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秋風に揺られてとろける少年

朝の雀すらも通り越して

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 そうしてその日いっぱいは、ボクはマサトに抱かれていた。ラフィールのことを忘れさせようと躍起になっていたのか、いつになく長く……とろけるように甘やかされて。気が付く間もなく、ボクは気絶してしまっていた。

 そして少しの筋肉痛と共に目覚めてみると、ボクに必死に抱き着くマサトが見えて。愛おしいような……愛らしいような気持ちに包まれると共に、まだまだ収まりそうにないオスのそれに、もはや「すごいなあ」の一言を。

 同時に伝わってきたのは、寂しがっているという気持ち。マサトはあらかたボクの肉体を堪能し終えると、ボクのお腹に頬を当てて……ギュッと丸まり。ボクはそれに答えるように、マサトを抱きしめて。お互いの心を慰め合うように二度寝を……。

「ち、遅刻だぁッ!」

 そうすると当然、そうなる訳で。ボクは目を覚ますや否や、雷に撃たれたかのようや衝撃が走る。

 しかしそれでも過去に戻ることは出来ず。時計はただ、無情にもお昼の“十二時”を指していた。

 うん、遅刻どころではない。もういっそのこと欠席した方がまだマシかも知れない。

「マサト、早くッ! 急がないと遅刻ッ……! 遅刻、遅刻!? 無断欠席!?」
「お、落ち着いてお姉ちゃんっ。こういう時はもういっそ不貞寝したほうが……」
「マサトは落ち着き過ぎだよっ! ああ、やばいっ……! 早く早く、ほら! 着替えてっ!」
「ええっ……。で、でも……。その……。ううん……」

 そうしてボクが、ベッドから抜け出そうとした瞬間。マサトは甘えるような手付きで、ボクの指先を引っ張った。そしてそれに釣られて、ついついマサトと目を合わせてしまうと。ウルウルとした……甘えるような目線が、ボクに襲い掛かった。

「うっ……♡ い、いやでもっ。遅刻っ……。が、学校が……」
「お姉ちゃんっ……」

 一緒に居てほしい。言わずとも伝わってきたその気持ち。ずっと放ったらかしにしてたせいだろうか、何時になくマサトは甘々で……。こんな可愛い子を無視できるほど、ボクは人間が出来ていなかった。

 ましてやこんな、裸にシーツだけの状態だなんて。こんなのボクが居なくなったら、寒いに決まってるじゃないか。マサトを温めてあげるには、ボクがシーツの中に入らないと……。

「……も、もうっ……! そんな顔されたら、ボクっ……♡」
「ん……♡」
「ううっ……! ……はぁ。し、知らないからね、ボクっ。もう……!」

 マサトはボクをシーツの中に引き込み、抱き寄せながら背中に触れた。胸を合わせて、乱れかけた心音をゆっくりと落ち着かせ。お互いの体を温め合うように両手を動かす。

 ……柔らかい。マサトの柔らかくて、発育途上の少し骨ばった体。背中越しに感じる背骨も、肩の鎖骨の部分も。そしてそれらを繋ぎ合わせるような、ふにっとした肉体……。

 こんなに小さいのに、たくましくて、強くて。熱いオスのようにボクを求めてくれる。……愛らしい。愛おしくて、たまらない。……全くもう、し、仕方ないんだから……。

「ふぁ……♡ お姉ちゃんっ……♡」

 そして無意識のうちに、兜合わせをしてしまう……マサトのおちんちん。抱き合いながらキスをしようとすると、どうしてもそこに触れるようになってしまうわけで。マサトは腰を動かしながら、ボクにそれを押し付けていた。

 やがて不自然に腰付きが早くなると、マサトの腰が……ビクンッと跳ねて。マサトのおちんちんから、駄目押しの精液が……ぴゅーっ……と、ボクのお腹に飛び散っていくのがわかった。

「っ~……♡♡ うぁっ……♡ お、お姉ちゃっ……♡」
「し、仕方ないなぁ……♡ ほらっ、マサト……♡ きて……♡」

 そんなふうにボクらは、お互いの体を堪能しあっていた。柔らかい部分や、コツコツした硬い部分やら……全身余すところなく愛し合う。

 だけどそんなひと時が、十分や二十分で終わるはずもなく。もう一度時計を見た時には、流石にマサトもベッドから抜け出さざるを得なかった……。



――――――――――――――――



 「――で? マサト君。どうして放課後になってようやく登校したのでしょうかねぇ??」
「……い、いや……あの、その……。なんというか……」

 『信号機に捕まってました』、で何とかなる雰囲気でもなさそうだった。ましてや『セックスしてて遅れました』だなんて、もっと通用するわけがなかった。

 窓から見えるのは、怒られているマサトの様子と……眉間にシワを寄せる教師。ある意味、学生時代にはよくある光景で……。

「全くもう、今日は大切なカリキュラムがあったのに。寝坊どころの話じゃないですよ? 仮にも王様を目指しているのに、そんなことでどうするんですかっ」
「は、はい……。本当、すみませんでした……」
「とりあえず、まあ一応来たから欠席にはしないけども。今後はちゃんと気をつけてくださいね。早寝早起きすること! いいですね!」
「はい……せんせえ……」

 と、お説教を終えたマサトは、トボトボと肩を落としながら職員室から出てくる。そして落ち込みながらボクに抱きつき、はあ~……と深いため息を。

「怒られた……」
「そ、そりゃそうだ……。だって放課後だもの、もう学校終わってるもの……」

 結局ボクらは、流石に無断欠席はアレだという結論に至り。とりあえず今からでもということで、ボクはマサトと一緒に学校を訪れていた。

 だけど当然ながら、こんな遅くに登校してお咎めなしなハズがなく。ボクは職員室の外から、怒られるマサトを見守るしかなかったわけで……。

「うう。ちょっとサボるくらいいいかなって思ったんだけど。ご、ごめんねお姉ちゃん。やっぱり言う事聞いとけばよかったかな……」
「い、いいんだよマサト。ボクも好きでやってたんだしっ……! それに、ほら。準備には間に合ったんだしさっ」

 マサトの学校は、いわゆる……大学のキャンパスにも似た雰囲気の場所だった。広々とした空間に広がる、レンガ色の立派な建物……。そこの一部に初等部用の校舎があって、マサトはそこに通っていた。

 そして校内をグルっと見渡すと、そこらかしこで文化祭の準備を進める人々が目に入る。その規模はもはや文化祭というか、一つの立派な祭りで。臨時の建物を立てる用の大工さんなんかもチラホラと。

「今からでも手伝えば、問題ないんじゃないかな。どっちかと言えば今はそっちの方が大事だろうし」
「そうだね……。うう、仕方ないか。おかげでお姉ちゃんと一緒に居られたと思えば」
「そうそうっ……。約束通り、ボクも手伝うからさっ。ね?」
「うん……! ……よしっ! いつまでも落ち込んでたら、楽しくないしねっ。気分切り替えてこう!」

 と、すぐに明るくなれるのがマサトの良い所か。マサトは両頬を軽く叩くと、ニマッ! と笑ってみせた。

「よっしゃー! んじゃま、とりあえずおれの教室に行こっか? クラスメイトがもう忙しくしてるはずだしっ」
「了解だぁ。……ところで、マサトの所って何の出し物をするの? 色々大変って聴いてるけど……」
「ん? あ、それはね……。にしし、まあ見てもらったほうが早いかな。こっちだよ、ついてきてっ!」

 するとマサトは、ボクの手を軽く握って駆け出した。校舎の中を真っ直ぐに進んで、溢れる人だかりの中をくぐり抜けていくと……。ふとボクらは、とある部屋の前に辿り着く。

「あら。これって……教室? 講義室……いやデカいな。さ、サイズ感が一回り大きいんだけどコレ」
「まあまあ。とりあえずね……。まあまあ入って入って、にししし……!」
「妙な笑い方するなぁ……。じ、じゃあまあ。お邪魔するけども……」

 ボクは扉に手をかけて、思い切り引っ張った。だけど変なことに、なぜかその扉は異様に重くて。ボクは一苦労しながら、ガラララッ……と音を響かせながら扉を開けた。

「ふぅっ。……ん? おおー! これって……喫茶店じゃん!」
「そ! へへー。ウチの出し物はね……『仮装喫茶』なんだーっ。皆が思い思いの服装を着られて、自由にお茶を楽しめるんだよっ!」

 講義室の中は、すっかり立派な喫茶店へと様変わりしていた(元を知らないけど)。ラフィールと行ったあの店とはまた違った、手作り感の漂う……明るいウッドテイストの店構え。

 いや、どちらかといえばコレは……ブティック? 店の中には沢山の服が並ぶ陳列台と、オシャレな服を着せられたマネキンが。そしてその片隅に、そっと備え付けられるように、キッチンとテーブル席があった。

 まさにブティックとカフェを一体化させた感じの、オシャレな空間……。まだ作業が終わってないトコもあるけど、これは結構いい感じに……!

「仮装喫茶か……! じゃあ、ここでは好きな服を着られるってことなの?」
「そうそう! ここにある服は、どれでも自由に着ていいんだよっ。メンズっぽいのでも、レディースっぽいのでも。本当に好きな物を着て、好きな自分になれるんだっ!」
「はえ……! いいね、それっ。なんか素敵……! コーヒーとかお茶だけじゃなくて、オシャレも楽しめるんだ……」
「でしょ~! いやあ、本当はメイド喫茶もいいかなと思ったんだけど。メイドだけに縛るのもなぁって。それならいっそ、全部を楽しめる空間にしたいなって思ったんだよ~!」

 見渡すと、確かに一部にはメイド服も陳列されていた。だけどその隣には、執事服なんかも並んでいる。なるほど、本当に好きな物を選んでいいんだ。自分が好きな服を着て、好きな自分になれる……。

 ……好きな自分か。そういえば、どんな服が好きかなんて考えたことなかった。でも確かにこういう場所なら、色々選べるし。『仮装』って言い訳がある分、服を着ることに抵抗もないかも……。

「でさ、本題のお願いなんだけどっ。お姉ちゃん……、ちょっとここで、店員さんやってみない?」
「……えっ、ぼ、ボクが!?」
「うん! いやぁ、実は喫茶店をやるのはいいんだけど、店員役の人手が足りなくて。ここで作業してる人は、殆ど他のクラスの手伝いだし……。どうかな?」
「ええっ。い、いやでも。ボク部外者だし。こういうのは、その……」
「お願いっ! お姉ちゃんもここに置いてある服を、自由に選んでいいから……! ちょっとだけでも手伝ってほしいんだっ!」
「ええっ……、え、ええーーっ……!? ま、まじでぇっ……!?」
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