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少年はラフィールを知る

最高潮、雨の中で

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 『ポツ……ポッ……サァアアァァァ……』

 そうして暫く抱きしめ合っているうちに、天候が悪くなっていたらしく。小さな雨粒がボクの頬に落ちたかと思うと、すぐさまにわか雨のようなものがボクらを襲った。

 軽いシャワーを浴びた後のように、髪が濡れ。首筋を伝う雨粒が、徐々にボクのシャツを濡らし。ボクの体はみるみるうちに冷たい雨に犯されていくけど、それはラフィールも同じ。

 お互いの体が濡れているのだとわかった。少し手を動かしてみると、ボクの手のひらは、ラフィールの背中をつぅ……と滑らかに滑り。浮き出た血管や、鍛え上げられた筋肉の凹凸を、今まで以上に艶めかしく、リアルに感じ取る。

 更に雨で濡れた分、互いの体温が、まるで一つとなって溶け合うように同化していくようで。小さな雨粒同士が繋がり、大きな雨粒になるような……。奇妙な一体感のようなものを、なぜかボクは味わっていた。

「……猫、怒るかもね。待たせちゃってるから」

 その背後で、ボクは黒猫の視線を感じ取っていた。『まだ?』と言わんばかりに、小さな鈴の音が小刻みに鳴っていたので。黒猫が待ちぼうけを喰らっていることは当然理解の範疇にあった。

 それでもボクらは、この抱擁を解くことは出来なかった。今を逃せば、二度と味わえないような……? ……いや、違う。きっと抱きしめ合うことは出来るだろう。

 上手く言えないけど、つまり『最高潮』に達していたんだ。ボクとラフィールの、互いを想い合う気持ちのようなものが、今この瞬間がまさに一番強かった。……そんな時にする抱擁が、後にするであろう万の抱擁と、同じはずがないことを、ボクらは無意識に理解していたんだ。

「ッ……」

 そしてその無意識の中で、気が付けばボクの手はラフィールのベルトにあった。ボクはラフィールの胸に顔を埋めながら、手探りでベルトを緩め、ズボンを下ろそうと躍起になっていた。

 金具がぶつかる金属音が、雨音の中に紛れ込む。布が擦れ合う摩擦音が、ボクの心拍数と血圧を更に高め、沸騰させていく。……まるで、導火線に火が点いた爆弾のように。

「んぁッ……! ら、ラフィールッ……!」

 やがてボクは、そのベルトがラフィールの『タガ』になっていたことを察した。ボクがベルトを外せた瞬間、ズボンから飛び出したラフィールのおちんちんが……ボクの太ももの間を貫き、一気にお尻の先まで届いた。

 今までで一番大きい。びきびきに、破裂寸前のように膨らんだそれは、ボクの股下で……どくん、どくんと何度も跳ねて、今か今かと射精を待ち望む。

 だからボクはそれを助長させるように、わざとらしい手付きで……亀頭を撫でてみた。亀頭はボクのお尻の先にあったから、触れること自体は難しくなかった。

「えッ……。……う、うそっ。そんなっ……。えっ……」

 だけど流石に、衝撃を受けなかったと言えば嘘になる。だって、考えたことなかったから。おちんちんに触れた途端、ボクの体が……『浮いた』なんて。

 おちんちんが跳ねる度に、僅かにボクの体が浮かび上がる。上下に動く椅子のように、浮いては……落ちて。それの繰り返し。

 気が付けばボクの足は、地面から離れていた。ボクの体は、股下に潜り込んだ……ラフィールのおちんちんによって、持ち上げられていたんだ。

「まっ……てっ。や、そんなっ……。そ、そんなのっ……ボクっ……!」

 耐えられない。そう言おうとしていた。だけどその頃には、既にいわゆる“駅弁”のようにボクは抱き上げられていて。とっくの昔に挿入の準備は整っていたことに気づく。

 直後、ラフィールは破り捨てるように、ボクのズボンを引きずり下ろす。そしてお尻が露になり、雨粒で濡れ、ボクがごくり……と、息を呑む間もなく。ラフィールはボクの中に、その膨れ上がったおちんちんを……挿れた。

 ――ごりゅうぅぅッッッ♡♡♡!! ごりゅッ……ごりゅりゅあごりゅぎゅッッ……♡♡♡!! ごりゅあぁッッ……♡♡♡!!

「おごッ……!? ごッ……んおあッ……!! ぁぁあッ……あああああああッッッ……♡♡♡!!」

 その時ボクは、飛んでしまいそうになる意識の中で……いつかのことを思い出していた。それは、ボクとラフィールが初めて出会った時。初めてボクが、抱かれ、犯され、メスにされたあの時のこと。

 今ボクが受けた挿入のショックは、あの時とよく似ていた。突然、このおちんちんで貫かれる衝撃……。直後に、お尻の奥から飛び出した快感に、頭の先から足の先まで……犯されるような快楽。

 新鮮で、濃厚な挿入だと感じていた。それこそ初めての時を思い出してしまうくらいに。

 だけど一つだけ、あの頃とは違う確かなものがあった。……それは、愛情。ラフィールから伝わって来る、脳をとろけさせてしまうように……深く染み渡って来る、底知れぬ暖かい気持ち。……これだけは、あの頃にはまだ無かった。

 ――ばちゅんッッ……♡! ぱちゅっ、ごりゅッッッ♡♡♡! ずんっ……ずんッッ♡♡♡ ずんっっずんっっずんっっ……ごりゅぁッ……♡♡♡!!

「あぐっ……♡ ひぁッ……♡! あ、ぁッ……♡♡♡ やぁッ……♡ らめっ……♡ そ、そんらっ……いきなり、はげしっ……♡♡♡!!」

 ラフィールが腰を動かす度に、ボクの一番奥がノックされる。意識が飛ぼうとする度に、快楽が触手のように伸びて来て、意識の中に直接快感を注ぎ込まれていく。

 逃げ場なんて無かった。ラフィールは腰を引くと同時に、ボクの体を持ち上げる。そして腰を上げるのに合わせて、ボクの体を勢い良く落とす。

 完全に奥まで貫かれていた。気持ちよくない訳が無かった。ラフィールが何も言わず、ただストロークだけを速める度に。ラフィールの愛が、気持ちが、快感が。ボクの中に注ぎ込まれて来るんだから。

「……れろ……」
「ひぐっ……!? う、ぁっ……♡ ぁうっ……♡! ……へっ、あっ……♡♡!」

 そして時おり、ラフィールの舌に悩まされる。激しい動きの中で、ボクのシャツがズレたのか。露になった鎖骨と肩を繋ぐ部分を、ラフィールは艶めかしい舌使いで丹念に舌を這わせる。

 雨粒で冷たくなった肩に、ラフィールの暖かく濡れた舌先が、とても心地よくて。いっそもっと舐めて欲しい、全部。ボクの全部を、そうやって舐めて……って、本能的に欲しがってしまう。

 やがて物欲しいあまり、ついラフィールの首筋に舌を這わせた途端。ボクの舌先に、キャラメルのような甘みが染み渡った。濃厚でとろけるような甘みが広がって、同時に汗のしょっぱさがそれと混ざり、ボクの脳と全身は途方もない甘みがもたらす快楽の園に包まれた。

 もうすぐ絶頂が近いのだと悟った。その瞬間、きっとボクの体は例えようのない甘さに包まれて、意識を失うのだろう。花畑に飛び込むと、無数の花びらが宙を舞うように。ボクは快楽の虜になる。

「はっ……♡ ら、ふぃーるっ……♡♡ らふぃーるっ……♡♡♡! もっとっ……ぼ、ぼくをっ……♡♡♡! ……ボクの中にっ……きてっ……♡♡♡!」
「ッ……!」

 耐え切れず、ボクは懇願した。その瞬間にラフィールのおちんちんは、跳ね上がるように更に膨らんで。同時にストロークの勢いが、今までの倍以上に達する。

 もはや雨の音なんて聴こえなかった。ただ届くのは、腰を打ち付ける音と。おちんちんがボクのお尻の奥をかき分ける轟音と。亀頭から漏れ出た液体が打ち鳴らす、糸引くような甘い水音だけ……♡

 ――ぱん、ぱんっ……♡ ごりゅっ、ずりゅぅっ……♡ ぬちゅっ……くちゅ……♡! ごりゅっ……♡! ぱんっ……♡! ぱちゅんっっ♡♡♡! ずんっっ♡♡♡ ずんっっ♡♡♡!!

「……すきっ……♡ らふぃーるっ……しゅきっ……♡! す、すきっ……♡! すきっ……♡!」

 ラフィールの首に両腕を廻し、必死に快感に耐えた。絶頂に達する前に、気絶してしまわないよう。ボクは全身全霊で、ラフィールの腰使いに耐えていた。

 まるで、永久にも思えるような刹那……。いつしか、ラフィールのおちんちんがボクの中で不自然に跳ねた瞬間。ボクはラフィールの絶頂を感じ取り、とある欲望に負けてしまって……。

 ……そこからはもう、ただただ。頭の中には、ラフィールのことしか無かった。

「……いっしょに、イきたいっ……♡ らふぃーると、い、いっしょにっ……イきたいっ……からっ……♡ だからっ、た、タイミング……合わせてっ……♡!」
「ッ……! ……お前ッ。俺が不器用なの、知ってるくせにッ……!」
「……だからっ……♡ ぶきよー……だからっ……♡! ボクは、ラフィールと、一緒にっ……! ……い、イクっ……♡ イクっ……♡! ぼ、ボク、もうっ……!」

 ――ずんッ……! ずりゅっ……♡ ずんっ……ごりゅっ……♡! ごっ……♡ ごっ……♡! ごっ……ごっ……♡! ごりゅッッッずんッッッ♡♡♡!! ずりゅッッごりゅッッ♡♡♡!! ずんッッッばちゅんッッ――! 

 ごりゅッッごりゅぁッッッ♡♡!! ごりゅッッばぢゅんッッずりゅぁぁッッごりゅッッッ――♡♡!! ごッッごりゅッッッずんッッッずんッッ♡!! ずんッッずんッッ――ずんッッ……♡♡♡! ごりゅッッッ――♡♡♡!!!!

「くッ……♡ み、ミノルッ……♡ 出すぞッ……♡!! お前の中にッ……全部出すッ……!!」
「いぐッッ……♡!! い、いぐッッ……♡! らふぃーると、い、一緒にッ……♡!! いくっ……いぐっ……♡! いぐっ……いぐっ……いぐッッ……♡! ――いッ……ぐっ……ぅあぁぁぁぁぁッッ……!!」

 ――びゅるるるるるるるッッ――♡♡!! びゅるるるるッッッ……びゅるるるッッ……!! びゅーーーッッッ……びゅるるるるッッッ……♡♡!!

 どくんッ……どくッ……! びぐんっ……とくっ……♡ どくんっ……ごきゅんッッ……♡! どくっ……びぐッッ――♡!

「……かっ……はっ……♡!? ……はっ……♡ ぁ……ヵっ……はっ……♡ ……うあっ……♡」
「ふーーッ……♡ ……ミノルッ。ミノルッ……! ミノルッ……!」

 どくんっ……♡ びゅるっ……びゅーーっ……♡ びゅっ……びゅっ……♡ ぴゅるっ……♡

「……れ……てるっ……。……らふぃーるの、がっ……。ぜんぶ、ぼくの……なかにっ……♡」

 案の定。ボクはもはや、意識を保つことなど出来そうになかった。溢れんばかりに押し寄せる精液は、ボクの体を痙攣させ、何度も頭の中を白く染め上げる。

 心地いい、なんて言葉じゃ物足りなかった。漏れ出しそうなほどの陶酔感と、全身から力が抜けてしまうほどの甘い電流……。

 ……幸せ。それ以外に、今の感情を表せるだけの言葉を、ボクは知らなかった。だからボクは、その気持ちを隠すことなく。ラフィールに抱かれ、薄れゆく意識に身を委ねる……。


『――シャラン……』


 その瞬間、ボクは鈴の音を聴いた。何事かと思い、何とか薄目を開けてみると。ボクは霧雨の向こうに……、大きな、大きな“黒猫”を見た。

 随分と歳を取った黒猫だった。よく見てみると、その猫の隣には……さっきまで案内をしてくれていた、若い方の黒猫が座っている。恐らくあのお年寄りの猫こそが、ラフィールの言っていた猫なんだろう。

 ……ラフィールはまだ気が付いて居ない。ラフィールはまだ、目を閉じながらボクを抱きしめている。だから今、『チャンス』だと思った。そのチャンスを掴むために、ボクはラフィールを……力強く抱きしめ。老描に向けて言い放つ。

「……渡さないから。誰にも、君にも……」

 奪われる予感がしていた。もしかしたら、あの猫にラフィールのことを取られるんじゃないかって。……そんなの許せるわけが無かった。今更ラフィールを失って、ボクが生きていけるわけがない。

 だからボクは、老描とジッと目を合わせていた。絶対奪われないよう、どこにも行かないように。……だけど流石に限界が来たのか、ボクの瞼はついに閉じてしまい。ボクの腕から、緩やかに力が抜けていく。

 幻覚だったのかもしれない。そう思いながら、ボクは深淵の中に意識を飲み込まれていった。……そして完全に意識が途絶える、一瞬。ボクはその、低く唸るような鳴き声を。どこかで聴いた気がした。

『……ニャオゴ』
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