40 / 55
10.本当の気持ち
(8)
しおりを挟む
「……今だから言うけどさ、バスケをしているときの健太郎、素直にかっこよかったよ」
「……は、へ? な、何だよ、急に」
焦ったような健太郎の声。
その声から健太郎の照れた姿が連想されて、なんだかおかしい。
「や、ふ、深い意味なんてないんだからね! ただ、伝えられてなかったなって思って……」
だけど、言ってから私の方が緊張してきてしまった。
恥ずかしくて、胸がきゅっと締め付けられる。
顔に身体中の全ての熱が集中してるかのように、熱い……。
「……そういう千夏も、応援に来てくれてた女子の中で、一番可愛かった、よ」
そのとき、ぼそりと呟くような声が私の中で響いた。
「え、何? 何か言った?」
本当に微かに聞こえただけで、健太郎の顔が見えてるわけじゃないから空耳だったのかもしれない。
「……もう言ってやんない」
だけど、やっぱり勘違いなんかじゃなかったっていうことは、恥ずかしそうな健太郎の声色からわかった。
「えー」
もう一回言ってくれたっていいのに。
でも、本当に健太郎は私のことを可愛いと思ってたのかな?
私が健太郎を褒めたからその義理で言ったんじゃないかと、素直に健太郎の言葉を受け止められない自分が顔を出していた。
一瞬浮かれたそばからそんなことを考えて、一人もんもんとする。
そうしているうちに、健太郎の声が私の中で大きく響いた。
「あれ、よかったらシュート決めてよ、俺の代わりに」
公園の中に入ってから、何気なく私の視界の真ん中辺りに映していたバスケのゴール。
健太郎はきっと私の目を通してそれを見て、バスケが恋しくなったのだろうけれど……。
「そんな、無理だって。無理無理! 健太郎、私がバスケ苦手なの知ってるでしょ? それに第一、バスケのボールなんてないし……」
「ボールなら、この公園の入り口付近に落とし物のバスケットボールが転がってたぜ」
何でもないかのように言う健太郎。
「う、うそ……!」
「うそじゃねぇよ。この公園に入ったとき、千夏の視界の隅にしっかり映ってたって!」
健太郎に言われた場所を見てみると、確かにそこにはオレンジ色に黒のラインの入ったバスケットボールが寂しげに転がっている。
今の健太郎と私は同じ風景を見ているはずなのに、ちっとも気がつかなかったよ……。
人によって同じ景色を見ていても目を留める位置が違うというのは、こういうことを言うのか。
「無理無理言うけど、やってみてもないのにわかるわけないだろ? 大丈夫だ。俺も指示するし、それに今の千夏は俺と一心同体なんだから」
一心同体、って……。
なんとなく健太郎の言いたいことは伝わってきたけど、本来の使い方とは違うよね……?
健太郎が私の中に来てから、シンクロ効果のおかげなのか健太郎程ではなくても私のスポーツの腕が上がっているのは確かだ。ボウリングにしても、そうだったし。
だからといって確実にシュートが決まるかと言われたら、それは違うと思うけれど。
それでも私の身体を通して健太郎のバスケをもう一度やりたいっていう気持ちを満たすことができるのなら、やってもいいかなって思った。
健太郎の言っていたボールを取りに行くと、ボールを両手で持って再びバスケのゴールの方へと歩く。
「……は、へ? な、何だよ、急に」
焦ったような健太郎の声。
その声から健太郎の照れた姿が連想されて、なんだかおかしい。
「や、ふ、深い意味なんてないんだからね! ただ、伝えられてなかったなって思って……」
だけど、言ってから私の方が緊張してきてしまった。
恥ずかしくて、胸がきゅっと締め付けられる。
顔に身体中の全ての熱が集中してるかのように、熱い……。
「……そういう千夏も、応援に来てくれてた女子の中で、一番可愛かった、よ」
そのとき、ぼそりと呟くような声が私の中で響いた。
「え、何? 何か言った?」
本当に微かに聞こえただけで、健太郎の顔が見えてるわけじゃないから空耳だったのかもしれない。
「……もう言ってやんない」
だけど、やっぱり勘違いなんかじゃなかったっていうことは、恥ずかしそうな健太郎の声色からわかった。
「えー」
もう一回言ってくれたっていいのに。
でも、本当に健太郎は私のことを可愛いと思ってたのかな?
私が健太郎を褒めたからその義理で言ったんじゃないかと、素直に健太郎の言葉を受け止められない自分が顔を出していた。
一瞬浮かれたそばからそんなことを考えて、一人もんもんとする。
そうしているうちに、健太郎の声が私の中で大きく響いた。
「あれ、よかったらシュート決めてよ、俺の代わりに」
公園の中に入ってから、何気なく私の視界の真ん中辺りに映していたバスケのゴール。
健太郎はきっと私の目を通してそれを見て、バスケが恋しくなったのだろうけれど……。
「そんな、無理だって。無理無理! 健太郎、私がバスケ苦手なの知ってるでしょ? それに第一、バスケのボールなんてないし……」
「ボールなら、この公園の入り口付近に落とし物のバスケットボールが転がってたぜ」
何でもないかのように言う健太郎。
「う、うそ……!」
「うそじゃねぇよ。この公園に入ったとき、千夏の視界の隅にしっかり映ってたって!」
健太郎に言われた場所を見てみると、確かにそこにはオレンジ色に黒のラインの入ったバスケットボールが寂しげに転がっている。
今の健太郎と私は同じ風景を見ているはずなのに、ちっとも気がつかなかったよ……。
人によって同じ景色を見ていても目を留める位置が違うというのは、こういうことを言うのか。
「無理無理言うけど、やってみてもないのにわかるわけないだろ? 大丈夫だ。俺も指示するし、それに今の千夏は俺と一心同体なんだから」
一心同体、って……。
なんとなく健太郎の言いたいことは伝わってきたけど、本来の使い方とは違うよね……?
健太郎が私の中に来てから、シンクロ効果のおかげなのか健太郎程ではなくても私のスポーツの腕が上がっているのは確かだ。ボウリングにしても、そうだったし。
だからといって確実にシュートが決まるかと言われたら、それは違うと思うけれど。
それでも私の身体を通して健太郎のバスケをもう一度やりたいっていう気持ちを満たすことができるのなら、やってもいいかなって思った。
健太郎の言っていたボールを取りに行くと、ボールを両手で持って再びバスケのゴールの方へと歩く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる