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4.仲直りはお早めに
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「……ねぇ、健太郎」
「あ? 何だよ、まさか今のでキレたか?」
……キレてないってば。
でも、それだけいつも、私は健太郎の言葉に逐一突っかかってたんだろう。
今も少しだけ言い返してしまいそうになったけれど、一呼吸おいて口を開いた。
「健太郎はもう一度行けるとしたら、どこに行きたい?」
「は? 何だよ、突然」
「健太郎と居られるうちに、健太郎の行きたいところ巡りでもしようかなと思って。健太郎さえよければ、これからでも行こうかなと」
「俺の行きたいところを巡ってどうすんだよ。それにこれからって、お前学校はどうするんだよ」
「健太郎次第ではサボってもいいよ」
「何だそれ」
呆れたような健太郎の声。
多分、私の意図することが伝わっていないのだろう。
「健太郎に行きたいところがあったとしても、私がそこへ行かない限り行けないでしょ? でも、裏を返せば私が動きさえすれば、健太郎はどこへでも行けるってこと。だから、私ができるうちに、健太郎の行きたい場所に連れて行きたいって思ったの」
なんで今、死んだはずの健太郎が私の中にいて、こうしてお話をすることができるのかわからない。
どうして私だったのかも、いつまで健太郎が私の中にいるのかも、何もわからない。
でも、だから思ったんだ。健太郎が私を通して見たり聞いたりできるうちに、健太郎の行きたいところ、行きたかったところに行こうって。
私を通して行けるというのなら、健太郎の希望するところに連れていきたい。
「ねぇ、どこかないの?」
「うるさいな。今、考えてるとこだよ」
思い立ったがままに突然そんなことを聞いた私も悪いのだろうけれど、何もこたえる様子のない健太郎に問うと怒ったように返される。
人が健太郎のことを思って動こうとしてるっていうのに、何で怒るのよ。
「……そうだな、またカラオケにも行きたいし、新しくできたラーメン屋にも行きたいし……」
「ほんと!? じゃあ、全部行こう! 今すぐにでも」
「はぁ? だから、さっきからどうしたんだよ。どういう風の吹き回しだ?」
相変わらず、私の突然の思いつきに驚きあきれる健太郎。
だけど、そうと決まれば、ひとつでも多く健太郎の行きたい場所を回りたい!
グズグズしていられなくて、私は急いで腰を浮かす。
だけど、完全に気持ちはこれから学校の外に出ることへと向いていたのに、健太郎はそんな私を引き留めた。
「ちょっと待て! 今すぐじゃなくていいから」
「え、何で?」
「だってお前、学校あるじゃねぇか!」
「そうだけど、でも、健太郎が私の中にいるうちに行かないと……」
そうじゃないと、意味がなくなってしまう。
この状態が永遠に続くとも限らないんじゃないかって、ふと思ってしまったから。
ある日突然、健太郎は本当に私の中からも消えていなくなってしまうんじゃないかって……。
そう思ったら、とても怖くなった。
だけど同時に、もしいつか本当のお別れの日が来るのなら、それまで少しでも後悔しないように行動したいって思ったんだ。
「そんなに焦らなくても大丈夫だろ。ってか、その格好で街を出歩けば確実に補導されるし、放課後でいいだろ」
ありふれた冬服の制服を身にまとった私。
確かに、健太郎の言う通りだ。
「なんとなく、まだしばらく俺はこのままな気がするし。あの退屈な授業もまた受けられるなら、また千夏やみんなと受けたいって思ってる」
そういうものなのだろう。
何てことない日常を突然送れなくなった健太郎にとっては、生きているうちは当たり前のように受けていた学校の授業でさえ、特別なんだ。
「……わかったよ」
私は健太郎の言葉に同意すると、二時間目の授業には間に合うように教室へと戻った。
「あ? 何だよ、まさか今のでキレたか?」
……キレてないってば。
でも、それだけいつも、私は健太郎の言葉に逐一突っかかってたんだろう。
今も少しだけ言い返してしまいそうになったけれど、一呼吸おいて口を開いた。
「健太郎はもう一度行けるとしたら、どこに行きたい?」
「は? 何だよ、突然」
「健太郎と居られるうちに、健太郎の行きたいところ巡りでもしようかなと思って。健太郎さえよければ、これからでも行こうかなと」
「俺の行きたいところを巡ってどうすんだよ。それにこれからって、お前学校はどうするんだよ」
「健太郎次第ではサボってもいいよ」
「何だそれ」
呆れたような健太郎の声。
多分、私の意図することが伝わっていないのだろう。
「健太郎に行きたいところがあったとしても、私がそこへ行かない限り行けないでしょ? でも、裏を返せば私が動きさえすれば、健太郎はどこへでも行けるってこと。だから、私ができるうちに、健太郎の行きたい場所に連れて行きたいって思ったの」
なんで今、死んだはずの健太郎が私の中にいて、こうしてお話をすることができるのかわからない。
どうして私だったのかも、いつまで健太郎が私の中にいるのかも、何もわからない。
でも、だから思ったんだ。健太郎が私を通して見たり聞いたりできるうちに、健太郎の行きたいところ、行きたかったところに行こうって。
私を通して行けるというのなら、健太郎の希望するところに連れていきたい。
「ねぇ、どこかないの?」
「うるさいな。今、考えてるとこだよ」
思い立ったがままに突然そんなことを聞いた私も悪いのだろうけれど、何もこたえる様子のない健太郎に問うと怒ったように返される。
人が健太郎のことを思って動こうとしてるっていうのに、何で怒るのよ。
「……そうだな、またカラオケにも行きたいし、新しくできたラーメン屋にも行きたいし……」
「ほんと!? じゃあ、全部行こう! 今すぐにでも」
「はぁ? だから、さっきからどうしたんだよ。どういう風の吹き回しだ?」
相変わらず、私の突然の思いつきに驚きあきれる健太郎。
だけど、そうと決まれば、ひとつでも多く健太郎の行きたい場所を回りたい!
グズグズしていられなくて、私は急いで腰を浮かす。
だけど、完全に気持ちはこれから学校の外に出ることへと向いていたのに、健太郎はそんな私を引き留めた。
「ちょっと待て! 今すぐじゃなくていいから」
「え、何で?」
「だってお前、学校あるじゃねぇか!」
「そうだけど、でも、健太郎が私の中にいるうちに行かないと……」
そうじゃないと、意味がなくなってしまう。
この状態が永遠に続くとも限らないんじゃないかって、ふと思ってしまったから。
ある日突然、健太郎は本当に私の中からも消えていなくなってしまうんじゃないかって……。
そう思ったら、とても怖くなった。
だけど同時に、もしいつか本当のお別れの日が来るのなら、それまで少しでも後悔しないように行動したいって思ったんだ。
「そんなに焦らなくても大丈夫だろ。ってか、その格好で街を出歩けば確実に補導されるし、放課後でいいだろ」
ありふれた冬服の制服を身にまとった私。
確かに、健太郎の言う通りだ。
「なんとなく、まだしばらく俺はこのままな気がするし。あの退屈な授業もまた受けられるなら、また千夏やみんなと受けたいって思ってる」
そういうものなのだろう。
何てことない日常を突然送れなくなった健太郎にとっては、生きているうちは当たり前のように受けていた学校の授業でさえ、特別なんだ。
「……わかったよ」
私は健太郎の言葉に同意すると、二時間目の授業には間に合うように教室へと戻った。
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