スラム出身の公爵家庶子が、スラムの力を使って、後継者候補達を蹴落として、成り上がっていく。でも、性悪王女が可愛くてそれどころではないかも

秋田ノ介

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スラム編

第30話 王家からの手紙

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 約束の二年も半年を切っていた。僕も11歳になり、背も少しだけど大きくなってきた。肥料作りから畑に作物が出来るまで一年という歳月がかかってしまったけど、スラムの人達の協力で農場も日々大きくなってきている。

 しかも、採れた野菜はスラムで消費されることなく、全て王都に向かって運ばれていっている。王都では、スラム産の野菜ということで前評判は最低だったが、食べた人達が高い評価を出してくれたおかげで少しずつだが、固定客がつき始めている。

 そのおかげで畑に従事している人達に少ないけど給金も出せるようになってきている。それと合わせて、砂金収集の人達にも王国から給金代わりに出されている食料と交換という形で、現金を手渡すことにした。最近は、その噂がスラムで持ちきりになっている。

 現金が手に入る仕事がスラムにあるのだ。農場の責任者格のニッジも日々増える労働者に指示を与えるのに苦労しているようで、大人の部下も何人か使っているようだ。

 そんなスラムがいい雰囲気が出ている頃、僕はと言うと……毎日同じことを繰り返す日々を送っている。朝起きると、師匠のご飯を作ってあげる。といっても寝ていることが多いから用意でしていくって感じかな。

 師匠が魔法薬を用意していてくれたら、それを持って教会に行く。それから孤児院に顔を出して子供たちに勉強を教える。子供たちも随分と読み書きが出来るようになってきたから、僕が教えられることは随分と少なくなってしまったけどね。

 それからはマリアと一緒に風魔法の修行をする。マリアは別に何をすることもない。ただ側にいるだけだ。最初はちょっと邪魔かなと思ったけど、時々アドバイスをくれるから、なんだかんだ一緒にいる時間が多くなっていった。

 そして再び、家に戻って師匠の昼ゴハンを作る。このとき、朝ゴハンが食べられていなかったら昼は用意しない。師匠は意外と少食だから、作りすぎても絶対に食べないのだ。酒なら無尽蔵に入るのに……。

 午後からはスラム畑の拡張をするために、石拾いと道路の拡張を行う。といっても半年間ずっと続けていたせいで、今の工作ペースだと数年も出来るほどの面積を確保している。それに大量の石が出てくるのを利用して、整備した道に敷き詰める作業を繰り返した。おかげで、泥とは一切無縁の道がスラム畑を中心にスラム街まで四方八方に広がっている。

 もちろん水路にも石を敷き詰めているので、土で埋まるのを防ぐことが出来る。これでメンテナンスの負担はかなり減るだろう。夕方になると屋敷に戻って、夕飯を作る。このときはさすが師匠も目を覚ましているので一緒に食事をすることになる。

 食事中は基本的には師匠のくだらない話を永遠と聞かされる。時々、昔話をする時があってそれは凄く面白いけど……本当に時々だけど。

 後は就寝まで地図を眺めたり、本を呼んだりして時間を潰している感じかな。こんな一日を過ごしている。

 さて、そんな日々を送っているとガーフェから至急来るように連絡がやっていた。大体、毎日顔を合わせているから連絡をよこすなんて、かなり珍しい。最近はかなり順調だったから、何か大きなトラブルになったのでは警戒してしまう。

 だけど、実際はそんな事は全く無かった。

 「ロラン様。大変なことになりましたぞ!!」

 おお。角がそり立つように立っているぞ。これは相当興奮している証拠だな。最近、髪の量がますます少なくなって、角も随分と細くなってしまったが……。

 「ごめん。なんだって?」

 「いえ、まだ何もお話していませんが……実は……王家から手紙が来たのです」

 王家から手紙だと⁉ ……何か嫌な気配を感じる。砂金のときもそうだった。ようやく軌道に乗りそうだと思ったら王国から手紙が来て、瞬く間に砂金の収集場所を没収されてしまった。その記憶が蘇ってくる。

 「ロラン様のお考えになっていることはご尤もですが、内容は我々の考えているのとは真逆なのです」

 というと?

 「王家の方でスラム畑の作物を買い取りたいというのです。なんでも王都で評判なのを聞きつけた様子で」

 信じられる? 王家がスラムで作った野菜を食べたいって言ってきたんだよ。

 「しかも、王都に降ろしている十倍の値段を出すと言っているのです。もちろん購入の優先権や採れたてという条件を課せられましたが、良い話だと私は思いますが。ただ……」

 十……十倍だって⁉ 良い話どころではない、かなり良い話じゃないか。それで? それで、王家は何を言っているんだ?

 「その……最初に届けるのはロラン様にお願いしたいということなんです」

 へ? 僕が届けるだって? 理由が分からない。

 「手紙にはそれ以上は書かれていないのです。どうされますか? 我々としてはこの話は実りのあるものにしたいのですが……正直、王都はかなり治安が荒れております。戦乱が長引いたせいでしょうな。危険がある場所ですが」

 スラムに利益があるのなら、拒む理由はない……けど、なんで僕なんだ? ガーフェのほうが適役なような気もするけど。といっても、ここで考えても意味のないことか。行けば分かるんだから。

 「野菜はどれくらい用意できそう? 採れたてっていうんだから当日に採らないといけないようね?」

 「そうですな……手紙には具体的な量が記載されていないので、こちらとしては持っていけるだけ持っていったほうが宜しいでしょう。おそらく、王家もこちらの実力を計っているのでしょうから」

 ふむ。なるほどね。

 「出発はいつにするの?」
 「明日でお願いします」

 随分急だな。でも、王家の気が変わらないうちに話は進めておいたほうがいいだろう。それにしてもガーフェがいなかったら、ここまで話はうまく進まなかっただろうな。

 「ガーフェのおかげで、ここまでスラムの人達に仕事を与えることが出来たよ。本当にありがとう」

 「何をおっしゃいます。砂金がなければ王国から食料は入ってきませんでした。肥料がなければ、スラム畑もありませんでした。スラム畑がなければ……今の話はなかったでしょう。それら全てはロラン様がいてくださったから叶ったことです。私など……砂金の時に王国に喧嘩を吹っかけて散っていたでしょう」

 ガーフェは急に手を握ってきた。

 「ですから、これからもスラムのことをよろしくお願いします。どうか、我々を導いてくださいませ」

 なんか照れるな……とはいえ、ガーフェがいなければ話が進まないのは事実だ。僕は所詮は口だけだしているに過ぎないし、僕の言葉ではスラムは動かないだろう。

 「そのためにもガーフェにも元気でいてもらえないとね」

 「もちろんでございます。ロラン様」

 なんだか、最初にあったときはとんでもない変態と遭遇したと思ったけど、今では信頼できる人にいつの間にかなっていたな。それに僕の周りにはニッジや師匠、マリアのいる。ララも迷走している気がするけど、信用できる人がたくさんいる。

 「明日は僕一人で行くのかな?」
 「さようですな。私も同行させてもらいましょう。あとは輸送隊を編成しませんといけませんな。忙しくなりますな」

 その知らせを当然、ニッジにも伝えた。

 「本当かよ⁉ くそっ……オレも行きたかったな」
 「そうなの? 行けばいいんじゃないかな?」

 「王家だぞ!! 行くのはきっと王城だろ? 絶対、凄いぞ。ああ、ロランが羨ましいな。だけど、オレには畑の管理があるから一日だって離れる訳にはいかないもんな。やっと任せられる人が出来たけど、それでもあと半年はずっとつきっきりになってやらないと」

 ふふっ。ニッジが人に何かを教えていると思うと、なんか笑っちゃうな。孤児院にいた頃は、ずっとサボってばかりいたのに。

 「何、笑ってんだよ。それよりも王城の土産話をたくさん持ってきてくれよ」

 「もちろんだよ。そうだよね。多分、最初で最後だろうから楽しんでくるよ」
 「オレとしては、そうあっては困るけど……まぁ実際はそうだよな。楽しんでこいよ」

 当然、その足でマリアのところにも顔を出すと、悲壮感漂う表情を隠せていなかった。

 「ロラン様がついに王都に……私のことを決して忘れないでくださいね。王都は美人が多い魔都。ご用心を。一応、ララを護衛につけさせますね。今ではかなりの腕前になっていますから、その辺の達人には遅れは取りませんよ」

 いろいろと言いたいことがあるけど……マリアは僕のことを何だと思っているんだろうか? まぁ、ララが来るのは賛成かな。彼女には色々なことを見せてやりたいしね。まぁ、達人がその辺にいるとは思えないけど、頼もしい存在が身近にいるのは助かるかも知れない。

 最後にマリアから変なぬいぐるみを渡された。修道服を来たマリア? なんか気持ち悪いので、丁寧にお返しした。

 後は師匠か……「おう、行ってきな。そうそう、酒のお土産は……」

 やたらと細かい注文をされた。裏通りなんて僕が知るわけ無いだろ? 

 明日は王都に出発か……一体、どんな場所なんだろうか?
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