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10.本当の気持ち
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「……父さん、母さん。ごめんな」
そのとき、私の中でぼそりと呟くように聞こえた健太郎の声。
「俺、正直涼也ばっかりって思ってたところがあった。理由もわかってたけど、心がついていかなくて……。後悔させるようなことして、ごめんな」
健太郎が謝ってる。
健太郎のご両親に聞こえるわけではないのに、真剣に。
「……ごめん。俺もまさかあんな形で自分が死ぬなんて、思ってなかったんだ……。こうなるってわかってたら俺、……」
一方通行にも構わず続ける健太郎。
きっとそうでもしないと、辛くて苦しくて、健太郎自身も後悔の気持ちに押し潰されてしまいそうなんだろう。
健太郎の気持ちを、健太郎の言葉を、どうにかして伝えられないだろうか。
こんなに真剣で苦しそうな健太郎の言葉を、聞かなかったフリなんてしたくない。
そう思ったら私は自然と言葉を紡いでいた、健太郎の代わりに。
「……健太郎も、後悔していると思います」
「え……?」
私が言うと同時に、健太郎のご両親はまるで救いを求めるような瞳でこちらを向いた。
同時に、健太郎も「千夏……?」と少し驚いたような声を漏らしている。
「や、あの、健太郎が言ってたんです。涼也くんの身体が弱いから、ご両親ともに涼也くんに付きっきりなんだって。理由もわかってたし、涼也くんのことも大好きだったけど、それでも健太郎自身の心がついていかなかったんだって言ってました」
「そうなの……。本当に、健太郎には悪いことをしたわ……」
両手を顔に当てて、再び涙を流し始めた健太郎のお母さん。
悲しそうに、健太郎のお母さんの肩を支える健太郎のお父さん。
どうやったら、ちゃんと伝わるのだろう?
健太郎のご両親の傷口をえぐるのではなくて、健太郎もそのことでご両親に後悔させてしまったことを後悔してると伝えたいのに……。
「……きっと、それだけ健太郎が上手く気持ちをコントロールできなかったのは、涼也くんに嫉妬してしまうくらいに、ご両親のことが大好きだったからなんだと思うんです。だからこそ健太郎も、ご両親に後悔させてしまったことを悲しんでいると思います」
「そうかしら……」
「だから、お空にいる健太郎をこれ以上悲しませないためにも、そんな健太郎を許してあげてください。ご両親ともに後悔されていたら、きっと優しい健太郎はお二人にそんな態度を取ってしまったことを、お空の上で後悔し続けてしまうと思います」
突然健太郎に手を合わせさせてもらうことにして、こんなことを言うなんて、ちょっとでしゃばり過ぎたかもしれない。
偉そうだって思われたかもしれない。
健太郎も勝手なことをした私に、怒ってるかもしれない。
でも、伝えられるときに伝えておかないと、きっとまた後悔する。
私だって、健太郎だって、きっと……。
「……ありがとう。あなたのことかしら。健太郎と小学四年生の頃からずっと同じクラスの仲のいい女の子がいるっていうのは」
「……え? 確かに健太郎とは何の縁あってかずっと同じクラスですけど」
小学四年生の頃からずっと同じクラスだなんて、健太郎だけだ。もちろん、それは健太郎にとっても同じだった。
だけど健太郎のお母さんの口から“仲のいい女の子”って言われると、こっぱずかしくて、なんだか自分じゃないみたいに聞こえてしまう。
確かに仲は悪くない方だったんだと思うけど、言い合いばっかりしてたし……。
「やっぱりそうなのね。まだ健太郎が口を利いてくれてた頃、いつもその子の話ばかりしてたのよ。今ではめっきり話してくれなくなってたけれど、涼也には話してたみたいで、唯一ずっと同じクラスの女の子だってことだけは知ってたのよ」
「そうなんですか!?」
なんだか思わぬことを聞かされてしまった。
そのとき、私の中でぼそりと呟くように聞こえた健太郎の声。
「俺、正直涼也ばっかりって思ってたところがあった。理由もわかってたけど、心がついていかなくて……。後悔させるようなことして、ごめんな」
健太郎が謝ってる。
健太郎のご両親に聞こえるわけではないのに、真剣に。
「……ごめん。俺もまさかあんな形で自分が死ぬなんて、思ってなかったんだ……。こうなるってわかってたら俺、……」
一方通行にも構わず続ける健太郎。
きっとそうでもしないと、辛くて苦しくて、健太郎自身も後悔の気持ちに押し潰されてしまいそうなんだろう。
健太郎の気持ちを、健太郎の言葉を、どうにかして伝えられないだろうか。
こんなに真剣で苦しそうな健太郎の言葉を、聞かなかったフリなんてしたくない。
そう思ったら私は自然と言葉を紡いでいた、健太郎の代わりに。
「……健太郎も、後悔していると思います」
「え……?」
私が言うと同時に、健太郎のご両親はまるで救いを求めるような瞳でこちらを向いた。
同時に、健太郎も「千夏……?」と少し驚いたような声を漏らしている。
「や、あの、健太郎が言ってたんです。涼也くんの身体が弱いから、ご両親ともに涼也くんに付きっきりなんだって。理由もわかってたし、涼也くんのことも大好きだったけど、それでも健太郎自身の心がついていかなかったんだって言ってました」
「そうなの……。本当に、健太郎には悪いことをしたわ……」
両手を顔に当てて、再び涙を流し始めた健太郎のお母さん。
悲しそうに、健太郎のお母さんの肩を支える健太郎のお父さん。
どうやったら、ちゃんと伝わるのだろう?
健太郎のご両親の傷口をえぐるのではなくて、健太郎もそのことでご両親に後悔させてしまったことを後悔してると伝えたいのに……。
「……きっと、それだけ健太郎が上手く気持ちをコントロールできなかったのは、涼也くんに嫉妬してしまうくらいに、ご両親のことが大好きだったからなんだと思うんです。だからこそ健太郎も、ご両親に後悔させてしまったことを悲しんでいると思います」
「そうかしら……」
「だから、お空にいる健太郎をこれ以上悲しませないためにも、そんな健太郎を許してあげてください。ご両親ともに後悔されていたら、きっと優しい健太郎はお二人にそんな態度を取ってしまったことを、お空の上で後悔し続けてしまうと思います」
突然健太郎に手を合わせさせてもらうことにして、こんなことを言うなんて、ちょっとでしゃばり過ぎたかもしれない。
偉そうだって思われたかもしれない。
健太郎も勝手なことをした私に、怒ってるかもしれない。
でも、伝えられるときに伝えておかないと、きっとまた後悔する。
私だって、健太郎だって、きっと……。
「……ありがとう。あなたのことかしら。健太郎と小学四年生の頃からずっと同じクラスの仲のいい女の子がいるっていうのは」
「……え? 確かに健太郎とは何の縁あってかずっと同じクラスですけど」
小学四年生の頃からずっと同じクラスだなんて、健太郎だけだ。もちろん、それは健太郎にとっても同じだった。
だけど健太郎のお母さんの口から“仲のいい女の子”って言われると、こっぱずかしくて、なんだか自分じゃないみたいに聞こえてしまう。
確かに仲は悪くない方だったんだと思うけど、言い合いばっかりしてたし……。
「やっぱりそうなのね。まだ健太郎が口を利いてくれてた頃、いつもその子の話ばかりしてたのよ。今ではめっきり話してくれなくなってたけれど、涼也には話してたみたいで、唯一ずっと同じクラスの女の子だってことだけは知ってたのよ」
「そうなんですか!?」
なんだか思わぬことを聞かされてしまった。
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