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17−1 魅惑のトロピカルフルーツ
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4月。
今年は桜も見に行かず、出かける計画も立てられていなかった。
SNSをやめたせいなのか、集中力が途切れたようになって、やる気がわかない。
はじめて半年も経っていないのに、いつの間にか美香の中でも大きなウエートを占めるようになっていた。
もう習慣になってしまったジム通いは続けていて、60キロジャストも目前に迫ってきていた。
運動することで、ストレス解消になり、それほど落ち込むことなくこれている。
「だいぶ引き締まったね。美香って、意外にスタイルいいのよねぇ」
るみが美香の全身を眺めながらニヤニヤする。
お腹周りが劇的に細くなり、元々大きかった胸が強調されるようになった。
お肉を胸に集めるように下着をつけているせいもあるかもしれない。
「おかげさまで。お金かけてますから。でもまだまだ。ぽっちゃりなことに変わりないから」
超スタイルのいい二人を見たら、とても比べられるものではない。
「その胸に顔を埋めたいって言われたりしないの?」
「誰に?」
リスのようにご飯を頬張ったまま、首をかしげた。
「もう。色気より食い気ね。彼に決まってるでしょ」
「京一郎さん?」
「ズバリどうなのよ」
るみは妊娠が判明し、幸せそうだった。
表情が穏やかになり、新しい命を宿すことは、女性をこれほど輝かせるものなのかと、羨ましくなった。
その幸せを、今度は美香にも味わって欲しいと、これまで以上に肩入れしてくれる。
「何にもないよ」
「ええ~~」
「だって、私たち、まだ数回しか会ってないもん」
正確には5回だ。
「そうかもしれないけど、愛を育むならスキンシップは必要でしょ」
「抱きしめてはくれたけど。外だったし」
「その後ホテルに戻ったんでしょ? 何もないなんて、信じられない。それでいいわけ?」
「もう。ラブホじゃないんだから。今日は絡みますね、るみさん」
「あなたたちがなかなか進まないからでしょ。あれからもう2ヶ月近く会ってないんだから」
「まあね」
「そんなんで大丈夫なの?」
確かに、恋人かと聞かれても、そうだと答えられない。
違うような気さえする。
愛されている手応えは感じつつも、現実味がなく、全然近づいているような気がしなかった。
それは、物理的な距離もあるが、まだ自分の位置が低すぎる。
でも、どうしていいかわからない。
「あの二人とはどうなんだろう。体の関係はあるのかな。ね、今度聞いてみてよ」
るみが、興味津々の顔を美香に近づけた。
「やだよ、そんなの聞けないから」
顔が赤くなる。
「気にならないの? 大事なことでしょうよ」
「それより、今月何食べようかな。まだ予定立ててないんだよね」
はぐらかすように、話題を変えた。
「やっぱり食い気なのね、美香は・・・」
るみが、大きくため息をついた。
正直、美香も気にはなるが、今はそれどころではない。
人のことを気にしている余裕などないのだ。
近づきたいのに、その方法がまったく見えてこなかった。
今は、誹謗中傷の被害が最小限に抑えられていることを喜ぶべきだろう。
でも、それは裏を返せば、京一郎と何も進展していないことを物語っているのだった。
何も決められていないのを見透かされたのか、京一郎から書留が届いた。
中にはチケットが入っている。
航空券だ。
「沖縄?!」
思わず大きな声を出してしまった。
「今、沖縄にいるのですよ。美香さんもどうかと思いまして」
その後にかかってきた電話で、京一郎はそう言った。
金曜の夜に到着する便だ。
「沖縄は泳げますよ。水着があれば持ってきてください」
もう海開きが始まっているようだ。
「水着? 水着なんて、持っていません」
「そうですか。なら、こちらで買いましょう。プレゼントしますよ」
るみと変な話をしたばかりだったから、妙に意識してしまう。
沖縄のビーチでの水着姿を想像して、顔が熱くなった。
「どうか、しましたか?」
無言になってしまったからか、京一郎がきいてくる。
「いえ、なんでもないです」
京一郎の裸を想像してしまったなんて言えるわけない。
「嫌でしたか?」
「そんなことないです。恥ずかしいな、と思っただけで。ありがとうございます」
「恥ずかしがることはありませんよ。美香さんの水着姿、きっと素敵です。楽しみにしていますよ」
そう言われると、その気になってしまう。
「じゃあ、気をつけて来てください。空港で待っています」
会えると思うと、どうしてこんなに心が浮き立つのだろう。
スーツケースに荷物を詰めるときも、自然と顔がニヤついてしまう。
当日、るみにだけ打ち明けた沖縄行きの日。
定時で退社し、会社の前で、るみにいってらっしゃい、と背中を押された。
「頑張って。どうだったか報告してね」
「うん、わかった。いってきます」
いったん部屋に帰って着替え、スーツケースを転がしながら、空港へ向かう。
飛行機なんて、卒業旅行以来だ。
一人で乗るのは初めてだった。
ドキドキするのはきっと、そのせいだと思いながら、搭乗し、2時間半ほどのフライトを楽しんだ。
今年は桜も見に行かず、出かける計画も立てられていなかった。
SNSをやめたせいなのか、集中力が途切れたようになって、やる気がわかない。
はじめて半年も経っていないのに、いつの間にか美香の中でも大きなウエートを占めるようになっていた。
もう習慣になってしまったジム通いは続けていて、60キロジャストも目前に迫ってきていた。
運動することで、ストレス解消になり、それほど落ち込むことなくこれている。
「だいぶ引き締まったね。美香って、意外にスタイルいいのよねぇ」
るみが美香の全身を眺めながらニヤニヤする。
お腹周りが劇的に細くなり、元々大きかった胸が強調されるようになった。
お肉を胸に集めるように下着をつけているせいもあるかもしれない。
「おかげさまで。お金かけてますから。でもまだまだ。ぽっちゃりなことに変わりないから」
超スタイルのいい二人を見たら、とても比べられるものではない。
「その胸に顔を埋めたいって言われたりしないの?」
「誰に?」
リスのようにご飯を頬張ったまま、首をかしげた。
「もう。色気より食い気ね。彼に決まってるでしょ」
「京一郎さん?」
「ズバリどうなのよ」
るみは妊娠が判明し、幸せそうだった。
表情が穏やかになり、新しい命を宿すことは、女性をこれほど輝かせるものなのかと、羨ましくなった。
その幸せを、今度は美香にも味わって欲しいと、これまで以上に肩入れしてくれる。
「何にもないよ」
「ええ~~」
「だって、私たち、まだ数回しか会ってないもん」
正確には5回だ。
「そうかもしれないけど、愛を育むならスキンシップは必要でしょ」
「抱きしめてはくれたけど。外だったし」
「その後ホテルに戻ったんでしょ? 何もないなんて、信じられない。それでいいわけ?」
「もう。ラブホじゃないんだから。今日は絡みますね、るみさん」
「あなたたちがなかなか進まないからでしょ。あれからもう2ヶ月近く会ってないんだから」
「まあね」
「そんなんで大丈夫なの?」
確かに、恋人かと聞かれても、そうだと答えられない。
違うような気さえする。
愛されている手応えは感じつつも、現実味がなく、全然近づいているような気がしなかった。
それは、物理的な距離もあるが、まだ自分の位置が低すぎる。
でも、どうしていいかわからない。
「あの二人とはどうなんだろう。体の関係はあるのかな。ね、今度聞いてみてよ」
るみが、興味津々の顔を美香に近づけた。
「やだよ、そんなの聞けないから」
顔が赤くなる。
「気にならないの? 大事なことでしょうよ」
「それより、今月何食べようかな。まだ予定立ててないんだよね」
はぐらかすように、話題を変えた。
「やっぱり食い気なのね、美香は・・・」
るみが、大きくため息をついた。
正直、美香も気にはなるが、今はそれどころではない。
人のことを気にしている余裕などないのだ。
近づきたいのに、その方法がまったく見えてこなかった。
今は、誹謗中傷の被害が最小限に抑えられていることを喜ぶべきだろう。
でも、それは裏を返せば、京一郎と何も進展していないことを物語っているのだった。
何も決められていないのを見透かされたのか、京一郎から書留が届いた。
中にはチケットが入っている。
航空券だ。
「沖縄?!」
思わず大きな声を出してしまった。
「今、沖縄にいるのですよ。美香さんもどうかと思いまして」
その後にかかってきた電話で、京一郎はそう言った。
金曜の夜に到着する便だ。
「沖縄は泳げますよ。水着があれば持ってきてください」
もう海開きが始まっているようだ。
「水着? 水着なんて、持っていません」
「そうですか。なら、こちらで買いましょう。プレゼントしますよ」
るみと変な話をしたばかりだったから、妙に意識してしまう。
沖縄のビーチでの水着姿を想像して、顔が熱くなった。
「どうか、しましたか?」
無言になってしまったからか、京一郎がきいてくる。
「いえ、なんでもないです」
京一郎の裸を想像してしまったなんて言えるわけない。
「嫌でしたか?」
「そんなことないです。恥ずかしいな、と思っただけで。ありがとうございます」
「恥ずかしがることはありませんよ。美香さんの水着姿、きっと素敵です。楽しみにしていますよ」
そう言われると、その気になってしまう。
「じゃあ、気をつけて来てください。空港で待っています」
会えると思うと、どうしてこんなに心が浮き立つのだろう。
スーツケースに荷物を詰めるときも、自然と顔がニヤついてしまう。
当日、るみにだけ打ち明けた沖縄行きの日。
定時で退社し、会社の前で、るみにいってらっしゃい、と背中を押された。
「頑張って。どうだったか報告してね」
「うん、わかった。いってきます」
いったん部屋に帰って着替え、スーツケースを転がしながら、空港へ向かう。
飛行機なんて、卒業旅行以来だ。
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