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終章 蟠龍に抱かれて眠れ
1 蟠龍櫓にて
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ここはどこだろう。
蔵のようなところに入れられた。
牢屋?
気がついたら、派手な衣装は脱がされて、死装束のような白い着物を着せられている。
誰が着せたんだ?
「寝てる間にしか触れないだろ。暴れるに決まってるからな」
着物をじっと眺めていたからか、離れたところにいた右京が言った。
「右京が?」
「まさか。そんな器用なことはできない」
「だよな」
「あんな派手なやつは没収だ」
笑おうとしたが、頬がひきつる。
右京も怒ったように怖い顔のままだ。
「なんで、ここにいるの?」
「おれか? お前か?」
「両方だよ」
「ここは、蟠龍櫓だ。逃げられはしない。すぐ外は川だ。泣いて叫んでも誰も来ない」
櫓は武具などを保管したり、物見の役割があるが、普段は無人で人気がない。
「誰が泣くかよ」
「お前は、お殿さまがご帰国されるまではそのままだ。大人しくしていろ」
「どうして殺さないんだ」
「殿が判断される。お前を殺したら、久松が黙っていないからな」
「なんでお前がここにいるんだよ」
「死なないように見張ってる」
「おれは、お前に殺されるためにここに来たんだぞ」
「わかってる。その時が来たらそうする。だが、今じゃない」
「・・・」
「ゆっくり休め。と言っても、もう二日は寝ていたがな」
「そんなに?」
動いたら胸が痛かった。
襟を開いてみると、みみず腫れが一本入っている。
「骨は折れてないと思うが。ヒビは入ってるかもな。目が覚めたのなら、食事を持ってくる」
右京は格子の向こうだ。
やはり牢屋なのか。
板壁にもたれて座った。
蟠龍櫓か・・・。
場所が同じなら、外の景色が想像できる。
港が近く、街道もすぐだから、外は人々で賑わっているだろう。
ここで、死ぬのも悪くない。
「ちゃんと食べろよ」
右京が握り飯を、格子の中へ入れた。
食べる気にならない。
首を振った。
「もういいよ」
右京がため息をついた。
「やっぱりな。他のやつでは面倒見きれんと思ったが、そのようだな」
「なんだよ」
「おれじゃなきゃ、ダメだってことだ」
「なに自惚れてんだ」
確かに、こんなふうにタメ口を吐いていると、気持ちが紛れる。
あの頃に戻ったように、懐かしい感じがした。
「お前に面倒見てもらいたくない」
「なんでもしてやるよ。下の世話とか」
「いらねえよ。寝たきりじゃあるまいし」
「なら食えよ」
「いらない」
「食え」
「うるせえな!」
「食うまでここにいるからな。いや、ずっといてやる」
「嫌だよ。帰れ」
傷が痛み、体を丸めた。
「どうした」
「お前のせいだろ」
二日食べていないせいか、くらくらする。
でも食欲はない。
なんか、熱っぽい気もする。
「いいから行けよ」
放っといてくれ。
どうせここで死ぬんだから。
右京に背を向けて寝転んだ。
諦めたのか、右京が去っていく気配がした。
このまま死ねたら楽なのに、と思う。
ひどく寒い。
火事になるといけないから、火は使わせてくれないようだ。
丸まって寝るしかなかった。
暖かい夢を見た。
誰かに抱きしめられ、抱擁されている。
もうあの世なのかな。
背中が暖かくて気持ちがいい。
震えがおさまって、安心して眠りにつける。
苦しさが和らいだ。
「誰?・・・」
「いいから、寝ろ。熱が下がるまで抱いててやるから」
右京の声が耳元でした。
「つっ・・・」
起きようとして、胸に痛みが走り、目が覚めた。
「右京?」
「気にするな。二人っきりだからな」
「放っておけって言ったのに。・・・このまま死にたい・・・」
「死なせはせん。おれがなんとかする」
「できるのかよ、そんなこと」
「できるさ。やってみせる」
「なんで・・・」
泣き声になった。
「素直になれよ。お前は光徳院さまじゃないだろ。勝手に縛られているのは、お前だ。自分で自分を縛ってどうする。ここには、おれとお前しかいないんだぞ」
「・・・」
そうだ。
右京の言葉が身に沁みた。
自分で自分を縛っていたんだ。
「おれは、光徳院さまじゃない」
「そうだ。素直になれ。・・・おれを好きだと言え」
「は?」
笑いが込み上げてきた。
「なんでだよ」
「素直じゃないなあ」
右京も笑っている。
景司の体を、そっと前に向かせた。
右京の顔が目の前にあった。
恥ずかしくなって目をそらす。
泣き顔を見られたくなかった。
顎を掴まれ、口づけられる。
はじめは体を気遣うように遠慮がちだったが、次第に抑えがきかなくなり激しい愛撫になった。
蔵のようなところに入れられた。
牢屋?
気がついたら、派手な衣装は脱がされて、死装束のような白い着物を着せられている。
誰が着せたんだ?
「寝てる間にしか触れないだろ。暴れるに決まってるからな」
着物をじっと眺めていたからか、離れたところにいた右京が言った。
「右京が?」
「まさか。そんな器用なことはできない」
「だよな」
「あんな派手なやつは没収だ」
笑おうとしたが、頬がひきつる。
右京も怒ったように怖い顔のままだ。
「なんで、ここにいるの?」
「おれか? お前か?」
「両方だよ」
「ここは、蟠龍櫓だ。逃げられはしない。すぐ外は川だ。泣いて叫んでも誰も来ない」
櫓は武具などを保管したり、物見の役割があるが、普段は無人で人気がない。
「誰が泣くかよ」
「お前は、お殿さまがご帰国されるまではそのままだ。大人しくしていろ」
「どうして殺さないんだ」
「殿が判断される。お前を殺したら、久松が黙っていないからな」
「なんでお前がここにいるんだよ」
「死なないように見張ってる」
「おれは、お前に殺されるためにここに来たんだぞ」
「わかってる。その時が来たらそうする。だが、今じゃない」
「・・・」
「ゆっくり休め。と言っても、もう二日は寝ていたがな」
「そんなに?」
動いたら胸が痛かった。
襟を開いてみると、みみず腫れが一本入っている。
「骨は折れてないと思うが。ヒビは入ってるかもな。目が覚めたのなら、食事を持ってくる」
右京は格子の向こうだ。
やはり牢屋なのか。
板壁にもたれて座った。
蟠龍櫓か・・・。
場所が同じなら、外の景色が想像できる。
港が近く、街道もすぐだから、外は人々で賑わっているだろう。
ここで、死ぬのも悪くない。
「ちゃんと食べろよ」
右京が握り飯を、格子の中へ入れた。
食べる気にならない。
首を振った。
「もういいよ」
右京がため息をついた。
「やっぱりな。他のやつでは面倒見きれんと思ったが、そのようだな」
「なんだよ」
「おれじゃなきゃ、ダメだってことだ」
「なに自惚れてんだ」
確かに、こんなふうにタメ口を吐いていると、気持ちが紛れる。
あの頃に戻ったように、懐かしい感じがした。
「お前に面倒見てもらいたくない」
「なんでもしてやるよ。下の世話とか」
「いらねえよ。寝たきりじゃあるまいし」
「なら食えよ」
「いらない」
「食え」
「うるせえな!」
「食うまでここにいるからな。いや、ずっといてやる」
「嫌だよ。帰れ」
傷が痛み、体を丸めた。
「どうした」
「お前のせいだろ」
二日食べていないせいか、くらくらする。
でも食欲はない。
なんか、熱っぽい気もする。
「いいから行けよ」
放っといてくれ。
どうせここで死ぬんだから。
右京に背を向けて寝転んだ。
諦めたのか、右京が去っていく気配がした。
このまま死ねたら楽なのに、と思う。
ひどく寒い。
火事になるといけないから、火は使わせてくれないようだ。
丸まって寝るしかなかった。
暖かい夢を見た。
誰かに抱きしめられ、抱擁されている。
もうあの世なのかな。
背中が暖かくて気持ちがいい。
震えがおさまって、安心して眠りにつける。
苦しさが和らいだ。
「誰?・・・」
「いいから、寝ろ。熱が下がるまで抱いててやるから」
右京の声が耳元でした。
「つっ・・・」
起きようとして、胸に痛みが走り、目が覚めた。
「右京?」
「気にするな。二人っきりだからな」
「放っておけって言ったのに。・・・このまま死にたい・・・」
「死なせはせん。おれがなんとかする」
「できるのかよ、そんなこと」
「できるさ。やってみせる」
「なんで・・・」
泣き声になった。
「素直になれよ。お前は光徳院さまじゃないだろ。勝手に縛られているのは、お前だ。自分で自分を縛ってどうする。ここには、おれとお前しかいないんだぞ」
「・・・」
そうだ。
右京の言葉が身に沁みた。
自分で自分を縛っていたんだ。
「おれは、光徳院さまじゃない」
「そうだ。素直になれ。・・・おれを好きだと言え」
「は?」
笑いが込み上げてきた。
「なんでだよ」
「素直じゃないなあ」
右京も笑っている。
景司の体を、そっと前に向かせた。
右京の顔が目の前にあった。
恥ずかしくなって目をそらす。
泣き顔を見られたくなかった。
顎を掴まれ、口づけられる。
はじめは体を気遣うように遠慮がちだったが、次第に抑えがきかなくなり激しい愛撫になった。
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