように彼は腰を動かし始める。隘路をゆっくりこじ開けるように。ロバートではなく、自分のものを馴染ませるように。
「んっ、はぁ、いや、やめてっ……!」
「まだ、痛い?」
痛くない。いっそ痛みであればよかった。
は、は、と荒い息を出しながら耐えるシンシアの姿に、エリアスはどう思ったのか、花芽の部分を撫でて溢れた蜜をまぶしてきた。
「あっ、それっ……!」
「一緒に弄ったら、気持ちがいいだろう?」
エリアスは的確にシンシアが弱い所を突いてくる。彼女がどうしたら狂っていくか、もうすべて熟知していた。
「シンシア。すごく、絡みついてくる。抜こうとすれば、きゅうって……」
彼の言葉に応えるように、シンシアは締めつけた。エリアスが快感の呻き声を上げながらも、笑った。
「侯爵も、たまらなかっただろうな……普段は貞淑な妻が、夜にはこんなに乱れて……はぁ、愛着も湧くはずだ……」
(やめて……)
「最初は身体だけでも、そのうち心まで欲しがるようになったのかな……」
(やめて)
「ようやく気持ちを伝えられると思ったのに、醜い女の嫉妬に巻き込まれて、でも、元はと言えば侯爵が蒔いた種でもあるから自業自得、」
「やめて!」
半ば悲鳴のようにしてシンシアは叫んでいた。
ぴたりとエリアスの動きが止まる。
小さく嗚咽するシンシアに、エリアスが後ろからぴったりと覆い被さってくる。
「どうして泣いているの?」
「ロバート様のこと、悪く言わないで……」
たとえ真実でも、シンシアは聞きたくなかった。
「シンシアは優しいね。それとも、絆されちゃった?」
うなじに唇を押し当てて、乳房を掬い上げるように掴むと、こりこりと蕾を布越しに摘まもうとする。じっとりとした汗でシュミーズは肌にぴたりと張り付き、気持ち悪かった。
「邪魔だね、これ」
そう言うと、エリアスは身に纏っていた肌着を慣れた手つきで引き裂いてしまう。はらりと落ちたそれはもうただの布切れであり、シンシアにとって最後の砦が失われた。
「初めて見た時、姉さんの身体、侯爵の痕がいっぱいつけられてたね」
エリアスは露わになった彼女の背中に舌を這わせ、吸いついてくる。乳房を今度は直接掬い上げ、執拗なまでにその先端を弄ってくる。エリアスの肌はシンシアの肌とくっつき、彼の熱い体温を嫌というほど伝えてくる。
「んっ、あっ、やだっ、」
止まっていた抽挿を再開され、シンシアは逃げようとしたが、がっちりと後ろから密着され、叶わない。
「はぁ、嫌じゃないでしょう」
ぐっと圧し掛かれ、耳元で囁かれる。
「もう、何回も、俺のものでイっているんですから」
「ちがっ、あぁっ――!」
反論を許さないとばかりに、彼は勢いよく肉壁を擦ってくる。身体全身でシンシアを揺さぶって、今誰が快感を与えているかその存在を否応なく刻みつけ、突きつけてくる。
「あっ、だめっ! はげ、し、うっ、ふぅっ、あっ、はぁっ、ぁんっ!」
パンパンと肉と肉がぶつかりあって、正常位よりもより深く、奥を抉られる。愛液は溢れて、太股を流れ落ちて、シーツに染みを作っていく。イきたくないと思っても、シンシアの身体は彼女の意思に反して、絶頂を迎えようとしている。
「ぁっ、はぁっ、はぁ、ん、んっ――」
びくびくと身体を震わせ、痙攣するシンシアを取り押さえるようにエリアスの抱きしめる力がこもった。
「姉さん。気持ちが良かった?」
(ああ、わたし……)
また、とシンシアは絶望した。
『あっ、きもちいいっ、もっとしてっ、もっとちょうだい!』
『はぁっ、んんっ、いいっ、イクっ、イクっ、はぁっ、あん――』
断片的な記憶の中で、シンシアは何度も快感を味わい、恍惚とした表情で啼いて、男に縋っていた。
その男は弟なのに。
自分はロバートの妻なのに。
「泣かないでいいんだよ、シンシア」
静かに涙を流すシンシアを慰めようと、エリアスが優しい声をかけてくる。繋がったまま、ゆさゆさと下腹部を揺らす。彼はまだ射精を迎えておらず、中のものは未だ硬く、熱を持っていた。
「姉さんはキャロラインに媚薬を飲まされて、子爵と悍ましいことをさせられようとしていた。そこに僕が助けに入って、別の部屋へ移した。時間が経っても姉さんは辛いままで、やむをえず僕たちは交接することになった。仕方がなかったことなんだ。姉さんのせいじゃない。何も悪くないんだよ」
弟の慰めも、シンシアには届かなかった。
ゆっくりと首を振り、違うと否定した。
どんな事情があっても、ロバートを裏切ったことに変わりはない。
(それに……)
「姉さんがここにずっといるのは、もうあんな目に遭わせたくない、俺の我儘なんだ」
(ずっと、この子に抱かれて……)
今も、ロバートを裏切っている。
その事実がシンシアをひどく苦しめる。
「弟に抱かれているから、姉さんは罪悪感を抱くんですよね? いけないことをしているって」
「……ふぅ、ぁ……」
息を吸って吐いて、必死で落ち着こうとする。焦れば焦るほど、中は締まり、エリアスを求めることになる。
「それじゃあ、気にしなくていいですよ。僕はあなたと、本当は血が繋がっていないんですから」
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